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第36話アイゼン騎士団長がすごいのはおっぱいだけじゃないらしい……
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「勇者様を疑うなんてあんまりです! ゴブリンと戦って私たちの村も救ってくださったのに」
マリアが語気を強めて早口に言う。
「私だって同じ気持ちよ。でも、王都から来た騎士団を無視するわけにもいかないし……」
クレアがもどかしそうな表情を見せる。
アイゼンの目的は、突如現れた伝説の勇者の真偽を確かめることなのかもしれない。そもそも彼女は「伝説の勇者など信じていない」と断言していたし、伝説の勇者を語る嘘つきを暴くことが目的といったほうが正しいのかもしれない。
まあ、自分から勇者と語ったことは一度も無いんだけど……。
「アイゼン騎士団と団長のアイゼンについて教えてほしいんだけど」
「アイゼン団長は、国内外でもすごく有名な騎士っすよ。なんせ、ランクSSRっすから」
俺の質問にルイスが答えてくれた。
アイゼン騎士団は王都所属の歴史ある騎士団で、元はアイゼンの父親が団長を務めていた。10年前、当時16歳で副団長を務めていたアイゼンは帝国との戦争で大きな功績を上げ、その翌年に引退した父親の跡を継ぎ、団長に就任した。帝国からの侵略を防いだ国のヒロインである彼女を国民は深く敬い、愛しているという。
「16歳で副団長かぁ。やっぱめっちゃ強いんだよね?」
「そりゃそっすよ。アイゼン団長の武勇伝は数え切れないっすからね。あ、でもアニキほどじゃあないっすよぉ」
「あはは。いやぁ、まいったなぁ。お世辞言ってもなにも出ないぞ」
「真面目にやれっ」
クレアから強烈なデコピンをお見舞いされ、額をさする。
少し面倒なことになったな……。
国民から絶対的な信頼を得ているアイゼンに俺は疑われている。町やキューべ村のみんなが証人になってくれたとしても、あの鉄のごとく頑固そうなアイゼンがそれを信じるだろうか?
町で念入りな調査をしたうえで、俺のことを疑っているのだ。伝説の勇者という虚偽発言のみならず、モンスター襲撃を引き起こした犯人として疑われているかもしれない。
解決方法は2つしかない。まずは、俺がランクLRの魔力保持者であることの証明。次に、モンスター襲撃事件の解明だ。前者は比較的簡単にクリアできそうだ。アイゼンに俺の能力を直接見てもらえば済む話だ。この異世界では、装備の無い状態で魔術を発動させることは不可能である。俺が魔術を使うところをアイゼンに見せればよいのだ。これで、俺が勇者相当の実力があることは証明できる。
難しいのは後者だ。俺自身、モンスター襲撃については自分に原因があるんじゃないかと不安を抱えている。
町を襲撃したガーゴイルは、おそらく主であろう白髪の男に俺がレジェンドであることを報告していた。つまりガーゴイル、ランクLRの人間を探し出すために町を襲ったのではないだろうか?
今回のゴブリン襲撃で、白髪の男は現れなかった。
ヤツの目的は?
今回の事件に俺は関係しているのか?
分からないことばかりで頭がパンクしてしまいそうだ。
おれも「ユージは……明日には王都へ行ってしまうのよね?」
クレアがつぶやくように言いながらテーブルに視線を落とす。
「王都からのお迎えですから仕方ないかもしれませんが、私は心配です」
「俺も納得できないっす!」
マリアとルイスが俺を見つめる。
「俺は、もう少しキューべ村に残るよ」
「本当に?」
顔を上げたクレアが嬉しそうに尋ねる。
「まだ村のことも心配だし、それにゴブリンの襲撃について調べたいんだ。アイゼン団長から色々と疑われてるみたいだし、そっちのほうが都合がいいと思うんだ」
「ありがとうございます! 勇者さまっ」
マリアがギュッと俺の腕にしがみついた。
「でもアニキ、団長は明日の朝出立するって……」
ルイスが心配そうに尋ねた。
「アイゼン団長には今からお願いに行くよ」
俺は椅子から立ち上がった。
とりあえず、俺の能力を見てもらえばある程度は納得してくれるだろう。
モンスター襲撃事件を調べて、原因が俺だった場合のこと考えると背筋が寒くなるが……。
マリアが語気を強めて早口に言う。
「私だって同じ気持ちよ。でも、王都から来た騎士団を無視するわけにもいかないし……」
クレアがもどかしそうな表情を見せる。
アイゼンの目的は、突如現れた伝説の勇者の真偽を確かめることなのかもしれない。そもそも彼女は「伝説の勇者など信じていない」と断言していたし、伝説の勇者を語る嘘つきを暴くことが目的といったほうが正しいのかもしれない。
まあ、自分から勇者と語ったことは一度も無いんだけど……。
「アイゼン騎士団と団長のアイゼンについて教えてほしいんだけど」
「アイゼン団長は、国内外でもすごく有名な騎士っすよ。なんせ、ランクSSRっすから」
俺の質問にルイスが答えてくれた。
アイゼン騎士団は王都所属の歴史ある騎士団で、元はアイゼンの父親が団長を務めていた。10年前、当時16歳で副団長を務めていたアイゼンは帝国との戦争で大きな功績を上げ、その翌年に引退した父親の跡を継ぎ、団長に就任した。帝国からの侵略を防いだ国のヒロインである彼女を国民は深く敬い、愛しているという。
「16歳で副団長かぁ。やっぱめっちゃ強いんだよね?」
「そりゃそっすよ。アイゼン団長の武勇伝は数え切れないっすからね。あ、でもアニキほどじゃあないっすよぉ」
「あはは。いやぁ、まいったなぁ。お世辞言ってもなにも出ないぞ」
「真面目にやれっ」
クレアから強烈なデコピンをお見舞いされ、額をさする。
少し面倒なことになったな……。
国民から絶対的な信頼を得ているアイゼンに俺は疑われている。町やキューべ村のみんなが証人になってくれたとしても、あの鉄のごとく頑固そうなアイゼンがそれを信じるだろうか?
町で念入りな調査をしたうえで、俺のことを疑っているのだ。伝説の勇者という虚偽発言のみならず、モンスター襲撃を引き起こした犯人として疑われているかもしれない。
解決方法は2つしかない。まずは、俺がランクLRの魔力保持者であることの証明。次に、モンスター襲撃事件の解明だ。前者は比較的簡単にクリアできそうだ。アイゼンに俺の能力を直接見てもらえば済む話だ。この異世界では、装備の無い状態で魔術を発動させることは不可能である。俺が魔術を使うところをアイゼンに見せればよいのだ。これで、俺が勇者相当の実力があることは証明できる。
難しいのは後者だ。俺自身、モンスター襲撃については自分に原因があるんじゃないかと不安を抱えている。
町を襲撃したガーゴイルは、おそらく主であろう白髪の男に俺がレジェンドであることを報告していた。つまりガーゴイル、ランクLRの人間を探し出すために町を襲ったのではないだろうか?
今回のゴブリン襲撃で、白髪の男は現れなかった。
ヤツの目的は?
今回の事件に俺は関係しているのか?
分からないことばかりで頭がパンクしてしまいそうだ。
おれも「ユージは……明日には王都へ行ってしまうのよね?」
クレアがつぶやくように言いながらテーブルに視線を落とす。
「王都からのお迎えですから仕方ないかもしれませんが、私は心配です」
「俺も納得できないっす!」
マリアとルイスが俺を見つめる。
「俺は、もう少しキューべ村に残るよ」
「本当に?」
顔を上げたクレアが嬉しそうに尋ねる。
「まだ村のことも心配だし、それにゴブリンの襲撃について調べたいんだ。アイゼン団長から色々と疑われてるみたいだし、そっちのほうが都合がいいと思うんだ」
「ありがとうございます! 勇者さまっ」
マリアがギュッと俺の腕にしがみついた。
「でもアニキ、団長は明日の朝出立するって……」
ルイスが心配そうに尋ねた。
「アイゼン団長には今からお願いに行くよ」
俺は椅子から立ち上がった。
とりあえず、俺の能力を見てもらえばある程度は納得してくれるだろう。
モンスター襲撃事件を調べて、原因が俺だった場合のこと考えると背筋が寒くなるが……。
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