46 / 63
アーミーナイト 体力テスト 後編
第45話 新手の闇の一族?
しおりを挟む
「どうかしたか、シル」
急に勝利の余韻に浸る二人を取り残してその場から歩き出し始めるシル。マシュが後ろから声をかけてくるが、返事が返ってくることはない。ウヨウヨと動く謎の生き物の所在を明らかにしなくてはいけないという使命感がシルを行動に掻き立てる。後ろから送られる二人の不思議そうな目線を一心に浴びながら、更に歩く速度を早めた。
「何だよ、これ」
目的の物を拾い上げると、それを持ちながら二人がいる場所にまで戻っていく。何の造作もなく捕まえられたそれは、シルの手の中でウニュウニュと動くばかりで特に危害を与えるようなことはしてこない。
だが、全身を紫色に染め上げているところから見ると、闇の一族の怪物たちと何かしらの関連性があるのは容易に想像がつく。だが、目の高さまで持ち上げられ、3人から視線を浴びようが、その正体を特定することはシルには叶わなかった。
「これ、昔どこかの本で読んだ気がする。うん・・・、このシルエット見覚えがある」
そうこぼしたのはデンジュだ。彼の博識さにはシルもマシュも舌をまくほどだ。その頭の中には闇の一族に関する知識なら全て入っているのではないかと思ってしまう。
「本当ですか?」
「こんな気持ち悪い生き物が何かの本のイラストか何かで描かれていたんですか?」
「あぁ、これは確かナメクジが瘴気に浴びすぎた場合に変異する形の一つで、体内の水分だけが残ったクリーチャーなんだ。変異した時の周りの瘴気濃度に合わせて色も変わるらしく、これまでに紫や緑色の個体が確認されているらしい。正式名称は忘れたけど、確か人の脳内に耳孔を通って侵入、寄生して、人を操ることができるって本で読んだことがある」
「えぇ! 洗脳されるんですか!?」
思わずシルは手からその生物を離す。すると、先ほどと同じ様にウニュウニュしながらゆっくりとした速度でどこかに消えていこうと動き始めるが、すぐさまマシュがすくい上げる。ついでにため息をこぼされたが、そんな怖いこと言われたら誰だってそうなるだろ、とシルは鼻を鳴らす。
「おい。大事な研究材料だろう? 逃しちゃまずいだろう」
「悪い悪い」
手を合わせてシルは謝罪する。マシュはその気味の悪いクリーチャーをなんとも思わないようで、片手でがっしりとつかんでいる。その力はシルが握っていた時以上で、先ほどよりもそいつは苦しそうにウネウネしていた。
「情報を整理しようか」
パンッという高らかになった手を叩く音の後に続いたデンジュの一声で2人は再び冷静さを取り戻す。そして、真相解明に向けて思考を繰り返していくのであった。
急に勝利の余韻に浸る二人を取り残してその場から歩き出し始めるシル。マシュが後ろから声をかけてくるが、返事が返ってくることはない。ウヨウヨと動く謎の生き物の所在を明らかにしなくてはいけないという使命感がシルを行動に掻き立てる。後ろから送られる二人の不思議そうな目線を一心に浴びながら、更に歩く速度を早めた。
「何だよ、これ」
目的の物を拾い上げると、それを持ちながら二人がいる場所にまで戻っていく。何の造作もなく捕まえられたそれは、シルの手の中でウニュウニュと動くばかりで特に危害を与えるようなことはしてこない。
だが、全身を紫色に染め上げているところから見ると、闇の一族の怪物たちと何かしらの関連性があるのは容易に想像がつく。だが、目の高さまで持ち上げられ、3人から視線を浴びようが、その正体を特定することはシルには叶わなかった。
「これ、昔どこかの本で読んだ気がする。うん・・・、このシルエット見覚えがある」
そうこぼしたのはデンジュだ。彼の博識さにはシルもマシュも舌をまくほどだ。その頭の中には闇の一族に関する知識なら全て入っているのではないかと思ってしまう。
「本当ですか?」
「こんな気持ち悪い生き物が何かの本のイラストか何かで描かれていたんですか?」
「あぁ、これは確かナメクジが瘴気に浴びすぎた場合に変異する形の一つで、体内の水分だけが残ったクリーチャーなんだ。変異した時の周りの瘴気濃度に合わせて色も変わるらしく、これまでに紫や緑色の個体が確認されているらしい。正式名称は忘れたけど、確か人の脳内に耳孔を通って侵入、寄生して、人を操ることができるって本で読んだことがある」
「えぇ! 洗脳されるんですか!?」
思わずシルは手からその生物を離す。すると、先ほどと同じ様にウニュウニュしながらゆっくりとした速度でどこかに消えていこうと動き始めるが、すぐさまマシュがすくい上げる。ついでにため息をこぼされたが、そんな怖いこと言われたら誰だってそうなるだろ、とシルは鼻を鳴らす。
「おい。大事な研究材料だろう? 逃しちゃまずいだろう」
「悪い悪い」
手を合わせてシルは謝罪する。マシュはその気味の悪いクリーチャーをなんとも思わないようで、片手でがっしりとつかんでいる。その力はシルが握っていた時以上で、先ほどよりもそいつは苦しそうにウネウネしていた。
「情報を整理しようか」
パンッという高らかになった手を叩く音の後に続いたデンジュの一声で2人は再び冷静さを取り戻す。そして、真相解明に向けて思考を繰り返していくのであった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
金眼のサクセサー[完結]
秋雨薫
ファンタジー
魔物の森に住む不死の青年とお城脱走が趣味のお転婆王女さまの出会いから始まる物語。
遥か昔、マカニシア大陸を混沌に陥れた魔獣リィスクレウムはとある英雄によって討伐された。
――しかし、五百年後。
魔物の森で発見された人間の赤ん坊の右目は魔獣と同じ色だった――
最悪の魔獣リィスクレウムの右目を持ち、不死の力を持ってしまい、村人から忌み子と呼ばれながら生きる青年リィと、好奇心旺盛のお転婆王女アメルシアことアメリーの出会いから、マカニシア大陸を大きく揺るがす事態が起きるーー!!
リィは何故500年前に討伐されたはずのリィスクレウムの瞳を持っているのか。
マカニシア大陸に潜む500年前の秘密が明らかにーー
※流血や残酷なシーンがあります※
クズ聖王家から逃れて、自由に生きるぞ!
梨香
ファンタジー
貧しい修道女見習いのサーシャは、実は聖王(クズ)の王女だったみたい。私は、何故かサーシャの中で眠っていたんだけど、クズの兄王子に犯されそうになったサーシャは半分凍った湖に転落して、天に登っちゃった。
凍える湖で覚醒した私は、そこでこの世界の|女神様《クレマンティア》に頼み事をされる。
つまり、サーシャ《聖女》の子孫を残して欲しいそうだ。冗談じゃないよ! 腹が立つけど、このままでは隣国の色欲王に嫁がされてしまう。こうなったら、何かチートな能力を貰って、クズ聖王家から逃れて、自由に生きよう! 子どもは……後々考えたら良いよね?
ガーディアンと鎧の天使
イケのモ
ファンタジー
山本智は学校の帰り道ふと気がつくと寝巻き姿で異世界にいた。
その世界で特別な力を持つ鎧を操りその力を行使することができるガーディアンと呼ばれる存在となっていた。
ガーディアンとは鎧の天使とも呼ばれる特別な力を持つ鎧を与えられた主人公の物語です。

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道
コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。
主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。
こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。
そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。
修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。
それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。
不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。
記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。
メサメサメサ
メサ メサ
メサ メサ
メサ メサ
メサメサメサメサメサ
メ サ メ サ サ
メ サ メ サ サ サ
メ サ メ サ ササ
他サイトにも掲載しています。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

追放された運送屋、僕の【機械使役】は百年先の技術レベルでした ~馬車?汽船? こちら「潜水艦」です ドラゴンとか敵じゃない装甲カチカチだし~
なっくる
ファンタジー
☆気に入っていただけましたら、ファンタジー小説大賞の投票よろしくお願いします!☆
「申し訳ないが、ウチに必要な機械を使役できない君はクビだ」
”上の世界”から不思議な”機械”が落ちてくる世界……機械を魔法的に使役するスキル持ちは重宝されているのだが……なぜかフェドのスキルは”電話”など、そのままでは使えないものにばかり反応するのだ。
あえなくギルドをクビになったフェドの前に、上の世界から潜水艦と飛行機が落ちてくる……使役用の魔法を使ったところ、現れたのはふたりの美少女だった!
彼女たちの助力も得て、この世界の技術レベルのはるか先を行く機械を使役できるようになったフェド。
持ち前の魔力と明るさで、潜水艦と飛行機を使った世界最強最速の運び屋……トランスポーターへと上り詰めてゆく。
これは、世界最先端のスキルを持つ主人公が、潜水艦と飛行機を操る美少女達と世界を変えていく物語。
※他サイトでも連載予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる