記憶の中の君へ

ミンク

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第2章  In my student days

1,encounter

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 《 なんだこの可愛い生き物は!! 》

 深月に初めて会った時のことは良く覚えている

 外資系企業に勤める多忙な両親に、7才年上の人気者の兄、優秀な弟である俺で構成される4人家族は一般的には恵まれた家庭にあてはまると思う

 6歳の秋に父親が海外で単身赴任をすることとなり、それを機に都内近郊のマンションに母親と兄と引っ越すことになった
 母親の実家に近いとかそんな理由だった気がする
 実際は深月の家にいる時間の方が長かったけど

 引っ越し先で、小学校進学までの少ない期間ではあるが幼稚園に入園する事になった
 朝、母と幼稚園のバス乗り場で待っていると、同じ乗り場を利用する母子が挨拶をしてきた

「おはようございます!新しい方ですか?」

 母親はとにかく明るそうな人ですぐにうちの母と打ち解けた

「加賀と言います。息子の大河です。ほらご挨拶して」

 母に促された俺は被っていた帽子を取り、見本のような挨拶をした

「かが たいが 6さいです。ひっこしてきたばかりです。よろしくおねがいします」

 向こうの母親は手を叩いて誉めちぎった

「わぁ、大河くん、すごいねぇ!お顔もイケメンだし。これは将来楽しみだ!」

 昔から外面がよく、大きな猫を被っていた俺は、内心まぁそうだろうなと思った

 それにしても、結構話をしているがこの人の子供は一体どこにいるんだ?
 そう思った時、母親のスカートの後ろからおずおずとその子供が顔を出した
 白い肌に大きな茶色の瞳、栗色の髪は肩まであり体は細く華奢だった

「やまのせ みつき。よろしくね」

 母親のスカートを掴んだまま、小さな声でいった

「こちらこそ、よろしく」

 そういうと、深月ははにかんで嬉しそうに笑った

 俺はその時、こんなに可愛い生き物がいるのかと衝撃を受けた
 今まで通っていた幼稚園にも習い事にもこんなにかわいい子はいなかった

 小さくて細くて壊れてしまいそうだ 

 俺が守ってやる!

 そう誓った大河は幼稚園でも深月に張り付き常に一緒にいた

「たいがくん、みつきはほっといてあそぼ」

 女の子達に何度も誘われたが、ガンとして深月のそばを離れようとしなかった

 入園して1週間が経った頃、今までプレで午前2時間しかいなかった俺は、午後3時の定時までに変更となった
 昼食を終え、トイレに行こうとすると深月がトコトコとついてきた

「みつき、こっちはおとこのこよう」
「うん、ぼくおとこのこ」

 あの時、叫び出したい気持ちを押さえた俺は偉かったと今でも思う
 理想の少女は男だった訳だけど、親同士が仲良くなり、深月とも気が合ったので、理想の少女はそのまま理想の友人へと変化した

 一度は守ってやると子供ながらに誓ったのに
 誰よりも傷付けてしまった

 男だと分かった時に手を離せば守れたのかもしれない

 今はもう、その手を離すことは出来そうにないし

 離してあげるつもりもない



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