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第17章 空の覚悟
第90話 砕けた深紅のクレパスと空
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廃倉庫に向かう途中で、僕のカンテラが不吉なものを照らし出す。僕の足元に真っ赤なクレパスが踏みつけられ砕かれているのを見つけた。まるで血のようだった。僕は鳥肌が立った。
「大城さん」
僕の足元を見た大城さんも絶句した。間違いない。空さんは何かトラブルに巻き込まれた。クレパスを踏みつけた足跡は男物のごつくて大きい作業靴だった。誰だ。いや間違いない。西岡と川東に違いない。僕の心拍数は急速に上昇し足取りも早まる。大城さんも僕と並んで無言で廃倉庫へと向かった。
廃倉庫の割れ窓から中を覗いてみると、暗がりの中確かに4~5人の男たちがいる。いずれも屈強で喧嘩なれしてそうだ。
だがそこにいてはいけない人物を僕らは見つけてしまった。
「よお、空ちゃん。こないだはずいぶんと舐めた真似してくれたな? オレ傷ついちゃったよー」
ふざけた声は川東のものだ。その後ろで腕を組みながらにやついているのはきっと西岡だろう。そのほか2~3人の男がいるが暗くてよくわからない。
「オレたちこれからちょっくら忙しくなるから、空ちゃんと遊ぶのはこの後にしような。な? 楽しみだろ?」
「誰がっ」
空さんは川東を平手打ちした、が空さんの細い手首は川東の手で難なくつかまれてしまう。空さんはそれにもめげずに今度は逆の手で平手打ちしようとしたがこれもあっさりと掴まれ、空さんの両手は川東の左手一本でがっちり掴まれてしまった。
「くっ」
「なあ空ちゃん。イケた男の女あしらい術って知ってる?」
川東が不穏な声を響かせる。
「2~3発、どんな聞き分けの悪りい女でも15発もぶっとばしゃ、みいんな自分の立場をわきまえてなんでも聞いてくれるようになんのよ」
下卑た笑みを浮かべる川東。
「そうよ、どんなことだってな。ま、これから空ちゃんも自分の身体でそれを試してみるんだけど。なあ、ますます楽しみになってきたろ」
空さんは憎悪の目で川東をにらむ。ギラギラした視線同士が交錯する。
僕はもう我慢ならなかった。怒りが沸点を超えた。僕は何も考えずに廃倉庫の入り口に向かって走り出す。
「おいまてっ! 原沢が応援を呼ぶまで待てっ」
僕は何も言わずに倉庫に飛び込んだ。
連中は驚いて僕の方を見たが僕一人しかいないのを見ると肩の力を抜いた。
「よお、騎士役ご苦労さん。ヘタレの簑島よお」
「ひろ君っ! ひろ君だめ逃げてっ! 私なんてどうなってもいいからっ!」
必死になって僕を止めようとする空さんの声。
「いやいや、そういうわけにはいきませんよ」
僕は軽口を叩いたつもりだったが、声は上ずっていて失敗したようだ。
「大城さん」
僕の足元を見た大城さんも絶句した。間違いない。空さんは何かトラブルに巻き込まれた。クレパスを踏みつけた足跡は男物のごつくて大きい作業靴だった。誰だ。いや間違いない。西岡と川東に違いない。僕の心拍数は急速に上昇し足取りも早まる。大城さんも僕と並んで無言で廃倉庫へと向かった。
廃倉庫の割れ窓から中を覗いてみると、暗がりの中確かに4~5人の男たちがいる。いずれも屈強で喧嘩なれしてそうだ。
だがそこにいてはいけない人物を僕らは見つけてしまった。
「よお、空ちゃん。こないだはずいぶんと舐めた真似してくれたな? オレ傷ついちゃったよー」
ふざけた声は川東のものだ。その後ろで腕を組みながらにやついているのはきっと西岡だろう。そのほか2~3人の男がいるが暗くてよくわからない。
「オレたちこれからちょっくら忙しくなるから、空ちゃんと遊ぶのはこの後にしような。な? 楽しみだろ?」
「誰がっ」
空さんは川東を平手打ちした、が空さんの細い手首は川東の手で難なくつかまれてしまう。空さんはそれにもめげずに今度は逆の手で平手打ちしようとしたがこれもあっさりと掴まれ、空さんの両手は川東の左手一本でがっちり掴まれてしまった。
「くっ」
「なあ空ちゃん。イケた男の女あしらい術って知ってる?」
川東が不穏な声を響かせる。
「2~3発、どんな聞き分けの悪りい女でも15発もぶっとばしゃ、みいんな自分の立場をわきまえてなんでも聞いてくれるようになんのよ」
下卑た笑みを浮かべる川東。
「そうよ、どんなことだってな。ま、これから空ちゃんも自分の身体でそれを試してみるんだけど。なあ、ますます楽しみになってきたろ」
空さんは憎悪の目で川東をにらむ。ギラギラした視線同士が交錯する。
僕はもう我慢ならなかった。怒りが沸点を超えた。僕は何も考えずに廃倉庫の入り口に向かって走り出す。
「おいまてっ! 原沢が応援を呼ぶまで待てっ」
僕は何も言わずに倉庫に飛び込んだ。
連中は驚いて僕の方を見たが僕一人しかいないのを見ると肩の力を抜いた。
「よお、騎士役ご苦労さん。ヘタレの簑島よお」
「ひろ君っ! ひろ君だめ逃げてっ! 私なんてどうなってもいいからっ!」
必死になって僕を止めようとする空さんの声。
「いやいや、そういうわけにはいきませんよ」
僕は軽口を叩いたつもりだったが、声は上ずっていて失敗したようだ。
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