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第二章 銀色の聖女
第五話
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「お二人に新たな指名依頼がきていますよ」
「最近多いですね。討伐系の依頼でしょうか?」
冒険者協会。年齢制限はなく登録料さえ支払えば冒険者として活動が可能となる。冒険者でなくとも魔物の解体、買取など一部のサービスを受けることはできるが、その分手数料を多く引かれる。資金集めを目的とするなら冒険者として活動する方が都合が良かった。
冒険者としての活動スタイルは主に二つに分かれる。個人で依頼を受けるか複数人、いわゆるパーティを組んで活動するかの二種類となる。
前者は報酬全てを得ることができるが、活動に必要な物資等の費用は全て個人持ちとなり、危険な魔物との戦闘も単独で行う必要があるためリスクが生じる。
後者については命の危険性は軽減されるが、得られる報酬は等分が基本。資金集めという点においては効率が悪いと言えるが、冒険者として着実な成長を望むのであればパーティを組むことが推奨される。
当初は個人で活動していた浩人だったが、次第にルークが同行するようになる。正式にパーティを組んでいる訳ではないが、一時的に依頼を共にすることも可能なためルール上問題は無かった。
冒険者協会は所属する冒険者に対してランク付けを行なっている。達成した依頼の数や内容、冒険者としての資質、人間性などが主に評価対象となる。ランクはFから始まり最高でS。
ランク付の主な目的は実力に見合った適正な依頼を受ける指標を設けるためで、必要なレベルへ至っていない場合は依頼を受けることが不可となる。
(まぁ、ありがちな設定だよな。ゲームでは冒険者協会に所属は出来なかったけど)
Cランクからは冒険者やパーティを指定した指名依頼が可能となるため、貴族や商人お抱えの冒険者も少なくはない。
ジーク達は正式なパーティではないが、依頼を共にする機会が多いことから二人宛に指名が入ることが多い。最年少でBランク昇格を果たし依頼の達成率も高いことから認知度は高いと言える。
(俺の場合は確実に悪目立ちが理由だろうな)
受ける依頼は選定して活動を続けてきた。割りに合わない依頼を受けるつもりはなく、明らかに不要なものは端から拒絶していた。人命に関わろうが関係無かったが、ルークが勝手に話を進めることもあったため渋々応じたりもした。
「今回の依頼については詳細が明かされていないんです。直接お二人に会ってお話がしたいと」
「……初めてのケースになりますね。協会は応じた形でしょうか?」
「すみません、内容は本当に知らないんです。ただ依頼者が特別な方のようで」
(匿名での依頼? 内容を周囲に明かしたくないのか……。明らかに面倒ごとだな)
過去には貴族や商人といった人物からの依頼はあったが冒険者協会が匿名という形で話を持ってくることはなかった。
「はっ、別の支部の奴が常に中立を保っていると抜かしていたがそれはどうなった? 方針が変わったのか?」
過去にあったバジリスクの件を浩人は少し根に持っていた。
「そこを指摘されますと、辛い部分がございますが……」
「彼女を責めても仕方ないだろう。しかし内容が分からないと何とも言えないね」
原作開始までは後二年といったところ。万全の状態で迎えるためにも余計なトラブルは避けたい。だが、今回の依頼が後々の火種となる可能性も捨てきれない。
「当協会としても強制は出来ませんし、今すぐにという訳でもございません。あくまでもお二人の意思を確認してからになります」
「分かりました。二人で相談してからまた連絡しますよ」
「ありがとうございます。ご検討頂けると助かります」
✳︎✳︎✳︎✳︎
冒険者協会を離れて二人はルークの家へ移動していた。
ルークが意識を取り戻してからはレント領での鍛錬も行われていたため、その都度家に招かれていた。今では馴染みの場所と言える。
「それでどうするんだい? 断るのは簡単だけど」
「バカでも分かる。確実に裏がある」
「そうだね。そもそも僕ら二人を指名した理由が謎だ」
将来有望な若い冒険者と今のうちに接点を持ちたいという人間はそれなりにいる。だがその繋がりは周囲に示してこそ意味がある。
「立場から表だって依頼が出来ないのであれば、そもそも僕らである理由が無いし、世間に知られたくない依頼なら尚更だ」
冒険者協会に所属する冒険者はかなりの数に上る。二人よりも高ランクの冒険者は存在し、信頼の厚い経験と実績を重ねた個人やパーティも一定数いる。
ルークが言うように敢えて二人である必要は無い。貴族と平民という珍しい組み合わせではあるが……
(寧ろそこが理由のような気もするな)
「この場で話していても埒が明かない。先ずは面を拝んでやる」
「気乗りはしないけど仕方がないか。話を聞いてからでも判断は出来るからね」
(そう都合良くいくとは思えないけどな)
冒険者協会のスタンスを見る限りではそれなりの重要人物である可能性が高い。話を聞くだけで済まされるとは思えないが。
(それなら俺のスタンスも今までと変わらないさ)
相手が誰であろうと関係ない。生き残るという道を阻むなら容赦はしない。
――天涯孤独の浩人には守るものは何もない。
✳︎✳︎✳︎✳︎
「こちらが調査対象の経歴になります」
「ありがとう。確認します」
(ラギアス領主……こちらは調べるまでもなく真っ黒みたいだ。問題はその息子か)
バジリスクの討伐から始まり、未知の病の治療、変異種含む魔物のコロニー殲滅、冒険者としての目覚ましい活躍。
(両親の影響を受けていると昔の調査結果にはあったが……結びつかない。直接確かめるしかないか)
ディアバレト王国に存在する諜報機関がラギアス家の本格調査に踏み込もうとしていた。
「最近多いですね。討伐系の依頼でしょうか?」
冒険者協会。年齢制限はなく登録料さえ支払えば冒険者として活動が可能となる。冒険者でなくとも魔物の解体、買取など一部のサービスを受けることはできるが、その分手数料を多く引かれる。資金集めを目的とするなら冒険者として活動する方が都合が良かった。
冒険者としての活動スタイルは主に二つに分かれる。個人で依頼を受けるか複数人、いわゆるパーティを組んで活動するかの二種類となる。
前者は報酬全てを得ることができるが、活動に必要な物資等の費用は全て個人持ちとなり、危険な魔物との戦闘も単独で行う必要があるためリスクが生じる。
後者については命の危険性は軽減されるが、得られる報酬は等分が基本。資金集めという点においては効率が悪いと言えるが、冒険者として着実な成長を望むのであればパーティを組むことが推奨される。
当初は個人で活動していた浩人だったが、次第にルークが同行するようになる。正式にパーティを組んでいる訳ではないが、一時的に依頼を共にすることも可能なためルール上問題は無かった。
冒険者協会は所属する冒険者に対してランク付けを行なっている。達成した依頼の数や内容、冒険者としての資質、人間性などが主に評価対象となる。ランクはFから始まり最高でS。
ランク付の主な目的は実力に見合った適正な依頼を受ける指標を設けるためで、必要なレベルへ至っていない場合は依頼を受けることが不可となる。
(まぁ、ありがちな設定だよな。ゲームでは冒険者協会に所属は出来なかったけど)
Cランクからは冒険者やパーティを指定した指名依頼が可能となるため、貴族や商人お抱えの冒険者も少なくはない。
ジーク達は正式なパーティではないが、依頼を共にする機会が多いことから二人宛に指名が入ることが多い。最年少でBランク昇格を果たし依頼の達成率も高いことから認知度は高いと言える。
(俺の場合は確実に悪目立ちが理由だろうな)
受ける依頼は選定して活動を続けてきた。割りに合わない依頼を受けるつもりはなく、明らかに不要なものは端から拒絶していた。人命に関わろうが関係無かったが、ルークが勝手に話を進めることもあったため渋々応じたりもした。
「今回の依頼については詳細が明かされていないんです。直接お二人に会ってお話がしたいと」
「……初めてのケースになりますね。協会は応じた形でしょうか?」
「すみません、内容は本当に知らないんです。ただ依頼者が特別な方のようで」
(匿名での依頼? 内容を周囲に明かしたくないのか……。明らかに面倒ごとだな)
過去には貴族や商人といった人物からの依頼はあったが冒険者協会が匿名という形で話を持ってくることはなかった。
「はっ、別の支部の奴が常に中立を保っていると抜かしていたがそれはどうなった? 方針が変わったのか?」
過去にあったバジリスクの件を浩人は少し根に持っていた。
「そこを指摘されますと、辛い部分がございますが……」
「彼女を責めても仕方ないだろう。しかし内容が分からないと何とも言えないね」
原作開始までは後二年といったところ。万全の状態で迎えるためにも余計なトラブルは避けたい。だが、今回の依頼が後々の火種となる可能性も捨てきれない。
「当協会としても強制は出来ませんし、今すぐにという訳でもございません。あくまでもお二人の意思を確認してからになります」
「分かりました。二人で相談してからまた連絡しますよ」
「ありがとうございます。ご検討頂けると助かります」
✳︎✳︎✳︎✳︎
冒険者協会を離れて二人はルークの家へ移動していた。
ルークが意識を取り戻してからはレント領での鍛錬も行われていたため、その都度家に招かれていた。今では馴染みの場所と言える。
「それでどうするんだい? 断るのは簡単だけど」
「バカでも分かる。確実に裏がある」
「そうだね。そもそも僕ら二人を指名した理由が謎だ」
将来有望な若い冒険者と今のうちに接点を持ちたいという人間はそれなりにいる。だがその繋がりは周囲に示してこそ意味がある。
「立場から表だって依頼が出来ないのであれば、そもそも僕らである理由が無いし、世間に知られたくない依頼なら尚更だ」
冒険者協会に所属する冒険者はかなりの数に上る。二人よりも高ランクの冒険者は存在し、信頼の厚い経験と実績を重ねた個人やパーティも一定数いる。
ルークが言うように敢えて二人である必要は無い。貴族と平民という珍しい組み合わせではあるが……
(寧ろそこが理由のような気もするな)
「この場で話していても埒が明かない。先ずは面を拝んでやる」
「気乗りはしないけど仕方がないか。話を聞いてからでも判断は出来るからね」
(そう都合良くいくとは思えないけどな)
冒険者協会のスタンスを見る限りではそれなりの重要人物である可能性が高い。話を聞くだけで済まされるとは思えないが。
(それなら俺のスタンスも今までと変わらないさ)
相手が誰であろうと関係ない。生き残るという道を阻むなら容赦はしない。
――天涯孤独の浩人には守るものは何もない。
✳︎✳︎✳︎✳︎
「こちらが調査対象の経歴になります」
「ありがとう。確認します」
(ラギアス領主……こちらは調べるまでもなく真っ黒みたいだ。問題はその息子か)
バジリスクの討伐から始まり、未知の病の治療、変異種含む魔物のコロニー殲滅、冒険者としての目覚ましい活躍。
(両親の影響を受けていると昔の調査結果にはあったが……結びつかない。直接確かめるしかないか)
ディアバレト王国に存在する諜報機関がラギアス家の本格調査に踏み込もうとしていた。
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