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第1章 過去との再会
4.山中という男
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深月は自分のデスクに戻ると大きくため息をついた
ーひどく疲れているー
精神的なものから頭痛が止まらず、引き出しからいつもの解熱鎮痛薬を取り出した
用法 : 1回2錠 1日3回まで
4錠を手に取り口に放り込んだ
(体に悪いよな...けど…2錠じゃ効かないし…)
深月の頭痛持ちはあの夏の後遺症だ
親に付き添ってもらい高3の春から心療内科に通院した
症状は徐々に良くなり、大学2年の時には通院の必要も、薬を飲む必要も無くなった。が、未だに酷く疲れると割れるように頭が痛む
「主任、またオーバードーズですよ。体調が悪いなら今日は早退したらどうですか」
心配そうにまゆが深月を覗きこむ
「いや、大丈夫。それよりさっきは有り難う」
先程はまゆに助けられた
ーーー
大河に責め立てられた深月は何も発する事が出来ず立ち尽くしていた
しばらくの静寂の後、まゆが突然両手を合わせて叩いた
「さーて!お仕事しましょう。二人はお知り合いのようですが、今日はお仕事で来ていただいているので!」
まゆが大河の方を見ると、大河はやっと深月から視線を外した
「そうですね、失礼しました。打ち合わせを開始しましょう」
大河が席につくと、まゆは対面の深月の席の横に座った
「ほら、主任。座って始めましょう」
「あぁ、うん。有り難う」
深月はまゆの隣に座り、打ち合わせが開始された
と言っても深月が話すことは殆ど無かった
まゆは自分の企画案を次々説明していったし、大河の発した質問も全部自分で答えた
なんなら深月への問いかけも奪い取り答えた
「じゃあ、その案で進めて行くということで宜しくお願いします。玄関までお送りしますね!」
と半ば強引に大河を連れて部屋から出ていった
深月は後ろ姿に「宜しくお願い致します」と頭を下げるだけで済んだ
ーーー
「今日はもうアポも無いし、帰ったらどうです?」
番場も心配そうに声をかけてきた
「番場、たまには良いこと言うね!」
「はぁ!?たまにってなんだ!主任、俺これから営業回りに出るんで車で送りましょうか?」
「番場が?ヤッバ、それは危ないわ。私もついていく」
二人でギャアギャアと仲良く喧嘩していると
椅子の後ろに重みを感じた
なんだろうと振り返ると、珍しく早めに帰社した山中が深月の椅子の背もたれに手を置いていた
「賑やかな会社だねぇ笑、よしよし。深月は帰るぞ!俺はこれから打ち合わせに出て直帰だから、ついでに送っていく」
「いや、少し休めば大丈夫ですよ」
山中は肩眉を上げてにっこりした
「代表の言うことは聞くもんだぞ、後輩よ」
この人も種類は違うけど人垂らしだよなぁと思いつつ
「はい、お願いします」
と深月は答えた
山中の車は後部座席が使えない
荷物やら資料で埋め尽くされているからだ
「おー、乗れ乗れ。シート倒して寝ていいぞ」
と言われて、深月は助手席に乗り込んだ
荷物のせいでシートはあまり倒せなかったが、頭痛は心なしか楽になってきた
山中が車を走らせながら、眼鏡の下の目をチラリと深月に向けた
「大丈夫か?何かあったなら言え。何とかする」
深月の目頭が熱くなった
山中には随分と助けてもらった
大学時代【地蔵】とあだ名がつくほど穏やかで皆のお父さん的存在だった山中
「さすが地蔵先輩ですね」
「まぁな、地蔵だから何でもわかっちまう」
「少し…ありましたけど大丈夫です」
「…わかった。今はな、大丈夫だと。ダメになる前に言えよ」
「はい」
「ところで、その地蔵ってあだ名見た目が似てるから説あんだけどー」
車内の空気をガラリと変え、山中は深月をアパートまで送り届けた
ーーー
深月が出発してから数分後、PHENIXに1本の電話が入った
「はい、PHENIX相田です」
「……いつもお世話になっております。友和商事加賀です。先程は有り難うございました」
「いえ、こちらこそ有意義な打ち合わせが出来ました。何か変更点等ありましたでしょうか?」
「いえいえ、あの案で大丈夫です。ところで山ノ瀬主任はいらっしゃいますか?」
「…山ノ瀬は本日帰宅いたしました。伝言をお伝えしましょうか?」
「…直接ご相談したいので、携帯の番号をお聞きしても...?」
「案件の件でしたら私にご相談ください。一任されておりますし、田中や山中とも話を詰めますので…まだ何か?変更が?」
「…いえ、かしこまりました。失礼致します」
「はい、失礼致します」
受話器を置いたまゆは左のデスクにいる番場に告げた
「やってやったわ。名刺交換させなかったのが勝因ね」
「は?お前の話しはいつもよくわかんねーよ」
あきれ顔の番場に向けて、ふふんとまゆは笑って見せた
ーひどく疲れているー
精神的なものから頭痛が止まらず、引き出しからいつもの解熱鎮痛薬を取り出した
用法 : 1回2錠 1日3回まで
4錠を手に取り口に放り込んだ
(体に悪いよな...けど…2錠じゃ効かないし…)
深月の頭痛持ちはあの夏の後遺症だ
親に付き添ってもらい高3の春から心療内科に通院した
症状は徐々に良くなり、大学2年の時には通院の必要も、薬を飲む必要も無くなった。が、未だに酷く疲れると割れるように頭が痛む
「主任、またオーバードーズですよ。体調が悪いなら今日は早退したらどうですか」
心配そうにまゆが深月を覗きこむ
「いや、大丈夫。それよりさっきは有り難う」
先程はまゆに助けられた
ーーー
大河に責め立てられた深月は何も発する事が出来ず立ち尽くしていた
しばらくの静寂の後、まゆが突然両手を合わせて叩いた
「さーて!お仕事しましょう。二人はお知り合いのようですが、今日はお仕事で来ていただいているので!」
まゆが大河の方を見ると、大河はやっと深月から視線を外した
「そうですね、失礼しました。打ち合わせを開始しましょう」
大河が席につくと、まゆは対面の深月の席の横に座った
「ほら、主任。座って始めましょう」
「あぁ、うん。有り難う」
深月はまゆの隣に座り、打ち合わせが開始された
と言っても深月が話すことは殆ど無かった
まゆは自分の企画案を次々説明していったし、大河の発した質問も全部自分で答えた
なんなら深月への問いかけも奪い取り答えた
「じゃあ、その案で進めて行くということで宜しくお願いします。玄関までお送りしますね!」
と半ば強引に大河を連れて部屋から出ていった
深月は後ろ姿に「宜しくお願い致します」と頭を下げるだけで済んだ
ーーー
「今日はもうアポも無いし、帰ったらどうです?」
番場も心配そうに声をかけてきた
「番場、たまには良いこと言うね!」
「はぁ!?たまにってなんだ!主任、俺これから営業回りに出るんで車で送りましょうか?」
「番場が?ヤッバ、それは危ないわ。私もついていく」
二人でギャアギャアと仲良く喧嘩していると
椅子の後ろに重みを感じた
なんだろうと振り返ると、珍しく早めに帰社した山中が深月の椅子の背もたれに手を置いていた
「賑やかな会社だねぇ笑、よしよし。深月は帰るぞ!俺はこれから打ち合わせに出て直帰だから、ついでに送っていく」
「いや、少し休めば大丈夫ですよ」
山中は肩眉を上げてにっこりした
「代表の言うことは聞くもんだぞ、後輩よ」
この人も種類は違うけど人垂らしだよなぁと思いつつ
「はい、お願いします」
と深月は答えた
山中の車は後部座席が使えない
荷物やら資料で埋め尽くされているからだ
「おー、乗れ乗れ。シート倒して寝ていいぞ」
と言われて、深月は助手席に乗り込んだ
荷物のせいでシートはあまり倒せなかったが、頭痛は心なしか楽になってきた
山中が車を走らせながら、眼鏡の下の目をチラリと深月に向けた
「大丈夫か?何かあったなら言え。何とかする」
深月の目頭が熱くなった
山中には随分と助けてもらった
大学時代【地蔵】とあだ名がつくほど穏やかで皆のお父さん的存在だった山中
「さすが地蔵先輩ですね」
「まぁな、地蔵だから何でもわかっちまう」
「少し…ありましたけど大丈夫です」
「…わかった。今はな、大丈夫だと。ダメになる前に言えよ」
「はい」
「ところで、その地蔵ってあだ名見た目が似てるから説あんだけどー」
車内の空気をガラリと変え、山中は深月をアパートまで送り届けた
ーーー
深月が出発してから数分後、PHENIXに1本の電話が入った
「はい、PHENIX相田です」
「……いつもお世話になっております。友和商事加賀です。先程は有り難うございました」
「いえ、こちらこそ有意義な打ち合わせが出来ました。何か変更点等ありましたでしょうか?」
「いえいえ、あの案で大丈夫です。ところで山ノ瀬主任はいらっしゃいますか?」
「…山ノ瀬は本日帰宅いたしました。伝言をお伝えしましょうか?」
「…直接ご相談したいので、携帯の番号をお聞きしても...?」
「案件の件でしたら私にご相談ください。一任されておりますし、田中や山中とも話を詰めますので…まだ何か?変更が?」
「…いえ、かしこまりました。失礼致します」
「はい、失礼致します」
受話器を置いたまゆは左のデスクにいる番場に告げた
「やってやったわ。名刺交換させなかったのが勝因ね」
「は?お前の話しはいつもよくわかんねーよ」
あきれ顔の番場に向けて、ふふんとまゆは笑って見せた
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