6 / 12
『ドラゴンクエスト』編
『ドラゴンクエスト』、どうやって遊ぶ?(4)
しおりを挟む
遊戯太造(あそび たいぞう)の話は終わらない。
どうやら、うんちく話のスイッチが入ってしまったようだ。
「しかも、ローラ姫を救出の有無でエンディングが微妙に変わるんだよ―、まさにマルチエンディングの走りだね」
「そ、そうなんスか……」
「その他にも"ようせいのふえ"無しでドムドーラに居るゴーレムを倒すこともできるしな!」
「お、おう……」
「是非、そういったやりこみ部分も含めてドラゴンクエストⅠを楽しんでほしいな~」
ニコニコ顔で語るおっさんはもはや好きなことに熱中する少年のようにも見えた。
自分も少しだけ少女だった頃を思い出してきた気がした。
「2週目ではやってみよ……」
得意げに話すおっさんを横目に小声でぼそっと話す。
このおっさん、ゲームショップの店長だけあってかなりゲームには詳しいと見た。
自分も最近のゲームなら割と自信あるもののレトロゲームとなるとおっさんのほうに分がありそうである。
ふと、画面に映るローラ姫を見て思い出す。
小さき頃の自分。お姫様にあこがれていた自分。ドラクエを通して勇者になりたかった自分。
その思いが勝手に隣に居たおっさんに向かってしゃべりはじめる。
「自分、こう見えて小さい頃はお姫様になりたいなーって思ってたんスよ。それがドラクエ1をきっかけに勇者になりたいとか思い始めてかなり痛い中2病を患っていたんスよね~」
気分が良くなってきたせいか思わず自分が過去に中2病患者だったことを話す。
「でも、成長するに従って自分は勇者にはなれないということを悟ってしまったんスよねー」
それを聞いて目の前のおっさんは少しの間をおいてこう返答した。
「今はなりたくないってこと?ならなくていいの?」
「へ?」
真顔で返された言葉に思わず驚く自分。
「勇者になればいいじゃない。今、キミが操作しているのは"勇者まい"であり、世界を脅かす存在である竜王を倒すんだろ?」
「それはあくまでドラクエというゲームの話で……」
自分が簡単な気持ちで返答するとおっさん―――いや、遊戯大館の店長は、
「勇者になりたければ迷わず勇者になればいい!」
と大声で言い放ったのだ。
「世界を救いたい、人々を守りたい、それは誰よりも純粋で強い夢だろ?それなら諦めちゃダメだ!」
遊戯大館の店長は私の肩を掴み少し揺すりながら私の顔をじっと見つめた。
店長の顔は本気で私の夢を応援するといった疑いなき眼だった。
初めてだった。
私の"勇者になりたい"という夢を応援してくれる人に出会ったのは。
小さいころからそんなこと言っても親にも友達にも鼻で笑われて終わりだった。
馬鹿げた夢だと思ってた。叶わない夢だと思ってた。せいぜいOLになって平凡な人生を送って終えるのだと思っていた。
だけど、違った。私の勇者になりたい、そんな夢を応援してくれる人に出会うことが出来た。
「いいんスかね……勇者、目指しても……」
この時の私はおそらく嬉しかったんだと思う。
「もちろん、ほら、"勇者まい"が倒すべき竜王も目の前だ」
店長がテレビの画面に指差した先には竜王の姿。
竜王とはドラゴンクエストのラスボスである。
―――もし、わしの味方になれば世界の半分を勇者にやろう。
竜王が言い放つドラクエ1屈指の名言である。
突然のオファー、"勇者まい"は何と答えるのか?はい、なのか?いいえ、なのか?
もちろん、私の答えは―――いいえ。
世界の半分?嘘に決まってる。私は、"勇者まい"はその誘いには乗らない!!
「良い選択だな。ちなみにここで"はい"を選択するとレベル1で全ての装備品&アイテム無しの復活の呪文を教えられて画面フリーズ&強制リセットだからな」
「選ぶわけないでしょ、私は竜王を倒すためにここまで来たんだから」
私はもはや"勇者まい"になりきっていた。
このときの"勇者まい"のレベルは20。
竜王に勝てるか微妙なラインだ。
竜王との戦闘が始まる。
あっさり倒す。すると、竜王が真の姿を表しドラゴンの姿に変化する。
ここからが本当のラストバトルである。
幼き日々にプレイしたスーファミ版のドラクエ1の光景を思い出す。
あの時もかなり手こずった。何とか、それも何度か挑戦して勝利した記憶がある。
あの時よりも"勇者まい"は成長した。今回も必ず勝つ!
自分の握るコントローラーにギュッと力が入る。
一進一退、攻防一体、タイマンでの互角勝負。
ここまで来たら小細工は不要。
ベホイミで回復しつつ勇者の剣で斬りつける。ただそれだけ。
私はただひたすらに"世界を救いたい"その気持ちだけを持ち攻撃を続ける。
「いいぞ、もう少しだ。MP管理には気を付けろよ」
隣では店長が一緒に画面を眺めている。
負けるわけにはいかない。
MPも残りわずか。
薬草は無い。
これがおそらく最後のターンになるであろう。
"こうげき"のコマンドを選択。
竜王のはげしいほのおにギリギリで耐え抜き、MPが底をついてきたその時、ついに私の一撃が―――
―――竜王を倒した。
どうやら、うんちく話のスイッチが入ってしまったようだ。
「しかも、ローラ姫を救出の有無でエンディングが微妙に変わるんだよ―、まさにマルチエンディングの走りだね」
「そ、そうなんスか……」
「その他にも"ようせいのふえ"無しでドムドーラに居るゴーレムを倒すこともできるしな!」
「お、おう……」
「是非、そういったやりこみ部分も含めてドラゴンクエストⅠを楽しんでほしいな~」
ニコニコ顔で語るおっさんはもはや好きなことに熱中する少年のようにも見えた。
自分も少しだけ少女だった頃を思い出してきた気がした。
「2週目ではやってみよ……」
得意げに話すおっさんを横目に小声でぼそっと話す。
このおっさん、ゲームショップの店長だけあってかなりゲームには詳しいと見た。
自分も最近のゲームなら割と自信あるもののレトロゲームとなるとおっさんのほうに分がありそうである。
ふと、画面に映るローラ姫を見て思い出す。
小さき頃の自分。お姫様にあこがれていた自分。ドラクエを通して勇者になりたかった自分。
その思いが勝手に隣に居たおっさんに向かってしゃべりはじめる。
「自分、こう見えて小さい頃はお姫様になりたいなーって思ってたんスよ。それがドラクエ1をきっかけに勇者になりたいとか思い始めてかなり痛い中2病を患っていたんスよね~」
気分が良くなってきたせいか思わず自分が過去に中2病患者だったことを話す。
「でも、成長するに従って自分は勇者にはなれないということを悟ってしまったんスよねー」
それを聞いて目の前のおっさんは少しの間をおいてこう返答した。
「今はなりたくないってこと?ならなくていいの?」
「へ?」
真顔で返された言葉に思わず驚く自分。
「勇者になればいいじゃない。今、キミが操作しているのは"勇者まい"であり、世界を脅かす存在である竜王を倒すんだろ?」
「それはあくまでドラクエというゲームの話で……」
自分が簡単な気持ちで返答するとおっさん―――いや、遊戯大館の店長は、
「勇者になりたければ迷わず勇者になればいい!」
と大声で言い放ったのだ。
「世界を救いたい、人々を守りたい、それは誰よりも純粋で強い夢だろ?それなら諦めちゃダメだ!」
遊戯大館の店長は私の肩を掴み少し揺すりながら私の顔をじっと見つめた。
店長の顔は本気で私の夢を応援するといった疑いなき眼だった。
初めてだった。
私の"勇者になりたい"という夢を応援してくれる人に出会ったのは。
小さいころからそんなこと言っても親にも友達にも鼻で笑われて終わりだった。
馬鹿げた夢だと思ってた。叶わない夢だと思ってた。せいぜいOLになって平凡な人生を送って終えるのだと思っていた。
だけど、違った。私の勇者になりたい、そんな夢を応援してくれる人に出会うことが出来た。
「いいんスかね……勇者、目指しても……」
この時の私はおそらく嬉しかったんだと思う。
「もちろん、ほら、"勇者まい"が倒すべき竜王も目の前だ」
店長がテレビの画面に指差した先には竜王の姿。
竜王とはドラゴンクエストのラスボスである。
―――もし、わしの味方になれば世界の半分を勇者にやろう。
竜王が言い放つドラクエ1屈指の名言である。
突然のオファー、"勇者まい"は何と答えるのか?はい、なのか?いいえ、なのか?
もちろん、私の答えは―――いいえ。
世界の半分?嘘に決まってる。私は、"勇者まい"はその誘いには乗らない!!
「良い選択だな。ちなみにここで"はい"を選択するとレベル1で全ての装備品&アイテム無しの復活の呪文を教えられて画面フリーズ&強制リセットだからな」
「選ぶわけないでしょ、私は竜王を倒すためにここまで来たんだから」
私はもはや"勇者まい"になりきっていた。
このときの"勇者まい"のレベルは20。
竜王に勝てるか微妙なラインだ。
竜王との戦闘が始まる。
あっさり倒す。すると、竜王が真の姿を表しドラゴンの姿に変化する。
ここからが本当のラストバトルである。
幼き日々にプレイしたスーファミ版のドラクエ1の光景を思い出す。
あの時もかなり手こずった。何とか、それも何度か挑戦して勝利した記憶がある。
あの時よりも"勇者まい"は成長した。今回も必ず勝つ!
自分の握るコントローラーにギュッと力が入る。
一進一退、攻防一体、タイマンでの互角勝負。
ここまで来たら小細工は不要。
ベホイミで回復しつつ勇者の剣で斬りつける。ただそれだけ。
私はただひたすらに"世界を救いたい"その気持ちだけを持ち攻撃を続ける。
「いいぞ、もう少しだ。MP管理には気を付けろよ」
隣では店長が一緒に画面を眺めている。
負けるわけにはいかない。
MPも残りわずか。
薬草は無い。
これがおそらく最後のターンになるであろう。
"こうげき"のコマンドを選択。
竜王のはげしいほのおにギリギリで耐え抜き、MPが底をついてきたその時、ついに私の一撃が―――
―――竜王を倒した。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
都立第三中学シリーズ
和泉葉也
キャラ文芸
第三中学に通う「山本はじめ」は、入学間もなくグルグル眼鏡の「科学部部長」の勧誘を受け、強制的に悪名高い科学部員兼、部長の手下となった。破壊される教室、爆薬を投げつけられる候補者。混乱の最中、生徒会選挙への出馬計画が始まった。
インディーズゲームとして制作した作品の元小説です。
当時のままのため誤字訂正等はありません。ゲーム本編とは設定が異なります。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
あやかし警察おとり捜査課
紫音
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。
しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。
反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。
アデンの黒狼 初霜艦隊航海録1
七日町 糸
キャラ文芸
あの忌まわしい大戦争から遥かな時が過ぎ去ったころ・・・・・・・・・
世界中では、かつての大戦に加わった軍艦たちを「歴史遺産」として動態復元、復元建造することが盛んになりつつあった。
そして、その艦を用いた海賊の活動も活発になっていくのである。
そんな中、「世界最強」との呼び声も高い提督がいた。
「アドミラル・トーゴーの生まれ変わり」とも言われたその女性提督の名は初霜実。
彼女はいつしか大きな敵に立ち向かうことになるのだった。
アルファポリスには初めて投降する作品です。
更新頻度は遅いですが、宜しくお願い致します。
Twitter等でつぶやく際の推奨ハッシュタグは「#初霜艦隊航海録」です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
引きこもりアラフォーはポツンと一軒家でイモつくりをはじめます
ジャン・幸田
キャラ文芸
アラフォー世代で引きこもりの村瀬は住まいを奪われホームレスになるところを救われた! それは山奥のポツンと一軒家で生活するという依頼だった。条件はヘンテコなイモの栽培!
そのイモ自体はなんの変哲もないものだったが、なぜか村瀬の一軒家には物の怪たちが集まるようになった! 一体全体なんなんだ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる