全人類の命を守る一騎当千の『守護者』は殺されました。守護者の卵は命をかけて彼らの代わりを代行し、事実を隠す世界を守っています

アーミーナイト 初日

第19話 ついてない1日〜シャワーに打たれて〜

　サーサー。

　一つ壁の向こうでシャワーを浴びている音が壁が薄いせいか漏れてくるのを、布団に潜り込みながら必死に聞くまいと抵抗する。水がシャワー室の壁に当たるたびに邪な妄想と共に、あの時目にした綺麗な裸体が頭に浮かんでくる。

しかし、どんなに布団の中で体勢を変えようにもその音が無音になることは無い上に、その考えがどこかに飛んで行くことはなく、結局悶々としたまま彼女が１秒でも早くシャワー室から出てくることを祈るしかなかった。
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「ホント今日はついてないわ」

　少女は身体を温水で濡らしながら、ため息と共に言葉をこぼす。振り返れば今日一日ロクなことがない。そう考えてしまうと思い出したくもないのに、今日という1日に起きた出来事がフラッシュバックのように鮮明に頭の中で再生される。

化粧しておめかしして、家を出たと思ったらよく分からない未知の生物に襲われ汚い唾液を撒き飛ばされたりもした。そして、必死に走って撒いたと思ってその足を緩めたとしても即座にまた追いかけてきた。まるであれは永遠を錯覚する鬼ごっこだった。そこから命からがら基地が視界に入るところまで辿りついたと言うのに。

そこで偶然近くにいた強面の軍人に助けを求めたらイキナリ刀で一刀両断するもんだから、切断面からの大量の血しぶきを浴びちゃうし。赤色でも気持ち悪いのに、緑色とか。さらに気持ちが悪い。その人よく話を聞いたらこれからお世話になる大佐だって言うし。だから、部屋で洗い流そうと思ってシャワーを浴びたら次はこれだ。もうため息しか出ない。

「これからどうしようかしら」

　勢いよく彼に強がってみたものの、同居者の変更は原則禁止されている。だから、長い間二人で仲良く暮らしていかなきゃいけないのに。険悪なままだとこれから始まる訓練で疲れた身体を部屋の中でも回復することができなくなっちゃう。

「今更、普通の友達になりましょう・・・はきついわよね」

　ほんの数時間前の自分に今更ながらとても腹が立つ。あー、タイムマシンがあれば。急にこの部屋にボロボロの服を着たヒゲまみれのおじいさんが未来の話をしにやってこないかしら。

「まぁ、明日から頑張ろう。うん、明日の自分に期待するしかない！」

　強い決意をして、彼女はまるでその決意を洗い流すかのように頭から今までよりも水圧を強くしたシャワーに打たれ始めた。