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第2章 取り込まれる者
13,舞踏会2日目(3)
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2日目となる舞踏会でもリオルドとユウトはお揃いの衣裳を着ていた。
ネイビーをベースに作られた衣裳は、やはりユウトの分だけリボンやレースを使って可愛らしく仕上げてある。
先ほどリオルドとメイの会話を盗み聞き…もとい立ち聞きしたせいでリオルドはすっかり大人しくなってしまった。
今日の夜にでも改めてローゼマリーの話を聞いてみたいとユウトは思っていた。
ーーー今日はレイルもいないし、どうしよう。
二日目の舞踏会は初日よりも随分と楽だった。
昨日来れなかった貴族と挨拶を交わしたら、もう特別やることは無い。
王や王妃はまた貴族達に捕まっているし、アーノルドは早々に切り上げたようで姿が見えない。
クリスもまた貴族達に囲まれて談笑している。
リオルドの元にも誰かしら来るだろう、何をして時間を潰すべきか…
「何か食べるか?昨日は殆ど食べられなかっただろう?」
「え…あ、はい」
リオルドに連れられてテーブルに座ると給仕係が取り分けた料理を皿に載せ運んできた。
マッシュポテトにカリカリに焼いた干し肉、芽キャベツのブイヨン煮に焼きたてのパン。
「美味しそう!食べて…いいのかな」
「あぁ、食べろ。他に食べたいものがあれば言え。酒以外でだ」
「お酒は駄目ですか...」
「おまえは酒は駄目だ。飲みたいなら部屋で練習してからだ」
ーーー僕も一応男だし、お酒くらい飲めるのに。
やっぱり婚約パーティーで飲みすぎたことを怒っているのだろうか?
まぁ、いいやと思い直し、ユウトは料理に手をつけた。
どれも美味しく一瞬で幸せな気分で満たされる。
あれもこれもとモグモグ食べ進めていると、目の前のリオルドが肘をついてユウトを見ていることに気が付いた。
ーーーうぅ、美形に見つめられると食べづらいな…。
「あの、リオルド様は食べないのですか?」
「俺はいらない。腹も減ってないし」
「そう見られるとちょっと食べづらいと言うか」
「ふーん」
リオルドはサファイアブルーの瞳をいたずらに光らせ、首を傾げた。絹のような金髪がサラサラと肩から滑り落ちる。
ーーーか、顔が良すぎて辛いっ。なんでこんなに顔面が整ってるんだ!こっちだって緊張するよ
「ほら、早く食べろよ」
「そ、そうは言われてもですね?」
「なに、食べさせてやろうか?」
「な、な、何言ってんですか…??ここをどこだと…酔ったの??」
貴族達は昨日のローゼマリーの一件もあり心配していた。だが、仲睦ましそうなリオルド夫妻を見てホッと胸を撫で下ろした。
身代わり妃はどうやら“氷の情炎”と上手くいっているようだと。
「酔ってない。ほら、フォーク寄越せよ。食べさせてやるから」
「ちょ…絶対酔ってる!水飲んで正気になってよ!」
リオルドとユウトが攻防戦を繰り広げていると、シャンパングラスを持ったクリスが横から声をかけてきた。
「僕もご一緒していいかな?」
いつもなら「勿論」と即答するリオルドが「あー…」と言ったまま返事をしない。
僕に気を使っているのだろう。
だが、貴族達の前で王族が不仲に見えるような行動は宜しくない。
「うん、クリスも座りなよ」
ユウトは無理矢理笑顔を作り、努めて明るく言った。
「ユウト、今日の朝はごめんね。」
椅子に座ったクリスはションボリしている。
「僕、ユウトと一瞬にいたかっただけなんだ。城下街を歩く時もここにユウトを連れていきたいなってよく思ってたから...二人の邪魔をするつもりはなくて、でもごめん」
「ううん、クリス気にしないで。僕は本当に書庫に行きたかったんだ。明日も行く」
「明日も!?」
黙っていたリオルドが声を上げ、クリスは目を丸くした。
「明日も行くのか?明日は今日の仕切り直しで俺と城下街に行けばいいじゃないか」
「もう明日しか書庫に行く日がないんです。本は持ち出し禁止だし…」
「じゃあさ、ユウト。僕の部屋に遊びにおいでよ。本は無いけどさ、、昔みたいに一緒にお菓子食べて話がしたいよ」
「クリス、ごめん。本は明日しか読めない。別邸に来てくれれば僕にはいつでも会えるから」
「えぇ…。ユウトは昔からこうなると聞かないからなぁ」
ふふっとクリスが笑った。
「リオルド、僕たちは振られたね」
「あ、ああ…」
「あれ、らしくないね。いつもの君なら僕と二人で~とか言い出すとこだよ?」
「…人がいるからな」
「なるほど。夫婦円満だと思わせるのは大事なことだよ」
また始まるのだろうか?
なんだか料理も美味しく感じなくなってきた。
リオルドはともかくとして、クリスの気持ちはよく分からない。
どちらかを選ぶときアーノルドを選んだと聞いている。
その割にはリオルドに口説かれるのもやぶさかでは無いように見受けられる。
ーーー時間と共に気持ちが変わることもあるよね。
クリスに気持ちを聞いてみたいけど、リオルドへの恋心を打ち明けられたら自分は引くしかない。
だから聞かない。せめて、頑張ると決めた一年間の間は。
「あれ、ユウトの指輪…結婚指輪も兼ねてたんだね」
「え?あ、うん」
「別邸で見た時は気づかなかった。へぇ、色々な宝石が散りばめられて綺麗だね。見せて見せて」
クリスがユウトの指に手を伸ばそうとすると、リオルドがユウトの左手をガシッと握った。
「まだ、魔力切れを直してないんだ」
「そうなの?危ないね」
「あぁ、だから直すよ」
リオルドはユウトの左手からするすると指環を外した。
あんなに頑張っても取れなかった指環はリオルドの手にかかると呆気なく外れてしまう。
胸ポケットに指環を仕舞うと、代わりに金色のバングルを出してユウトの腕に嵌めた。
「これも魔道具だから」
指環は舞踏会の間は外させないと言ったのに。
クリスが絡むとリオルドは行動を変えてしまう。
面白くないけど…諦めるしかないのだろう。
「リオルド!」
割って入ってきたクロードには余裕がなく、鬼気迫る顔をしてリオルドの耳に何かを舌打ちしている。
リオルドは一瞬顔を固まらせたが、すぐに分かったと返事をするとユウトとクリスを見た。
「王の元へ戻ろう、舞踏会は中止だ」
☆ ☆ ☆
王から舞踏会の中止が言い渡された。
その理由は衝撃的なものだった。
「みなのもの、舞踏会は中止だ。遠方から来たものもいるのにすまない。先程、当家使用人の一人が毒物の混入されたものを口に含み倒れた。」
舞踏会の会場はザワザワし、悲鳴をあげるご婦人や、恐怖のあまり逃げ出そうとする紳士が現れた。
「そこを開けてくれ!」
紳士は騒ぎ立てるが、扉は騎士達ががっちりとガードしていて出ることは出来ない。
「みなも飲食物に口をつけないで欲しい。そして悪いが入り口に立つ騎士に名前を述べ、荷物の中を見せてから帰路について欲しい」
「俺達も疑われているの?」
「荷物なんて嫌だわ」
貴族達は次々と不満を口にした。楽しかった舞踏会は一瞬にして渾沌とした場に変わり、人々は不安や不満を口にする
「勘違いはしないで欲しい。王はあなた達を疑っている訳ではない。城に留め置くのは危険だと考えていらっしゃる。早くあなた達を安全な場所へ帰すために、荷物を中を確認し、身の潔白を証明して頂いて早急にお帰り頂きたい。ご婦人には女性の騎士が対応する。協力願いたい」
リオルドが説明すると、貴族達の空気が変わった。
「そういうことなら」
「怖いし早く帰りたいわ」
貴族達はバラバラと騎士の列に並びだし、名前を記載し、バッグの中を確認させると急ぎ足で城を出ていった。
「さて、おまえ達には説明しよう」
今、会場に残されているのは王族の人間だけだ。
「毒の混入はメインの調理場で行われた。メイドが倒れたのも…調理場だ。王家専用の調理場は安全だからしばらく調理はそちらで行う。滞在している来客の分もだ」
貴族達には大方帰って貰ったが、数人城に部屋を借り宿泊していたものはそのまま滞在して貰っている。
時間的に来客の中で毒を混入出来るのは宿泊した者に限られるからだ。
あとは使用人、出入り業者が怪しまれる。
「みなも、充分に気をつけて欲しい」
王族達は無言で頷いた。
みな一様に暗く思い詰めた顔をしている。
「そして、ユウト。気を確かにして聞いて欲しい」
「え…はい」
「今回毒を口に含んだ使用人はユウト付きのメイだ」
ーーーメイ?メイって僕の知ってるメイ?どうして?
「メイ…が?」
「あぁ、命に別状はない。だが…言いにくいが、恐らくユウトを狙ったものと思われる。あと、ドルナー公爵からも連絡が来ていて、ミシェルが数日前から行方不明だ。関係ないとは思うが気を付けてくれ」
ーーーメイが、僕の代わりに毒を…!
ユウトは目の前が真っ暗になり倒れこんだ。
後ろにいたリオルドがすぐに抱き止め、ユウトを横抱きにして抱える。
「なんということ…」
顔色が悪く今にも倒れそうな王妃にはレイルが寄り添っている。
「リオルド、ユウトを守ってあげて。僕もなるべくユウトと共に過ごすから...」
クリスの言葉に、リオルドはユウトを抱き抱えたまま答えた。
「当たり前だ。ユウトは俺が守る…狙いがユウトなら話が変わってくるからな」
リオルドはそう言うと気を失っているユウトの頭に顔を埋めてキスをした。
閉じられたユウトの瞼から涙が一筋頬を伝って流れ落ちる。
「今日はこれで失礼する」
ユウトを抱え、自室に戻りながらリオルドは激しい怒りを覚えていた。
ーーー何故、途中でターゲットを変えたんだ。クソッ
ユウトを狙ったことは勿論、自分の直属の部下であるメイに手を掛けたことも許すことは出来ない。
ミシェルの行方がわからないのも気になる。
どのみち、アイツは今回の件に関わっている筈だ。
早急に決着をつけなくてはならない。
ネイビーをベースに作られた衣裳は、やはりユウトの分だけリボンやレースを使って可愛らしく仕上げてある。
先ほどリオルドとメイの会話を盗み聞き…もとい立ち聞きしたせいでリオルドはすっかり大人しくなってしまった。
今日の夜にでも改めてローゼマリーの話を聞いてみたいとユウトは思っていた。
ーーー今日はレイルもいないし、どうしよう。
二日目の舞踏会は初日よりも随分と楽だった。
昨日来れなかった貴族と挨拶を交わしたら、もう特別やることは無い。
王や王妃はまた貴族達に捕まっているし、アーノルドは早々に切り上げたようで姿が見えない。
クリスもまた貴族達に囲まれて談笑している。
リオルドの元にも誰かしら来るだろう、何をして時間を潰すべきか…
「何か食べるか?昨日は殆ど食べられなかっただろう?」
「え…あ、はい」
リオルドに連れられてテーブルに座ると給仕係が取り分けた料理を皿に載せ運んできた。
マッシュポテトにカリカリに焼いた干し肉、芽キャベツのブイヨン煮に焼きたてのパン。
「美味しそう!食べて…いいのかな」
「あぁ、食べろ。他に食べたいものがあれば言え。酒以外でだ」
「お酒は駄目ですか...」
「おまえは酒は駄目だ。飲みたいなら部屋で練習してからだ」
ーーー僕も一応男だし、お酒くらい飲めるのに。
やっぱり婚約パーティーで飲みすぎたことを怒っているのだろうか?
まぁ、いいやと思い直し、ユウトは料理に手をつけた。
どれも美味しく一瞬で幸せな気分で満たされる。
あれもこれもとモグモグ食べ進めていると、目の前のリオルドが肘をついてユウトを見ていることに気が付いた。
ーーーうぅ、美形に見つめられると食べづらいな…。
「あの、リオルド様は食べないのですか?」
「俺はいらない。腹も減ってないし」
「そう見られるとちょっと食べづらいと言うか」
「ふーん」
リオルドはサファイアブルーの瞳をいたずらに光らせ、首を傾げた。絹のような金髪がサラサラと肩から滑り落ちる。
ーーーか、顔が良すぎて辛いっ。なんでこんなに顔面が整ってるんだ!こっちだって緊張するよ
「ほら、早く食べろよ」
「そ、そうは言われてもですね?」
「なに、食べさせてやろうか?」
「な、な、何言ってんですか…??ここをどこだと…酔ったの??」
貴族達は昨日のローゼマリーの一件もあり心配していた。だが、仲睦ましそうなリオルド夫妻を見てホッと胸を撫で下ろした。
身代わり妃はどうやら“氷の情炎”と上手くいっているようだと。
「酔ってない。ほら、フォーク寄越せよ。食べさせてやるから」
「ちょ…絶対酔ってる!水飲んで正気になってよ!」
リオルドとユウトが攻防戦を繰り広げていると、シャンパングラスを持ったクリスが横から声をかけてきた。
「僕もご一緒していいかな?」
いつもなら「勿論」と即答するリオルドが「あー…」と言ったまま返事をしない。
僕に気を使っているのだろう。
だが、貴族達の前で王族が不仲に見えるような行動は宜しくない。
「うん、クリスも座りなよ」
ユウトは無理矢理笑顔を作り、努めて明るく言った。
「ユウト、今日の朝はごめんね。」
椅子に座ったクリスはションボリしている。
「僕、ユウトと一瞬にいたかっただけなんだ。城下街を歩く時もここにユウトを連れていきたいなってよく思ってたから...二人の邪魔をするつもりはなくて、でもごめん」
「ううん、クリス気にしないで。僕は本当に書庫に行きたかったんだ。明日も行く」
「明日も!?」
黙っていたリオルドが声を上げ、クリスは目を丸くした。
「明日も行くのか?明日は今日の仕切り直しで俺と城下街に行けばいいじゃないか」
「もう明日しか書庫に行く日がないんです。本は持ち出し禁止だし…」
「じゃあさ、ユウト。僕の部屋に遊びにおいでよ。本は無いけどさ、、昔みたいに一緒にお菓子食べて話がしたいよ」
「クリス、ごめん。本は明日しか読めない。別邸に来てくれれば僕にはいつでも会えるから」
「えぇ…。ユウトは昔からこうなると聞かないからなぁ」
ふふっとクリスが笑った。
「リオルド、僕たちは振られたね」
「あ、ああ…」
「あれ、らしくないね。いつもの君なら僕と二人で~とか言い出すとこだよ?」
「…人がいるからな」
「なるほど。夫婦円満だと思わせるのは大事なことだよ」
また始まるのだろうか?
なんだか料理も美味しく感じなくなってきた。
リオルドはともかくとして、クリスの気持ちはよく分からない。
どちらかを選ぶときアーノルドを選んだと聞いている。
その割にはリオルドに口説かれるのもやぶさかでは無いように見受けられる。
ーーー時間と共に気持ちが変わることもあるよね。
クリスに気持ちを聞いてみたいけど、リオルドへの恋心を打ち明けられたら自分は引くしかない。
だから聞かない。せめて、頑張ると決めた一年間の間は。
「あれ、ユウトの指輪…結婚指輪も兼ねてたんだね」
「え?あ、うん」
「別邸で見た時は気づかなかった。へぇ、色々な宝石が散りばめられて綺麗だね。見せて見せて」
クリスがユウトの指に手を伸ばそうとすると、リオルドがユウトの左手をガシッと握った。
「まだ、魔力切れを直してないんだ」
「そうなの?危ないね」
「あぁ、だから直すよ」
リオルドはユウトの左手からするすると指環を外した。
あんなに頑張っても取れなかった指環はリオルドの手にかかると呆気なく外れてしまう。
胸ポケットに指環を仕舞うと、代わりに金色のバングルを出してユウトの腕に嵌めた。
「これも魔道具だから」
指環は舞踏会の間は外させないと言ったのに。
クリスが絡むとリオルドは行動を変えてしまう。
面白くないけど…諦めるしかないのだろう。
「リオルド!」
割って入ってきたクロードには余裕がなく、鬼気迫る顔をしてリオルドの耳に何かを舌打ちしている。
リオルドは一瞬顔を固まらせたが、すぐに分かったと返事をするとユウトとクリスを見た。
「王の元へ戻ろう、舞踏会は中止だ」
☆ ☆ ☆
王から舞踏会の中止が言い渡された。
その理由は衝撃的なものだった。
「みなのもの、舞踏会は中止だ。遠方から来たものもいるのにすまない。先程、当家使用人の一人が毒物の混入されたものを口に含み倒れた。」
舞踏会の会場はザワザワし、悲鳴をあげるご婦人や、恐怖のあまり逃げ出そうとする紳士が現れた。
「そこを開けてくれ!」
紳士は騒ぎ立てるが、扉は騎士達ががっちりとガードしていて出ることは出来ない。
「みなも飲食物に口をつけないで欲しい。そして悪いが入り口に立つ騎士に名前を述べ、荷物の中を見せてから帰路について欲しい」
「俺達も疑われているの?」
「荷物なんて嫌だわ」
貴族達は次々と不満を口にした。楽しかった舞踏会は一瞬にして渾沌とした場に変わり、人々は不安や不満を口にする
「勘違いはしないで欲しい。王はあなた達を疑っている訳ではない。城に留め置くのは危険だと考えていらっしゃる。早くあなた達を安全な場所へ帰すために、荷物を中を確認し、身の潔白を証明して頂いて早急にお帰り頂きたい。ご婦人には女性の騎士が対応する。協力願いたい」
リオルドが説明すると、貴族達の空気が変わった。
「そういうことなら」
「怖いし早く帰りたいわ」
貴族達はバラバラと騎士の列に並びだし、名前を記載し、バッグの中を確認させると急ぎ足で城を出ていった。
「さて、おまえ達には説明しよう」
今、会場に残されているのは王族の人間だけだ。
「毒の混入はメインの調理場で行われた。メイドが倒れたのも…調理場だ。王家専用の調理場は安全だからしばらく調理はそちらで行う。滞在している来客の分もだ」
貴族達には大方帰って貰ったが、数人城に部屋を借り宿泊していたものはそのまま滞在して貰っている。
時間的に来客の中で毒を混入出来るのは宿泊した者に限られるからだ。
あとは使用人、出入り業者が怪しまれる。
「みなも、充分に気をつけて欲しい」
王族達は無言で頷いた。
みな一様に暗く思い詰めた顔をしている。
「そして、ユウト。気を確かにして聞いて欲しい」
「え…はい」
「今回毒を口に含んだ使用人はユウト付きのメイだ」
ーーーメイ?メイって僕の知ってるメイ?どうして?
「メイ…が?」
「あぁ、命に別状はない。だが…言いにくいが、恐らくユウトを狙ったものと思われる。あと、ドルナー公爵からも連絡が来ていて、ミシェルが数日前から行方不明だ。関係ないとは思うが気を付けてくれ」
ーーーメイが、僕の代わりに毒を…!
ユウトは目の前が真っ暗になり倒れこんだ。
後ろにいたリオルドがすぐに抱き止め、ユウトを横抱きにして抱える。
「なんということ…」
顔色が悪く今にも倒れそうな王妃にはレイルが寄り添っている。
「リオルド、ユウトを守ってあげて。僕もなるべくユウトと共に過ごすから...」
クリスの言葉に、リオルドはユウトを抱き抱えたまま答えた。
「当たり前だ。ユウトは俺が守る…狙いがユウトなら話が変わってくるからな」
リオルドはそう言うと気を失っているユウトの頭に顔を埋めてキスをした。
閉じられたユウトの瞼から涙が一筋頬を伝って流れ落ちる。
「今日はこれで失礼する」
ユウトを抱え、自室に戻りながらリオルドは激しい怒りを覚えていた。
ーーー何故、途中でターゲットを変えたんだ。クソッ
ユウトを狙ったことは勿論、自分の直属の部下であるメイに手を掛けたことも許すことは出来ない。
ミシェルの行方がわからないのも気になる。
どのみち、アイツは今回の件に関わっている筈だ。
早急に決着をつけなくてはならない。
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