Dream of Center Mother

弥代 楓

文字の大きさ
2 / 22
第一話 運び屋

1.「運び屋」

しおりを挟む
 予報通りの雨、小降りではあるが雨は嫌いだ。
こんな日は左の義足が軋む。
早く仕事を済ませてしまおう。幸い、今日の仕事は一件。

事務所一階のガレージに向かう。

「お、ヤマトさんこれから仕事っすか?
隣町の…ジャンク屋まで。あ、ならついでにコレの駆動系が入ってきてないか聞いてきてくれません?」

と、助手のシオンが顔を出してきた。

「おう、言っておく。」

 愛車の二輪車に跨り、事務所を出る。
型落ち気味なのは否めないが、長い事苦楽を共にしてきた相棒だ。燃費の悪さはご愛嬌。

「とはいえ、そろそろガタが来てるんだよな…」

まぁ、新調する余裕はないが。

そもそもこんな辺境じゃ、まだ動くマシンが流れてくる事自体稀だ。

大体の奴はジャンク品から部品を寄せ集めて
どうにか使える物を拵えるのだが、当然、各部品代は馬鹿にならない。
有る物を、騙し騙し使っていくしかないのが現実だ。

世知辛さを嘆いている間に雨は上がっていた。
目的地のジャンク屋はもう目と鼻の先。

「ども、ご無沙汰してます親父さん。これお届け物。」

「おお、ヤマトじゃないか!元気してたか?」

「まぁ、ぼちぼちですね。あ、そういやシオンが前のと同じやつ入ってきてないかって。」

「あぁ、それなら…」

 用件が済んだらすぐお暇する予定だったのだが、相変わらずここの店主は話が長い。気づけばかれこれ30分は彼の武勇伝を聞いている。

「…でな、だから俺ァ言ってやったのさ…そんな風に…」

「あの、すまない親父さん。俺この後も予定があって…」

「お、そいつぁスマねぇな。そんじゃ、シオンの坊主にも宜しく言っといてくれや。」

本当は予定など無いのだが、親父さんはスイッチが入ると恐ろしく饒舌で、時間が溶ける。
斯くいう俺はここ数週間、ずっと休み無しのフルタイム稼働。
正直ベッドが恋しい。すまん親父さん。

 そんなこんなで帰路を行く。
此処はかつての繁華街。
今じゃがらんどうの廃都市。

事務所から隣町までの距離は案外離れており、片道30分は掛かる。

加えて道中の治安も最悪だ。
人気のない場所では貧困層による追い剥ぎが横行しているらしい。

少しでも隙を見せたら間違いなく襲われる。

それ故に今のご時世、丸腰で移動する人間は殆ど居ないと言っても過言ではないだろう。
俺も護身用のブレードを愛車に括り付けている。

 暫く走っていると、何やら揉めているような声が聞こえてきた。正直面倒事は御免なのだが、事務所へ帰るにはこの道を通過するしかない。

「へへ…嬢ちゃんよぉ!別に取って食おうってんじゃねぇんだぜ?おじさん達はそのでけぇ荷物を譲ってくれって言ってるだけでよぉ」

「そうそう。俺らも暇じゃねぇからよ?早いとこ渡してくれると助かるんだけどなぁ?」

絵に描いたような悪漢が二人。
恐らくは廃都市に住み着いているゴロツキの類だろう。

襲われているのは少女らしい。
ここいらじゃ見ない顔だ。

真っ赤なコートを着て、お上品そうな顔立ち。
自身の身体の半分程はある大きなキャリーケースを持っている。

「……が…」

「あん?なんつった??」

「下衆共が!近寄るなと言ってるんだ!!」

ダァン、と大きな音が響いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おめでとう。社会貢献指数が上がりました。

水井伸輔(Mizui Shinsuke)
SF
「正しく」生きれば、どこまでも優しいこの国。 17歳のシュウは、社会貢献指数を高め、平穏な未来を手に入れようとしていた。しかし、システムに疑問を抱く父のランクは最低の「D」。 国家機能維持条項が発令された夜、シュウの端末に現れたのは、父の全権利を支配するための「同意」ボタンだった。 支配か、追放か。指先ひとつで決まる、親子の、そして人間の尊厳の行方。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...