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第10話 姉の熱発と僕の動揺
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翌朝
いつもよ少し早く目覚めた朝、僕に抱きついている姉を振りほどこうとしてはっとした。姉の身体が異常に熱い。僕はあわててベッドから出ると体温計を出してきて姉の腋に挟む。電子音が鳴ると体温計を見た。37.9℃。僕は血の気が引いた。
「うーん」
ようやく姉が目覚めた。寝ぼけ眼をこする。
「姉さんっ、熱がっ、熱があるんだっ、どこか体調悪いところない?」
「んー、身体がポカポカしてるう」
「そういうんじゃなくてっ、脚っ、脚はどうなのっ」
「あー、全然平気。ほれ」
姉は布団の中で横に寝たまま体操をするように脚を勢いよく上下させた。
姉の熱発はおよそ四年ぶりだった。
落ち着きはらっている姉とは対照的に僕の動揺は激しく、彩寧も見ていられないほどだったらしい。おろおろする僕を姉はなだめて、僕が通う大学の附属病院を自分一人で受診した。これ以上人に迷惑をかけたくないからだと姉は言った。
姉の体調不良はあの晩秋のように死線を彷徨うほどのものではなく、八日程度の入院で済み僕は胸をなで下ろした。歩行機能にも支障はなく職場にも無事復帰できた。
この出来事で、またこうして姉がいつこの世から消えていなくなるのか判らないことを改めて痛感した姉と僕は、機会さえあれば一緒に行動するようになっていった。おかげで大学では僕が二股をかけているという噂が途切れることはなかった。彩寧はそれに関して何も言わず普通に接してくれていた。
だが、失恋した上に詐欺の被害にあった痛手から姉はなかなか立ち直れず、かつての底抜けの陽気さや能天気でわがままな性格はしばらくは鳴りを潜めていた。僕は姉の無茶に付き合わされることが減った安堵と寂しさを同時に味わった。
いつもよ少し早く目覚めた朝、僕に抱きついている姉を振りほどこうとしてはっとした。姉の身体が異常に熱い。僕はあわててベッドから出ると体温計を出してきて姉の腋に挟む。電子音が鳴ると体温計を見た。37.9℃。僕は血の気が引いた。
「うーん」
ようやく姉が目覚めた。寝ぼけ眼をこする。
「姉さんっ、熱がっ、熱があるんだっ、どこか体調悪いところない?」
「んー、身体がポカポカしてるう」
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「あー、全然平気。ほれ」
姉は布団の中で横に寝たまま体操をするように脚を勢いよく上下させた。
姉の熱発はおよそ四年ぶりだった。
落ち着きはらっている姉とは対照的に僕の動揺は激しく、彩寧も見ていられないほどだったらしい。おろおろする僕を姉はなだめて、僕が通う大学の附属病院を自分一人で受診した。これ以上人に迷惑をかけたくないからだと姉は言った。
姉の体調不良はあの晩秋のように死線を彷徨うほどのものではなく、八日程度の入院で済み僕は胸をなで下ろした。歩行機能にも支障はなく職場にも無事復帰できた。
この出来事で、またこうして姉がいつこの世から消えていなくなるのか判らないことを改めて痛感した姉と僕は、機会さえあれば一緒に行動するようになっていった。おかげで大学では僕が二股をかけているという噂が途切れることはなかった。彩寧はそれに関して何も言わず普通に接してくれていた。
だが、失恋した上に詐欺の被害にあった痛手から姉はなかなか立ち直れず、かつての底抜けの陽気さや能天気でわがままな性格はしばらくは鳴りを潜めていた。僕は姉の無茶に付き合わされることが減った安堵と寂しさを同時に味わった。
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