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第14章 グランピング

第61話 決別、引導

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 空さんが息を呑む声がした。急に身体をこちらに向けるとどこか必死に、僕にすがるような眼で見つめる。

「違う、違うの。ひろ君何か誤解してる」

「何も誤解してません。僕は見てきた通りのことを言っているだけです。僕はもうあそこには行きません。あそこには不要になった人間なんですから」

 僕は固い声を発し空さんを拒絶した。

「そんなことない、そんなことないのっ待ってっ、あれはっ……」

 僕は畳みかける。

「これから空さんを苦しめている何かについて話したいことがあったら…… もう僕にではなく大城おおきさんに言って下さい」

「違うのっ、ねっそれは違うのっ」

 空さんは、顔を覆う。焚火の煙が目に入ったのか涙を拭う。

 そして目に涙を浮かべ正面を向き、何かを決意したような顔で僕に何かを言おうとした時。

「はいカットでーす」

「お疲れ様ですお疲れ様ですー」

「お疲れ様ですー」

 突然炊事場が騒然となる。

「あの、このさっき作ってたお野菜の入ったかごどうしましたー?」

 空さんがテレビスタッフに呼ばれると

「ここ、新しいプレート持って来てもらえませんかあ」

 僕も別のテレビクルーに呼ばれる。

 このあとも僕たちは本来の業務とは違う、結局のところTVクルーの雑用係をさせられた。作業中ずっと空さんは鼻炎でも起こしたように真っ赤になった鼻をしきりと啜っていた。

 朝のお勤めも近い頃うつらうつらしながら僕は考えていた。あの時空さんは僕に何を言おうとしていたのか。

 きっと僕に引導を渡す言葉だったに違いない。それならもっと早く言ってくれればいっそ気が楽なのに。


【次回】
第62話 空行方不明
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