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第九章

初めての夜(六)※

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「ぁ、っは……ゃ、ン……なんで……」

 浅いところをくちゅくちゅと往復するレオンハルトに、ルシアナはぐずぐずと喘ぐ。

「……返答がなかったからな。浅いほうが好みかと」
「はぁ、ッァ、は……ふ、ぁ、ンッ」

 浅いところを擦られるのも、もちろん気持ちがいい。
 レオンハルトに触れられるたびに体は敏感になっていき、彼がすることすべてが快感へと繋がっていく。

(けれど……)

 体の奥深くまでレオンハルトが欲しい。
 隙間なく繋がって、レオンハルトで満たしてほしい。
 快楽のためだけでなく、彼という存在を感じるために、もっと中をいっぱいにしてほしかった。

「どちらが好みだ? ルシアナ」

 腰から離れた手が背中を撫でる。表面をなぞるように、指先が優しく肌を這う感触に、ルシアナは吐息を震わせながら口を開く。

「……ちらも……」
「ん?」
「……どちらも、好き、です……けれど、今は……レオンハルト様で、いっぱいにしてください」

 熱に浮かされたようにぼんやりとする頭で、ルシアナは甘く乞う。
 緩い抽送も、背中を撫でていた手も止まり、寝台に静寂が落ちた。しかし、それも一瞬で、レオンハルトはすぐに腰を掴みなおすと、綻んだ隘路を満たすように、ゆっくりと腰を進めた。

(なか……いっぱい……)

 最奥を押し上げ、ぴったりと合わさった肌に、ルシアナは熱く息を吐き、満足げにレオンハルトのものを締め付ける。

「……ルシアナ」
「は――」
「愛してるっ……」
「――ぁあっ」

 再び攻め立てるように容赦なく腰を打ち付けられ、ルシアナはただ高められるまま嬌声を上げる。
 先ほど中途半端に放り出されたせいか、すぐに快感は積み重なり、一瞬のうちに高みへと導かれる。
 蕩け切った甘い声を上げながら、ルシアナはあえなく果てを迎えた。体は痙攣し、膣道はきつく締まるものの、それでもレオンハルトの抽送は止まらず、絡み付く柔襞を刺激され続ける。
 陽根のくびれが襞を削り、丸い先端が奥を穿ち、いつまでも終わらない悦楽に絶頂の高みから降りてくることができず、過ぎたる快楽にルシアナはすすり泣きにも似た嬌声を漏らすことしかできない。

「ひぅ、っぁ、あッ、さまっ……レオンハルトさまぁっああっ……!」

 ぽろぽろと涙をこぼしながら、うわ言のようにレオンハルトの名を呼ぶと、彼はぐっと腰を押し込んで動きを止めた。

「ッは、ァ、は……」

 訪れた休息に、ルシアナは大きく息を吸い込む。澄んだ夜気が肺いっぱいに広がり、ほっと息をついたのとほぼ同時で、二の腕を掴まれ体を起こされる。
 レオンハルトの足の上に座るような形になり、背中に熱い彼の体が触れる。間に挟まれた髪が汗で張り付き少々違和感があったが、それ以上にレオンハルトの体温を感じられたことが嬉しかった。
 腹側に回った腕がルシアナの体を支え、もう一方の手はルシアナの喉を撫で、そのまま顎を押し上げた。
 上がった視線の先にレオンハルトを捉え、きゅうっと中が締まる。

(好き……)

 欲望に満ちたシアンの瞳。汗に濡れた頬。荒い呼吸を繰り返す薄っすらたと開いた唇。
 彼を構成するすべてが、彼の何もかもが愛おしい。
 何も見逃したくなくて、近付いてくる彼の顔を見つめ続ける。
 いつもとは違う角度で見る彼の相貌に、胸がときめいた。
 汗に濡れ、束になった毛先ですら、胸を高鳴らせる。
 きっと、自分はもうレオンハルトなしでは生きていけない。
 そう思えてしまうほど、彼の存在、彼のもたらすもの、そのすべてが心を満たし、充足感を与えた。

(好き……レオンハルト様が好き……)

 啄むような口付けが繰り返されていくうちに、真綿に包まれた夢を見ているような心地になった。しかし、そんな幸福を詰め合わせたような気分も、レオンハルトによって一瞬で壊される。
 ルシアナの体を支えていた手が淫芽を摘まみ、今何をしていたのか、一瞬で現実に引き戻された。

「あっあっ、だめっ……レオンハルトさまっ」
「そんな風に名前を呼ばれても、余計に劣情を煽るだけだ」
「ふぁっ、あっ、ゃあっ」

 下から突き上げるように奥を抉られ、蕩けた声が絶え間なく漏れる。
 顎を持ち上げていた手はそのまま下へと滑り、胸の頂を捏ねた。

「あっ、は、っぁ、だめっ……そんなっ、いっぱいっ……あっあぁあッ」

 指に挟まれた淫芽をくにくにと弄ばれ、視界が白く塗りつぶされる。
 果てたというのに、相変わらず彼の攻めは終わらず、先ほどより深く膣奥を叩かれながら、淫芽を指の腹で擦られ、胸の頂を押し込むように潰される。
 がくがくと下肢が震え、ルシアナは顔を俯かせながら、レオンハルトの二の腕をきつく掴んだ。

「あぁっ、やぁっ、もうっ……んぁっ、またっ……!」
「いくらでもっ……気持ちよくなればいい……っ」
「ふぁっあっんんっ――!」

 きつく口を閉じ、足先を丸めながら、ルシアナは腰を跳ねさせる。
 脳が痺れ、酸欠で頭がぼうっとする。動かそうとしてないのに勝手に体がびくびくと跳ね、彼のものが抜けてしまいそうになる。
 攻められているときは、もう無理だ、と思うのに、いざ彼のものがなくなりそうになると、そのほうが嫌だった。
 そんなルシアナの想いを叶えるようにレオンハルトは淫芽と胸から手を放すと、ルシアナの体を固定するように腹に腕を回し、きつく抱き締めた。
 それで動きやすくなったのか、先ほどより突き上げが容赦なくなり、ルシアナは押し出されるように声を上げる。

「あっあっレオンハルト様っ……レオンハルトさまっ」
「っ……ルシアナっ」

 頭に顔を押し付けているのか、後頭部に熱い息がかかる。荒い呼吸が直接体に伝わり、ルシアナの呼吸も自然とそれに合わさっていく。
 一緒に高みへと昇っているのだとわかり、嬉しそうに柔襞が蠕動する。
 早く中に注いで、とでもいうように中が蠢き、後ろでレオンハルトが苦しそうに息を漏らした。

「っ……くっ、ルシアナ……!」
「あッ、っは、レオンハルトさま、ぁっ……奥っ、くださっ――ぁああッ!」
「っ、……ッ――!」

 視界の端で火花が散るのと同時に、苦しいほど強く抱き締められ、奥に熱いものが広がるのを感じた。
 体は怠く、内側がどろどろに溶かされてしまったかのように力が入らない。顔は汗や涙などの体液で濡れ、口はただ呼吸を繰り返すことしかできない。それでも、この瞬間の多幸感は凄まじく、ルシアナは静かに涙をこぼした。
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