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014話 助ける勇気
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目の前には、血溜まりに浸っている女の子が倒れていた。
助けないといけない。なのに、俺はただただ恐怖に駆られる事しかできなかった。
初めて"死"を目の当たりして、死体を見たくなかったという恐怖。迷宮で自分で死んでしまうのではないか、という恐怖。
誰もこんな所に来るわけ無いと、後ろに振り返り無かったことにしようとした。
だって、怖いものは怖いんだから仕方ないじゃなかい!普通の常識を持っている人なら同じ行動をするはずだ! なのに……どうして体は動かないんだ。
1歩脚を出そうとしても石のように動かない。それどころか女の子の方へ行こうとしている。
「これも薬の力だというのか……これが……あああああ!! もういい! やってやるよ! 助ければいいんだろ! 俺だって薬師だ!そのぐらいやってやろうじゃないか!」
女の子の元へ駆け寄り、生きているか脈を確認。
「何とか生きているけど、相当衰弱している」
脈は確かにあるが、大量出血で体温は下がって冷たい。
それに上を見ると、大きな竪穴がありそのから落ちてきたのだろうか。もしそれだとしたら、頭を強く打ち意識が飛んで危険な状態。
その場に回復薬を持ってきてなかったので、俺は残りの英雄薬を飲み、女の子をお姫様抱っこで仮拠点へ戻る。体に衝撃が伝わらないように、慎重かつ急いで向かう。
少し女の子の尻の部分が硬かった事が気がかりだったが、今はそんな考えに構っている暇は無い。
仮拠点に着くと、女の子を藁が敷き詰められた仮ベッドの上に寝かせる。そして、俺はリュックの中から回復薬と布を取り出す。布を適当に千切り、回復薬を染み込ませ、傷口に貼り付ける。回復薬を外部から与えることで効果があるか解らないが物は試しだ。
残った回復薬は女の子に飲ませようとするが、あまり上手く口に中に入らない。
「怪我人に回復薬を押し付けながら飲ませるのは、ちょっと厳しいかな。あ、人工呼吸みたいに口移しなら問題ないはず。もしあったとしても自分に影響があるだけだし」
新しい回復薬を4分の1を口の中に含み、女の子の唇に触れる。
口移しなどやったことが無いから、取り敢えず舌を口の中に入れゆっくり流していく。それを4回繰り返す。女の子は何か口の中に液体が入っている事が無意識に解かったのか、ごくごくと飲む。
そして、全てを口の中に入れ終えると舌を抜き、唇から離れる。
『柔らかったぁ』
人生で1度もキスをしたことが無い俺だったが、これがファーストキスとカウントしていいのか分からなかった。
治療の為だとはいえキスをしたんだから、もっと味わっておけば良かったかな。
そんな思考が一瞬よぎったが、多分女の子は一命を取り留めたはず。
目覚めるのが何時間か何日掛かるか解からない。もし、食料が尽きるまでに起きなかったら、外まで運び出すしかない。ここに居るときに目が覚めた時はご飯を食べさせたり、事情を説明する。別にいやらしい事をする訳ではない。
そして、俺は初めて迷宮でご飯を食べながら、使った薬を数えたり、今後の薬の使用ペースなどを計算していた。
今まで使った薬は。回復薬が2つ。英雄薬が2つ。
英雄薬は少しだけ飲んだだけでも効果がある事を知ってから、もの凄く使い勝手が良い。
回復薬に至っては、特に戦闘で怪我とかしないからあまり必要性は無い。
ご飯を全て食べえると、流石に疲れが溜まっていたのか眠気が襲ってきた。
少しの仮眠なら良いよね。
迷宮で寝る行為は危険だと解かっているが、それより睡眠不足で体を壊す方が危険と判断。俺は女の子に寄り添うように横になり、目を瞑った。
********************
冷たく冷えていた体が温かくなってきている気がする。
それに、周りが暖かく明るい。
あ……私天国に居るのかな……。
それだとどれだけ嬉しいことなんだろう。
私はゆっくりと目を開けた。
だが、その目の前には天国ではなく、見知らぬ男の顔があった。
********************
大体どれくらいだろうか。
2時間から3時間程仮眠をとった後、俺は目が覚めた。
というよりか、周りで何かが動いているのに気がついて強制的に目を覚まさせられた。
まだ、起きたばかりで目の前がぼやけているが、何かがコソコソ動いているのは見える。
そして、目を擦り視界を鮮明にする。
「あれ? 目が覚めたの? 意外と早かったな」
目の前に居たのは、さっき(寝てたから)まで傍で寝ていた女の子が起きてリュックの中を漁っていた。
声に気がついて、体をビクッと驚く。
そりゃ急に寝ていた人が起きて、声を発するんだから驚くのも無理ないか。
女の子は俺の方に振り返る。
「ご、ごめんなさい……」
体と声は震えている。どうやら俺に怯えているらしい。
別に怒るつもりはないんだけどなぁ……
助けないといけない。なのに、俺はただただ恐怖に駆られる事しかできなかった。
初めて"死"を目の当たりして、死体を見たくなかったという恐怖。迷宮で自分で死んでしまうのではないか、という恐怖。
誰もこんな所に来るわけ無いと、後ろに振り返り無かったことにしようとした。
だって、怖いものは怖いんだから仕方ないじゃなかい!普通の常識を持っている人なら同じ行動をするはずだ! なのに……どうして体は動かないんだ。
1歩脚を出そうとしても石のように動かない。それどころか女の子の方へ行こうとしている。
「これも薬の力だというのか……これが……あああああ!! もういい! やってやるよ! 助ければいいんだろ! 俺だって薬師だ!そのぐらいやってやろうじゃないか!」
女の子の元へ駆け寄り、生きているか脈を確認。
「何とか生きているけど、相当衰弱している」
脈は確かにあるが、大量出血で体温は下がって冷たい。
それに上を見ると、大きな竪穴がありそのから落ちてきたのだろうか。もしそれだとしたら、頭を強く打ち意識が飛んで危険な状態。
その場に回復薬を持ってきてなかったので、俺は残りの英雄薬を飲み、女の子をお姫様抱っこで仮拠点へ戻る。体に衝撃が伝わらないように、慎重かつ急いで向かう。
少し女の子の尻の部分が硬かった事が気がかりだったが、今はそんな考えに構っている暇は無い。
仮拠点に着くと、女の子を藁が敷き詰められた仮ベッドの上に寝かせる。そして、俺はリュックの中から回復薬と布を取り出す。布を適当に千切り、回復薬を染み込ませ、傷口に貼り付ける。回復薬を外部から与えることで効果があるか解らないが物は試しだ。
残った回復薬は女の子に飲ませようとするが、あまり上手く口に中に入らない。
「怪我人に回復薬を押し付けながら飲ませるのは、ちょっと厳しいかな。あ、人工呼吸みたいに口移しなら問題ないはず。もしあったとしても自分に影響があるだけだし」
新しい回復薬を4分の1を口の中に含み、女の子の唇に触れる。
口移しなどやったことが無いから、取り敢えず舌を口の中に入れゆっくり流していく。それを4回繰り返す。女の子は何か口の中に液体が入っている事が無意識に解かったのか、ごくごくと飲む。
そして、全てを口の中に入れ終えると舌を抜き、唇から離れる。
『柔らかったぁ』
人生で1度もキスをしたことが無い俺だったが、これがファーストキスとカウントしていいのか分からなかった。
治療の為だとはいえキスをしたんだから、もっと味わっておけば良かったかな。
そんな思考が一瞬よぎったが、多分女の子は一命を取り留めたはず。
目覚めるのが何時間か何日掛かるか解からない。もし、食料が尽きるまでに起きなかったら、外まで運び出すしかない。ここに居るときに目が覚めた時はご飯を食べさせたり、事情を説明する。別にいやらしい事をする訳ではない。
そして、俺は初めて迷宮でご飯を食べながら、使った薬を数えたり、今後の薬の使用ペースなどを計算していた。
今まで使った薬は。回復薬が2つ。英雄薬が2つ。
英雄薬は少しだけ飲んだだけでも効果がある事を知ってから、もの凄く使い勝手が良い。
回復薬に至っては、特に戦闘で怪我とかしないからあまり必要性は無い。
ご飯を全て食べえると、流石に疲れが溜まっていたのか眠気が襲ってきた。
少しの仮眠なら良いよね。
迷宮で寝る行為は危険だと解かっているが、それより睡眠不足で体を壊す方が危険と判断。俺は女の子に寄り添うように横になり、目を瞑った。
********************
冷たく冷えていた体が温かくなってきている気がする。
それに、周りが暖かく明るい。
あ……私天国に居るのかな……。
それだとどれだけ嬉しいことなんだろう。
私はゆっくりと目を開けた。
だが、その目の前には天国ではなく、見知らぬ男の顔があった。
********************
大体どれくらいだろうか。
2時間から3時間程仮眠をとった後、俺は目が覚めた。
というよりか、周りで何かが動いているのに気がついて強制的に目を覚まさせられた。
まだ、起きたばかりで目の前がぼやけているが、何かがコソコソ動いているのは見える。
そして、目を擦り視界を鮮明にする。
「あれ? 目が覚めたの? 意外と早かったな」
目の前に居たのは、さっき(寝てたから)まで傍で寝ていた女の子が起きてリュックの中を漁っていた。
声に気がついて、体をビクッと驚く。
そりゃ急に寝ていた人が起きて、声を発するんだから驚くのも無理ないか。
女の子は俺の方に振り返る。
「ご、ごめんなさい……」
体と声は震えている。どうやら俺に怯えているらしい。
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