学園に男子学生は僕一人!? コミュ障の僕には、そこは天国ではなく、地獄です

卵くん

文字の大きさ
上 下
9 / 42

9日目 えっちな夢を見てた?

しおりを挟む

 外から差し込む夕焼けよりも赤く見える彼女の髪の毛。そして、吐息同士が互いに関り合うようなほどの近距離から漂ってくる彼女の甘美な匂い。まつ毛も長く、大きな二重の瞳に僕が逆向きに映し出されている。そして、僕の右肩に触れている柔らかな感触は一体なんだろうか。まさか、まさかだと思うが、あれじゃないだろうな。女性だけが持つ柔らかなものといえば僕の頭に浮かび上がるのはあれだけだ。二つある全男性を虜にする女性の必殺武器。

 だが、名残惜しいことに僕が何も口にしなかったこともあって、その感触はすっと遠のいていった。思わず口から、落胆の声が漏れそうになったがそれは必死に抑え込んだ。ただでさえ、聞かれたくない言葉を一つ聞かれたのだ。これ以上の失態は彼女の中の僕の評価を下げる以外何も果さない。

「ここってどこなのかな?」

「ここはこの学園の保健室。まさか、入学初日にここに足を踏み入れるとは思わなかったけどね」

尋ねる僕に彼女は笑顔を浮かべてそれに応じた。眩しすぎるほどの笑顔に僕は思わず目を逸らしてしまった。熱が顔に籠もっていく感じすらも覚える。

「ねぇ、大丈夫なの? 体育館で急に倒れたのもそうだけど、さっきもかなりうなされていたけど?」

小首を傾げながらそんなこと言われると、僕は本当に彼女の目を見て答えられなくなってしまう。だが、それでは男ではない。と強く心に誓い彼女の顔を真正面から見つめる。

「体育館は本当に分からないんだ。生徒会長が壇上に上がると急に頭が割れるような痛みが起きてさ。そのまま気がついたらここで眠ってた。うなされていたのは、よく見る夢をまた見ていてさ。毎回同じところで夢から覚めてしまうからほんと、飽き飽きしていて」

「ふーん。えっちな夢でも見てたんでしょ? さしずめ、女の子の服でも脱がす夢でも見てたんでしょ。それであと少しで全部脱げちゃうってところで毎回夢から覚めちゃうもんだから、とっとと剥がせよって。キャア~! 男らしいわね。多少乱雑でもいいってもこぼしてたし~」

 僕は頭の中にいくつものクエスチョンマークを作った。そして瞬時に察した。これは危機的状況にあると。もし、このまましっかりとした弁明をしなかったら彼女の中の僕のイメージは変態な夢を毎度見る気持ち悪いやつで固定されるだろう。そして、もしそれがこの学園中に広まったら楽しい高校生活どころではない。ぼっちでコミュ障で、女の子となんら接点を持つことすらなかった中学時代よりもひどい時期を過ごすことになる。それだけは絶対に避けなければならない!

「違う!! 断じて違うから!! これは——」

「楽しそうな談笑なことですわね。しかも、そんなに近距離で。是非とも私にも聞かせて欲しい物ですわ」

 保健室の扉が開いたかと思うと、そこには僕を失神させた生徒会長が立っていた。それも、怒ったご様子で。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

処理中です...