上 下
38 / 88

第38話アイゼン団長はおっぱいだけでなく実力もすごかった……

しおりを挟む
 アイゼンが俺に歩み寄り、切れ長の目で俺の顔をジッと見据えた。綺麗な顔は相変わらず無表情のままで、彼女の心境を読み解くのは難しい。
 何か試されているかのような気持ちにさせられる。俺は目をそらさずに、彼女の瞳を真っすぐに見た。
「君は自分の力を証明すると言ったな?」
 アイゼンが俺を見下ろしながら口を開いた。
「はい、俺の能力を見てもらえばわかることなんで」
「では、私と試合をしてもらおう。伝説の勇者であれば、私など足元にも及ばぬはず」
「ちょ、ちょっと待てください。わざわざ戦う必要なんてないでしょ?」
「どうした? 怖気づいたか? 君が私に勝てたなら、願いを聞き入れても構わぬが。どうする、自称勇者様」
 動揺する俺を見て、アイゼンは余裕の表情を浮かべる。

 予期せぬ方向に進んでしまった……でも、これはチャンスだ。まずは、試合に勝ってアイゼンに俺の力を認めさせる。そして王都には行かずキューべ村に滞在してゴブリン襲撃事件を調査する。俺の潔白を証明するんだ!

「もちろん受けて立ちますよ。ただし、俺が勝ったら王都には行かない」
「いいだろう」
「そしてもう一つ、俺が満足するまでパイズリしてもらいます!」
「ズリキチという生き物はパイズリのことしか頭にないと聞いたが、どうやら本当らしいな」
 アイゼンがため息をつき、不憫な視線を俺に向ける。
 冗談のつもりで言ったのだが、笑っているのはルイスただ一人。
「やはり勇者様は豊かな胸のほうがお好きなのですね……」
 マリアが寂しそうな顔で俺を見る。
「斬られて死ねっ」
 クレア、今の一言で俺の心が死んだよ……。
「では、場所を移そう」
 アイゼンが足早に歩きだし、俺たちは彼女のあとについていった。
 騎士団の野営地から少し離れた森の近くまで来て足を止め、彼女は振り返った。
「えっと、試合のルールは?」
「攻撃手段を問わず、なんでもありで構わぬよ。勝敗を決するのは敗北の自己申告でよいか?」
「OK!」
 俺の返事を合図に、アイゼンが剣を抜いて正眼に構えた。
 アイゼンの構える剣は全長80センチほど、両刃で細身のものだった。
 相手は騎士、接近戦で斬り合うのは分が悪い。ここは少し気が咎めるが十分に間合いを取りつつ、遠距離攻撃で一気に無力化してしまおう。

 ケガさせないように加減しつつ……風よ剣を巻き上げろ!

 アイゼンの手元に意識を集中して風を吹き上げる。
「ほう、ただのズリキチというわけではなさそうだな」
 アイゼンが口元に笑みを浮かべた。
 彼女は柄をしっかりと握ったまま離そうとはせず、巻きあがる風の圧力に顔色一つ変えず耐えていた。

 おいおい、マジかよ!? 加減してるとはいえ、けっこうな風圧ですよ……。

 やがて剣のふらつきはピタリと止まり、アイゼンが静かに目を閉じた。再び彼女が目を見開いた瞬間、とてつもない衝撃波が俺に襲い掛かった。どんなに踏ん張ってもその力を跳ね返すことはできず、俺は10メートル近く後方まで押し切られてしまった。

 ふぅ。シールドを準備しといてよかった。生身で受けたら体がバラバラになってたな……あの人、マジで殺す気かよ!

「今の覇気を耐えるとはな。正直驚いた。もう少し力を解放するとしよう」

 おいおい、今のが小手調べかよっ。いい、いい。解放しなくていい!

 アイゼンの俺を見る目つきが変わった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【本編完結済】夫が亡くなって、私は義母になりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,704pt お気に入り:2,625

[R18]えちえち四面楚歌

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:5

【R18】偽物の君に恋をする

ミステリー / 完結 24h.ポイント:255pt お気に入り:99

サキコちゃんと僕の性活日記

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:590pt お気に入り:3

竜帝と番ではない妃

恋愛 / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:329

義兄弟に襲われてます!

BL / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:951

性快のばけもの

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:2

処理中です...