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アルゴーの集落編 〜クーリエ 30歳?〜
X-49話 突然の声
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「相変わらず、完全に燃え尽きてしまっているな」
俺は目当ての場所にたどり着くと、その言葉を不意にこぼした。火は完全に消し去られているが、所々から天に向かって立ち上がる灰色の煙が目に付く。それが、この場で起きた凄惨な現場を色褪せないようにしているかのようであった。
「さてと、来たのはいいけど。どこから見て回ろうかな?」
この場にきたのはカーブス医師の何かしらの証拠を探すためだ。そのためには実際に秘密裏の実験が行われていた場所を探すのが一番手っ取り早いと思うのだが。
「そんなところ俺に分かるわけないよな~。あー、やっぱりユウシに声をかけてきてもらったほうがよかったかな~」
「そんなことはないだろう・・・」
突如背後から聞こえてくる低くしゃがれた声。明らかに今まで野営地で聞いてきた声とは違う。どこか背筋が凍るような感覚を覚えさせてくるようなタイプの力の籠ったように感じ取られた。
「誰だ!!」
後ろを振り向くとそこには——誰もいなかった。影ひとつ
存在せず、後方に続く森のみが視界を埋め尽くすのみであった。
「気のせい・・・か?」
「どこを見ているじゃ! こっちじゃよ」
だが、そんなことはなかった。鳴り響く声の主は自分の存在をより明確にしようと先ほどよりも大きな声で返事を返してくれた。だが、一向に彼が姿を表すことはない。どこを見ても変わらぬ景色が広がっているだけで、声を発生することができる人なんてどこにもいない——。
「上だよ。上。なんでこうすぐ気づかないのかな~、ほんと」
「上? うわぁ!!!!!」
声に従うまま視線を上にあげると、そこにいたのは・・・
「鳥? いやあの身体の漆黒さカラスか。君が俺に声をかけてくれていたのかい?」
「ようやく気づいたかい。本当に、いつになったら気づいて貰えるのかと不安に思ったぞ」
上空で羽を羽ばたかせる物体の嘴が僅かに揺れるたびに声が発せられる。どうやら、あのカラスが俺に声をかけてきたのは間違いないみたいだ。だが、どうやって話しているんだろうと疑問に思う。だが、その疑問はすぐさま消えることとなった。
まぁ。おそらく天恵の類だろうと納得をしてしまったから。動物に宿る天恵の中でも稀有とは言われるが、頭脳を飛躍的に高めるというのは聞かない話ではない。あれもその一種だろうと勝手に思ってしまう。
「お前の行きたいところに連れていってやろう。なぁに、大体予想はついておる。この集落で行われていたといわれる秘密の実験場。そこだろ?」
「連れていってくれるのか?」
俺が尋ねると何も言わずにカラスを漆黒の羽を一つ落としながら、踵を返しゆっくりと医療場の中心に向かって飛び出していった。
俺は目当ての場所にたどり着くと、その言葉を不意にこぼした。火は完全に消し去られているが、所々から天に向かって立ち上がる灰色の煙が目に付く。それが、この場で起きた凄惨な現場を色褪せないようにしているかのようであった。
「さてと、来たのはいいけど。どこから見て回ろうかな?」
この場にきたのはカーブス医師の何かしらの証拠を探すためだ。そのためには実際に秘密裏の実験が行われていた場所を探すのが一番手っ取り早いと思うのだが。
「そんなところ俺に分かるわけないよな~。あー、やっぱりユウシに声をかけてきてもらったほうがよかったかな~」
「そんなことはないだろう・・・」
突如背後から聞こえてくる低くしゃがれた声。明らかに今まで野営地で聞いてきた声とは違う。どこか背筋が凍るような感覚を覚えさせてくるようなタイプの力の籠ったように感じ取られた。
「誰だ!!」
後ろを振り向くとそこには——誰もいなかった。影ひとつ
存在せず、後方に続く森のみが視界を埋め尽くすのみであった。
「気のせい・・・か?」
「どこを見ているじゃ! こっちじゃよ」
だが、そんなことはなかった。鳴り響く声の主は自分の存在をより明確にしようと先ほどよりも大きな声で返事を返してくれた。だが、一向に彼が姿を表すことはない。どこを見ても変わらぬ景色が広がっているだけで、声を発生することができる人なんてどこにもいない——。
「上だよ。上。なんでこうすぐ気づかないのかな~、ほんと」
「上? うわぁ!!!!!」
声に従うまま視線を上にあげると、そこにいたのは・・・
「鳥? いやあの身体の漆黒さカラスか。君が俺に声をかけてくれていたのかい?」
「ようやく気づいたかい。本当に、いつになったら気づいて貰えるのかと不安に思ったぞ」
上空で羽を羽ばたかせる物体の嘴が僅かに揺れるたびに声が発せられる。どうやら、あのカラスが俺に声をかけてきたのは間違いないみたいだ。だが、どうやって話しているんだろうと疑問に思う。だが、その疑問はすぐさま消えることとなった。
まぁ。おそらく天恵の類だろうと納得をしてしまったから。動物に宿る天恵の中でも稀有とは言われるが、頭脳を飛躍的に高めるというのは聞かない話ではない。あれもその一種だろうと勝手に思ってしまう。
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「連れていってくれるのか?」
俺が尋ねると何も言わずにカラスを漆黒の羽を一つ落としながら、踵を返しゆっくりと医療場の中心に向かって飛び出していった。
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