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第19章 シエロ殺処分

第122話 夢の終わり

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すると僕たちの背後から聞き覚えのある大声がした。

「海崎さんっ」

 海崎さんは振り向くとその大声の主、ムネさんに返事をした。

「おうムネ。ちっと見ない間にまた少し太ったんじゃねえか」

「い、いやあ、ははは…… どうも、この間ぶりです」

 苦笑いをしたムネさんはすぐに表情を硬くする。空さんと同じような表情だ。

「で、今日は」

「ああ? んん、こいつが是非コレドールシエロを見に来いって言うもんだからよ」

「空が? お前またっ」

「いいんだいいんだ、気にしちゃいねえよ。それにいいものが見れたしな」

「……シエロですか?」

「ああ、こいつ本当にすっかりおとなしくなっちまったじゃねえか。借りてきた猫ってのはこのことだな。よっぽどここの生活が性に合ったんだろうよ」

「いやあ、はは……」

「それと、もちろんあんたのおかげだ。ありがとうな」

 海崎さんが空さんに向かってそう言って初めて目を細める。空さんは海崎さんに応えるように小さくお辞儀をした。

「さて、と……」

 と言ってハンチングを被り直した海崎さんはシエロと向き合いぽつりと呟く。

「お前と俺、一緒にいい夢見たなあ」

 シエロは海崎さんに顔を近づけ鼻をひくひくさせる。

「俺の夢あもう終いだ。せいぜい長生きしろよお」

 海崎さんはうれいをたたえた笑みを浮かべながらシエロの鼻梁びりょうをそっとてのひらで叩いた。


 この3日後、シエロは正式に空さんのものになった。


【次回】
第123話 穏やかな日々、突然の異変
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