学園に男子学生は僕一人!? コミュ障の僕には、そこは天国ではなく、地獄です

卵くん

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19日目 意外と紳士なのね

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なぜ、このようなことになっているんだろう。私の身体は今、脳から送られる命令によって足の筋肉を使って立ちなさいと言われる前に、いやその命令をする必要もなく宙に浮いている。身体はだらんと下に落ちようとしているにもかかわらず、彼の手がそれを遮るようにして宙に滞在できるよう支えてくれている。

そのためか、色々なところを彼に直接力強く触られている気がしないでもないが、不思議と嫌な感じはしない。もちろん、恥ずかしい。顔から火が出るほど恥ずかしいのだが、謎の優越感が私の心を満たしていた。でも、彼はなんといっても男だ。現に今だってスカートが私の足の部分にだけ支えられ余り余ったそれが、地面に向かってだらりと伸びている。幸いなことに、今日はスカートの下に万が一を考えて体操ズボンを履いてきているから問題はないが、ここまで大っぴらかになってしまうと嬉しい気持ちはしない。

「そろそろ頃合いかしら?」

心の中でそう呟き、口を開こうとしたその瞬間。持ち上げられていた私の身体は一気にその高度を下げる。目を瞑っているから分からないが、地面スレスレのところまで下がっているのではないだろうか。余りの恐怖に開けようとした目を再び強く閉ざしてしまった。そして、彼の温かな両手で支えられていたところが、急に右手の感触が無くなったかと思うと、代わって何か硬い、骨の部分で支えられる。

「何をする気?」

 そう思ったのも束の間だった。彼は小さく息を吐くと、私のお尻の部分を上手に触らないようにしながらも、垂れていたスカートを巻き込みながら再び右手で私の身体を支えてくれる。

「意外に紳士だったのね」

彼はそのまま私を抱え込んだままエレベーターの外にへと出ていくため、歩みを進める。彼が歩くたびに揺れる身体。そして、顔の付近にある彼の胸。ここまで胸に顔を押し付けられるようにして抱え込まれると聞こうと思わなくとも、彼の鼓動が鼓膜を震わせてくる。

高らかになる鼓動であったが、それは私のそれよりも明らかに早く打っている。そして、それは止まることを知らないかのように益々その速度を上げていく。

「緊張している——。可愛い」

もう少しこのままでいるのも悪くないかしら。私が無理に目を開くことを諦めた瞬間であった。
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