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第82話 夢と誓いと決意

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 僕は弾かれたようにダイニングの椅子から飛び起きた。

「うわっ!」

 思わず声をあげ、更にその声に驚いて立ち上がる。茫然と辺りを見回す。おかしい。何もかもがおかしい。僕は寝間着を着てリビングのソファに座って本を読んでいた。そこで眠り込んだのか、姉が出てくる長い明晰夢を見て、そこで僕は夢の存在である姉と添い寝した。僕はその時着ていたTシャツとパンツを身に着けている。なぜ? 僕は寝ながら着替えたと言うのか? そして全然関係のないはずのダイニングでなぜ僕は寝ていた?
 はっとして僕は寝室へと走る。小さなベッドには二人の人物が寝た窪んだ形跡が残っている。姉の使っていた側の枕がへこんでいる。僕はベッドに手を入れてみた。姉が寝ていたはずの場所が温かい。まるでさっきまでここで誰かが寝ていたかのようだ。
 これは一体どういうことだ。まさか本当に姉の魂がこのうちを訪問したとでもいうのか。僕の頭はパニックに襲われていた。
 僕は姉のフォトスタンドを見る。そこには変わらず笑う姉の姿があり、そのフォトスタンドの前に一枚の紙きれがあった。僕はそれを手に取る。
「ゆーくんが姉ちゃんのいうことをなんでもきく券」とクレヨンの拙い字で書かれてあった。僕は鳥肌が立った。なんでだ。まさかもう一枚あったとでもいうのか。でもなぜ今ここにあるんだ。急いで裏を見る。

 <必ず会えるから急がない事。ゆーくんはゆーくんのしなくてはいけない事をまずはやりなさい。愛してる。心の底から愛してる。姉ちゃんより>

 と、病状が悪化する前の少し丸いが整った姉の字で書かれてあった。恐ろしくなったが、思い直す。霊界だか何だか知らないが、これは姉からのメッセージであることに違いない。もし魂と言うものがあると言うならば、この券にある様に、姉の魂との再会を待ちながら、僕は僕としてやれることをやるしかないんだ。そう思うと僕の中に突然炎の様な熱情が湧いてきた。そうだ、僕の使命はなんだ。あの病をこの世から消し去ることだ。それが姉を救えなかった僕のせめてもの償いだ。
 そう思ったらもういてもたってもいられなかった。時計を見る。六時三十一分。少し早いがいい時間だ。僕は急いで朝食を摂り医局に向かう。

 見ていてくれよ、姉さん。僕はきっと必ずこの闘いに勝利する。そうしたら向こうで僕を褒めてくれるかい?
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