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降臨
12話
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人目のつかない橋近くの土手へと到着した赤のスズキバレーノが停車する。その車内では女がノートパソコンを取り出して先程Cole corporationの技術者から渡されたUSBメモリを差し込み、タイピングを行っている。メモリに保存されている中途半端なデータでも、あの天才児と呼ばれているトーマス・コールの制作した補助スーツの数々だ。有益になる物ばかりである。
あとはVinigan Companyにこの情報を転送すれば仕事は終わる。この補助スーツが兵器としての需要を確立すれば必ずと言っていいほど大金が手に入る。Vinigan Companyへデータの送信を開始すると一段落ついたと多少なりと安堵する。あとはこのまま事が進んでいけば良い。
そう思っていた。矢先、車の天井からドンッという大きい音が聴こえる。その女は何事かと思い車内から出ると────
「Hey agent, is it in the midst of rendezvous alone by yourself like this?」
「!?」
そう、車の上から聞こえてきたのは先程邪魔をした小さな男の子。しかしCole Corporationの子息であり、今や知らない人は居ないと言える有名人の声。
トーマス・コールであった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ふぃー、何とか成功したや。車の追跡装置を作動させてSOPHIAに位置探知してもらって助かった。そうじゃなかったら“消滅”の呪文も効果が微妙な状態で発動されてただろうし。
【消滅】 所謂テレポートを発動させる呪文だ。クトゥルフでは眷属召喚でグール呼び出したり天候を変えたり会社に忍び込む時に使った門の創造などと様々な呪文がある。勿論他の神々だってそのようなことは出来るだろうけど、現状それが人間で簡単に出来るのは表面上自分だけだ。
そんな話しは置いといて。SOPHIAで探知させた場所と、自分の乗った車の天井を思い出してテレポートを成功させたのだ。本当に一か八かの賭けでもあったが。そもそも自動車の上に乗ったとはいえども、その自動車の上がテレポート可能位置になる可能性は低いのだ。場所と認定し難いのだから無理はない。
だが成功したとなると1つの説に行き着く。極論になってしまうが自分がある1枚の葉っぱの上に居て、それがテレポート出来る位置と決めてしまうようなものだ。しかし成功したとなれば自分の考えた極論は出来るということ、無論やろうと思えばの話しだが。
まぁそれよりも……目の前の女が振り返った途端、自分は補助スーツの出力で上乗せした飛び蹴りを放つ。出力は調整してもらって52%に上昇、暫くは眠ってもらうよ。
自分の放った飛び蹴りは女の首辺りにくい込み、女はそのまま2~3mほど滑って行った。うっわ痛ったそ、地面コンクリだから摩擦熱で背中の皮膚にダメージ受けてるよあれ絶対。しかもさっきの蹴り首に入って呼吸が一時的に困難だし……ともかくさっさと中止させるか。
そのまま車内にあるノートパソコンからUSBメモリを抜き取ってデータ送信を強制中断させる。あとは仕上げとしてSOPHIAに頼んでスパイ容疑確定の奴らに捕まってもらうために、情報をリークさせておくか。
「SOPHIA. Shed the call history between Leila Slimul and Vinigan Company to the media and the police.」
『━━━━』
「Hm? SOPHIA? Please reply.」
『━━━━』
弱ったな、繋がらない。まさかさっきの消滅でテレポートしたせいで通信が上手くいってないとか? 有り得るな、だとしたらこんなテレポートとかは……でも待って。門の創造の時は特に支障は無かった筈だよな。だったら……電波状況か?有り得なくは無い話しだけどねぇ。
ここで唐突に、本当に小さく聞き取れるのかどうか分からない場所からカチャと音がした。その瞬間自分の体を車内に入れさせ、そのついでに車のドアを閉めた。その一連の行動が終わった途端、銃声がきこえた。
車によって遮断されていて距離もあるせいでよく聞かなければ銃声とは判断しづらいけれど、ドアに空いた風穴と後ろの席にめり込まれた銃弾が事実だと物語っている。……嘘だろオイ、子ども相手に拳銃なんて使ってやがる!?
いや子どもとは呼べない脳年齢だろうけどね。精神年齢? どっちが本当の自分なのかさっぱり。って現実逃避してる暇は無いよねぇッ!?あっぶねぇ!今さっき近く通った! 銃弾が左横を通ってったよォ!?
素早く後部座席に移動して難を逃れるしかないッ!滑り込んで行けば……よっし成功ぅうう!?今度は目の前通ってったァ!?真面目に危ねぇ!あの女激情に駆られて撃ちまくってやがる!普通少しは穏便に済ませようと思わねぇのかよ!?
……いや待て、ドアを貫通するぐらいの威力の銃って限られてる筈だ。9mmパラべラム弾を使用する銃が多い分、高威力の拳銃なんてかなり限られてる筈だ。でも今はそんなこと考えてる場合じゃない、SOPHIAとの連絡は……あれ無い。いやまさか……!
あぁやっぱり! あの時銃弾が左横に通った時に避けようとして車のハンドルにぶつかったせいでBluetoothが……いや待てよ。ここに良いヤツがあるじゃないか。
このデータ送信に使ってたであろうノートパソコン、SOPHIAにこの信号を送ってチャット機能を応用すれば……よっし、上手くいった。
──SOPHIA.
━━Sir? The communication ceased, but how was it done?
──I have no time, I will say it shortly. Arrange the police men to send from now.
━━Yes sir.
チャット画面を一旦縮小させてこのノートパソコンの位置を検索、その地点をコピーしてチャット画面の会話部分に載せれば……これで良い。あとはSOPHIAが警察を呼んで、暫く耐えれば。
そういえば銃声が聞こえないな、どうしたん……oh マジで最悪。窓ガラスの向こう側に拳銃向けてるあの女が居るじゃん、無茶苦茶ヤバいんだけど。でもチャット画面を素早く終了させて証拠は無くした。
女が車内から出てこいと指示を仰いだ、ここは大人しく従っておいた方が良いな。その女が居る方のドアから出ていく。あまり刺激しないように……散々刺激しといて何を言ってるんだろ?
女は観念して諦めた様子を見せている自分にニタニタと気味の悪い表情を浮かべている。実際やれないことも無いが、既に警察は呼んであるし時間稼ぎをしておかなきゃな。危なかったら補助スーツを駆使して逃げるか。
「You can not imitate arbitrary things anymore. Give up and pass that memory.」
「……What happens if I don’t pass memory?」
「You will die. You don’t want to die, too?」
「Are you willing to repay your sins?」
「No. Not at all.」
「All right. Well……Freeze.」
そのまま女に向けて睨み付ける。でも単なる睨みではなく、これまたクトゥルフ御用達の呪文【萎縮】を使って動きを封じさせてもらう。女は拳銃の引き金を引こうとするだろう、だが萎縮を使っている間は無駄だ。どうやっても、ね。
萎縮とはその名の通り、相手の行動を制限させる呪文だ。しかし、ここで権能を使いすぎたと実感させられる。確かに1から作って使用出来るまでに時間を掛けなければならない機械と違って、元々得ている権能は使い勝手が良い。
だからといって権能を乱用する気は全くない。以前権能は使いたくないって言ってしまったけど、ここで訂正しよう。不可抗力になった場合、または現状の技術で対処出来ない場合のみ使わせてもらう。そうしなければ、自分が殺られる。
女の持っている拳銃を抜き取る。重いし微妙に熱い、そして硝煙反応によるアンモニアとその他諸々の匂いが鼻をつんざく。見たことないな、あとで調べておこう。弾は、えーっと……成程ここでマガジンを抜き取れるのか。
現時点での装弾数は5発。先程撃ってきたのが3発だから、計8発撃てるみたいだなこの拳銃。にしても口径がデカイな、9mmじゃないなやっぱり。どちらかと言えばマグナム弾か?
おっとそうだ、自分としたことがうっかりしていた。この女とあの技術者、そしてレイラさんが社のデータを盗もうとしていたことを見せなければ、まぁ萎縮に関しては……この拳銃向けとけば良いか。
その女に集中しつつ、車内にあるノートパソコンを手に取りチャット機能を使ってSOPHIAと交信をする。無論、拳銃は重いけど補助スーツの影響で片手で持てる。反動に関しては今この場で知りたくはない。
──SOPHIA. Give me all the call history with Leila Slimul mobile phone with Vinigan Company.
━━…………Data transmission is complete.
ありがたい。あとはちょちょっと細工を施して、酷な話になるだろうけど父さんの仕事用PCに通話履歴のファイルを添付させて。ついでに翻訳機能を……っと、これで良い。あとはこの場からスタコラサッサと逃げますかね。
っと警察が来た。銃はほっといて、車を遮蔽物にするように移動したあと【消滅】の呪文で消え去りましょうかね。そういや消滅の呪文で消えるのって銃に付いた指紋は消えるんだろうか……あっ、Bluetooth買わなきゃ。車に置いてったし。こんなところで凡ミスするって……自分の馬鹿。
あとはVinigan Companyにこの情報を転送すれば仕事は終わる。この補助スーツが兵器としての需要を確立すれば必ずと言っていいほど大金が手に入る。Vinigan Companyへデータの送信を開始すると一段落ついたと多少なりと安堵する。あとはこのまま事が進んでいけば良い。
そう思っていた。矢先、車の天井からドンッという大きい音が聴こえる。その女は何事かと思い車内から出ると────
「Hey agent, is it in the midst of rendezvous alone by yourself like this?」
「!?」
そう、車の上から聞こえてきたのは先程邪魔をした小さな男の子。しかしCole Corporationの子息であり、今や知らない人は居ないと言える有名人の声。
トーマス・コールであった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ふぃー、何とか成功したや。車の追跡装置を作動させてSOPHIAに位置探知してもらって助かった。そうじゃなかったら“消滅”の呪文も効果が微妙な状態で発動されてただろうし。
【消滅】 所謂テレポートを発動させる呪文だ。クトゥルフでは眷属召喚でグール呼び出したり天候を変えたり会社に忍び込む時に使った門の創造などと様々な呪文がある。勿論他の神々だってそのようなことは出来るだろうけど、現状それが人間で簡単に出来るのは表面上自分だけだ。
そんな話しは置いといて。SOPHIAで探知させた場所と、自分の乗った車の天井を思い出してテレポートを成功させたのだ。本当に一か八かの賭けでもあったが。そもそも自動車の上に乗ったとはいえども、その自動車の上がテレポート可能位置になる可能性は低いのだ。場所と認定し難いのだから無理はない。
だが成功したとなると1つの説に行き着く。極論になってしまうが自分がある1枚の葉っぱの上に居て、それがテレポート出来る位置と決めてしまうようなものだ。しかし成功したとなれば自分の考えた極論は出来るということ、無論やろうと思えばの話しだが。
まぁそれよりも……目の前の女が振り返った途端、自分は補助スーツの出力で上乗せした飛び蹴りを放つ。出力は調整してもらって52%に上昇、暫くは眠ってもらうよ。
自分の放った飛び蹴りは女の首辺りにくい込み、女はそのまま2~3mほど滑って行った。うっわ痛ったそ、地面コンクリだから摩擦熱で背中の皮膚にダメージ受けてるよあれ絶対。しかもさっきの蹴り首に入って呼吸が一時的に困難だし……ともかくさっさと中止させるか。
そのまま車内にあるノートパソコンからUSBメモリを抜き取ってデータ送信を強制中断させる。あとは仕上げとしてSOPHIAに頼んでスパイ容疑確定の奴らに捕まってもらうために、情報をリークさせておくか。
「SOPHIA. Shed the call history between Leila Slimul and Vinigan Company to the media and the police.」
『━━━━』
「Hm? SOPHIA? Please reply.」
『━━━━』
弱ったな、繋がらない。まさかさっきの消滅でテレポートしたせいで通信が上手くいってないとか? 有り得るな、だとしたらこんなテレポートとかは……でも待って。門の創造の時は特に支障は無かった筈だよな。だったら……電波状況か?有り得なくは無い話しだけどねぇ。
ここで唐突に、本当に小さく聞き取れるのかどうか分からない場所からカチャと音がした。その瞬間自分の体を車内に入れさせ、そのついでに車のドアを閉めた。その一連の行動が終わった途端、銃声がきこえた。
車によって遮断されていて距離もあるせいでよく聞かなければ銃声とは判断しづらいけれど、ドアに空いた風穴と後ろの席にめり込まれた銃弾が事実だと物語っている。……嘘だろオイ、子ども相手に拳銃なんて使ってやがる!?
いや子どもとは呼べない脳年齢だろうけどね。精神年齢? どっちが本当の自分なのかさっぱり。って現実逃避してる暇は無いよねぇッ!?あっぶねぇ!今さっき近く通った! 銃弾が左横を通ってったよォ!?
素早く後部座席に移動して難を逃れるしかないッ!滑り込んで行けば……よっし成功ぅうう!?今度は目の前通ってったァ!?真面目に危ねぇ!あの女激情に駆られて撃ちまくってやがる!普通少しは穏便に済ませようと思わねぇのかよ!?
……いや待て、ドアを貫通するぐらいの威力の銃って限られてる筈だ。9mmパラべラム弾を使用する銃が多い分、高威力の拳銃なんてかなり限られてる筈だ。でも今はそんなこと考えてる場合じゃない、SOPHIAとの連絡は……あれ無い。いやまさか……!
あぁやっぱり! あの時銃弾が左横に通った時に避けようとして車のハンドルにぶつかったせいでBluetoothが……いや待てよ。ここに良いヤツがあるじゃないか。
このデータ送信に使ってたであろうノートパソコン、SOPHIAにこの信号を送ってチャット機能を応用すれば……よっし、上手くいった。
──SOPHIA.
━━Sir? The communication ceased, but how was it done?
──I have no time, I will say it shortly. Arrange the police men to send from now.
━━Yes sir.
チャット画面を一旦縮小させてこのノートパソコンの位置を検索、その地点をコピーしてチャット画面の会話部分に載せれば……これで良い。あとはSOPHIAが警察を呼んで、暫く耐えれば。
そういえば銃声が聞こえないな、どうしたん……oh マジで最悪。窓ガラスの向こう側に拳銃向けてるあの女が居るじゃん、無茶苦茶ヤバいんだけど。でもチャット画面を素早く終了させて証拠は無くした。
女が車内から出てこいと指示を仰いだ、ここは大人しく従っておいた方が良いな。その女が居る方のドアから出ていく。あまり刺激しないように……散々刺激しといて何を言ってるんだろ?
女は観念して諦めた様子を見せている自分にニタニタと気味の悪い表情を浮かべている。実際やれないことも無いが、既に警察は呼んであるし時間稼ぎをしておかなきゃな。危なかったら補助スーツを駆使して逃げるか。
「You can not imitate arbitrary things anymore. Give up and pass that memory.」
「……What happens if I don’t pass memory?」
「You will die. You don’t want to die, too?」
「Are you willing to repay your sins?」
「No. Not at all.」
「All right. Well……Freeze.」
そのまま女に向けて睨み付ける。でも単なる睨みではなく、これまたクトゥルフ御用達の呪文【萎縮】を使って動きを封じさせてもらう。女は拳銃の引き金を引こうとするだろう、だが萎縮を使っている間は無駄だ。どうやっても、ね。
萎縮とはその名の通り、相手の行動を制限させる呪文だ。しかし、ここで権能を使いすぎたと実感させられる。確かに1から作って使用出来るまでに時間を掛けなければならない機械と違って、元々得ている権能は使い勝手が良い。
だからといって権能を乱用する気は全くない。以前権能は使いたくないって言ってしまったけど、ここで訂正しよう。不可抗力になった場合、または現状の技術で対処出来ない場合のみ使わせてもらう。そうしなければ、自分が殺られる。
女の持っている拳銃を抜き取る。重いし微妙に熱い、そして硝煙反応によるアンモニアとその他諸々の匂いが鼻をつんざく。見たことないな、あとで調べておこう。弾は、えーっと……成程ここでマガジンを抜き取れるのか。
現時点での装弾数は5発。先程撃ってきたのが3発だから、計8発撃てるみたいだなこの拳銃。にしても口径がデカイな、9mmじゃないなやっぱり。どちらかと言えばマグナム弾か?
おっとそうだ、自分としたことがうっかりしていた。この女とあの技術者、そしてレイラさんが社のデータを盗もうとしていたことを見せなければ、まぁ萎縮に関しては……この拳銃向けとけば良いか。
その女に集中しつつ、車内にあるノートパソコンを手に取りチャット機能を使ってSOPHIAと交信をする。無論、拳銃は重いけど補助スーツの影響で片手で持てる。反動に関しては今この場で知りたくはない。
──SOPHIA. Give me all the call history with Leila Slimul mobile phone with Vinigan Company.
━━…………Data transmission is complete.
ありがたい。あとはちょちょっと細工を施して、酷な話になるだろうけど父さんの仕事用PCに通話履歴のファイルを添付させて。ついでに翻訳機能を……っと、これで良い。あとはこの場からスタコラサッサと逃げますかね。
っと警察が来た。銃はほっといて、車を遮蔽物にするように移動したあと【消滅】の呪文で消え去りましょうかね。そういや消滅の呪文で消えるのって銃に付いた指紋は消えるんだろうか……あっ、Bluetooth買わなきゃ。車に置いてったし。こんなところで凡ミスするって……自分の馬鹿。
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