記憶の中の君へ

ミンク

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第2章  In my student days

3,during high school(1)

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 「アァン……ア…ッ…アァ…もっとぉ…」

 女の背中を見ながら大河は前後に腰を振っていた
 もうすぐイキそうになった頃合いで、四つん這いになって挿入されていた女が声をあげる

「大河ぁ…向きかえて。顔見ながらイキたい」

 大河がそのままの体勢で後ろから前に手を回し、ぬめりと光っている蕾を指で摘まむと女の中はキュウッと締まり、二人は同時に果てた 

 女は脱ぎ散らかした下着を集めながら不満気に言う

「ねぇ、どうしていつもバックでしかやらないの??あゆ、たまには大河の顔を見ながらしたい」

 パンツを履き終わり、上半身裸の大河が水を飲みながら面倒臭そうに答えた

「気持ちよきゃなんでもいいでしょ、もうやめる?」 

 女は下着を着け終わり、同じく脱ぎ散らかした制服を探す手を止めて慌てて返す

「やだ!うそうそ!もうワガママ言わないからお願いっ」
「……フッ」

 (この女はもう無いな…)

 バックでするのが嫌なら、俺はお前ではイケない
 
 中学2年の夏、大河は兄と兄の恋人の里美の性行為を目撃した
 里美の白い背中は扇情的で思春期の大河に大きな影響を与えた

 その日以来、マスターベーションはいつも里美を思い浮かべてやっていたし、中3で出来た彼女と初めてのセックスをした時も、後ろを向かせ里美の姿を思い浮かべて最後までやった

 里美の事が好きなのだ、自分でも気付いている

ーーー

 俺が小学生の時から兄は彼女を家に連れてきていた
 母親が多忙で帰りも遅かったので、少しでも俺に寂しい思いをさせたくなかったのと、毎日のように俺を預かってくれる山ノ瀬家に申し訳ない気持ちがあったんだと思う

 兄が早く帰れる日は、深月を誘ってうちのマンションで遊んだ
 兄は俺にも深月にも優しく、全力を出して一緒に遊んでくれた
 くるくると変わる兄の彼女達は、子供好きな人もいたし、プンとして話さない人もいた

 そんな中で出会ったのが里美さんだった 
 黒く艶のある長い髪をそのままたらし、切れ長の目が印象的だった
 一目みて、今までのタイプと違うな、と思った 

 里美さんは将来幼稚園の教諭になりたいそうで、大変な子供好きだった
 俺や深月に会う日は、手作りのゲームや絵本、焼きたてのクッキーを持参してきて、一緒に公園であそんだり、テレビゲームをしたり、時には勉強を教えてくれた

 くるくると変わっていた兄の彼女のポジションは、里美さんの登場により固定化された

ーーー

 大河は里美に恋い焦がれていたが、兄から奪ってやろうなどという気は毛頭なかった
 兄の事を慕っているし、何より里美がどれだけ兄を愛しているかわかっていた

 二人の邪魔をするつもりは無いが、欲しいものが手に入らない焦燥感と思春期の旺盛な性欲に負けて、
 高校生になった大河は不特定多数の女性を里美の変わりとして抱く生活を送っていた

 高1の春、会社から辞令の下りた母は海外の夫の元へ飛んだ
 その為、加賀家のマンションに住むのは大河1人となり、たまに龍河が様子を見にくる程度だった

 大河の部屋はセフレとのヤリ部屋へと化し、大河が深月の部屋に遊びに行くことはあっても、深月が遊びにくることは無くなった

ーーー

 季節は冬になり、渡り廊下で仲間達とたむろしていると、深月達が学食に向かう姿が遠くに見えた

 中学の時の仲間だった深月、矢田、工藤と俺は同じ高校に入学した
 深月達は進学科に進み、俺は普通科に入った
 そればかりが理由ではないが、高校に入ってからの俺の生活が荒れたこともあり、以前のように4人で一緒につるむことはなくなった
 ぼんやりと深月達を見ていると横から話しかけられた

「大河、今日合コンいこうぜ」 

 髪にウェーブをかけ口にピアスをつけた、いかにもチャラそうな五十嵐が立っていた

「あー。今日はいいや」
「大河いると盛り上がるんだ、次は来いよ」

 最近は五十嵐とつるむことが増えていた
 五十嵐はチャラくてエッチが好きで遊んでて、カテゴリーとしてわかりやすい
 俺達の周りには制服を着崩して胸や足を出した女子達が群がり、合コンなんて行くなだの、今日ヤりたいだの、体に絡み付きながら話しかけてくる

 ちょっとウザイけど、こういう奴らといるのが今の俺にはふさわしい

 ホームルームが終わり、学校を出て駅への道を急いでいると後ろから駆けるような足音が近づいてきた「大河!」と聞こえて振り返ると、そこには走りながらこちらに向かってくる深月の姿があった

 深月は大河に追い付くとはぁはぁと肩で息をして
 乱れた髪を直した

「一人でいるの珍しいな。もう帰るなら一緒に帰らない?」

 久しぶりに深月と話した気がする

 今日は話しがあるので早く帰るように龍河に言われていた
 そろそろ生活態度を注意される予感がした大河は
 深月がいれば兄も少しは手を緩めるかも?と思い立った

「あぁ、久しぶりだな。一緒に帰ろうぜ」

 深月は嬉しそうに笑い、二人で並んで歩き出した
 帰りの駅でも、電車の中でも深月はずっと話していて、俺はほぼ聞き役だった
 
 髪の色変えたの似合ってるよだの、ピアスは痛くないのかだの、そっちのクラスはどう?だの、矢田達の近況だの…

 深月はとりとめなく話すが、女達の話を聞くより深月の話を聞く方が耳障りがいい

 マンションの前に着くと深月が「じゃあ、またね」
 と言った
 俺は逃がしてなるものかと思い

「上がってけよ。今日兄貴もいるし」

 と自宅に誘った
 深月は誘われるとは思っていなかったようで、ポカンとした表情を浮かた

「龍兄と里美さん?」
「いや…兄貴だけじゃないか?最近は一人で来るし」

 しばらく考えていた深月が「うん。お邪魔しようかな」と頷いた

ーーー

 大河と一緒に入ってきた深月を見つけた龍河は何故か大喜びだった
 深月の成長を喜び、中に入れ入れと促し、あっというまに椅子に座らせて目の前にコーヒーを出した

 (兄貴はやっぱり深月には甘い、作戦成功だな)

 大河がコーヒーに口をつけると正面に座った龍河が突然切り出した

「兄ちゃん、この春からアメリカに行くから宜しく」

 兄が海外に行きたいというのは初耳だった
 今は2月、4月からとして残り2ヵ月を切っている

「初耳なんだけど」
「中々話せなくて悪かったな。兄ちゃん、海外でカメラを勉強したいんだ。やっと受け入れ先のオフィスが決まってな。住むところはひとまず父さん達のところに行くよ」

 兄が海外に行くのは別にいい
 家族には好きに過ごして生きて欲しい
 俺はまだ高校生だけど、今までも一人暮らしみたいなものだったし何とかなるだろう
 だが一つ聞いておきたいことがある

「里美さんはどうすんの?連れていく?」

 兄は真っ直ぐに大河の目を見た

「里美とは別れたよ」

 リビングは静まりかえり、外で遊ぶ子供達の声が僅かに聞こえてきた

「は?別れたってどういうこと?」

 大河は怒りで体が震えそうになるのを堪えて聞いた

「里美には着いてくるか、遠距離にするか聞いた。返事としてはどちらも出来ない、アメリカに行かないで欲しいと言われた。何度も話し合いを重ねたが、折り合いは付かず別れる事になった」

 決定事項を話す、落ち着いた力強い声だった

「兄貴は、じゃあアメリカに行くのを辞めよう。とはならないの?」
「ならない、俺は里美を好きだ。だからといって夢を諦めることはしない。夢を諦める理由を他人のせいにはしない。」


 他人…?里美さんを他人呼ばわりして捨てるのか?
 兄貴にとってはその程度の存在だった?
 俺は何のために里美さんを諦めて、他の女を変わりに抱いていたんだ?バカみたいじゃないか!!

「大河、理解してくれ」

 大好きな兄への怒りと里美への想い、自分が今までしてきた事で頭はグチャグチャになり大河は何も答えなかった

 隣の席に座ってずっと黙って聞いていた深月が、大河の背中を優しく撫でた
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