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第10話この異世界は防具職人まで美人らしい……
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エリーに手を引かれて到着した武具店はスキルバの薬屋とは違い、こじんまりとした小さな店だった。
「お母さん、ただいまっ」
エリーが扉を開くと同時に元気な声で母親に声をかける。
「お帰りなさい。あら、その方は?」
「このお兄ちゃん、勇者様だよ! レジェンドなの!」
エリーが興奮気味に早口で答える。
ローザはきょとんとした顔で、娘と俺を交互に見つめた。
まあ当然の反応だよな。困ってるところに都合よくランクLRの勇者様登場なんてありえないしな……
「えっと、エリーと中央広場で会いまして。俺、雄二といいます。困っている様子だったので話を聞いていたんです。それで俺が、お母さんからも話を聞こうかと言いまして」
「あぁ、そういうことね。娘が迷惑をかけてごめんなさいね。母親のローザです」
ローザが頭を下げた。
「いえいえ、俺が勝手に言い出したことなんで。エリーは何も悪くないんです。武具とかもついでに見せてもらいたいんで、迷惑でなければ話も聞かせてもらえませんか?」
「では、工房へどうぞ」
ローザは快く奥の工房へ案内してくれた。エリーは子供なりに空気を察し、気を使ったのか自分の部屋へ戻っていった。
ローザはエリーの母親にしてはずいぶん若く見える。早くに結婚したのだろうか?武具職人という仕事柄、手や腕は一般女性よりも引き締まり、たくましさを感じる。身長は162センチの俺より少し高く、くびれたウェストからツンと突き出したヒップラインがとても美しい。顔立ちも端正で、綺麗なお姉さん系である。母親似のエリーも、大きくなったらきっとローザみたいな美人さんになるのだろう。
「店頭に武具は置かないんですか?」
「実は今、武具の修理しかやってなくて、新しいのは作ってないの」
ローザがすまなそうな顔で答える。
なるほど、エリーが言っていたのはこういうことか。営業妨害にあって武具作成に必要な魔力源である精液が仕入れできない。仕方なく武具のメンテナンス業務だけで収入を得ているというところだろう。
「エリーから少し聞いたんですが、ギルドから嫌がらせを受けているとか?」
「ええ、『ドラゴンブレス』ね。あそこのギルマスは独占欲が強いの。私が他の冒険者相手に商売するのが気に入らないのよ。主人が無くなってから、嫌がらせがどんどんエスカレートしていって……」
ローザは両手を胸元に当て、少し震えていた。
娘と2人だけで、さぞ心細く怖い思いをしたのだろう。初対面の印象は娘を守りながら職人もこなす気丈な女性に感じたが、こうして話してみるとローザも普通の女性なのだと改めて感じた。
「あの、もしかして『ドラゴンブレス』のマスターって、ローザさんのこと……」
「ええ、昔私にちょっかい出そうとして、主人がこっぴどく懲らしめたことがあるの。主人はこの町一番の冒険者だったから」
ローザが亡くなったご主人をしのぶかのように寂しげな目をする。
やはり『ドラゴンブレス』のマスターはローザに横恋慕していたのだ。そしてローザのご主人が亡くなったのを機に、営業妨害を始めた。ギルドの専属武具職人の話は建前で、おそらくは好きな女を手に入れたいというのが本音なのだろう。問題の本質が色恋沙汰となると、単なる嫌がらせや営業妨害にとどまらず、もっとやっかいな話だ。到底、俺一人でどうにかできる問題ではない。
クレアとスキルバに協力をあおぐしか方法はないな……。
俺が問題解決の道筋を試行錯誤している目の前で、急にローザがふらりとよろめいた。
「お母さん、ただいまっ」
エリーが扉を開くと同時に元気な声で母親に声をかける。
「お帰りなさい。あら、その方は?」
「このお兄ちゃん、勇者様だよ! レジェンドなの!」
エリーが興奮気味に早口で答える。
ローザはきょとんとした顔で、娘と俺を交互に見つめた。
まあ当然の反応だよな。困ってるところに都合よくランクLRの勇者様登場なんてありえないしな……
「えっと、エリーと中央広場で会いまして。俺、雄二といいます。困っている様子だったので話を聞いていたんです。それで俺が、お母さんからも話を聞こうかと言いまして」
「あぁ、そういうことね。娘が迷惑をかけてごめんなさいね。母親のローザです」
ローザが頭を下げた。
「いえいえ、俺が勝手に言い出したことなんで。エリーは何も悪くないんです。武具とかもついでに見せてもらいたいんで、迷惑でなければ話も聞かせてもらえませんか?」
「では、工房へどうぞ」
ローザは快く奥の工房へ案内してくれた。エリーは子供なりに空気を察し、気を使ったのか自分の部屋へ戻っていった。
ローザはエリーの母親にしてはずいぶん若く見える。早くに結婚したのだろうか?武具職人という仕事柄、手や腕は一般女性よりも引き締まり、たくましさを感じる。身長は162センチの俺より少し高く、くびれたウェストからツンと突き出したヒップラインがとても美しい。顔立ちも端正で、綺麗なお姉さん系である。母親似のエリーも、大きくなったらきっとローザみたいな美人さんになるのだろう。
「店頭に武具は置かないんですか?」
「実は今、武具の修理しかやってなくて、新しいのは作ってないの」
ローザがすまなそうな顔で答える。
なるほど、エリーが言っていたのはこういうことか。営業妨害にあって武具作成に必要な魔力源である精液が仕入れできない。仕方なく武具のメンテナンス業務だけで収入を得ているというところだろう。
「エリーから少し聞いたんですが、ギルドから嫌がらせを受けているとか?」
「ええ、『ドラゴンブレス』ね。あそこのギルマスは独占欲が強いの。私が他の冒険者相手に商売するのが気に入らないのよ。主人が無くなってから、嫌がらせがどんどんエスカレートしていって……」
ローザは両手を胸元に当て、少し震えていた。
娘と2人だけで、さぞ心細く怖い思いをしたのだろう。初対面の印象は娘を守りながら職人もこなす気丈な女性に感じたが、こうして話してみるとローザも普通の女性なのだと改めて感じた。
「あの、もしかして『ドラゴンブレス』のマスターって、ローザさんのこと……」
「ええ、昔私にちょっかい出そうとして、主人がこっぴどく懲らしめたことがあるの。主人はこの町一番の冒険者だったから」
ローザが亡くなったご主人をしのぶかのように寂しげな目をする。
やはり『ドラゴンブレス』のマスターはローザに横恋慕していたのだ。そしてローザのご主人が亡くなったのを機に、営業妨害を始めた。ギルドの専属武具職人の話は建前で、おそらくは好きな女を手に入れたいというのが本音なのだろう。問題の本質が色恋沙汰となると、単なる嫌がらせや営業妨害にとどまらず、もっとやっかいな話だ。到底、俺一人でどうにかできる問題ではない。
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