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Bizarre Youth
11話
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あの一件で面談室に集められたクロードとマークの2人は、クラス担当教員の前で静かに座っている。だが2人の態度はそれぞれ沈黙と険悪、全く違う2人の様子に多少頭が痛くなる教員であったが、こんな様子であっても対応をしなければならない。これでは教員が不憫である。
互いが違う形の沈黙を貫く最中、呆れ果てた教員が漸く動き出した。
「What were you guys talking about? Please say clearly I will not get angry.」
しかし両者とも何も言わない。沈黙に沈黙が続いて教員が呆れ果てていると、クロードがようやく語りだした。
「We just talked about our favorite characters. Mark said that Nobunaga Oda was good, but when I said "No, I think Toyohisa Shimazu one choice, I think in a common sense way", I was arguing against it.」
「That's all?」
「Yeah yeah.」
「The same.」
何を考えていたんだこの2人、あとトヨヒサシマヅって誰だと思う担当教員。しかしクロードの言っていたことに対して同調していたマークの様子を見て、そんなことかとまたもや呆れた様子となっていた。
「It is true that although there are times when your opinion is split up with your favorite character, please respect each other's opinions and make a statement. Okay? Finish.」
終わったことを告げられると、そそくさとバッグを持って部屋から出ていった。足早に教室に向かい授業を途中から受ける。もう自分との関わりはマークに捨てて欲しいのだ、今の自分は誰かを守る必要があると心に決めているのだ。
マキナによる寄生は力を与えた、とてもとても強大な力をその身に宿した。誰にも負けないであろう力を手に入れた。けれどその中で失ったものは、本来人間に必要な人の輪から外れていくクロードは、悲しい存在なのだろう。
哲学的な考えは父親の影響なのか、よく小さい頃からしていた。だからこそ考える、トーマス・コールもまた同じようなことを思っていたのだろうか。人を助けることにその力と頭脳を使っていたのだろうか。
突然手に入れた力を、トーマス・コールは苦悩するのだろうか。するだろう、彼もまた人間なのだから。彼もまた突然その力を手に入れて、その運命に翻弄されているのだから。超常的な存在によって勝手に運命を定められ、大切なものを失ったのだから。
しかしトーマス・コールもクロードの唯一の違いは、前者は両親の仇を倒すために力を作った。後者は突然力を手に入れて、苦悩を味わい責任を感じ取った。
経緯は違う。
動機も違う。
色々と違いすぎてる。
けれど、唯一の共通点は……力を何に使うのかということを考えていることだ。
今日もクロードは、この場に居ないトーマス・コールと自分を比べて物思いに耽っていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2ヶ月が経った頃、夏休みも終わって勉強をするのが日常となった日。クロードは他の生徒とともにある会社に訪れていた。もう2ヶ月も経ったことでマキナが寄生している状態での会話や力の使い方も慣れた。
人助けや犯罪者の確保を主に行い、その活躍は新聞の一面にまで載るという1種のスーパースターという扱いを受けていた。ラジオでもテレビでもインターネットでも影響を与えてはいた。その中にも悪意ある意見や蔑みなどもある。
それを見たクロードは、もう自分関連での記事は見ないようにしようと決めた。たとえそこに好評が記載されてようと、人々が【HARLEQUIN】という存在に希望を見出そうとしていても、クロード自身のことを考えていない発言だけであるのだから。
新たに生まれたヒーロー2人は、それこそ様々な人間に侮蔑の意見は多いものだ。だからこそ彼らは民衆の意見や他人の意見を無視している、傷つけられるという確信が逃げを生むのだ。
そのような状況下にありながら、クロードはユラユラとバスに乗って揺れていた。特に何をするでもなく窓ガラスに映る景色だけを何の面白みもなさそうにずっと見ていた。
『Claude.』
「Mh?」
『Today is a Employment briefing session. You looks boring.』
「I have never thought about it. I decided to go the same way as my dad.」
『Be a researcher of philosophy theory. Aren't you working in a company?』
「It's something different. I am not interested because it is not interesting above all.」
『I see.』
他愛ない話であるものの、マキナの声も存在も他者には知りもしない。唯一知っているのは、マークだけであるが……意外なことにマークと喧嘩したあとも特に民衆の変わった様子はなく、いつもの如く活動を続けている。
言っても無駄だと分かっているのか、はたまた何の目的があるのかと考えていく内に、バスの景色がゆっくりとした動きへと変わっていた。曲線的な曲がり角に差し掛かったことで、そうなっただけであるが。
バスから降りていくと、視界にはとても大きなビルが映っている。この高層ビル、名前を【Edia・industry】といいコールコーポレーションに続く大企業として知られている。今回は就職説明会の一環としてこの様は場所まで来ている。
このエディア・インダストリーのコンセプトは【人間の可能性を広げる】というもので、脳科学や神経学、生物学や遺伝学などの研究者を集め、人を進化させる物作りをと信念を掲げている。人間を支えるパワードスーツも造ってはいるがコールコーポレーションほどではない。
だがその代わり製薬企業としての面もあり、今も尚研究を続け新たな新薬を開発している。これはトーマス・コールでもまだ辿り着いていない唯一優れた部分だろう。
そのエディア・インダストリーの社長である『Magius・Edia』は世界のセレブ社長の一人にも数えられるほどの大金持ちで、ハーバード大卒業という輝かしい成績を持っている。正直トーマス・コールが16歳でMITを卒業していることを踏まえれば、ここでも差が生まれている現実。
そんな大企業への就職説明会ともあって、周りの生徒も一部は興奮冷めやらぬ状態だ。主にその会社への就職を検討したり医学に関心を持つ生徒からすればの話だが。やはり落胆の声もあり、やはり今人気のTAXIMを一目見たいとする男子生徒が多い。勿論この会社も相当なものだが、やはり有名どころに行きたいのだ。尤もTAXIMが観られる訳では無いが。
引率の教師が生徒たちを集めて社内へと誘導していき、本日お世話になる担当の人との挨拶を済ませると会議室に入り説明が始まった。
「Our Edia・Industry is mainly engaged in daily research and development with a slogan of human development. It is often compared with Cole・Corporation, but we are better at developing new drugs.」
改めて、というよりも“初耳だ”と謂わんばかりの表情で内心驚いている生徒たち。あのコール・コーポレーションにも勝っているものがあるのだと知り感嘆する一方、いやいやコール・コーポレーションが上でしょと考えるものに別れる。クロードは今のところどうでもよかった。
そうして説明会の最中に、自動扉が開いた。その扉は社員証をリーダーにタッチして認証しなければ入れないのだが、今回の担当の驚きようとその正体を言う声で成程納得した。
「President?!」
そう、この会社の社長だ。この会社のトップに立つ人物が何故このような場所に来たのかは分からない。単なる気まぐれなのだろうか。
だが彼らだけは違っていた、あの社長が来た理由が予想の範囲とはいえ納得できるものに変貌していったのだから。
『Really……?!』
「MAKINA?」
クロードはバレないようにマキナへと訊ねた。知っている人物なのか、何をそんなに驚いているのか。
しかしその疑問の答えは、予想の斜め上の答えとして帰ってきた。
『Why does my brother's temper start from that man……?!』
「!?」
『And that man……
I have seen it!』
それは、彼女の出生と同時に彼女の目的が明かされていくことになるものであった。
彼女が生まれた経緯。
彼女が生まれた理由。
そして彼女が作られた目的。
それらが明かされていくことになるまで、そこまで時間が掛かることはなかった。
互いが違う形の沈黙を貫く最中、呆れ果てた教員が漸く動き出した。
「What were you guys talking about? Please say clearly I will not get angry.」
しかし両者とも何も言わない。沈黙に沈黙が続いて教員が呆れ果てていると、クロードがようやく語りだした。
「We just talked about our favorite characters. Mark said that Nobunaga Oda was good, but when I said "No, I think Toyohisa Shimazu one choice, I think in a common sense way", I was arguing against it.」
「That's all?」
「Yeah yeah.」
「The same.」
何を考えていたんだこの2人、あとトヨヒサシマヅって誰だと思う担当教員。しかしクロードの言っていたことに対して同調していたマークの様子を見て、そんなことかとまたもや呆れた様子となっていた。
「It is true that although there are times when your opinion is split up with your favorite character, please respect each other's opinions and make a statement. Okay? Finish.」
終わったことを告げられると、そそくさとバッグを持って部屋から出ていった。足早に教室に向かい授業を途中から受ける。もう自分との関わりはマークに捨てて欲しいのだ、今の自分は誰かを守る必要があると心に決めているのだ。
マキナによる寄生は力を与えた、とてもとても強大な力をその身に宿した。誰にも負けないであろう力を手に入れた。けれどその中で失ったものは、本来人間に必要な人の輪から外れていくクロードは、悲しい存在なのだろう。
哲学的な考えは父親の影響なのか、よく小さい頃からしていた。だからこそ考える、トーマス・コールもまた同じようなことを思っていたのだろうか。人を助けることにその力と頭脳を使っていたのだろうか。
突然手に入れた力を、トーマス・コールは苦悩するのだろうか。するだろう、彼もまた人間なのだから。彼もまた突然その力を手に入れて、その運命に翻弄されているのだから。超常的な存在によって勝手に運命を定められ、大切なものを失ったのだから。
しかしトーマス・コールもクロードの唯一の違いは、前者は両親の仇を倒すために力を作った。後者は突然力を手に入れて、苦悩を味わい責任を感じ取った。
経緯は違う。
動機も違う。
色々と違いすぎてる。
けれど、唯一の共通点は……力を何に使うのかということを考えていることだ。
今日もクロードは、この場に居ないトーマス・コールと自分を比べて物思いに耽っていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2ヶ月が経った頃、夏休みも終わって勉強をするのが日常となった日。クロードは他の生徒とともにある会社に訪れていた。もう2ヶ月も経ったことでマキナが寄生している状態での会話や力の使い方も慣れた。
人助けや犯罪者の確保を主に行い、その活躍は新聞の一面にまで載るという1種のスーパースターという扱いを受けていた。ラジオでもテレビでもインターネットでも影響を与えてはいた。その中にも悪意ある意見や蔑みなどもある。
それを見たクロードは、もう自分関連での記事は見ないようにしようと決めた。たとえそこに好評が記載されてようと、人々が【HARLEQUIN】という存在に希望を見出そうとしていても、クロード自身のことを考えていない発言だけであるのだから。
新たに生まれたヒーロー2人は、それこそ様々な人間に侮蔑の意見は多いものだ。だからこそ彼らは民衆の意見や他人の意見を無視している、傷つけられるという確信が逃げを生むのだ。
そのような状況下にありながら、クロードはユラユラとバスに乗って揺れていた。特に何をするでもなく窓ガラスに映る景色だけを何の面白みもなさそうにずっと見ていた。
『Claude.』
「Mh?」
『Today is a Employment briefing session. You looks boring.』
「I have never thought about it. I decided to go the same way as my dad.」
『Be a researcher of philosophy theory. Aren't you working in a company?』
「It's something different. I am not interested because it is not interesting above all.」
『I see.』
他愛ない話であるものの、マキナの声も存在も他者には知りもしない。唯一知っているのは、マークだけであるが……意外なことにマークと喧嘩したあとも特に民衆の変わった様子はなく、いつもの如く活動を続けている。
言っても無駄だと分かっているのか、はたまた何の目的があるのかと考えていく内に、バスの景色がゆっくりとした動きへと変わっていた。曲線的な曲がり角に差し掛かったことで、そうなっただけであるが。
バスから降りていくと、視界にはとても大きなビルが映っている。この高層ビル、名前を【Edia・industry】といいコールコーポレーションに続く大企業として知られている。今回は就職説明会の一環としてこの様は場所まで来ている。
このエディア・インダストリーのコンセプトは【人間の可能性を広げる】というもので、脳科学や神経学、生物学や遺伝学などの研究者を集め、人を進化させる物作りをと信念を掲げている。人間を支えるパワードスーツも造ってはいるがコールコーポレーションほどではない。
だがその代わり製薬企業としての面もあり、今も尚研究を続け新たな新薬を開発している。これはトーマス・コールでもまだ辿り着いていない唯一優れた部分だろう。
そのエディア・インダストリーの社長である『Magius・Edia』は世界のセレブ社長の一人にも数えられるほどの大金持ちで、ハーバード大卒業という輝かしい成績を持っている。正直トーマス・コールが16歳でMITを卒業していることを踏まえれば、ここでも差が生まれている現実。
そんな大企業への就職説明会ともあって、周りの生徒も一部は興奮冷めやらぬ状態だ。主にその会社への就職を検討したり医学に関心を持つ生徒からすればの話だが。やはり落胆の声もあり、やはり今人気のTAXIMを一目見たいとする男子生徒が多い。勿論この会社も相当なものだが、やはり有名どころに行きたいのだ。尤もTAXIMが観られる訳では無いが。
引率の教師が生徒たちを集めて社内へと誘導していき、本日お世話になる担当の人との挨拶を済ませると会議室に入り説明が始まった。
「Our Edia・Industry is mainly engaged in daily research and development with a slogan of human development. It is often compared with Cole・Corporation, but we are better at developing new drugs.」
改めて、というよりも“初耳だ”と謂わんばかりの表情で内心驚いている生徒たち。あのコール・コーポレーションにも勝っているものがあるのだと知り感嘆する一方、いやいやコール・コーポレーションが上でしょと考えるものに別れる。クロードは今のところどうでもよかった。
そうして説明会の最中に、自動扉が開いた。その扉は社員証をリーダーにタッチして認証しなければ入れないのだが、今回の担当の驚きようとその正体を言う声で成程納得した。
「President?!」
そう、この会社の社長だ。この会社のトップに立つ人物が何故このような場所に来たのかは分からない。単なる気まぐれなのだろうか。
だが彼らだけは違っていた、あの社長が来た理由が予想の範囲とはいえ納得できるものに変貌していったのだから。
『Really……?!』
「MAKINA?」
クロードはバレないようにマキナへと訊ねた。知っている人物なのか、何をそんなに驚いているのか。
しかしその疑問の答えは、予想の斜め上の答えとして帰ってきた。
『Why does my brother's temper start from that man……?!』
「!?」
『And that man……
I have seen it!』
それは、彼女の出生と同時に彼女の目的が明かされていくことになるものであった。
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