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第1章 魔犬
11.復活
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ーーーまた、今日も始まるのね。リオルドも自室で朝食をとればいいのに
王妃は朝から憂鬱だった
ここ数日、食堂ではリオルドとクリスの激しい攻防戦が繰り広げられている
見かねて一度口を挟んだものの、クリスは全く王妃の手には負えず、それからは二人が言い争う中、王妃、レイル、アーノルドの三人は黙って黙々と食事を済ませていた
ーーー私だってあの告白を聞いた時は驚いたわ
リオルドがクリスの弟を妃にすると言い出した時、王と王妃は猛反対した
「身代わりなんてそんな…巻き込んで可哀想よ」訴えては見たものの、リオルドに一向に引く気配が無いので、王と王妃はひとつの条件を出した
ユウトには絶対に手を出さないこと
白い結婚にするようにリオルドに求めたのだ
王と王妃はいつかその時が来たらユウトをマグドー侯爵家に戻してあげるつもりでいた
身代わりなんて酷い扱いだけれど、身体が無垢なままでいれば離縁し、実家に戻ることができる
そうなったら良い縁談を王家からユウト・マグドー次期侯爵に紹介してあげようと考えていた
その話をするとリオルドは鼻で笑った
「ふっ。元々手を出すつもりなんてありませんよ。そちら方面は不自由していないので。まぁ、結婚したらしばらくは控えるつもりでいますが」
それを聞いて二人は安心した
クリスを慕い続ける一方で数多くの未亡人と浮き名を流してきた美男子リオルド。弟はクリスに似ていると聞いて不安だったがこれなら大丈夫そうだ
その日の夜、王と王妃は隠密でマグドー家に向かいリオルドとの婚約を願い出た
ーーーそれが、どうよ!結婚初日に早速手を出したじゃない!
お手つきになったユウトはもうマグドー家には帰れない
例えリオルドと離縁したとしても、王家の管理下で一生暮らしていくしか道は無いのだ
王妃はリオルドが朝っぱらから「花嫁というものは~」と語りだしたことを思い出しイライラした
「お母様、兄さまがくる」
第三王子のレイルはとても耳が良く、リオルドが食堂近くまで来ていることを足音で感じたようだ
王妃が左側を見ると、クリスが苛立ちを隠さずにテーブルについた指をカチカチと鳴らし、食堂の入り口を睨み付けている
「おはよう」
ーーーあー、また始まるわ。王妃が覚悟を決めた時、リオルドの後ろからユウトがぴょこんと顔を出した
「おはようございます!」
「ユウト!!!!」
クリスはすぐに立ち上がってユウトの元に駆けよった
「ユウト、大丈夫?心配したんだよ?」
「クリス、心配かけてごめん。もう元気だよ」
「本当に?でも、でも…」
「本当に大丈夫、だから落ち着いて」
ユウトが今にも泣き出しそうなクリスの手を握り慰めていると「おい、早く座れ」とさっさと席についたリオルドが苛ついた声で言った
「あ、はい。クリスも席に戻りな?」
「うん」
それからは比較的穏やかにみんなで歓談していた
城や街のことをユウトに教えたり、まだ小さな頃アーノルド、リオルド、クリスの三人で仲良く遊んでいた話をした
アーノルドも珍しく饒舌だったし、レイルもユウトとの挨拶を無事に終え満足そうな顔をしていた
楽しい時間に水を差したのはやはりあの男だった
「今日の夜に【夜露の儀】を済ませ、明日の朝にはベルナーの別邸に移る」
それまで賑やかだった食卓は一瞬で静まりかえった
「明日の朝って随分急な話だなぁ。ユウトもまだ城に慣れていないだろうし、少し日程をずらせないのか?」
いつも静かに人の話を聞いているアーノルドが珍しくリオルドに意見した
「兄さん、俺はこれから討伐や遠征がある。それを考慮すると明日しか日が無いんだ」
「そうか、それなら仕方がないか。ユウト、ベルーナは良いところだよ。落ち着いたらまた城に顔を出してくれ」
アーノルドはユウトを見ると優しそうなグレイの目を細めた
ーーー同じ人から生まれた兄弟なのに、アーノルドは穏やかな人だ
「はい、是非また」
「うん。無理しないで」
アーノルドは穏やかに受け入れたがその妻も同じだと思ったら大間違いだ
「別邸に行くってことはユウトは城では暮らさないってこと?」
納得いかなそうなクリスにリオルドが答える
「そうだ。第一王子夫妻が城にいるんだ、常識的にも弟は別邸に移るべきだろう」
「それはそうかもしれないけど。早すぎくない?」
「先ほど兄にも話した。明日しか時間が無い」
「それにっ…リオルドが城を離れて大丈夫なのか?実質今中心となって動いているのはリオルドじゃないか!いきなり別邸にひっこまれたら国はどうなるの!?」
妃自らそう言ってしまっては、夫であるアーノルドは立つ瀬が無い
あまりの気まずさに王妃とレイルは下を向いてコーヒーを飲んだ
「俺が別邸に泊まるのは西の森で討伐があった時くらいだ。月にして1週間くらいだろう。城と別邸は離れているから通うことは出来ない、よって残りの日は城にいる。問題ない」
ーーーそれは初耳だ。僕は別邸に行くけどリオルドは殆どの時間を城で過ごすことになるんだ
ん?それっていいのかな?
僕はクリスの身代わり妃としての役割を遂行できる?…でも、今も特に何もしてないんだよな…妃の位置にいること自体に意味があるのかな
「城に殆どいるならユウトも城に置けばいいじゃないか」
「クリス…」
リオルドはサファイアブルーの目をクリスに向けて微笑んだ。あたり一面に花が咲き乱れそうなほどに美しい
「その話はさっきもしただろう?」
「そうだけど…」
「ユウトが心配なら、俺がベルナーから帰った時に話をしよう」
「…たまには会えるんだよね?」
「有事には城に連れてくる」
「わかった...」
ーーー何とか無事に終わったようね。リオルドとクリスの朝の攻防戦も今日で終わり!王妃は胸を撫で下ろした
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「引っ越しの準備も終わりましたし、夜は【夜露の儀】があります。それまでゆっくりなさいますか?」
夜のためには少し休んでおいた方がいいのだが、明日には城ともお別れだと思うと少し寂しい気もする
有事には連れてくるつもりのようだけど次はいつここに来れるかも分からない
「メイド長にこの前のお礼を言いたいな。あと、最後に庭園を見てみたい」
「メイド長は後にするとして、庭園ですか?」
「うん。最近は引きこもってたから窓から庭園を眺めたりしてたんだ。一度近くで見ておきたいと思って」
メイはユウトの後ろに面する小さな窓に目をやった
ーーー城にきてから殆どこの部屋にいらっしゃったものね
「では庭園に行きましょうか!今準備いたしますね」
メイはユウトが動きやすいように白地のインナーの上に柔らかいクリーム色のシフォン生地のつなぎを着せた。腰と足元にクシュクシュの絞りが入っていてとても可愛らしい
「お似合いですわ」
「有り難う、なんだか照れるね。前はカチッとした服しか着たことが無かったから…妃ならこれもありかな」
「ユウト様は何でも似合うからメイも楽しませて貰ってます。さぁ、庭園へ行きましょうか」
二人は連れだって庭園に向かった
ーーー上から見るのと実際来るのじゃ全然違う
ユウトは思っていたより広い庭園の中を見回した
「今日は天気も良いので」とメイは大きな日傘をさしてユウトのすぐ後ろについて歩いている
「ユウト様、私も庭園には初めて来ました。毎日近くは通るんですけど、実際に足を踏み入れると一段と綺麗ですねぇ」
ペチュニア、サルビア、バーベナにゼラニウム
まだまだ沢山の花が咲いていて、小さな木には果物までついている
「綺麗だね、思ったより広いし」
道なりに進んでいくと薔薇のみが集められた一角に辿り着いた
赤や黄色、とても小さなバラやアーチ状になっているつるバラを眺めていると片隅で一生懸命作業をしている庭師に目がいった
「精が出ますね」
ユウトが話しかけると庭師は手を止め振り返った
「いやいや、趣味みたいなものですから…おや、ユウト様じゃないですか」
庭師はユウトを知っているようだ
一生懸命思い出して見るが、思いあたる節がない
大体、城に来てから殆ど人に会っていないのだ
60代~70代くらいだろうか
背丈はありかなり痩せているが、白髪交じりの短髪には清潔感がある
顔に刻まれた皺は笑うとより一層深くなり柔和な印象を与える
ーーーどなたですか、なんて聞くのは失礼だよね。うーん
「あっ、もしかして枢機卿様…ですか」
「おっ正解です。良く分かりましたな」
庭師だと思っていた枢機卿はウィンクをしてワハハと大きな声で笑った
「メイも黙ってくれていて有り難う」
メイは困り顔で「枢機卿さま~メイはドキドキしましたよ」となじった
「いやいや、ユウト様失礼しました。私は王に頼んで枢機卿の傍ら庭師もしているんです」
「えっ、お忙しいのに大変じゃないですか?」
「枢機卿と言いましても、実際はシスター2人と私です。
街や村の民は精霊レノディアへの信仰が厚いので自ら色々してくれますし、私がやることは実はそんなに無いんですよ」
ーーーそんなものかな?そうは言っても教会の代表だし、忙しいんじゃないだろうか?
「僕に出来ることがあればおっしゃってください」
ーーー草取りとか水撒きくらいなら僕でも出来るだろう
「ユウト様はお優しい、有り難うございます。今日は【夜露の儀】がありますから私も庭仕事はそろそろやめます。ユウト様もお戻りになって夜の為に体を休めてください。中々ハードですからな!ハハハ」
声をあげて快活に笑う枢機卿に「では後程お願いします」と答えてユウトは庭園をあとにした
部屋への帰り道、メイが枢機卿の事を教えてくれた
枢機卿は身寄りの無い子供を常時4~5人集めて教会で面倒を見ているらしい
その中で12~15歳の子供にシスターや庭師の仕事を手伝って貰っている。
16歳になったら就職や縁談を見つけてきて自立を促しているそうだ
「枢機卿はよく出来たお人なんです」
メイの話を聴きながら【夜露の儀】の何がハードなんだろう?とユウトはそのことが気になって仕方がなかった
王妃は朝から憂鬱だった
ここ数日、食堂ではリオルドとクリスの激しい攻防戦が繰り広げられている
見かねて一度口を挟んだものの、クリスは全く王妃の手には負えず、それからは二人が言い争う中、王妃、レイル、アーノルドの三人は黙って黙々と食事を済ませていた
ーーー私だってあの告白を聞いた時は驚いたわ
リオルドがクリスの弟を妃にすると言い出した時、王と王妃は猛反対した
「身代わりなんてそんな…巻き込んで可哀想よ」訴えては見たものの、リオルドに一向に引く気配が無いので、王と王妃はひとつの条件を出した
ユウトには絶対に手を出さないこと
白い結婚にするようにリオルドに求めたのだ
王と王妃はいつかその時が来たらユウトをマグドー侯爵家に戻してあげるつもりでいた
身代わりなんて酷い扱いだけれど、身体が無垢なままでいれば離縁し、実家に戻ることができる
そうなったら良い縁談を王家からユウト・マグドー次期侯爵に紹介してあげようと考えていた
その話をするとリオルドは鼻で笑った
「ふっ。元々手を出すつもりなんてありませんよ。そちら方面は不自由していないので。まぁ、結婚したらしばらくは控えるつもりでいますが」
それを聞いて二人は安心した
クリスを慕い続ける一方で数多くの未亡人と浮き名を流してきた美男子リオルド。弟はクリスに似ていると聞いて不安だったがこれなら大丈夫そうだ
その日の夜、王と王妃は隠密でマグドー家に向かいリオルドとの婚約を願い出た
ーーーそれが、どうよ!結婚初日に早速手を出したじゃない!
お手つきになったユウトはもうマグドー家には帰れない
例えリオルドと離縁したとしても、王家の管理下で一生暮らしていくしか道は無いのだ
王妃はリオルドが朝っぱらから「花嫁というものは~」と語りだしたことを思い出しイライラした
「お母様、兄さまがくる」
第三王子のレイルはとても耳が良く、リオルドが食堂近くまで来ていることを足音で感じたようだ
王妃が左側を見ると、クリスが苛立ちを隠さずにテーブルについた指をカチカチと鳴らし、食堂の入り口を睨み付けている
「おはよう」
ーーーあー、また始まるわ。王妃が覚悟を決めた時、リオルドの後ろからユウトがぴょこんと顔を出した
「おはようございます!」
「ユウト!!!!」
クリスはすぐに立ち上がってユウトの元に駆けよった
「ユウト、大丈夫?心配したんだよ?」
「クリス、心配かけてごめん。もう元気だよ」
「本当に?でも、でも…」
「本当に大丈夫、だから落ち着いて」
ユウトが今にも泣き出しそうなクリスの手を握り慰めていると「おい、早く座れ」とさっさと席についたリオルドが苛ついた声で言った
「あ、はい。クリスも席に戻りな?」
「うん」
それからは比較的穏やかにみんなで歓談していた
城や街のことをユウトに教えたり、まだ小さな頃アーノルド、リオルド、クリスの三人で仲良く遊んでいた話をした
アーノルドも珍しく饒舌だったし、レイルもユウトとの挨拶を無事に終え満足そうな顔をしていた
楽しい時間に水を差したのはやはりあの男だった
「今日の夜に【夜露の儀】を済ませ、明日の朝にはベルナーの別邸に移る」
それまで賑やかだった食卓は一瞬で静まりかえった
「明日の朝って随分急な話だなぁ。ユウトもまだ城に慣れていないだろうし、少し日程をずらせないのか?」
いつも静かに人の話を聞いているアーノルドが珍しくリオルドに意見した
「兄さん、俺はこれから討伐や遠征がある。それを考慮すると明日しか日が無いんだ」
「そうか、それなら仕方がないか。ユウト、ベルーナは良いところだよ。落ち着いたらまた城に顔を出してくれ」
アーノルドはユウトを見ると優しそうなグレイの目を細めた
ーーー同じ人から生まれた兄弟なのに、アーノルドは穏やかな人だ
「はい、是非また」
「うん。無理しないで」
アーノルドは穏やかに受け入れたがその妻も同じだと思ったら大間違いだ
「別邸に行くってことはユウトは城では暮らさないってこと?」
納得いかなそうなクリスにリオルドが答える
「そうだ。第一王子夫妻が城にいるんだ、常識的にも弟は別邸に移るべきだろう」
「それはそうかもしれないけど。早すぎくない?」
「先ほど兄にも話した。明日しか時間が無い」
「それにっ…リオルドが城を離れて大丈夫なのか?実質今中心となって動いているのはリオルドじゃないか!いきなり別邸にひっこまれたら国はどうなるの!?」
妃自らそう言ってしまっては、夫であるアーノルドは立つ瀬が無い
あまりの気まずさに王妃とレイルは下を向いてコーヒーを飲んだ
「俺が別邸に泊まるのは西の森で討伐があった時くらいだ。月にして1週間くらいだろう。城と別邸は離れているから通うことは出来ない、よって残りの日は城にいる。問題ない」
ーーーそれは初耳だ。僕は別邸に行くけどリオルドは殆どの時間を城で過ごすことになるんだ
ん?それっていいのかな?
僕はクリスの身代わり妃としての役割を遂行できる?…でも、今も特に何もしてないんだよな…妃の位置にいること自体に意味があるのかな
「城に殆どいるならユウトも城に置けばいいじゃないか」
「クリス…」
リオルドはサファイアブルーの目をクリスに向けて微笑んだ。あたり一面に花が咲き乱れそうなほどに美しい
「その話はさっきもしただろう?」
「そうだけど…」
「ユウトが心配なら、俺がベルナーから帰った時に話をしよう」
「…たまには会えるんだよね?」
「有事には城に連れてくる」
「わかった...」
ーーー何とか無事に終わったようね。リオルドとクリスの朝の攻防戦も今日で終わり!王妃は胸を撫で下ろした
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「引っ越しの準備も終わりましたし、夜は【夜露の儀】があります。それまでゆっくりなさいますか?」
夜のためには少し休んでおいた方がいいのだが、明日には城ともお別れだと思うと少し寂しい気もする
有事には連れてくるつもりのようだけど次はいつここに来れるかも分からない
「メイド長にこの前のお礼を言いたいな。あと、最後に庭園を見てみたい」
「メイド長は後にするとして、庭園ですか?」
「うん。最近は引きこもってたから窓から庭園を眺めたりしてたんだ。一度近くで見ておきたいと思って」
メイはユウトの後ろに面する小さな窓に目をやった
ーーー城にきてから殆どこの部屋にいらっしゃったものね
「では庭園に行きましょうか!今準備いたしますね」
メイはユウトが動きやすいように白地のインナーの上に柔らかいクリーム色のシフォン生地のつなぎを着せた。腰と足元にクシュクシュの絞りが入っていてとても可愛らしい
「お似合いですわ」
「有り難う、なんだか照れるね。前はカチッとした服しか着たことが無かったから…妃ならこれもありかな」
「ユウト様は何でも似合うからメイも楽しませて貰ってます。さぁ、庭園へ行きましょうか」
二人は連れだって庭園に向かった
ーーー上から見るのと実際来るのじゃ全然違う
ユウトは思っていたより広い庭園の中を見回した
「今日は天気も良いので」とメイは大きな日傘をさしてユウトのすぐ後ろについて歩いている
「ユウト様、私も庭園には初めて来ました。毎日近くは通るんですけど、実際に足を踏み入れると一段と綺麗ですねぇ」
ペチュニア、サルビア、バーベナにゼラニウム
まだまだ沢山の花が咲いていて、小さな木には果物までついている
「綺麗だね、思ったより広いし」
道なりに進んでいくと薔薇のみが集められた一角に辿り着いた
赤や黄色、とても小さなバラやアーチ状になっているつるバラを眺めていると片隅で一生懸命作業をしている庭師に目がいった
「精が出ますね」
ユウトが話しかけると庭師は手を止め振り返った
「いやいや、趣味みたいなものですから…おや、ユウト様じゃないですか」
庭師はユウトを知っているようだ
一生懸命思い出して見るが、思いあたる節がない
大体、城に来てから殆ど人に会っていないのだ
60代~70代くらいだろうか
背丈はありかなり痩せているが、白髪交じりの短髪には清潔感がある
顔に刻まれた皺は笑うとより一層深くなり柔和な印象を与える
ーーーどなたですか、なんて聞くのは失礼だよね。うーん
「あっ、もしかして枢機卿様…ですか」
「おっ正解です。良く分かりましたな」
庭師だと思っていた枢機卿はウィンクをしてワハハと大きな声で笑った
「メイも黙ってくれていて有り難う」
メイは困り顔で「枢機卿さま~メイはドキドキしましたよ」となじった
「いやいや、ユウト様失礼しました。私は王に頼んで枢機卿の傍ら庭師もしているんです」
「えっ、お忙しいのに大変じゃないですか?」
「枢機卿と言いましても、実際はシスター2人と私です。
街や村の民は精霊レノディアへの信仰が厚いので自ら色々してくれますし、私がやることは実はそんなに無いんですよ」
ーーーそんなものかな?そうは言っても教会の代表だし、忙しいんじゃないだろうか?
「僕に出来ることがあればおっしゃってください」
ーーー草取りとか水撒きくらいなら僕でも出来るだろう
「ユウト様はお優しい、有り難うございます。今日は【夜露の儀】がありますから私も庭仕事はそろそろやめます。ユウト様もお戻りになって夜の為に体を休めてください。中々ハードですからな!ハハハ」
声をあげて快活に笑う枢機卿に「では後程お願いします」と答えてユウトは庭園をあとにした
部屋への帰り道、メイが枢機卿の事を教えてくれた
枢機卿は身寄りの無い子供を常時4~5人集めて教会で面倒を見ているらしい
その中で12~15歳の子供にシスターや庭師の仕事を手伝って貰っている。
16歳になったら就職や縁談を見つけてきて自立を促しているそうだ
「枢機卿はよく出来たお人なんです」
メイの話を聴きながら【夜露の儀】の何がハードなんだろう?とユウトはそのことが気になって仕方がなかった
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