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11)今日のプレゼント ※監禁など表現あり
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どれくらいの時間が経ったのだろう。
毎日、知らない男たちが交代で梓を抱く。丸馬が用意する「今日のプレゼント」と名付けられた男たちは、梓を孕ませるために存分に腰を振り、自身を奥深くまで押し込めて流し込む。
梓を孕ませることができた男が、梓の婚約者となる。
ゲームのような丸馬の提案に、男たちは必死になった。皆、結婚適齢期を過ぎた冴えない見た目のベータ男性であり、丸馬の呼びかけに手を挙げたゲームの参加者に過ぎない。
今日もまた、知らぬ男が梓を抱いた。最初は恐怖から悲痛な叫びを上げていたが、最近では声すら出す気力もなくなり、ただ静かに、人形のように男に抱かれる。毎日与えられる性欲剤で軽い発情を強制され、肺に酸素を取り込むのもままならない息苦しさと、男たちに身体を突き上げられ揺さぶられる痛みに耐え、その行為が早く終わることをただ願うばかりだった。
一日に何人を相手しているのか、今まで何人の男が梓を求めたのか、数えることさえできない。
梓は、涙すら流す余裕もなく、心も体も疲れ切っていた。
コンクリートで固められた薄暗い部屋で、朝も夜も区別がつかない状況。食事を出された回数だけで、どれくらいの時間を過ごしたのかを考えようとしても、もうその回数すら思い出せない。
「ほら、今日のごはんだよ」
そう言われて、一番初めに梓を抱いた名前も知らぬ男が、食べ物が入ったコンビニのビニール袋を見せる。食事などする気力などない。むしろ、その食事を摂ること自体が苦痛の一つだった。
「食事はちゃんと摂らないと」
男は目の前に座り込み、ガサガサと袋の中からおにぎりを取り出すと、不器用な手つきで海苔のついたフィルムを外し、自らの口の中へ運ぶ。ぐちゃぐちゃと音を立てながら、米を潰し唾液を混ぜ込んだそれを、梓の口へと押し込もうとする。
「やっ……」
抵抗しても、状況は変わることなどない。最初に出された食事を拒んだ結果が、今の状況を招いているのだ。ここ数日、これが梓の食事の形だった。無理やり口をこじ開けられ、男の口から食事を与えられ、吐き出しては同じことを繰り返す。
丸馬はその様子を見ながら、嬉しそうに動画を撮影している。
「わー……優しい彼氏さんで良かったねぇ」
汚いものを見て軽蔑しているような目をしているものの、その汚い物に指をさして笑って楽しんでいる丸馬の性格は歪んでいた。
いつから、丸馬はこんな風になってしまったのか。あんなに優しく、可愛らしい人だったのに。
梓は不快の混ざった重い液体のようなよどみを、心に感じる。
自分がそうしてしまったきっかけなのかもしれない。それは、否定できない。かといえ、ここまでされる筋合いも、梓にはない。
怒りを覚えた。
だが、気持ちを理解してあげたい少しの同情が、梓にはあった。
丸馬は相変わらずスマートフォンばかりを触り、こちらの状況を楽しみ続ける。
最初は梓のスマートフォンを触っていたが、梓の捜索が始まったと言い、電源を切り、そしてどこかへ捨てたと言っていた。
捜索が始まったということは、ここに来てかなりの日数が立っていることがわかる。
「こんなに日にち経ってるのに、妊娠しないんだね。媚薬使って強制でもヒートおこさせてるのにさ」
丸馬は細く鋭い針先を持つ注射を光らせ、液体の入った瓶の蓋を開けて注射の筒内に流し移した。
毎日行われる儀式のようなものだ。
最近出回っているという違法の媚薬。本来は飲むものを、すぐに効き目を出すためにそれを注射で腕から接種される。梓の両腕は、ポツポツと青黒い針痕で埋め尽くされていた。
「今日くるのもベータなんだけど……」
チッと舌打ちをしながら、丸馬はスマートフォンを打つ。
「また誰か呼んだのか?!」
「だって、あんた、全然妊娠させれねぇじゃん」
男が怒りに似た声で丸馬に言うと、丸馬は冷めた表情で男を睨みつけた。
男は最初、サイトに騙されてこの場に来たという。独特な性癖を持つ者が集う、ローカルなマッチングアプリ。そこで、梓のアカウントを見つけ、募集された内容に食らいつき、ここに来た。もちろん、梓はそんなものは知らないし、登録なんてした覚えなどない。丸馬が梓のスマートフォンを使い、登録し、利用したという。
「そんな詐欺して!梓ちゃんは僕のだ!」
「だったら早くそいつを孕ませてみろよ」
冷徹な顔と声で、丸馬は男を罵った。
男は梓を初めて抱いた後、丸馬に騙されていたことを知った。お互いに犯罪者だ。と、丸馬に言われ、男は引き返せないと思った。と言い訳を梓に毎日言うのだ。そして、開き直り、毎日梓を自分の好きに扱うことに快感を得るようになる。
「梓ちゃんは、僕が孕ませてあげるんだ」
結局、男は、自身の快楽には逆らえない生き物なのだ。
今からの相手は、一番最初に梓を抱いた名前も知らない男。
毎日、知らない男たちが交代で梓を抱く。丸馬が用意する「今日のプレゼント」と名付けられた男たちは、梓を孕ませるために存分に腰を振り、自身を奥深くまで押し込めて流し込む。
梓を孕ませることができた男が、梓の婚約者となる。
ゲームのような丸馬の提案に、男たちは必死になった。皆、結婚適齢期を過ぎた冴えない見た目のベータ男性であり、丸馬の呼びかけに手を挙げたゲームの参加者に過ぎない。
今日もまた、知らぬ男が梓を抱いた。最初は恐怖から悲痛な叫びを上げていたが、最近では声すら出す気力もなくなり、ただ静かに、人形のように男に抱かれる。毎日与えられる性欲剤で軽い発情を強制され、肺に酸素を取り込むのもままならない息苦しさと、男たちに身体を突き上げられ揺さぶられる痛みに耐え、その行為が早く終わることをただ願うばかりだった。
一日に何人を相手しているのか、今まで何人の男が梓を求めたのか、数えることさえできない。
梓は、涙すら流す余裕もなく、心も体も疲れ切っていた。
コンクリートで固められた薄暗い部屋で、朝も夜も区別がつかない状況。食事を出された回数だけで、どれくらいの時間を過ごしたのかを考えようとしても、もうその回数すら思い出せない。
「ほら、今日のごはんだよ」
そう言われて、一番初めに梓を抱いた名前も知らぬ男が、食べ物が入ったコンビニのビニール袋を見せる。食事などする気力などない。むしろ、その食事を摂ること自体が苦痛の一つだった。
「食事はちゃんと摂らないと」
男は目の前に座り込み、ガサガサと袋の中からおにぎりを取り出すと、不器用な手つきで海苔のついたフィルムを外し、自らの口の中へ運ぶ。ぐちゃぐちゃと音を立てながら、米を潰し唾液を混ぜ込んだそれを、梓の口へと押し込もうとする。
「やっ……」
抵抗しても、状況は変わることなどない。最初に出された食事を拒んだ結果が、今の状況を招いているのだ。ここ数日、これが梓の食事の形だった。無理やり口をこじ開けられ、男の口から食事を与えられ、吐き出しては同じことを繰り返す。
丸馬はその様子を見ながら、嬉しそうに動画を撮影している。
「わー……優しい彼氏さんで良かったねぇ」
汚いものを見て軽蔑しているような目をしているものの、その汚い物に指をさして笑って楽しんでいる丸馬の性格は歪んでいた。
いつから、丸馬はこんな風になってしまったのか。あんなに優しく、可愛らしい人だったのに。
梓は不快の混ざった重い液体のようなよどみを、心に感じる。
自分がそうしてしまったきっかけなのかもしれない。それは、否定できない。かといえ、ここまでされる筋合いも、梓にはない。
怒りを覚えた。
だが、気持ちを理解してあげたい少しの同情が、梓にはあった。
丸馬は相変わらずスマートフォンばかりを触り、こちらの状況を楽しみ続ける。
最初は梓のスマートフォンを触っていたが、梓の捜索が始まったと言い、電源を切り、そしてどこかへ捨てたと言っていた。
捜索が始まったということは、ここに来てかなりの日数が立っていることがわかる。
「こんなに日にち経ってるのに、妊娠しないんだね。媚薬使って強制でもヒートおこさせてるのにさ」
丸馬は細く鋭い針先を持つ注射を光らせ、液体の入った瓶の蓋を開けて注射の筒内に流し移した。
毎日行われる儀式のようなものだ。
最近出回っているという違法の媚薬。本来は飲むものを、すぐに効き目を出すためにそれを注射で腕から接種される。梓の両腕は、ポツポツと青黒い針痕で埋め尽くされていた。
「今日くるのもベータなんだけど……」
チッと舌打ちをしながら、丸馬はスマートフォンを打つ。
「また誰か呼んだのか?!」
「だって、あんた、全然妊娠させれねぇじゃん」
男が怒りに似た声で丸馬に言うと、丸馬は冷めた表情で男を睨みつけた。
男は最初、サイトに騙されてこの場に来たという。独特な性癖を持つ者が集う、ローカルなマッチングアプリ。そこで、梓のアカウントを見つけ、募集された内容に食らいつき、ここに来た。もちろん、梓はそんなものは知らないし、登録なんてした覚えなどない。丸馬が梓のスマートフォンを使い、登録し、利用したという。
「そんな詐欺して!梓ちゃんは僕のだ!」
「だったら早くそいつを孕ませてみろよ」
冷徹な顔と声で、丸馬は男を罵った。
男は梓を初めて抱いた後、丸馬に騙されていたことを知った。お互いに犯罪者だ。と、丸馬に言われ、男は引き返せないと思った。と言い訳を梓に毎日言うのだ。そして、開き直り、毎日梓を自分の好きに扱うことに快感を得るようになる。
「梓ちゃんは、僕が孕ませてあげるんだ」
結局、男は、自身の快楽には逆らえない生き物なのだ。
今からの相手は、一番最初に梓を抱いた名前も知らない男。
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