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はるとちいと俺らの家族になってから、かなり月日が経った。
ちいは、もともとサバサバした性格なのか、ZWEITEのメンバーと仲良くやっているらしい。

はるはといえば、懐いてきてるとはいえまだまだ。
あの時から、彼女の時間が止まってるとはいえ、もう少し甘えてもいいのに。
あの頃は、一番甘えたい盛りだったろうにと思わずにはいられない。

ある日、事件が起こった。
「はる?キョロキョロしてるけど迷子になるなよ?(笑)」

『うん』
すべての物に、興味があるのか興味津々に見ている。
あるPVの撮影に連れていった時だった。

この日も遅くまで撮影があって、終わったのは日付が変わる頃だった。
ウロウロするから、ちゃんとここにいてって言ったのに、響が急いで行ってもはるはいなかった。

「はる?はるー?」

「どした?」

「はるがいないんです。ここにいるように言ったのに。」

「えっ?」

「俺、ちょっと探してきます。」

「俺も探すっ」
あちこち、探した。
スタジオ内探してもどこにもいなかった。

「はぁ、はぁっ。どこ行ったんだよ」

もしかして、外?
でも知らない土地でそんなことする?

「響、見つかった?」

「いえ」

「もしかして、外に出ちゃった?」
すると、響の携帯が鳴った。

「はい」
澪からだった。

「えっ、いた?分かった。すぐ行くっ」
走って、すぐはるの元へ行った。

郁さんと枢さんもついて来たそこは駐車場だった。
スタジオ内にいると思ってたから、気がつかなかった。

「スタジオいくら探してもいなくて、何気なく外探してみたらいました(笑)」
駐車場にあるベンチに二人で座っていた。

響は、はるのそばに行った。
次にとった行動に3人は驚いた。

パーンっと、音がしたんだ。

一瞬、郁らは何が起こったか分からなかった。
「響?」
何をやってるんだと、そばに行こうとすると

「枢、ちょっと待って」
って、小声で静止した。

響は、はるの目線と同じにしてはるの前にしゃがんだ。
「はる。俺は言ったよね?一人だけど、ちゃんと待っててねって。」

『・・・』

「連れてきておいて、一人にさせて寂しくさせてしまってることも分かってる。だけど、寂しい時はちゃんと言おう?自分の殻に閉じこもらないで?全部受け止めるから。みんなも受け止めてくれるから。」

『ごめんなさい』
そう言って、響に近づいた。

響は、はるを抱きしめた。
その瞬間、はる声をだして泣き出した。
今まで、泣いた所も見たことなかった。
初めて自分の感情も出したそんな時だった。


ようやく泣き止んだ頃
「ごめんね。痛かったよね。冷やそ」
そういって、二人でスタジオに戻っていった。

3人も、後からついてスタジオに戻る。
「まさか、響があんなことするとはな。」

「でも、ずっと言ってましたよ。まだ、俺にもちゃんと心開いてくれてないんだって」

「そっか」


それから、徐々にはるは懐いていったんだ。


もう、自分は誰からも愛されない。
はるがそう思ってから、長い年月が経った。
あの頃から、自分の時間が止まってしまった。
辛くて辛くて耐え切れなくて、人格崩壊寸前だった。

気がつくと、もう一人の人格が現れていた。
いつの頃から、現れたか誰も分からない。
しかし、はるを助ける為に現れたもう一人の人物は、はるの姉だった。

姉の名前は、ちい。
ちいが現れなければ、今のはるは存在しないのだ。
彼女は既に亡くなっていた。
自分の肉親であるから、誰にも被害を与えるわけでもない。
だから施設側は、特に態度を変えるわけでもなく、むしろ助かっていたのだ。

はるが、心を開いてくれることは少ない。
しかし、ちいがいることによって緩和されてるのだ。
しばらくして、響と蓮が会うきっかけとなるあの事件が起こった。

★★

「ちい~?ちいったら。」

≪えっ?≫
呼ばれたことに気がついて、顔を上げると凱斗がいた。

「やっと気づいた(笑)ちい、何してるの?」

≪今日、みんながやってたこと書いてるんだよ。≫

「何々?」

≪凱斗くんが失敗した所いっぱい書いた(笑)≫

「えっ?俺何か間違えてた?」

≪(笑)嘘だよ≫

「なんだ。びっくりした。」

≪でも、こうやって書いてると上手くなってるのが分かるよ。私は、ダンスのこと詳しくは分からないけど、今まで出来なかったことが出来たりしてるし≫

「そうなんだ。よく見てくれてるってことだよね(´▽`)」

≪そりゃ、いさせてもらってるんだもん。色々観察してますよ?≫

「俄然、やる気がでてきた!」

≪ふふっ。期待してるよ。≫

「ちい~」

≪はーい。ごめんね。みんな、またねっ≫

悠眞と凱斗と別れを告げ、蓮の所へ行った。

「やっぱり、蓮のとこに行っちゃうんだよね」

「仕方ないよ(苦笑)でも、こうやって話が出来るようになってきたんだし。いいじゃん。」

「そうだな」

「個人的に、一緒いたいと思っても難しいもんね。蓮がいてくれないと何かあった時に困るし(苦笑)」

「だな。こればかりはなぁ。」

すると蒼穹が
「また明日ねって、言ってもらえないのがさみしいっす」

「それ言ったら、ちいが困るだけだもんね。」

「またご飯とか、誘いましょうよ。遊びにも行きたいな」

「そうだな。今度、蓮に言っとくよ。」
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