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第16話この異世界で初めてモンスターに遭遇した……
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レイドたち『ドラゴンブレス』のメンバーが走っていく方向を、クレアが無言で見つめる。
「あの通り、ローザの店があるほうよ!」
クレアは動揺していた。
たしかに、あの通りの先にローザの武具店がある。ローザとエリーは無事に避難できているのだろうか?
「俺、見てきます! クレアさんは店に戻っていて」
俺はローザの武具店に向かって走り出した。
多くの住人たちが「助けて」と叫びながら中央広場に向かって走ってくる。突如出現したモンスターにより、町はパニックに陥っていた。思うように前へ進めない。俺は人の流れに逆流する形で、必死に前へ足を運んだ。俺のすぐそばで、小さな男の子がつまづきその場に倒れた。母親が男の子を抱き起そうとするが、激しく人にぶつかり、なかなか立ち上がることができない。
「大丈夫ですか? さあ、こっちへ」
俺は母子の手をとり、通りの脇に避難した。
「ありがとうございます。本当にありがとうございます」
母親は何度も頭を下げた。小さな男の子は震えながら、母親の足にギュッとしがみついていた。
「モンスターは追いかけてきてるんですか?」
「いえ、今は『ドラゴンブレス』の冒険者が食い止めてくれれいます」
レイドたちが戦っているんだ。
「武具店のローザとエリーを見ませんでしたか?」
「すみません。私たちも逃げるのに精いっぱいで、そこまでは……」
「わかりました。気を付けて避難してくださいね」
母親は再びお礼を言い、子供の手をとり歩き始めた。別れ際、小さな男の子が「お兄ちゃん、ありがとう」と声をかけてくれた。俺は笑顔でうなずき、群衆を押し分け走り出した。
ローザの武具店が見えた。ローザとエリーの姿は確認できない。武具店の先に『ドラゴンブレス』のメンバーが見える。
「皆さん、大丈夫ですか? モンスターは?」
「お、おぉ。そ、それが……」
メンバーの1人が指さす方向を見るが、目の前の大きな男たちに視界をさえぎられて確認できない。
「ちょっと、すみません」
俺はさらに前へ進んだ。
男たちを押し分け、その先の光景を目にして俺は絶句した。
全長3メートルもありそうな黒い巨大なモンスター。体は黒くコウモリのような羽をたずさえている。その異様な形態のモンスターに剣を構えて対峙するレイドは、全身血まみれで、すでに息も上がっていた。モンスターのすぐ後ろにはローザとエリーが抱き合いうずくまっている。
「この町ナンバー1冒険者の力は、こんなものか?」
うわっ、しゃべった。モンスターって話せるのか?
「はぁ、はぁ……ぶっ殺す」
レイドが剣を振り上げモンスターに向かっていく。
モンスターの鋭いかぎ爪が剣をはじき返し、レイドが吹き飛ばされた。モンスターがゆっくりレイドに近づく。
「おい! コウモリ野郎!」
俺はとっさに飛び出し、倒れているレイドとモンスターの間へ入った。
モンスターの不気味な目が、俺を見下ろす。
「バカヤロー! 何考えてんだ。こいつはネームドだ。お前のかなう相手じゃねぇ。さっさと逃げろ」
レイドが上体を起こして声をふりしぼる。
「レイドさん俺との約束、覚えてますよね? ここで死んだら、レイドさん嘘つきになりますよ!」
俺はチラリとローザたちの方へ視線を送り、レイドに目配せした。
「誰が死ぬかよ。お前に嘘つき呼ばわりされる気はねぇ!」
レイドがニッと笑ってこたえた。
「おい、コウモリ野郎! 俺はランクLRの雄二だ。レジェンドの力を見せてやる! かかってこいっ」
俺はモンスターに罵倒を浴びせ続けた。ローザたちからモンスターを少しでも遠ざけるように誘導する。
「貴様がレジェンドだと?」
モンスターが興味を示し、俺を食い入るように見つめながら間合いを詰めてきた。
顔気持ち悪ぃ。レイドよりでかいよ……俺まるごしなのに、かぎ爪とか反則だろ。怖いよぉぉぉ。
「あの通り、ローザの店があるほうよ!」
クレアは動揺していた。
たしかに、あの通りの先にローザの武具店がある。ローザとエリーは無事に避難できているのだろうか?
「俺、見てきます! クレアさんは店に戻っていて」
俺はローザの武具店に向かって走り出した。
多くの住人たちが「助けて」と叫びながら中央広場に向かって走ってくる。突如出現したモンスターにより、町はパニックに陥っていた。思うように前へ進めない。俺は人の流れに逆流する形で、必死に前へ足を運んだ。俺のすぐそばで、小さな男の子がつまづきその場に倒れた。母親が男の子を抱き起そうとするが、激しく人にぶつかり、なかなか立ち上がることができない。
「大丈夫ですか? さあ、こっちへ」
俺は母子の手をとり、通りの脇に避難した。
「ありがとうございます。本当にありがとうございます」
母親は何度も頭を下げた。小さな男の子は震えながら、母親の足にギュッとしがみついていた。
「モンスターは追いかけてきてるんですか?」
「いえ、今は『ドラゴンブレス』の冒険者が食い止めてくれれいます」
レイドたちが戦っているんだ。
「武具店のローザとエリーを見ませんでしたか?」
「すみません。私たちも逃げるのに精いっぱいで、そこまでは……」
「わかりました。気を付けて避難してくださいね」
母親は再びお礼を言い、子供の手をとり歩き始めた。別れ際、小さな男の子が「お兄ちゃん、ありがとう」と声をかけてくれた。俺は笑顔でうなずき、群衆を押し分け走り出した。
ローザの武具店が見えた。ローザとエリーの姿は確認できない。武具店の先に『ドラゴンブレス』のメンバーが見える。
「皆さん、大丈夫ですか? モンスターは?」
「お、おぉ。そ、それが……」
メンバーの1人が指さす方向を見るが、目の前の大きな男たちに視界をさえぎられて確認できない。
「ちょっと、すみません」
俺はさらに前へ進んだ。
男たちを押し分け、その先の光景を目にして俺は絶句した。
全長3メートルもありそうな黒い巨大なモンスター。体は黒くコウモリのような羽をたずさえている。その異様な形態のモンスターに剣を構えて対峙するレイドは、全身血まみれで、すでに息も上がっていた。モンスターのすぐ後ろにはローザとエリーが抱き合いうずくまっている。
「この町ナンバー1冒険者の力は、こんなものか?」
うわっ、しゃべった。モンスターって話せるのか?
「はぁ、はぁ……ぶっ殺す」
レイドが剣を振り上げモンスターに向かっていく。
モンスターの鋭いかぎ爪が剣をはじき返し、レイドが吹き飛ばされた。モンスターがゆっくりレイドに近づく。
「おい! コウモリ野郎!」
俺はとっさに飛び出し、倒れているレイドとモンスターの間へ入った。
モンスターの不気味な目が、俺を見下ろす。
「バカヤロー! 何考えてんだ。こいつはネームドだ。お前のかなう相手じゃねぇ。さっさと逃げろ」
レイドが上体を起こして声をふりしぼる。
「レイドさん俺との約束、覚えてますよね? ここで死んだら、レイドさん嘘つきになりますよ!」
俺はチラリとローザたちの方へ視線を送り、レイドに目配せした。
「誰が死ぬかよ。お前に嘘つき呼ばわりされる気はねぇ!」
レイドがニッと笑ってこたえた。
「おい、コウモリ野郎! 俺はランクLRの雄二だ。レジェンドの力を見せてやる! かかってこいっ」
俺はモンスターに罵倒を浴びせ続けた。ローザたちからモンスターを少しでも遠ざけるように誘導する。
「貴様がレジェンドだと?」
モンスターが興味を示し、俺を食い入るように見つめながら間合いを詰めてきた。
顔気持ち悪ぃ。レイドよりでかいよ……俺まるごしなのに、かぎ爪とか反則だろ。怖いよぉぉぉ。
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