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アルゴーの集落編 〜クーリエ 30歳?〜
X-31話 公開説教
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「ほんと情けない!! クーリエさんって本当に私よりも年上なのかしら? 大人らしさというか、落ち着いているというか、そういう歳を重ねれば身についてくるはずのものが全部備わっていないんじゃないの?」
結局、一人では野営地まで辿り着くことができなかった俺は、やむなしと言った具合にコルルの名前を叫んだ。そして、颯爽と現れた彼女に手を引かれ怪我人や火が襲いかかる集落から生き延びた人が集まるこの場所に連れてきてもらったのだが。
「す、すまない。でもさ、ここって大まかな場所だけ言われてもちょっと分かんなくて。っていうか、こんなに人の目があるんだからこんな公開説教みたいなことしなくても・・・」
「危うく殺人犯になっちゃいそうだった人の意見は聞きません! しっかりと怒られてください、そしてあの二人に謝ってください!!」
火に油を注いでしまったのだろう。彼女の怒りは止まることなく更に猛るように燃え上がっているのが(実際に火が出ているわけではないが)ひしひしと伝わってくる。
「分かった! ちゃんと謝る、謝るから!!」
俺にできることは彼女をこれ以上不快にさせないように、必死に詫びの言葉を並べること。この一点のみであった。これ以上、俺が単に怒られているだけの回想は面白くないだろう。だから、まずこの野営地についてから軽く説明していきたいと思う。
この野営地は火が廻り尽くしたアルゴーの集落からそれほど遠くない場所に設置されている。だが、集落と同様に限りなく森と同化するようにして設置されたそれは、入り口を知っていないとただの鬱蒼とした木々が伸びているだけだと認識してしまうほどの同化率を誇っている。これは、俺が迷子になるのも納得だというわけだ。
野営地には大きめのドーム型テントが複数個用意されており、怪我が比較的軽い人はこの中で睡眠を取るようにし、重症の人はテントの下に設置された医療用野外ベットで治療を行なっている。流石医療が進んだ集落の人といったところだろうか。
テントを設置する手際、そして怪我の重症度を一目で判断する技術は俺からしてみると神の領域かと思わせるほどであった。怪我が軽い医師は進んで怪我人の手当を行い、俺とコルルもそれをできる限り手伝ったが、それでも数人の死者が今回の炎による攻撃で生まれてしまった。その時の肩を落とす医師の顔を俺は直視することができなかった。そこには、何とも言えない虚無の時間が流れる——。
ちなみに、俺が吹き飛ばした二人は一命を取り留めている。手当に関しては何故この二人だけ打撲の跡が目立つんだい?と問われた際には心臓が大きく跳ね上げたものだが、何とか笑って誤魔化した。依然として二人は目を覚ましていないが、青年の身体から発生した火がこの集落の悲劇の元凶だとはまだ誰にも伝えていない。
この事実は彼が目を覚ました時に、俺がしっかりと確認してから皆んなに伝えるべき事項だと思ったから。
結局、一人では野営地まで辿り着くことができなかった俺は、やむなしと言った具合にコルルの名前を叫んだ。そして、颯爽と現れた彼女に手を引かれ怪我人や火が襲いかかる集落から生き延びた人が集まるこの場所に連れてきてもらったのだが。
「す、すまない。でもさ、ここって大まかな場所だけ言われてもちょっと分かんなくて。っていうか、こんなに人の目があるんだからこんな公開説教みたいなことしなくても・・・」
「危うく殺人犯になっちゃいそうだった人の意見は聞きません! しっかりと怒られてください、そしてあの二人に謝ってください!!」
火に油を注いでしまったのだろう。彼女の怒りは止まることなく更に猛るように燃え上がっているのが(実際に火が出ているわけではないが)ひしひしと伝わってくる。
「分かった! ちゃんと謝る、謝るから!!」
俺にできることは彼女をこれ以上不快にさせないように、必死に詫びの言葉を並べること。この一点のみであった。これ以上、俺が単に怒られているだけの回想は面白くないだろう。だから、まずこの野営地についてから軽く説明していきたいと思う。
この野営地は火が廻り尽くしたアルゴーの集落からそれほど遠くない場所に設置されている。だが、集落と同様に限りなく森と同化するようにして設置されたそれは、入り口を知っていないとただの鬱蒼とした木々が伸びているだけだと認識してしまうほどの同化率を誇っている。これは、俺が迷子になるのも納得だというわけだ。
野営地には大きめのドーム型テントが複数個用意されており、怪我が比較的軽い人はこの中で睡眠を取るようにし、重症の人はテントの下に設置された医療用野外ベットで治療を行なっている。流石医療が進んだ集落の人といったところだろうか。
テントを設置する手際、そして怪我の重症度を一目で判断する技術は俺からしてみると神の領域かと思わせるほどであった。怪我が軽い医師は進んで怪我人の手当を行い、俺とコルルもそれをできる限り手伝ったが、それでも数人の死者が今回の炎による攻撃で生まれてしまった。その時の肩を落とす医師の顔を俺は直視することができなかった。そこには、何とも言えない虚無の時間が流れる——。
ちなみに、俺が吹き飛ばした二人は一命を取り留めている。手当に関しては何故この二人だけ打撲の跡が目立つんだい?と問われた際には心臓が大きく跳ね上げたものだが、何とか笑って誤魔化した。依然として二人は目を覚ましていないが、青年の身体から発生した火がこの集落の悲劇の元凶だとはまだ誰にも伝えていない。
この事実は彼が目を覚ました時に、俺がしっかりと確認してから皆んなに伝えるべき事項だと思ったから。
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