62 / 160
第14章 グランピング
第61話 決別、引導
しおりを挟む
空さんが息を呑む声がした。急に身体をこちらに向けるとどこか必死に、僕にすがるような眼で見つめる。
「違う、違うの。ひろ君何か誤解してる」
「何も誤解してません。僕は見てきた通りのことを言っているだけです。僕はもうあそこには行きません。あそこには不要になった人間なんですから」
僕は固い声を発し空さんを拒絶した。
「そんなことない、そんなことないのっ待ってっ、あれはっ……」
僕は畳みかける。
「これから空さんを苦しめている何かについて話したいことがあったら…… もう僕にではなく大城さんに言って下さい」
「違うのっ、ねっそれは違うのっ」
空さんは、顔を覆う。焚火の煙が目に入ったのか涙を拭う。
そして目に涙を浮かべ正面を向き、何かを決意したような顔で僕に何かを言おうとした時。
「はいカットでーす」
「お疲れ様ですお疲れ様ですー」
「お疲れ様ですー」
突然炊事場が騒然となる。
「あの、このさっき作ってたお野菜の入ったかごどうしましたー?」
空さんがテレビスタッフに呼ばれると
「ここ、新しいプレート持って来てもらえませんかあ」
僕も別のテレビクルーに呼ばれる。
このあとも僕たちは本来の業務とは違う、結局のところTVクルーの雑用係をさせられた。作業中ずっと空さんは鼻炎でも起こしたように真っ赤になった鼻をしきりと啜っていた。
朝のお勤めも近い頃うつらうつらしながら僕は考えていた。あの時空さんは僕に何を言おうとしていたのか。
きっと僕に引導を渡す言葉だったに違いない。それならもっと早く言ってくれればいっそ気が楽なのに。
【次回】
第62話 空行方不明
「違う、違うの。ひろ君何か誤解してる」
「何も誤解してません。僕は見てきた通りのことを言っているだけです。僕はもうあそこには行きません。あそこには不要になった人間なんですから」
僕は固い声を発し空さんを拒絶した。
「そんなことない、そんなことないのっ待ってっ、あれはっ……」
僕は畳みかける。
「これから空さんを苦しめている何かについて話したいことがあったら…… もう僕にではなく大城さんに言って下さい」
「違うのっ、ねっそれは違うのっ」
空さんは、顔を覆う。焚火の煙が目に入ったのか涙を拭う。
そして目に涙を浮かべ正面を向き、何かを決意したような顔で僕に何かを言おうとした時。
「はいカットでーす」
「お疲れ様ですお疲れ様ですー」
「お疲れ様ですー」
突然炊事場が騒然となる。
「あの、このさっき作ってたお野菜の入ったかごどうしましたー?」
空さんがテレビスタッフに呼ばれると
「ここ、新しいプレート持って来てもらえませんかあ」
僕も別のテレビクルーに呼ばれる。
このあとも僕たちは本来の業務とは違う、結局のところTVクルーの雑用係をさせられた。作業中ずっと空さんは鼻炎でも起こしたように真っ赤になった鼻をしきりと啜っていた。
朝のお勤めも近い頃うつらうつらしながら僕は考えていた。あの時空さんは僕に何を言おうとしていたのか。
きっと僕に引導を渡す言葉だったに違いない。それならもっと早く言ってくれればいっそ気が楽なのに。
【次回】
第62話 空行方不明
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
体裁のために冤罪を着せられ婚約破棄されたので復讐した結果、泣いて「許してくれ!」と懇願されていますが、許すわけないでしょう?
水垣するめ
恋愛
パーティ会場、観衆が見守る中、婚約者のクリス・メリーズ第一王子はいきなり婚約破棄を宣言した。
「アリア・バートン! お前はニア・フリートを理由もなく平民だからと虐め、あまつさえこのように傷を負わせた! そんな女は俺の婚約者に相応しくない!」
クリスの隣に立つニアという名の少女はクリスにしがみついていた。
彼女の頬には誰かに叩かれたように赤く腫れており、ついさっき誰かに叩かれたように見えた。
もちろんアリアはやっていない。
馬車で着いてからすぐに会場に入り、それからずっとこの会場にいたのでそんなことを出来るわけが無いのだ。
「待って下さい! 私はそんなことをしていません! それに私はずっとこの会場にいて──」
「黙れ! お前の話は信用しない!」
「そんな無茶苦茶な……!」
アリアの言葉はクリスに全て遮られ、釈明をすることも出来ない。
「俺はこいつを犯罪者として学園から追放する! そして新しくこのニアと婚約することにした!」
アリアは全てを悟った。
クリスは体裁のためにアリアに冤罪を被せ、合法的に婚約を破棄しようとしているのだ。
「卑怯な……!」
アリアは悔しさに唇を噛み締める。
それを見てクリスの傍らに立つニアと呼ばれた少女がニヤリと笑った。
(あなたが入れ知恵をしたのね!)
アリアは全てニアの計画通りだったことを悟る。
「この犯罪者を会場から摘み出せ!」
王子の取り巻きがアリアを力づくで会場から追い出す。
この時、アリアは誓った。
クリスとニアに絶対に復讐をすると。
そしてアリアは公爵家としての力を使い、クリスとニアへ復讐を果たす。
二人が「許してくれ!」と泣いて懇願するが、もう遅い。
「仕掛けてきたのはあなた達でしょう?」
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界で迷子を保護したら懐かれました
稲刈 むぎ
恋愛
恋人いない歴=年齢だった私(宮内 稔)は、気がついたら高校1年の時の姿で知らない場所にいた。
運良く森で暮らす老夫婦に拾ってもらうが、老夫婦との幸せな生活も、2人の寿命であっさりと終わってしまう。
老夫婦が残してくれた家や畑で細々と生活していたある日、行き倒れている少年を拾う。
無口でおとなしい少年(ノルック)と打ち解けてきたと思ったある日、少年は姿を消しーーー
“僕の帰る家はここです。
あなたのそばにいるのに相応しくなるためにあなたのそばを離れました。
もう2度と離れたりしません。”
おとなしかった少年が執着溺愛魔術師になって再び姿を現すと、稔は徐々に世界の使命に巻き込まれていく。
執着溺愛魔術師(ノルック)×世話焼き転移者(ミノリ)
※ヤンデレ要素がありますので苦手な方は逃げてください。
※完結しました。読み続けて下さった方ありがとうございます!
5度目の求婚は心の赴くままに
しゃーりん
恋愛
侯爵令息パトリックは過去4回、公爵令嬢ミルフィーナに求婚して断られた。しかも『また来年、求婚してね』と言われ続けて。
そして5度目。18歳になる彼女は求婚を受けるだろう。彼女の中ではそういう筋書きで今まで断ってきたのだから。
しかし、パトリックは年々疑問に感じていた。どうして断られるのに求婚させられるのか、と。
彼女のことを知ろうと毎月誘っても、半分以上は彼女の妹とお茶を飲んで過ごしていた。
悩んだパトリックは5度目の求婚当日、彼女の顔を見て決意をする、というお話です。
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
【完結】似て非なる双子の結婚
野村にれ
恋愛
ウェーブ王国のグラーフ伯爵家のメルベールとユーリ、トスター侯爵家のキリアムとオーランド兄弟は共に双子だった。メルベールとユーリは一卵性で、キリアムとオーランドは二卵性で、兄弟という程度に似ていた。
隣り合った領地で、伯爵家と侯爵家爵位ということもあり、親同士も仲が良かった。幼い頃から、親たちはよく集まっては、双子同士が結婚すれば面白い、どちらが継いでもいいななどと、集まっては話していた。
そして、図らずも両家の願いは叶い、メルベールとキリアムは婚約をした。
ユーリもオーランドとの婚約を迫られるが、二組の双子は幸せになれるのだろうか。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
【完結】氷の令嬢は王子様の熱で溶かされる
花草青依
恋愛
"氷の令嬢"と揶揄されているイザベラは学園の卒業パーティで婚約者から婚約破棄を言い渡された。それを受け入れて帰ろうとした矢先、エドワード王太子からの求婚を受ける。エドワードに対して関心を持っていなかったイザベラだが、彼の恋人として振る舞ううちに、イザベラは少しずつ変わっていく。/拙作『捨てられた悪役令嬢は大公殿下との新たな恋に夢を見る』と同じ世界の話ですが、続編ではないです。王道の恋愛物(のつもり)/第17回恋愛小説大賞にエントリーしています/番外編連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる