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13)知らない事
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信夫は、状況からすぐに察することができた。
彼らの間には、深い溝が存在することに。
「あれー?飼いネズミはどこにいったの?珍しいじゃん、お前らが別行動なんて」
関根と呼ばれる高校生から、軽蔑という感情が向けられているのが解る。
そして、宮登がその原因を作り出しているという事に気づくに、は時間などかからなかった。
宮登の性格は、正直に言えば一般的な普通から少しズレがある。
それを踏まえて考えると、学生時代を経験した信夫が思うに、少し人と違う雰囲気を持つ者は距離を置かれる。
この年代にはよくある。
大人になれば、苦手意識があっても対応力を身につけて対処するが、まだまだ若い年齢の彼らには、距離を置くという事は、大きな悩みであり大きな傷になる。
信夫は、どうするべきか考えるが、大人が割って入るべきか悩む状況。
子供の喧嘩に大人が入るな。と口癖のように言っている世代に育てられた信夫にとって、黙って見ている方がいいとも思える。
だが、そう言っている世代に育てられたからといって、虐めに繋がる事を止めるべきなのは大人の役割だと信夫は思っている。
信夫は、ひとまず様子を伺い、タイミングを探すことにした。
だが、傍観者になれたのは一瞬だった。
「おっさんさー、男同士でどうやってセックスすんの?」
関根が向けてくる敵意と興味は、俊と圭太ではなく信夫であった。
彼の言葉に、意地悪な質問をされた信夫の反応を見て楽しむ高校生たち。
人を馬鹿にした雰囲気に、信夫は眉間に皺を寄せる。
どうやら、大きな溝を作った原因は、宮登だけではなく信夫も関わっているようだ。
軽蔑心を全面に滲ませた好奇な目を向けられ、信夫は傍観の席から立ち上がった。
「何を誤解してるのか解らないが、俺はそいいう趣味はない」
呆れ口調で信夫は応えた。
「えー?でもさ。あのネズミっころは別なんでしょ?」
ネズミと呼ばれるのは、宮登で間違いはないであろう。
宮登の前世が信夫の飼っていたハムスターであるという事を、きっと彼は本人から聞いた事があるに違いない。
そう思える言動に、信夫は宮登の学校での生活は見えていなかったが、想像しやすく、手に取る様に解った。
「あいつ、本当……」
信夫は苛立ちと呆れを誤魔化すかのように、頭をかく。
小学校の頃の宮登の態度のまま、中学へ上がったとして、虐めに繋がらない訳がない。
妄想癖で同性愛者。
思春期の学生たちには、虐める対象には充分すぎるほどの良い材料だ。
脂の乗ったいい材料を調理する料理人になる為に、どれだけの学生が手を挙げただろうか。
宮登の問題であり、自業自得。と、言えばそうなのだが、人と違うというだけで人に指をさして笑っていいなんて事ではない。
「自分の物差しで他人を図るな」
信夫は溜息まじりで関根に言葉を投げるが、意味の解らない言葉を返されたとしか感じていない様子だった。
「何言ってるかよくわらんないけど。おっさんあいつ抱いてんでしょ?」
「だからそんな趣味はない」
「えーでもさ、あいついつも身体にキスマークつけてんじゃん」
「は?」
関根の言葉に信夫は耳を疑った。
「そういえば縛りプレイ好きって聞いたけど、どんな感じに縛るの?」
「あーなんか毎週さー痣増やしてたよなーあいつ」
「おっさんもうちょっと身体労わってやれよー。いくら妊娠しないからってさー」
関根以外の高校生たちも口を開き始めた。
その会話の意味が理解できずに、信夫はただただ耳を疑って聞いていた。
「信夫……」
ふと、聞きなれた声が賑やかな空間を割って信夫の耳に入る。
「宮登。お前どうしてここに?」
声のした方に視線を向けると、そこには宮登の姿がった。
「……遅いから、圭太に場所聞いて迎えにきた……んだけど……」
「おーおー恋人のお迎えー?熱いねー」
困惑している表情を見せている宮登の突然の登場に、関根が冷やかしの言葉を投げた。
「ごめん、俺が呼んだけど、まさか関根いると思わなくて、ここ出るの間に合わなかった」
圭太が宮登に駆け寄り、その場からすぐに去る様にと手を引いた。
「のぶおじさんも行こ」
「え?あ……ああ」
冷たく重い表情を見せられ、子供相手ではあったが、その圧に信夫は負けた。
「じゃーねー、今夜は激しすぎないようにねー」
信夫を目に入れ、嘲笑いながら関根が言った。
高校生たちはゲラゲラと大きな笑い声を賑やかな部屋に混ぜる。
逃げるようにその場を去る事に、信夫は納得できなかった。
だが、宮登の固まった表情や圭太と俊の沸騰している怒りを見るに、それが今の最善だ。
信夫は、心の中に大きな靄がかかっていた。
彼らの間には、深い溝が存在することに。
「あれー?飼いネズミはどこにいったの?珍しいじゃん、お前らが別行動なんて」
関根と呼ばれる高校生から、軽蔑という感情が向けられているのが解る。
そして、宮登がその原因を作り出しているという事に気づくに、は時間などかからなかった。
宮登の性格は、正直に言えば一般的な普通から少しズレがある。
それを踏まえて考えると、学生時代を経験した信夫が思うに、少し人と違う雰囲気を持つ者は距離を置かれる。
この年代にはよくある。
大人になれば、苦手意識があっても対応力を身につけて対処するが、まだまだ若い年齢の彼らには、距離を置くという事は、大きな悩みであり大きな傷になる。
信夫は、どうするべきか考えるが、大人が割って入るべきか悩む状況。
子供の喧嘩に大人が入るな。と口癖のように言っている世代に育てられた信夫にとって、黙って見ている方がいいとも思える。
だが、そう言っている世代に育てられたからといって、虐めに繋がる事を止めるべきなのは大人の役割だと信夫は思っている。
信夫は、ひとまず様子を伺い、タイミングを探すことにした。
だが、傍観者になれたのは一瞬だった。
「おっさんさー、男同士でどうやってセックスすんの?」
関根が向けてくる敵意と興味は、俊と圭太ではなく信夫であった。
彼の言葉に、意地悪な質問をされた信夫の反応を見て楽しむ高校生たち。
人を馬鹿にした雰囲気に、信夫は眉間に皺を寄せる。
どうやら、大きな溝を作った原因は、宮登だけではなく信夫も関わっているようだ。
軽蔑心を全面に滲ませた好奇な目を向けられ、信夫は傍観の席から立ち上がった。
「何を誤解してるのか解らないが、俺はそいいう趣味はない」
呆れ口調で信夫は応えた。
「えー?でもさ。あのネズミっころは別なんでしょ?」
ネズミと呼ばれるのは、宮登で間違いはないであろう。
宮登の前世が信夫の飼っていたハムスターであるという事を、きっと彼は本人から聞いた事があるに違いない。
そう思える言動に、信夫は宮登の学校での生活は見えていなかったが、想像しやすく、手に取る様に解った。
「あいつ、本当……」
信夫は苛立ちと呆れを誤魔化すかのように、頭をかく。
小学校の頃の宮登の態度のまま、中学へ上がったとして、虐めに繋がらない訳がない。
妄想癖で同性愛者。
思春期の学生たちには、虐める対象には充分すぎるほどの良い材料だ。
脂の乗ったいい材料を調理する料理人になる為に、どれだけの学生が手を挙げただろうか。
宮登の問題であり、自業自得。と、言えばそうなのだが、人と違うというだけで人に指をさして笑っていいなんて事ではない。
「自分の物差しで他人を図るな」
信夫は溜息まじりで関根に言葉を投げるが、意味の解らない言葉を返されたとしか感じていない様子だった。
「何言ってるかよくわらんないけど。おっさんあいつ抱いてんでしょ?」
「だからそんな趣味はない」
「えーでもさ、あいついつも身体にキスマークつけてんじゃん」
「は?」
関根の言葉に信夫は耳を疑った。
「そういえば縛りプレイ好きって聞いたけど、どんな感じに縛るの?」
「あーなんか毎週さー痣増やしてたよなーあいつ」
「おっさんもうちょっと身体労わってやれよー。いくら妊娠しないからってさー」
関根以外の高校生たちも口を開き始めた。
その会話の意味が理解できずに、信夫はただただ耳を疑って聞いていた。
「信夫……」
ふと、聞きなれた声が賑やかな空間を割って信夫の耳に入る。
「宮登。お前どうしてここに?」
声のした方に視線を向けると、そこには宮登の姿がった。
「……遅いから、圭太に場所聞いて迎えにきた……んだけど……」
「おーおー恋人のお迎えー?熱いねー」
困惑している表情を見せている宮登の突然の登場に、関根が冷やかしの言葉を投げた。
「ごめん、俺が呼んだけど、まさか関根いると思わなくて、ここ出るの間に合わなかった」
圭太が宮登に駆け寄り、その場からすぐに去る様にと手を引いた。
「のぶおじさんも行こ」
「え?あ……ああ」
冷たく重い表情を見せられ、子供相手ではあったが、その圧に信夫は負けた。
「じゃーねー、今夜は激しすぎないようにねー」
信夫を目に入れ、嘲笑いながら関根が言った。
高校生たちはゲラゲラと大きな笑い声を賑やかな部屋に混ぜる。
逃げるようにその場を去る事に、信夫は納得できなかった。
だが、宮登の固まった表情や圭太と俊の沸騰している怒りを見るに、それが今の最善だ。
信夫は、心の中に大きな靄がかかっていた。
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みんなの感想(10件)
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何だか根も葉もない話が広がっているみたいですね……
これは根っこを叩かないと面倒な事になりそうです(´;ω;`)
噂ってものほど勝手に大きくなってしまいますよね。
さて、この噂話はどうして出たのか。
今後の話で解明できればなと思います!
ああ、やっぱり齧歯目だった時代にあれこれ問題があったのですね。
進化して良かったですが……その過程に色々ありそうですね。
返信してない事に今更気づきました(汗)。すみません……。
いつも感想ありがとうございます!
確かに子供が成長するとちょっと寂しいですよね(´;ω;`)ウゥゥ
宮登くんは何がきっかけで落ち着いたのかしら?
宮登くんの成長に私が寂しいです()