学園に男子学生は僕一人!? コミュ障の僕には、そこは天国ではなく、地獄です

卵くん

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35日目 私と付き合ってください!!

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 宮本芳佳は、どちらかといえば大人しい部類の女子生徒のように思えた。少なくとも、僕の目にはそう映る。だが、彼女の所作はいざ知らず、彼女の親があの天真爛漫な先生であることが、常に気がかりではあった。なぜなら、それは彼女が本心を隠しているかもしれない、と勘繰らせるには十分すぎる理由だったから。

「ふぅー。でも、そんな人のことばっか考えてても意味ないよな。だって、僕はまだ誰とも話せていないんだから・・・」

 机の上に広げていた弁当は、気がつけば中身は空になっていた。どうやら、考え事に夢中になりすぎて、ご飯を食べているということを危うく忘れかけてしまいそうになっていた。ちなみに、このお弁当は自分で早起きして、作ったものではない。部屋を出る前に、共有スペースの机の上にポツンと置かれていたのだ。風呂敷に包まれた弁当と、その上に僕の名前が書かれた付箋が。それを持ってきて食べていたのだが、如何せん味は美味しい・・・とは表現できるものではなかった。

 焦げてしまった卵焼きに、化け物に象られたと思われるウインナー。中に入っていたものは、どれも美食とはかけ離れたものであることは間違いない。でも、空腹の前に置かれたら、味がどうであれ、僕は全て完食してしまうのだが。

「あ、あの・・・ちょっといいですか?」

 風呂敷を再び丁寧に包んでいた僕に、誰かが話しかけてくる。半日経って、ようやく!僕は会話ができるのか!そんな嬉しさが心から込み上げてくる。危うく、それが表情に出てきそうになるが、僕はなんとか平穏を保つ。そして、僕は声がした方向に振り返った。

「ぼ、僕ですか??」

 そこに立っていたのは、女子生徒。いや、この学校では男子生徒が僕しかいなから、当たり前と言っては当たり前なんだが。

「は・・はい・・・」

 僕は、自分の目を何度か瞬きしてこの現状をなんとかして捉えようと試みる。それほどまでに、中々衝撃的な光景が広がっていた。まず、僕はこの話しかけてくれた女子と会った事がない。恐らくだが、同じクラスメイトでもないはずだ。午前中の授業において、この人が教室にいる姿は目にしていない。というか、一度でも視界に収まっていたら、僕はきっと二度見はしたはずだ。

 それを表現するこの言葉は、とても汚いものだ。だが、それは承知の上で、言葉にするが、彼女の姿はまるで力士を連想させる体型をしていた。周りの学生と同じ制服を着ているとは思えない。抑えきれない脂肪によって限界まで、制服は伸び、ボタンで閉じられている隙間から肌色のものが見え隠れしている。そして、身長も僕以上あるように見えた。僕は、男性の中でも背が高い部類には入らないが、それでも女子と比べるとまだ大きい方であると自負していた。だが、その自負を崩壊させるほど、色々と規格外の女子生徒が僕の前に立っていた。


「ど・どうかされたんですか? 何か、僕に用事でも・・・?」

 尋ねる僕に、彼女は頬を赤らめることで返事を返す。これから、何が起きるのか僕には全く想像ができていなかった。

「用事・・そうですね・・」

 彼女はわずかに視線を僕から逸らして見せる。だが、それも一瞬だ。すぐさまに、その瞳は僕を映し出す。

「うん? なに——」

「私と・・・付き合ってください!!!」

 僕の声は掻き消され、彼女の声はうるさいほど、昼休みでくつろぐ教室に響き渡った。
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