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第26話この異世界で俺は自分の立場を自覚する……
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ソファに腰かている俺に、レイドが泣きそうな顔でだきついてくる。
「勇者さまぁ! どうかこの私を、『ドラゴンブレス』をお助けくださいぃ」
「ちょ、ちょっとレイドさん、どうしたんですか? 話を聞きますから、その呼び方はやめてください」
知り合いに「勇者様」なんて呼ばれるのは気恥ずかしい。背中がムズムズする……。
「そ、そうか。じゃあ、改めてユージに頼みがあるんだ。うちのギルマスになってくれ!」
「なんで、いきなりそうなるんすか!?」
「レイドちょっと落ち着きなよ。ユージ君も困ってるよ」
スキルバがレイドをたしなめる。
「私たちにも分かるように説明して」
「あ、ああ。悪かったな。実はよ――」
クレアの要求に応じて、レイドが話し始めた。
ガーゴイルの襲撃により、町は商店を含め70棟が全壊するという甚大な被害をこうむった。一般人の死亡者が出なかったことは不幸中の幸いである。レイドがマスターを務める『ドラゴンブレス』もまた、深刻な状況に陥っていた。今回の戦闘により、メンバーの半数が死亡、さらに半数が重軽傷を負い、まともに活動できる者がほとんど残っていないと言う。そこで勇者である俺にギルマスを頼み、ギルド再建の手助けをしてほしいそうだ。
国から認められたわけじゃないから、正確には俺まだ勇者じゃないんだけどね……。
「そうね。元冒険者の勇者は、皆自分のギルドを持っているし、いい機会だから引き受けてあげたら?」
スキルバの助言に、レイドが期待の眼差しを俺に向ける。
「いやあ、その……」
「分かってる! 勇者がこんな田舎町のギルマスなんてふさわしくないのは承知の上だ」
「違うんです、レイドさん」
「え? 違う?」
俺の言葉にレイドが首をかしげる。
「メンバーのみんなは、レイドさんを信頼し尊敬してます。今回の戦闘でレイドさんたちを見ていて思いました」
「えっ、いやまあ」
レイドが照れながら頭をかく。
「ただ単に、ランクの高い人間が上に立てばいいとは思いません。大事なのは、レイドさんとメンバーの方たちみたいなチームワークだと思います」
「確かにそれは、ユージの言う通りだが……」
「半数のメンバーはケガが治れば復帰できるんですよね? スキルバさん、鑑定用に採取した俺の精液でポーションはどれくらい作れますか?」
「ユージの精液なら、10人分くらいは作れるかな。あと3発出してくれたら、メンバー全員を全回復できるポーションが用意できるよ」
あと3発……。
クララに4発も出してしまったことを激しく後悔する。
「いいのか? ランクLRの精液なんて、すげぇ貴重なモンを。俺たちのために……」
「ギルマスの話は受けることできないけど、それ以外で俺にできることがあれば、なんでも協力しますよ。死戦を共にくぐり抜けた仲間じゃないですか」
「うぉぉぉぉ! ユージィィィっ。お前こそ真の勇者だぁぁぁ!」
レイドが涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして俺に抱き着いた。
「それじゃユージ君、行きましょうか。最高級ポーションちゃっちゃと作っちゃいましょ」
「あ、はい」
抱き着くレイドを引き離して立ち上がる。
「さあ、私たちも仕事にとりかかりましょ。クレア、お店はお願いね」
「ええ、まかせてちょうだい」
クララとクレアも自分たちの日常へ戻っていく。
自分の立場が昨日と一変したことに戸惑いを覚えつつ、それでも人の役に立てることに喜びを感じながら、俺はスキルバと一緒に店をあとにした。
「勇者さまぁ! どうかこの私を、『ドラゴンブレス』をお助けくださいぃ」
「ちょ、ちょっとレイドさん、どうしたんですか? 話を聞きますから、その呼び方はやめてください」
知り合いに「勇者様」なんて呼ばれるのは気恥ずかしい。背中がムズムズする……。
「そ、そうか。じゃあ、改めてユージに頼みがあるんだ。うちのギルマスになってくれ!」
「なんで、いきなりそうなるんすか!?」
「レイドちょっと落ち着きなよ。ユージ君も困ってるよ」
スキルバがレイドをたしなめる。
「私たちにも分かるように説明して」
「あ、ああ。悪かったな。実はよ――」
クレアの要求に応じて、レイドが話し始めた。
ガーゴイルの襲撃により、町は商店を含め70棟が全壊するという甚大な被害をこうむった。一般人の死亡者が出なかったことは不幸中の幸いである。レイドがマスターを務める『ドラゴンブレス』もまた、深刻な状況に陥っていた。今回の戦闘により、メンバーの半数が死亡、さらに半数が重軽傷を負い、まともに活動できる者がほとんど残っていないと言う。そこで勇者である俺にギルマスを頼み、ギルド再建の手助けをしてほしいそうだ。
国から認められたわけじゃないから、正確には俺まだ勇者じゃないんだけどね……。
「そうね。元冒険者の勇者は、皆自分のギルドを持っているし、いい機会だから引き受けてあげたら?」
スキルバの助言に、レイドが期待の眼差しを俺に向ける。
「いやあ、その……」
「分かってる! 勇者がこんな田舎町のギルマスなんてふさわしくないのは承知の上だ」
「違うんです、レイドさん」
「え? 違う?」
俺の言葉にレイドが首をかしげる。
「メンバーのみんなは、レイドさんを信頼し尊敬してます。今回の戦闘でレイドさんたちを見ていて思いました」
「えっ、いやまあ」
レイドが照れながら頭をかく。
「ただ単に、ランクの高い人間が上に立てばいいとは思いません。大事なのは、レイドさんとメンバーの方たちみたいなチームワークだと思います」
「確かにそれは、ユージの言う通りだが……」
「半数のメンバーはケガが治れば復帰できるんですよね? スキルバさん、鑑定用に採取した俺の精液でポーションはどれくらい作れますか?」
「ユージの精液なら、10人分くらいは作れるかな。あと3発出してくれたら、メンバー全員を全回復できるポーションが用意できるよ」
あと3発……。
クララに4発も出してしまったことを激しく後悔する。
「いいのか? ランクLRの精液なんて、すげぇ貴重なモンを。俺たちのために……」
「ギルマスの話は受けることできないけど、それ以外で俺にできることがあれば、なんでも協力しますよ。死戦を共にくぐり抜けた仲間じゃないですか」
「うぉぉぉぉ! ユージィィィっ。お前こそ真の勇者だぁぁぁ!」
レイドが涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして俺に抱き着いた。
「それじゃユージ君、行きましょうか。最高級ポーションちゃっちゃと作っちゃいましょ」
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「さあ、私たちも仕事にとりかかりましょ。クレア、お店はお願いね」
「ええ、まかせてちょうだい」
クララとクレアも自分たちの日常へ戻っていく。
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