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『マリオブラザーズ』編
『マリオブラザーズ』、どうやって遊ぶ?(1)
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「太造、今日も来てやったぞー!」
「なんだ学、また来たのか?いらっしゃい」
勢いよく店内に入る僕をここの店主はいつも通りやる気のない声でこたえる。
「相変わらずお客さん少ないね!」
「うるせぇ」
ホント、お客さんが少ないこのお店。
場所が悪いからなのか、店長である遊戯太造(あそび たいぞう)の客に対する態度が悪いからなのかこのお店が繁盛しているのを見たことが無い。
でも、僕―――早見学(はやみ まなぶ)はこの場所が大好きなのだ。
ここは、町のはずれにあるゲームショップ『遊戯大館(あそびたいかん)』
今では少なくなった昔ながらの―――いわゆるファミコンショップと呼ばれるものらしい。
この店には店員がおらず、店主である太造が一人で切り盛りしている。
決して広いとは言えない店内だけど、レトロゲームから最新のゲーム、中古から新品、駄菓子にアーケード筐体を揃えるゲーム好きの人にとっては憩いの場となっている一大テーマパーク(笑)のようなところだ。
もちろん、僕も小学校の帰りに毎日のように寄り道している。
まあ、知る人ぞ知るお店だから、いつ行ってもお客さんはあまり居ないのだけれども。
小学生の僕はお小遣いが少ない。
だから、ゲームを購入することは滅多に無い。
それでも、この遊戯大館に来るのはなぜかって?
その理由は……これ。
「太造!今日のゲームは?」
そう僕が言うとこのお店の店主である太造は店の奥にある今では珍しくなったアナログテレビとレトロゲーム機のところに行く。
このお店では新旧様々なゲームが試用出来るサービスがある。
僕がこのお店に通い続ける理由のひとつ。無料でレトロから最新のゲームまで出来る、他のお店では味わうことが出来ない至高のサービス。
ゲーム好きの僕にとって、お小遣いの少ない僕にとって、このお店で学校帰りにゲームをすることが楽しみなのだ。
特に太造のおススメするレトロゲームは大好物だ。
「今日のゲームも面白いぞ~」
ニヤニヤしながら太造が喋りだす。
赤白カラーに少し黄色く日焼けした本体。
最新のゲーム機と比べると作りはかなり簡単で軽い。
コントローラーの付け外しは出来ないけれど、Ⅱコンと呼ばれる側のコントローラーには、なぜか謎のマイクがある(笑)
太造は"それ"にあるソフトをカシャと音を立てながら差す。
本体の左下のあるスイッチをON。
いざ、出陣。
―――そのゲーム機の名前を『ファミコン』と言う。
マリオやゼルダを発売したゲーム好きには有名な会社、任天堂が30年位前に発売したゲーム機で正式名称を『ファミリーコンピュータ』と言うらしい。
30年ぐらい前には大人も子供も夢中になったものだと太造から教わった。
ワクワクしながらテレビの画面を見つめる。
そこに映し出されたのは―――砂嵐のようなバグった画面だった……。
「これが今日のゲーム?」
思わずキョトンとした僕が指差す画面のゲームはとてもゲームが始まるとは思えないバグった画面だった。
それを見た太造は「ま、昔のゲームだからな」と言いながらそのソフトをファミコンから抜いてフーッと端子部に息を吹きかける。
ゲームカードやディスクが主流となった今のゲームでは考えられない光景である。
そのソフトを再度ファミコンとやらに差し込んで電源を入れる。
そうすると、テレビ画面に映し出されたのは『MARIO BROS.』の文字。
今のゲームでは到底考えられないようなちゃっちい画面に機械音を感じさせる独特のBGM。
それを見つめる僕に太造は「やってみろ」と言わんばかりにコントローラーを渡してくる。
ボタン数の少ないコントローラーを手に包み、僕はSTARTボタンを押した。
するといきなり表示される「STAGE1」の画面。
赤いおっさんが下にいる。どうやら任天堂の看板キャラクターのマリオらしい。
そういえば、このおっさん元々は配管工だったという設定があったと太造から教わったことがある。
唐突に始まったゲームに僕はどうしていいかわからないまま赤いおっさん―――じゃなかったマリオを動かす。
土管から迫りくるカニやカメをジャンプで避け進むもののどうすればクリアなのかわからないままカメに当たってゲームオーバー。
「くっそー!なんだよっ」
続けざまにコンティニュー、立て続けにゲームオーバー!
何回やってもSTAGE1がクリアできない。一体どうすれば先のステージに進めるのか?
土管をくぐっても画面の端に行ってもどこまで行っても左から右へ、右から左へ走り回るだけ。
そんなことをやっているうちにカニにあたってゲームオーバー。
「どうしても敵から避けられなーい」
くやしがる僕を横目に太造がクククと笑いながら話しかけてくる。
「カニも亀も避けるだけじゃダメだ。下からジャンプしてひっくり返してそれを蹴り飛ばすんだ」
「えっ、そんなこと出来るの?」
そんな攻撃方法があるなんて思いもよらなかった。昔のゲームは簡単なようで意外と気が付かないことも多い。
さっそく試してみる。
ひっくり返る。蹴り飛ばす。やがて敵が居なくなり難なくクリア。
「こんな簡単に……」
「コツを覚えればクリアするだけなら簡単さ。クリアするだけなら、な」
太造は僕の肩をポンと叩いて言う。
「さーて、学はどこまで進めるのかな?」
「敵の倒し方さえわかればこんなの簡単さ!」
僕は意気揚々とコントローラーを握りカメやカニを撃破していく。
ステージを進めるとギミックが増え、土管から出てくる炎、ツルツル滑る床など何度かゲームオーバーを繰り返したが少しずつコツをつかんでいった。
マリオブラザースは初見こそ難しいが、何度か死ぬことでクリア法が見えてくる、死んで覚える死にゲーである。
最初は死にまくっていた僕も操作方法を覚えて1時間が過ぎるころには最初の数ステージをクリアできるぐらいまで上達していた。
ここに来るまでに何人のマリオが死んだことか……マリオごめん(笑)
ふと、僕は画面中央よりちょっと下の"POW"と書かれたブロックがあることに気が付いた。
そういえば、最初のステージからこの"POW"ブロックはあったような気がする。
あえてここまで何もせずに来てしまったがこのPOWブロックとはいったい何なのだろう?
「POWブロックに向かってジャンプしてみな」
太造が後ろからつぶやく。僕はそれに従いPOWブロックに向かってジャンプ。
一瞬、画面に映るすべての敵キャラクター達がひっくり返る。
「すげぇ!」
思わず声に出る。この快感。僕は矢継ぎ早に敵を次々と蹴り飛ばしてあっさりステージクリアする。
「POWブロックのPOWはPOWERのことな、これをうまく使えばステージクリアも楽になる。そしてな……」
後ろから見ていた太造が語りだすが僕は無視。このおっさん語り始めると長いのだ。
だから僕は特に振り向きも喋りもせずに教えてもらったPOWブロックをうまく使いステージを進めていく。
「よっしゃ!」
上手い具合にステージクリアが出来ることで自然に声が出る。
「今度は何だよ?人が気持ちよく語ってたのに」
このおっさん、まだ語っていたらしい。全く聞いていなかったけど(笑)
僕はボタンを適当に押すガチャプレイでガンガンステージを攻略していく。
POWブロックの使い方さえわかれば多少強引なボタン操作でもステージの攻略は可能だ。
「おっと!」
画面が突然停止する。いわゆるポーズ状態。
調子に乗った僕はいつの間にかSTARTボタンを押してしまったらしい。
再びSTARTボタンを押してポーズ解除。プレイ再開。
何度か間違えてSTARTボタンを押していた。
どんなボタンを押しているのかわからない。これがガチャプレイの醍醐味♪
そんな時だ。僕は目を疑った。
「マリオが床に埋まった……」
画面の一番下には床に埋もれたマリオの姿。つまりバグ現象である。
最近のゲームはデバッグを頑張っているから少なくなっているものの昔のレトロゲームはバグが多かったらしい。
どうやら動くことは出来るがゲーム続行は不可能。
「あーあ、せっかくここまで進めたのになぁ……」
僕はコントローラーを投げ出しリセットボタンを押そうとした。
「待て待て」
太造が肩をポンと叩き、僕のリセットボタンを押す手を制御する。
コントローラーを握った太造は再びマリオを操作する。
そのマリオはカメに当たってもすり抜けた。死なない。いわば無敵状態である。
「えぇ!!どういうこと?」
「一種のバグだよ。床に埋もれている間は無敵状態になる」
驚く僕をよそに太造はプレイを続ける。
床に埋もれていたはずのマリオはすぐさまピョンとジャンプして壁を再び抜けて地上へ。
「このぐらいの"埋もれ具合"ならジャンプをすれば簡単に抜け出すことが出来るんだ」
「すげー!」
「ちなみに言っておくと、さっきの無敵状態も上から落ちてくる敵には対応できない。当たればゲームオーバーだ」
僕は太造のプレイにすっかり虜だ。太造はゲーム屋の店主だけあってゲームがうまい。
特にこういったレトロゲームのプレイさばきはうっとりするほど。
「つまり、無敵なのは平行方向だけで垂直方向は無敵じゃないから気を付けろよ」
「オッケー♪」
太造のゲームの腕前は本物だ。しかも知識も持ってる。
コントローラーを握った太造は次に、
「更なる裏技を披露してあげよう」
得意げに太造は言う。その動きはかろやかに画面2段目の通路まで上り詰めていく。
「ここから勢いよくSTARTボタンを連打!すると―――」
画面にポーズがかかる。
タイミングよく連打。
マリオが地面に着地する。
また、ポーズ。
そしてやがて―――埋もれて画面から消えた。
「おぉー!マリオが消えたぁ!!」
思わず叫んでしまう僕。
「な、すごいだろ、この裏技。これ以上ゲームが進まないんだ」
「えっ……」
「どうしようもない裏技がマリオブラザーズにはあるのさw」
太造は笑いながら言うがここまで一生懸命プレイしてきた僕の気持ちはいささかではない。
「ここまで進んだのにどうしてくれるんだよ!!」
「……やりなおせ」
その後、画面にマリオが戻ってくることは無く僕は泣く泣くリセットボタンを押したのは言うまでもない―――。
「なんだ学、また来たのか?いらっしゃい」
勢いよく店内に入る僕をここの店主はいつも通りやる気のない声でこたえる。
「相変わらずお客さん少ないね!」
「うるせぇ」
ホント、お客さんが少ないこのお店。
場所が悪いからなのか、店長である遊戯太造(あそび たいぞう)の客に対する態度が悪いからなのかこのお店が繁盛しているのを見たことが無い。
でも、僕―――早見学(はやみ まなぶ)はこの場所が大好きなのだ。
ここは、町のはずれにあるゲームショップ『遊戯大館(あそびたいかん)』
今では少なくなった昔ながらの―――いわゆるファミコンショップと呼ばれるものらしい。
この店には店員がおらず、店主である太造が一人で切り盛りしている。
決して広いとは言えない店内だけど、レトロゲームから最新のゲーム、中古から新品、駄菓子にアーケード筐体を揃えるゲーム好きの人にとっては憩いの場となっている一大テーマパーク(笑)のようなところだ。
もちろん、僕も小学校の帰りに毎日のように寄り道している。
まあ、知る人ぞ知るお店だから、いつ行ってもお客さんはあまり居ないのだけれども。
小学生の僕はお小遣いが少ない。
だから、ゲームを購入することは滅多に無い。
それでも、この遊戯大館に来るのはなぜかって?
その理由は……これ。
「太造!今日のゲームは?」
そう僕が言うとこのお店の店主である太造は店の奥にある今では珍しくなったアナログテレビとレトロゲーム機のところに行く。
このお店では新旧様々なゲームが試用出来るサービスがある。
僕がこのお店に通い続ける理由のひとつ。無料でレトロから最新のゲームまで出来る、他のお店では味わうことが出来ない至高のサービス。
ゲーム好きの僕にとって、お小遣いの少ない僕にとって、このお店で学校帰りにゲームをすることが楽しみなのだ。
特に太造のおススメするレトロゲームは大好物だ。
「今日のゲームも面白いぞ~」
ニヤニヤしながら太造が喋りだす。
赤白カラーに少し黄色く日焼けした本体。
最新のゲーム機と比べると作りはかなり簡単で軽い。
コントローラーの付け外しは出来ないけれど、Ⅱコンと呼ばれる側のコントローラーには、なぜか謎のマイクがある(笑)
太造は"それ"にあるソフトをカシャと音を立てながら差す。
本体の左下のあるスイッチをON。
いざ、出陣。
―――そのゲーム機の名前を『ファミコン』と言う。
マリオやゼルダを発売したゲーム好きには有名な会社、任天堂が30年位前に発売したゲーム機で正式名称を『ファミリーコンピュータ』と言うらしい。
30年ぐらい前には大人も子供も夢中になったものだと太造から教わった。
ワクワクしながらテレビの画面を見つめる。
そこに映し出されたのは―――砂嵐のようなバグった画面だった……。
「これが今日のゲーム?」
思わずキョトンとした僕が指差す画面のゲームはとてもゲームが始まるとは思えないバグった画面だった。
それを見た太造は「ま、昔のゲームだからな」と言いながらそのソフトをファミコンから抜いてフーッと端子部に息を吹きかける。
ゲームカードやディスクが主流となった今のゲームでは考えられない光景である。
そのソフトを再度ファミコンとやらに差し込んで電源を入れる。
そうすると、テレビ画面に映し出されたのは『MARIO BROS.』の文字。
今のゲームでは到底考えられないようなちゃっちい画面に機械音を感じさせる独特のBGM。
それを見つめる僕に太造は「やってみろ」と言わんばかりにコントローラーを渡してくる。
ボタン数の少ないコントローラーを手に包み、僕はSTARTボタンを押した。
するといきなり表示される「STAGE1」の画面。
赤いおっさんが下にいる。どうやら任天堂の看板キャラクターのマリオらしい。
そういえば、このおっさん元々は配管工だったという設定があったと太造から教わったことがある。
唐突に始まったゲームに僕はどうしていいかわからないまま赤いおっさん―――じゃなかったマリオを動かす。
土管から迫りくるカニやカメをジャンプで避け進むもののどうすればクリアなのかわからないままカメに当たってゲームオーバー。
「くっそー!なんだよっ」
続けざまにコンティニュー、立て続けにゲームオーバー!
何回やってもSTAGE1がクリアできない。一体どうすれば先のステージに進めるのか?
土管をくぐっても画面の端に行ってもどこまで行っても左から右へ、右から左へ走り回るだけ。
そんなことをやっているうちにカニにあたってゲームオーバー。
「どうしても敵から避けられなーい」
くやしがる僕を横目に太造がクククと笑いながら話しかけてくる。
「カニも亀も避けるだけじゃダメだ。下からジャンプしてひっくり返してそれを蹴り飛ばすんだ」
「えっ、そんなこと出来るの?」
そんな攻撃方法があるなんて思いもよらなかった。昔のゲームは簡単なようで意外と気が付かないことも多い。
さっそく試してみる。
ひっくり返る。蹴り飛ばす。やがて敵が居なくなり難なくクリア。
「こんな簡単に……」
「コツを覚えればクリアするだけなら簡単さ。クリアするだけなら、な」
太造は僕の肩をポンと叩いて言う。
「さーて、学はどこまで進めるのかな?」
「敵の倒し方さえわかればこんなの簡単さ!」
僕は意気揚々とコントローラーを握りカメやカニを撃破していく。
ステージを進めるとギミックが増え、土管から出てくる炎、ツルツル滑る床など何度かゲームオーバーを繰り返したが少しずつコツをつかんでいった。
マリオブラザースは初見こそ難しいが、何度か死ぬことでクリア法が見えてくる、死んで覚える死にゲーである。
最初は死にまくっていた僕も操作方法を覚えて1時間が過ぎるころには最初の数ステージをクリアできるぐらいまで上達していた。
ここに来るまでに何人のマリオが死んだことか……マリオごめん(笑)
ふと、僕は画面中央よりちょっと下の"POW"と書かれたブロックがあることに気が付いた。
そういえば、最初のステージからこの"POW"ブロックはあったような気がする。
あえてここまで何もせずに来てしまったがこのPOWブロックとはいったい何なのだろう?
「POWブロックに向かってジャンプしてみな」
太造が後ろからつぶやく。僕はそれに従いPOWブロックに向かってジャンプ。
一瞬、画面に映るすべての敵キャラクター達がひっくり返る。
「すげぇ!」
思わず声に出る。この快感。僕は矢継ぎ早に敵を次々と蹴り飛ばしてあっさりステージクリアする。
「POWブロックのPOWはPOWERのことな、これをうまく使えばステージクリアも楽になる。そしてな……」
後ろから見ていた太造が語りだすが僕は無視。このおっさん語り始めると長いのだ。
だから僕は特に振り向きも喋りもせずに教えてもらったPOWブロックをうまく使いステージを進めていく。
「よっしゃ!」
上手い具合にステージクリアが出来ることで自然に声が出る。
「今度は何だよ?人が気持ちよく語ってたのに」
このおっさん、まだ語っていたらしい。全く聞いていなかったけど(笑)
僕はボタンを適当に押すガチャプレイでガンガンステージを攻略していく。
POWブロックの使い方さえわかれば多少強引なボタン操作でもステージの攻略は可能だ。
「おっと!」
画面が突然停止する。いわゆるポーズ状態。
調子に乗った僕はいつの間にかSTARTボタンを押してしまったらしい。
再びSTARTボタンを押してポーズ解除。プレイ再開。
何度か間違えてSTARTボタンを押していた。
どんなボタンを押しているのかわからない。これがガチャプレイの醍醐味♪
そんな時だ。僕は目を疑った。
「マリオが床に埋まった……」
画面の一番下には床に埋もれたマリオの姿。つまりバグ現象である。
最近のゲームはデバッグを頑張っているから少なくなっているものの昔のレトロゲームはバグが多かったらしい。
どうやら動くことは出来るがゲーム続行は不可能。
「あーあ、せっかくここまで進めたのになぁ……」
僕はコントローラーを投げ出しリセットボタンを押そうとした。
「待て待て」
太造が肩をポンと叩き、僕のリセットボタンを押す手を制御する。
コントローラーを握った太造は再びマリオを操作する。
そのマリオはカメに当たってもすり抜けた。死なない。いわば無敵状態である。
「えぇ!!どういうこと?」
「一種のバグだよ。床に埋もれている間は無敵状態になる」
驚く僕をよそに太造はプレイを続ける。
床に埋もれていたはずのマリオはすぐさまピョンとジャンプして壁を再び抜けて地上へ。
「このぐらいの"埋もれ具合"ならジャンプをすれば簡単に抜け出すことが出来るんだ」
「すげー!」
「ちなみに言っておくと、さっきの無敵状態も上から落ちてくる敵には対応できない。当たればゲームオーバーだ」
僕は太造のプレイにすっかり虜だ。太造はゲーム屋の店主だけあってゲームがうまい。
特にこういったレトロゲームのプレイさばきはうっとりするほど。
「つまり、無敵なのは平行方向だけで垂直方向は無敵じゃないから気を付けろよ」
「オッケー♪」
太造のゲームの腕前は本物だ。しかも知識も持ってる。
コントローラーを握った太造は次に、
「更なる裏技を披露してあげよう」
得意げに太造は言う。その動きはかろやかに画面2段目の通路まで上り詰めていく。
「ここから勢いよくSTARTボタンを連打!すると―――」
画面にポーズがかかる。
タイミングよく連打。
マリオが地面に着地する。
また、ポーズ。
そしてやがて―――埋もれて画面から消えた。
「おぉー!マリオが消えたぁ!!」
思わず叫んでしまう僕。
「な、すごいだろ、この裏技。これ以上ゲームが進まないんだ」
「えっ……」
「どうしようもない裏技がマリオブラザーズにはあるのさw」
太造は笑いながら言うがここまで一生懸命プレイしてきた僕の気持ちはいささかではない。
「ここまで進んだのにどうしてくれるんだよ!!」
「……やりなおせ」
その後、画面にマリオが戻ってくることは無く僕は泣く泣くリセットボタンを押したのは言うまでもない―――。
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