全人類の命を守る一騎当千の『守護者』は殺されました。守護者の卵は命をかけて彼らの代わりを代行し、事実を隠す世界を守っています

卵くん

文字の大きさ
上 下
48 / 63
アーミーナイト 体力テスト 後編

第47話 寄生されたそのさきに待つもの

しおりを挟む
「なんだよ、急に! こんな近くで大声を出されるとびっくりするじゃないか!」

「ど、どうしたんだい? シル君?」

 二人が覗き込むようにして、シルの顔を伺う。それに対して、シルはとびきりの笑顔で応えた。すでに憂いは何もない。モヤモヤしていた心のつっかえも解消済みだ。

「瘴気保有限界テストだ。あの時、俺が記録をつけてもらった記録委員の人は明らかに行動がおかしかった。先程のデンジュさんが実行委員に徹底させていたことと反した行動を行なっていたし、何故かは分からないけどテストをするたびに鍵をかけていた。

もし、寄生型のクリーチャーに頭をやられていたんだとすれば、それらの理に敵わないような行動も説明がつく」

「さっきもそんな話をしていたよな。まぁ、確かに他の記録委員の人が行うテストの手順と全く違うことを何度もやっていたって言うのは違和感を覚えざるを得ないか」

 マシュも同意するようにうんうんと首を縦に動かしている。

「瘴気保有限界テストの記録委員は2名配置していたはずだ。確か、ミウさんと、ヨシコさん。ミウさんは遠くにいるあの集団の中に姿が見えるから、行方が分からなくなっているのはヨシコさんの方・・・か。

じゃあ、つまりこういうことかい? こいつが途中から瘴気保有限界テストの記録員であるヨシコさんに寄生して、瘴気保有限界が低い彼女をクリーチャー化させたってことで」

「そう言うことになりますね。ところで、このクリーチャーに寄生されると、された側の人間はどうなってしまうのですか?」

 マシュが溢した言葉にデンジュはひどく顔を歪ませる。口にしたくないことをしなければいけない心の葛藤に悩んでいるようだった。

「単に寄生された早急に適切な手当をすれば命には別状はない。だけど、脳にまで侵入されて時間が経っているとすれば・・・。このクリーチャーはのためだけに寄生する。脳を餌として捕食し、最終的には身体全体を自分のスライム状の身体で覆い込み、同化させる。つまり、ヨシコさんは、今君が手に持っているスライムになってしまったてことさ・・・。行方も分からないし、おそらくだけどね」

「えっ・・・?」

 静寂が二人を包む。マシュは何度かデンジュと手に握られているクリーチャーとの間を目で移動すると、やがて何かを悟ったかのように大きくため息をついた。不条理な理不尽を押し付けてくるのが闇の一族。奴らと戦うと言うことがどれだけの被害が人類側に生じるのか、改めて二人にその過酷すぎる現実を突きつけてきた。

だが、まだ彼らの戦いは終わらない。オークがここを攻めてきたその真意に気づくまで、それは決して終わることはないのだから。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!

hennmiasako
ファンタジー
異世界の田舎の孤児院でごく普通の平民の孤児の女の子として生きていたルリエラは、5歳のときに木から落ちて頭を打ち前世の記憶を見てしまった。 ルリエラの前世の彼女は日本人で、病弱でベッドから降りて自由に動き回る事すら出来ず、ただ窓の向こうの空ばかりの見ていた。そんな彼女の願いは「自由に空を飛びたい」だった。でも、魔法も超能力も無い世界ではそんな願いは叶わず、彼女は事故で転落死した。 魔法も超能力も無い世界だけど、それに似た「理術」という不思議な能力が存在する世界。専門知識が必要だけど、前世の彼女の記憶を使って、独学で「理術」を使い、空を自由に飛ぶ夢を叶えようと人知れず努力することにしたルリエラ。 ただの個人的な趣味として空を自由に飛びたいだけなのに、なぜかいろいろと問題が発生して、なかなか自由に空を飛べない主人公が空を自由に飛ぶためにいろいろがんばるお話です。

転生したらチートでした

ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

処理中です...