28 / 88
第28話この異世界の金髪美少女は俺が勇者か疑わしい……
しおりを挟む
少女は息を切らし、苦しそうな顔で周囲の冒険者に呼びかける。
彼女の服は泥で汚れ、ところどころ破れている。手足は擦り傷で赤くはれていた。年齢は俺と同じくらいだろうか? 体は小柄で、ブロンドの髪を後ろにまとめ可愛らしいリボンをつけている。
「こちらの町に勇者様がいらっしゃると聞きました。誰か教えてください」
金髪の少女が冒険者たちを見回しながら尋ねる。
「あのぉ、それ多分、俺のことだと思う……」
俺が勇者だぁ! みたいに胸張って登場するのが理想なんだろうけど、自分で勇者とか名乗ること自体が恥ずかしくて無理。
「あなたが……」
金髪少女が俺の頭から足元まで確認するかのように視線を送る。
そりゃそうだよな。年は自分と変わらない子供で、背だって低い。体も細いし、めっちゃ自信なさげだしな。おまけに冒険者プレートはもらったばかりの初心者カラー、装備もつけていない丸腰だ。君の気持は痛いほどよくわかってます。
「お嬢ちゃん、何があったか知らねぇが、安心しな。この勇者さまは、ランクLR。伝説の世界最強の勇者様だ。この町を襲撃したガーゴイルだって、勇者様が一ひねりで倒しちまったんだ」
いやいや、すげぇ苦労しましたけど……。なんか話、盛られてんなぁ。あまりハードル上げないでほしい。
「す、すごい……」
金髪少女の見る目が変わった。
「とりあえず、傷の手当をしよう。あと、着替えも」
「私は平気です! それより村のみんなを助けてください。ゴブリンの群れに襲われて……」
金髪少女は緊張の糸が切れたのか、ポロポロと涙を流した。
「うん、分かった。俺はユージ。君は?」
「マリアです」
マリアが涙をぬぐいながら顔を上げた。
「村の名前を教えてくれる?」
「キューべ村です。この町から西へ30キロ先にあります」
俺はローザさんに事情を説明し、クレアに伝えてもらうようお願いした。ローザさんは快諾し、「気をつけて」と言いながら両手で握手してくれた。冒険者や職員たちから声援を背中に受けて、協会をあとにする。
「えっと、今から空を飛びます」
「へ?」
「マリアも一緒に飛んでもらうから、俺の手をしっかり握っていてね。あ、西ってどっちだっけ……」
「西はあっちですけど……」
マリアが不安そうに指さした。
「そいじゃ、いくよー」
「きゃあっ」
マリアと共に空へ舞い上がる。彼女を怖がらせないように、なるべくゆっくり高度を上げた。
「大丈夫? 怖くない?」
「はい! 平気です。すごい! ホントに飛んでる!」
少しはしゃぐようにマリアが答えた。
高所恐怖症じゃなくて良かった……。
マリアの様子をうかがいながら、徐々に飛行速度を上げていく。怖がっている気配は全く感じられない。むしろ表情は明るく、遊園地に連れてきてもらった子供のように目を輝かせている。
絶叫マシンとか好きそうだな、この子。俺の場合、自分で飛ぶのは平気だけど、乗り物でスピード出るのは絶対パス。
マリアの体を安定させられる速度を保ち、キューべ村を目指す。
このスピードなら30分もかからず到着できるだろう。
さて、ゴブリン退治といきますか。
彼女の服は泥で汚れ、ところどころ破れている。手足は擦り傷で赤くはれていた。年齢は俺と同じくらいだろうか? 体は小柄で、ブロンドの髪を後ろにまとめ可愛らしいリボンをつけている。
「こちらの町に勇者様がいらっしゃると聞きました。誰か教えてください」
金髪の少女が冒険者たちを見回しながら尋ねる。
「あのぉ、それ多分、俺のことだと思う……」
俺が勇者だぁ! みたいに胸張って登場するのが理想なんだろうけど、自分で勇者とか名乗ること自体が恥ずかしくて無理。
「あなたが……」
金髪少女が俺の頭から足元まで確認するかのように視線を送る。
そりゃそうだよな。年は自分と変わらない子供で、背だって低い。体も細いし、めっちゃ自信なさげだしな。おまけに冒険者プレートはもらったばかりの初心者カラー、装備もつけていない丸腰だ。君の気持は痛いほどよくわかってます。
「お嬢ちゃん、何があったか知らねぇが、安心しな。この勇者さまは、ランクLR。伝説の世界最強の勇者様だ。この町を襲撃したガーゴイルだって、勇者様が一ひねりで倒しちまったんだ」
いやいや、すげぇ苦労しましたけど……。なんか話、盛られてんなぁ。あまりハードル上げないでほしい。
「す、すごい……」
金髪少女の見る目が変わった。
「とりあえず、傷の手当をしよう。あと、着替えも」
「私は平気です! それより村のみんなを助けてください。ゴブリンの群れに襲われて……」
金髪少女は緊張の糸が切れたのか、ポロポロと涙を流した。
「うん、分かった。俺はユージ。君は?」
「マリアです」
マリアが涙をぬぐいながら顔を上げた。
「村の名前を教えてくれる?」
「キューべ村です。この町から西へ30キロ先にあります」
俺はローザさんに事情を説明し、クレアに伝えてもらうようお願いした。ローザさんは快諾し、「気をつけて」と言いながら両手で握手してくれた。冒険者や職員たちから声援を背中に受けて、協会をあとにする。
「えっと、今から空を飛びます」
「へ?」
「マリアも一緒に飛んでもらうから、俺の手をしっかり握っていてね。あ、西ってどっちだっけ……」
「西はあっちですけど……」
マリアが不安そうに指さした。
「そいじゃ、いくよー」
「きゃあっ」
マリアと共に空へ舞い上がる。彼女を怖がらせないように、なるべくゆっくり高度を上げた。
「大丈夫? 怖くない?」
「はい! 平気です。すごい! ホントに飛んでる!」
少しはしゃぐようにマリアが答えた。
高所恐怖症じゃなくて良かった……。
マリアの様子をうかがいながら、徐々に飛行速度を上げていく。怖がっている気配は全く感じられない。むしろ表情は明るく、遊園地に連れてきてもらった子供のように目を輝かせている。
絶叫マシンとか好きそうだな、この子。俺の場合、自分で飛ぶのは平気だけど、乗り物でスピード出るのは絶対パス。
マリアの体を安定させられる速度を保ち、キューべ村を目指す。
このスピードなら30分もかからず到着できるだろう。
さて、ゴブリン退治といきますか。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
逆転世界でヘイトを溜めて犯されよう!〜貞操逆転世界で犯されたいリメイク版〜
腹筋パンダ(出張)
恋愛
早乙女隼人(さおとめはやと)は女に犯されたい願望を持つMな高校2年生。めちゃくちゃイケメンだが童貞だ。あほな事故で貞操が逆転した世界に迷い混んでしまう。貞操が逆転した世界だと分かった彼は思う。「夢の逆輪姦…いや輪姦して貰えるのでは?」と。
この世界で犯されるのは簡単だ。さてどのようにして女の子に犯されよう…
メインはノクターンノベルズで投稿しています‼️
*/寝取られは嫌いなので絶対にありません(断言)
私が好きだった(この作品を書いていた)作家さんが突然投稿をやめてしまわれたので、後を引き継ぐ形で投稿しております。
土曜日と日曜日の投稿でやっていきます。
よろしくお願いします!
是非ブクマと評価お願いします‼️
Twitterもやってますのでぜひそちらも覗いてみてください‼︎
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R-18】寝取られが合法の世界に転生したので種付け師としてヤりまくる
そーだえんそ
ファンタジー
特に夢を持たないままブラック企業へ就職し働きすぎで過労死してしまった男は、異世界へと転生した。
転生した世界ではなんと「種付け師」という、寝取ることを専門にした役職が存在していた。
フールとして新たな人生をはじめた男は「種付け師」となってヤりまくる生活を送ることに!
※♡喘ぎあり
※数字の後に♡:R-18シーンあり ♥:中出しあり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる