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『ロックマン2』編
『ロックマン2』、どうやって遊ぶ?(1)
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会社帰りの俺―――大成 悟(たいせい さとる)は今、『遊戯大館(あそびたいかん)』という店でロックマン2をプレイしている。
この店は持ち込んだビール片手に試遊台のゲームをプレイしても注意されない近年珍しい自由な店である。
今時、自宅にファミコンがあるところは少ないのでレトロゲームが自由にプレイできるこの店の存在はサラリーマンである俺にとってもありがたい。
もちろん、エミュレータでプレイする、という方法もあるのかもしれないが、やはり実機でプレイするのが一番良いと思う。
「いらっしゃいませー!」
最近よくみかけるようになった新入りバイト店員と思われる女性に軽く会釈をして数百円分程度の駄菓子を購入後、店のちょっと奥にある試遊台に直行する。
この店では店長である遊戯 太造(あそび たいぞう)さんの粋な計らいで店にある売り物のゲームを自由に手に取り遊ぶことが出来る。
こんなサービスをしていて店の経営は大丈夫なのか?と疑問に思うことはあるが、それは客である俺が気にすることではないだろう。
そして最近の俺はもっぱら会社帰りに『遊戯大館』で昔のレトロゲームをプレイしている。
中でも最近プレイし続けているのがファミコンのロックマン2である。
ロックマン2をプレイしていると思い出す。
今あいつらはどこに居るのか?何をしているのか?
おっくせんまん♪おっくせんまん♪
思わず口ずさんでしまう。
ファミコンソフト『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』のワイリーステージのBGM「Dr.WILY STAGE 1」に対して誰かが歌詞をつけたらしく曲名を『思い出は億千万』というらしい。
かつて、ニコニコ動画でも話題になったことのある有名な曲である。
ちなみに歌い手は数多くいるものの作詞者は未だに不明らしい。
俺は今、その名曲の元ネタであるBGMを聴くために、『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』をプレイしている。
しかし、だ。全く持って進めることが出来ない。
子供の頃は何回もクリアした記憶がある。
だが大人になってプレイするとこれだ。
すっかりコツを忘れてしまっている。
ロックマンはいわば死んでコツを覚える死にゲーであり、そのコツを忘れてしまってはまた死んで覚えるしかない。
すなわち、俺の操作するロックマンは命が何個あっても足りていない。
何回死んでも諦めないのが俺の良いところ、でもあるわけだが(笑)
『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』とは、1988年にカプコンから発売された横スクロールアクションゲームで最近30周年を迎えた作品である。
ストーリーとしてはロックマンと呼ばれる正義のロボットが世界征服を狙うドクターワイリーとワイリーが開発したロボ8体を倒して世界を救うという至極単純なもの。
しかし、ロックマンの魅力はストーリーではない。あくまでそのアクション性にある。
プレイヤーはロックマンを操作して最初に8体のボスが居るステージをクリアしていく。
ステージの最後にボスが待ち受けロックマンと一騎打ち。
そのボスを倒すとロックマンが倒したボスの武器を扱えるというシステムだ。
このシステムがステージクリアのカギを握り、また各種ボスの弱点ともなりうる。
つまり、通常武器であるロックバスターでボスに勝てない場合はそのボスの弱点武器で攻めれば勝てるのだ。
いわば下手くそプレイヤーの救済措置なのだ。
「あれー、おっかしいな。何回やってもエアーマンに勝てない……」
ここ数日、会社帰りに通い詰めても、なかなか勝てないボスが居る。
―――エアーマンだ。
8体のボスのうち、フラッシュマン、メタルマン、バブルマン、クラッシュマン、クイックマンは苦戦しながらも何とか倒すことが出来た。
あとは、このエアーマンとウッドマン、そしてヒートマンさえ倒せばワイリーステージでおっくせんまん♪を聴くことが出来るのに……何回やっても倒せない。
ゲームオーバーの画面を何度みたことか。
俺は諦めずにスマホに撮っておいたパスワードを入力してコンティニューをする。
エアーマンステージを選択して再プレイ。
エアーマンステージでは油断すると風に飛ばされて落ちてしまう。
おてしまえば当然ゲームオーバー。エアーマンステージはステージの難易度も高いのだ。
「ここさえ越えれば……」
俺の操作するロックマンが谷へと落ちていく。
俺を恨むなよ、ロックマン。恨むなら俺に操作されることになった運命を恨んでくれ。
そんな馬鹿なことを考えながら何度も何度もプレイする。
「くっそー!何度やってもエアーマンのところにたどり着けない……何とかたどり着いてもエアーマンに勝てないし……」
今日は諦めて帰ろうとした時だった。
「あー、大成さん。今日もロックマン2ですか~」
後ろから聞き慣れた声が聞こえる。
この店の主である遊戯太造(あそび たいぞう)さんである。相変わらず冴えない顔をしているがこの人はゲームについての知識はかなり詳しい人なのだ。
どうやら俺と同世代らしく、たまたまゲームの話をしたときに意気投合して、それ以来、よく話しかけてくれるようになった。
「そうなんですよ~、毎日のように通っているんですが全然クリアできなくて」
「ロックマン2は初期の作品ながら、なかなかやりごたえがありますしね。私も今プレイしたらクリアできない可能性大ですよ」
そういいながら、遊戯さんはコントローラーを手に取りエアーマンステージをプレイする。
―――当然のことながら俺より上手い。
ステージのギミックをどんどんかわして進んでいく。
まるでそこにギミックがあるのを知っているかのようだ。
遊戯さんのプレイはどこか模範解答的なプレイを見ているような気分になる。
「何度もプレイして何度もゲームオーバーになってはリトライしてまたゲームオーバーになって、すっかり忘れていると思ったら体が感覚として覚えているんだよなぁ……」
どうやら遊戯さんは覚えているらしい。正直、記憶の無駄遣いと言わざるを得ない。
あっという間にステージボスであるエアーマンにたどり着く。
そこで渡されるコントローラー。
「えっ……」
戸惑う俺。なぜこのタイミングで俺に渡すのか?
「ここまでやってやったんだ、エアーマンぐらい自分で倒してくれw」
「なっ!このタイミングで俺ですか!!」
仕方なく、俺の操るロックマンはエアーマンに突撃する。
あっという間に撃沈。強い。エアーマンが倒せない。
ここまで俺のプレイを見た遊戯さんはおそらく理解している。
いや、遊戯さんの顔がそう物語っている。俺は確信した。
俺 は ゲ ー ム 自 体 は 下 手 く そ な の だ と ! !
この店は持ち込んだビール片手に試遊台のゲームをプレイしても注意されない近年珍しい自由な店である。
今時、自宅にファミコンがあるところは少ないのでレトロゲームが自由にプレイできるこの店の存在はサラリーマンである俺にとってもありがたい。
もちろん、エミュレータでプレイする、という方法もあるのかもしれないが、やはり実機でプレイするのが一番良いと思う。
「いらっしゃいませー!」
最近よくみかけるようになった新入りバイト店員と思われる女性に軽く会釈をして数百円分程度の駄菓子を購入後、店のちょっと奥にある試遊台に直行する。
この店では店長である遊戯 太造(あそび たいぞう)さんの粋な計らいで店にある売り物のゲームを自由に手に取り遊ぶことが出来る。
こんなサービスをしていて店の経営は大丈夫なのか?と疑問に思うことはあるが、それは客である俺が気にすることではないだろう。
そして最近の俺はもっぱら会社帰りに『遊戯大館』で昔のレトロゲームをプレイしている。
中でも最近プレイし続けているのがファミコンのロックマン2である。
ロックマン2をプレイしていると思い出す。
今あいつらはどこに居るのか?何をしているのか?
おっくせんまん♪おっくせんまん♪
思わず口ずさんでしまう。
ファミコンソフト『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』のワイリーステージのBGM「Dr.WILY STAGE 1」に対して誰かが歌詞をつけたらしく曲名を『思い出は億千万』というらしい。
かつて、ニコニコ動画でも話題になったことのある有名な曲である。
ちなみに歌い手は数多くいるものの作詞者は未だに不明らしい。
俺は今、その名曲の元ネタであるBGMを聴くために、『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』をプレイしている。
しかし、だ。全く持って進めることが出来ない。
子供の頃は何回もクリアした記憶がある。
だが大人になってプレイするとこれだ。
すっかりコツを忘れてしまっている。
ロックマンはいわば死んでコツを覚える死にゲーであり、そのコツを忘れてしまってはまた死んで覚えるしかない。
すなわち、俺の操作するロックマンは命が何個あっても足りていない。
何回死んでも諦めないのが俺の良いところ、でもあるわけだが(笑)
『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』とは、1988年にカプコンから発売された横スクロールアクションゲームで最近30周年を迎えた作品である。
ストーリーとしてはロックマンと呼ばれる正義のロボットが世界征服を狙うドクターワイリーとワイリーが開発したロボ8体を倒して世界を救うという至極単純なもの。
しかし、ロックマンの魅力はストーリーではない。あくまでそのアクション性にある。
プレイヤーはロックマンを操作して最初に8体のボスが居るステージをクリアしていく。
ステージの最後にボスが待ち受けロックマンと一騎打ち。
そのボスを倒すとロックマンが倒したボスの武器を扱えるというシステムだ。
このシステムがステージクリアのカギを握り、また各種ボスの弱点ともなりうる。
つまり、通常武器であるロックバスターでボスに勝てない場合はそのボスの弱点武器で攻めれば勝てるのだ。
いわば下手くそプレイヤーの救済措置なのだ。
「あれー、おっかしいな。何回やってもエアーマンに勝てない……」
ここ数日、会社帰りに通い詰めても、なかなか勝てないボスが居る。
―――エアーマンだ。
8体のボスのうち、フラッシュマン、メタルマン、バブルマン、クラッシュマン、クイックマンは苦戦しながらも何とか倒すことが出来た。
あとは、このエアーマンとウッドマン、そしてヒートマンさえ倒せばワイリーステージでおっくせんまん♪を聴くことが出来るのに……何回やっても倒せない。
ゲームオーバーの画面を何度みたことか。
俺は諦めずにスマホに撮っておいたパスワードを入力してコンティニューをする。
エアーマンステージを選択して再プレイ。
エアーマンステージでは油断すると風に飛ばされて落ちてしまう。
おてしまえば当然ゲームオーバー。エアーマンステージはステージの難易度も高いのだ。
「ここさえ越えれば……」
俺の操作するロックマンが谷へと落ちていく。
俺を恨むなよ、ロックマン。恨むなら俺に操作されることになった運命を恨んでくれ。
そんな馬鹿なことを考えながら何度も何度もプレイする。
「くっそー!何度やってもエアーマンのところにたどり着けない……何とかたどり着いてもエアーマンに勝てないし……」
今日は諦めて帰ろうとした時だった。
「あー、大成さん。今日もロックマン2ですか~」
後ろから聞き慣れた声が聞こえる。
この店の主である遊戯太造(あそび たいぞう)さんである。相変わらず冴えない顔をしているがこの人はゲームについての知識はかなり詳しい人なのだ。
どうやら俺と同世代らしく、たまたまゲームの話をしたときに意気投合して、それ以来、よく話しかけてくれるようになった。
「そうなんですよ~、毎日のように通っているんですが全然クリアできなくて」
「ロックマン2は初期の作品ながら、なかなかやりごたえがありますしね。私も今プレイしたらクリアできない可能性大ですよ」
そういいながら、遊戯さんはコントローラーを手に取りエアーマンステージをプレイする。
―――当然のことながら俺より上手い。
ステージのギミックをどんどんかわして進んでいく。
まるでそこにギミックがあるのを知っているかのようだ。
遊戯さんのプレイはどこか模範解答的なプレイを見ているような気分になる。
「何度もプレイして何度もゲームオーバーになってはリトライしてまたゲームオーバーになって、すっかり忘れていると思ったら体が感覚として覚えているんだよなぁ……」
どうやら遊戯さんは覚えているらしい。正直、記憶の無駄遣いと言わざるを得ない。
あっという間にステージボスであるエアーマンにたどり着く。
そこで渡されるコントローラー。
「えっ……」
戸惑う俺。なぜこのタイミングで俺に渡すのか?
「ここまでやってやったんだ、エアーマンぐらい自分で倒してくれw」
「なっ!このタイミングで俺ですか!!」
仕方なく、俺の操るロックマンはエアーマンに突撃する。
あっという間に撃沈。強い。エアーマンが倒せない。
ここまで俺のプレイを見た遊戯さんはおそらく理解している。
いや、遊戯さんの顔がそう物語っている。俺は確信した。
俺 は ゲ ー ム 自 体 は 下 手 く そ な の だ と ! !
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