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023話 依頼主の元へ

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 もう服や雑貨を買っていたので遠征などあっても問題は無い。だけど、これから遠征が何度もあるかもしれないので、今後の為にも大きなリュックや鞄は買っておくべき。それより依頼書に書いている場所に行くにはどうすれば良いのだろうか? 徒歩? 馬車? それとも近代的なものが発明されていたり!? それだとどれだけ嬉しいことか。
 
 「コウさん何をぶつぶつ言っているのですか?」
 
 どうやら俺が考えていたことは知らず知らずの内に声に出していた。
 その姿を心配したのか、リューは眉毛をハの字にして心配していた。

 「ごめん。少し考え事をしていただけ。それより、目的地までどうやって行こうか? やっぱり馬車とか?」
 「え? それなら……わ、私に……乗ってください」

 は?
 その言葉を聞いて、俺の思考は一時停止する。
 乗れる? どういうことだ?
 そのままおんぶして行くって事か? いやいや流石に力持ちだからって、それはない。
 それだったら何だ? 竜人から竜に変身とか?

 「の、乗る!? それはどういうこと?」
 「そ、その……隠していたんですが、私竜に変身出来るんですよ。この話は郷の者しか知らないので、秘密で」

 丁度セトは席を外していたので、知っているのは世界でも俺ただ1人。
 やっぱり、竜人なんだから竜になれても何も違和感はないよね。
 まあ、これで移動手段は確保した。次はリュック、鞄を買って家で身支度をしないといけないな。
 
 雑貨屋と服屋が隣にある露店に入り、考えに考えた結果服を追加で買うことにした。旅行でも最小限の持ち物で軽くする、とは言うが念には念だ。その結果俺は上下3着ずつ。下着を4着を買った。
 一方リューはどの服を買うか迷っていた。俺が居た世界の女子も服を選ぶのには時間をかけていたが、それはどこの世界の女性も同じらしい。確か女性は男性に比べて色を認識する能力が高いとか……。そんな知識を頭の隅っこから引っ張り出していると、こちらに視線を向けてきた。

 あー後ろを向いていろとね。

 これはこの前服を選んでいるときに学んだ。
 女の子には女の子の事情があり、男性には見せたくない物なんだと。でも実際会計時に解かることなんだが。
 てか、この時間に雑貨屋で鞄とか買ったら効率的じゃね? よし。早速行動だ。
 服屋から雑貨屋へ移動し、大きめの鞄やリュックを探す。外見では小物の雑貨が多かったが、奥には大きめの雑貨が沢山並んでいるので、結構期待は出来る。
 お! あったあった。これぐらい大きければ申し分ないな。奥の隅には大きめの鞄やリュックが沢山並んでいる。その中で幾つか目をやる。

 「50シルバか……2つで1ゴルか。結構するな」

 ここは値段より、丈夫さ、長持ちするかを考えて買うのが1番判断が正しいと考える。
 1番丈夫そうで、長持ちしそうな物……。

 一番上に吊るされている物を見た。
 生地がしっかりしてそうで、長持ちしそう。しかもリュックと鞄で同じ柄だ!
 これは買うしかない!

 恐らく店主を呼んで取ってもらい、会計してもらうシステムになっている。
 店主に取ってもらい、会計をしてもらったが……。

 「2つで2ゴルです」
 「は?」

 予想してなかった値段に思わず言葉が漏れてしまう。
 いや、2つで1ゴルは納得出来たが、流石に2つで2ゴルは予想もしてなかった。
 金には特に問題はないが、これは薬を作って売らないと、すぐに尽きてしまう。そろそろ本格的に働かないといけなくなったな。今後の自分の姿を想像しながら、嫌々2ゴルを支払い鞄とリュックを受け取る。そして、買った服をリュックの方に入れる。
 もうそろそろリューの服選びが終わっている頃かな? 隣の服屋に顔を出す。そこには既に服を選び終え、色々な服(男性物)を見たりしていた。

 どの服を見ているか解からないが、時に驚きを声に出したり。時に頬染め恥ずかしがったり。
 そして遂に俺の姿を見た。その直後硬直し、手を緩めた為に何かが重力に沿って落下した。パンツだ。
 まず最初に下を俯き硬直。次に頬真っ赤に染め、顔を上げてこちらを涙目で見てくる。目が合いその凄いスピードで駆け寄ってくる。

 「コウさん! 今のは違うんです!」
 
 ここはとぼけて反応を楽しもう。
 俺も中々ゲスいことをする。

 「違うって何が?」
 「そ、その……」
 「その?」
 「私はあんな物には全くも! これっぽちも! 興味ないです!」
 「分かった、分かった。ごめんごめん」
 「もうっ…」

 プイっと顔を背けて拗ねてしまった。ここは早めに話を変えたほうが良いかな。

 「それで、服を決まった?」
 「はい! 決まりました。今持ってきますね」
 
 さっきのは拗ねている演技だったのか?
 そう言い奥から服を悩むことなく選び、持ってきた。

 「これで全部です」

 女性だから結構多めに選んでいるかと思いきや、俺と同じくらいで驚いた。
 リューは上着3着。長ズボンとスカートを合わせて4着。下着はその下に隠れて見えないから何着買ったかは解からない。だけど服とかと合わせて着るから3着以上は買っているはず。

 そして会計は76シルバ。
 服としては高くもなく、安くもない。普通である。
 それを支払い、俺とは別の鞄の方に買った服を入れる。

 「それじゃあ1度家に戻ろうか」
 「そうですね」



 俺達は1度家に帰った後準備して出発の準備をした。
 主に荷物は俺の物となり、リューの持ち物は服だけ。
 リューは持ち物の準備が終えると、竜になってきますのでと言い、家を出て森の方へ入っていった。森の中はトラウマなのかと心配していたが、特にそんな事はないようだ。

 俺の持ち物は薬を作る器具。そして服、調理用具。
 今日買った大きいリュックだけでは足りなかったので、元々あったリュックも使い何とか全て持てた。
 そして、リューの物を含めた荷物を家の外に出し、森から出てくるのを待つ。
 竜になるのはそんなに時間が掛かるのか? 俺が準備している間に終わるかと思っていたんだけど。今現在外に出ておよそ10分は経っている。別に外は暑くはないので、待たれても問題はない。

 まだか……。

 まだか…………。

 まだなのかーーーーー!!!

 「すいません~~今行きます」

 大声で今思っておる素直な気持ちを叫ぶと、森の方からリューの声が聞こえてきた。その直後、森に住んでいた鳥たちが同時に飛び出し、空高く飛んでいく。そして、その鳥たちを追うように、森から大きな竜が現れた。
 1つ1つが大きな鱗で剣で突き刺しても簡単にへし折れるほどの硬度。
 翼が羽ばたくたびに、森には突風が吹き、木々が鳴く。
 体は濁った銀色で、周りの景色の色を反射している。
 尻尾を向けていた体をこちらに向け、やって来る。
 
 「すみません。遅れました」

 声はリューなんだが、どう見ても姿は全く違う。
 あんなに優しかった目は何もかも圧倒するギロついた目つき。しかも大きい。
 そして体は四足歩行の竜となり、1歩1歩が重い。地を揺らしながら、歩む。
 尻尾は特に長くは無く、短くも無くという感じ。だから普通だ。これは俺基準なんだが。
 
 「いやいや、ここまでリューが大きくなるとは思わなかったから驚いたよ」

 もっと体つきと同じように小さめなのかと想像していた俺がいけなかったのかもしれない。だって相手は竜になれる竜人だ。そりゃ人間の体つきだとしても、竜の姿は違う。って事はリューの郷の皆はもっと大きいのか……怖いな。

 「それについては何も言えないです。さぁ! 早く行きましょう!」
 「そうだね。荷物はどうすれば良いかな?」
 「う~ん。では私の体をあったら縄で縛ってください。そこに荷物を括り付けるか、コウさんが荷物を持って縄に掴まって下さい」
 「ん? 体を縄でしばるってそういうプレイ?」

 ここで"縛る"の意味は解かるが、からかってみよう。

 「違います! それに竜の体だとそんなにきつくない限り、痛みも感触も感じないですよ」
 「解かってるよ。というか、その状態だと人間と痛みの感覚というか、上限が違うんだね」

 まあ、当たり前といえば当たり前か。
 良くラノベで出てくるドラゴンも大砲とか、魔法などの攻撃を受けても傷が付くだけ。だから本物も創作物と同じようにタフで強いのだろうな。

 「縄は家に元々あったのがあったから大丈夫。それじゃあそれを縛り付けて早速飛ぼう」
 
 縄を家の中から取り出し、1度リューに口で服を摘まんで背中へ乗せてくれた。そして、片方縄を垂らし、もう片方は下ろしながら一緒に降りていく。その際縄はリューに押さえてもらう。腹のところで縛り、次は荷物を持ちながら背中に乗せてもらう。

 荷物を自分の体に固定させ、縄と自分を固定する。
 荷物の中から依頼書を取り出し、そこに記載されている地図を行き先を確認する。

 「それじゃあ! そのままの方向で出発!」
 「はい!」

 羽をゆっくりと羽ばたかせ、次第に地面から足が浮く。
 強風に体が負けそうになるが、そこは縄をしっかりと掴まり何とか耐える。
 そして、街の全貌が見えるほど上空に上がり、目的地へ進む。
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