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01話 異世界召喚

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 『これは、薬かな?』

 試験管中の水色の液体をテレビで見るような回す動作を俺こと、有馬 光(ありま こう)はやっていた。

 ちなみに、今俺が持ってる試験管は、知らない男に無理矢理渡された物だ。
 どうやら男は追われていたらしく、「これを君に託す。大事に扱ってくれ。後は頼んだ」と捨てセリフと試験管を押しつけた後、追っ手3人組に捕まり殺された。

 現場は見てないが、男の叫び声が聞こえたのでそう判断しただけ。
 しばらくして、追っ手の騎士3人組が俺の隣を走りすれ違った。
 恐らくこの薬を取りに追いかけていたことを何となく分かり、手に持っていた試験管を服の中に急いで隠し、下に視線を移す。
 何か焦っていたが様子だったが、なんとか気が付かれず済んだ。

 「しっかしここはどこなんだ? 地図を見ながら来たけど、この街道複雑過ぎでしょ。知らない場所に迷ったし、知らない物を託されたし。もうどうしよう。」

 突然だが、俺は今異世界にいる。
 しかも、学校に居る2学年生徒全員(500人)だ。
 いわゆる異世界召喚てやつだ。
 ラノベ小説なんかでクラスの皆と異世界に飛ばされてしまった!とはよく見るが、学校に居る生徒全員は見たことがない。
 では、この状況にまで至った事を話していこう。



 文字通り異世界召喚された俺達は、何にもないただの大広間に集められていた。周りは真っ暗で生徒達がいる所だけスポットライトが当たっているように、明るくなっていた。
 皆この非常事態に戸惑ってる様子だった。

  「ここはどこなの!?」
  「俺達さっきまで教室に居たよな?」
 「抓(つね)ったけど痛いよ」

 生徒はほっぺを抓ったり、自分にしっぺなどをして夢か確認をしていたが、当然夢ではない。
 まあ戸惑うのも良く分かる。俺も実際のところ困惑してはいる。だけど、アニメやラノベ作品を見たりしてるので困惑より感動の気持ちが上をいってしまった。
 だって憧れの異世界だぞ!?
 い・せ・か・い!
 剣と魔法の世界で、ファンタジーじゃん!
 興奮するでしょ!

 そんな事を内心で考えていると、暗闇の中から白いローブを着た男性が近づいてくる。
 顔はそこそこイケメン顔で、俺達が居た世界のヨーロッパという地域に住んでる者達に顔立ちは似ている。
 エルフかと期待したが、耳は長くなかったので違った。
 女子達は『イケメンじゃない?』と騒いでいたが、ローブを着た男性が喋ったとたん騒ぎは止まる。

 「皆さん。今回お呼びして申し訳ございません。皆さんの案内人のクーディアと言います。ここで呼んだ訳を話すわけにはいかないので、私の後ろに付いてきて下さい」
 
 クーディアは長くは語らず、来た道を戻って行く。
 そこに担任の小野先生が抗議したため、足を止めた。

 一応話は聞くんだな。

 「嫌です。私達は行きたくありません。今すぐ元の世界に返して下さい!」

 小野 祈(おの いのり)
 女性。
 23歳。
 現在独身。
 生徒思いで、生徒からも同じ先生からも評判はとても良い。
 一応処女。

 小野先生が抗議した影響なのか、生徒達も抗議を始めた。

 「そうだ!今すぐ返せー!!」
 「小野先生の言うように返せ!!」
 「「そうだ!そうだ!」」

 これが一致団結というのか。
 何かに一致団結してるのは良いけど、反対運動みたいにも見えるな。
 実際生徒達が「返せ!返せ!元に世界に返せ!」と書かれた看板を持っていたら、それにしか見えない。
 
 生徒達の声が届いたのかクーディアはこちらに振り返った。
 と同時に生徒達の声も小さくなっていった。
 大きな声を出していたら、クーディアの声が聞こえないからだろう。皆は「静かに」と隣に回していき、やがて静寂が生まれた。

 「その気持ちはとっても分かります。ですが、転移魔法は召喚しかできないので。すみません」

 その言葉に全生徒は凍り付いた。
 つまり彼が言いたいことは、もう帰れない。転移魔法というものは一方通行ということ。
 中には泣き出す生徒もおり、「お母さんにもう会えないの」や「まだやりたいゲームあったのに」と色々言っているが、クーディアの話はまだ終わってはいない。

 「ですが、貴方には魔法師になれる可能性が非常に高いです。なので今は無理ですが、強力な転移魔法が使えることが出来れば戻ることは可能なのです」
 
 その言葉に救われたのか、皆落ち込んで下を向いていた顔を上げ喜んでいた。
 だが問題はそこではない。
 言っていた事をもう一度確認する。
 彼が言っていたことは確かに喜ばしいことだ。だが確実に戻れるわけではない事がまず一つ。
 二つは、その魔法は個人にだけしか効果がないのか。それとも集団でも効果があるのか。これに関しては来たとき集団だったので、一人でも十分なのかも知れない。
 冷静に考えた結果、帰ることが出来ない可能性の方が大きいのだ。

 そう言うとクーディアは背を向き、暗闇の方へ歩いていった。
 生徒達は抗議をせずに、後を言われたように付いていく。
 恐らくだいたいは納得したのだろう。先生達はあんまり納得していなかったが。

 暗闇を抜けると、目の前には大きな庭が広がっていた。
 芝はしっかり生えそろっていて、白い花や赤い花と色とりどりの花が咲いている。
 クーディアは庭の脇の道を通り、また大きな扉にたどり着いた。
 皆はずっと庭を見てる。普段見れない光景に感動してるのだろう。
 もちもん俺もその中の一人だ。

 そしてしばらく歩いてると、クーディアが大きな扉の前で立ち止まった。
 こちらを振り向く。

 「この先は王の間となっています。くれぐれも行動、言葉は気を付けて下さい。最悪首を切られますので」

 そう言うとクーディアは扉を開けた。
 手を使わずに開けたので、多分魔法で開けたのだろう。
 そうしなければ賊とかが入ってきたとき困るのが理由なのだろうきっと。

 俺達、総勢約500人は王の間へ足を踏み入れた。
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