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Bizarre Youth
8話
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夜のデトロイト州某地区にて、建物の上空を1つの影が跳んでいた。跳ぶことにはなれていそうではあったが、まるで素人みたく地に足つけるかのように着地している。
それが続けられること実に45分間、決して遅くはない時間でヒューストンにあるビル屋上へと到着した。ヘリポートがあり既に何十人もの研究者と思わしき人物達が機材やレポート資料に付きっきりで慌ただしい様子であった。
屋上に降り立った者は首を鳴らして肩を回す。すると固く角張ったような筋肉が元に戻り人としての形を取っていく。いや、元に戻っていくというのが正しいだろう。化け物とも取れる異形の姿から人になるのだから。
「Dr. Megan, what are the measurement results?」
「No vital measurement error. We’ll give you an inhibitor.」
メーガンと呼ばれたその人物は主任と呼んだ人物を椅子に座らせつつ、研究員に指示を出して身体にチューブと液体の入ったパックを付けた点滴に使われる針を腕に差し込みマジックテープで取り付けた。その後パソコンの前に立ち操作すると、そのパックから液体が流れ出しチューブを伝って体内へと入っていく。
少し身じろぎをするのも束の間、パックの中身が全て消えチューブ内の液体も消えると、その身じろぎは治まり1つ息を吐く。針はメーガン博士によって抜き取られ、様子を確認するために各部位のチェックを行う。
すぐに終わると、主任と呼ばれた人物とメーガン博士との会話が始まった。
「Did you find MAKINA?」
「We’re searching with all my might, but I have not yet found whereabouts.」
「Tch. It's good, let's go down.」
会釈だけ済ませてその場から離れると、目を閉じて思い出していく。思えば、あの時から全てが始まったのだと憎たらしい感情で一杯であった。
「『Dim Ratstock』……! I'll reward you for the hard work you've done……!
この場にいない1人の人間を憎みながら、彼は待つ。あの忌々しい輩が持って行った、神の片割れを手に入れるまで。そして同時に、体内に居る神のもう片方が、ほんのちょっぴり抵抗した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日、7月23日。朝いつもの様にリビングへと足を運ぶと新聞を見ている父親と遭遇する。ただクロードの目には新聞の一面、ほんの1部に気になる記事を見つけた。銀行強盗、つまりクロードがあの時倒した時のものが掲載されていたのだ。
「Hi dad.」
「Hi Claude.」
挨拶だけ交わしたあと椅子に座り、軽く儀礼を済ませて朝食を食べ始める。あの記事をきちんと見た訳では無いにせよ、まさか自分が新聞に載るとは思ってもいなかった。恐らく動画サイトにもクロードを撮っている映像が流れ出ている可能性があるので、後で確認を取っておこうと考えていた。
この【MAKINA】に寄生されてからというものの、確かに体は軽いし色んなことが出来るのだろうと思っていたが実際は不便な点とてある。
まず初めに今この時でも腹が減って仕方がないのだ。平均男子の5倍もの新陳代謝は確かに異常な身体能力を生み出したが、それ相応の燃費性能にもなっている。故にエンプティ間近の状態のガソリン車に、たっぷり50リットルもの燃料を給油しなければならないという枷がある。
次に力加減が調整しにくいこと。寄生する以前のようにしていてはドアや食器類、果ては衣類が破壊されてしまう。しかしその問題は今のところ起きていない。何故だかはクロード自身は知らない、知る由もない。
最後に、少しでも力を抜こうものなら能力が発動してしまうこと。常日頃、日常生活の中ではある程度の緊張によって免れてはいるが、もし脱力する場面がある際は勝手に発動してしまうのが難点である。
これらの点から一概にMAKINAの寄生が良いものだとは限らない。ましてや日常に身を置くクロードからすれば、実際は無駄な能力なのは見て取れる。が、そのクロード当人は特に気にしておらず、寧ろ若気の至りからか必要としている。本当のことを知らぬまま。
「Dad.」
「mH?」
「Cover of the today 's newspaper, was there anything to worry about?」
「Cover? Ah…… besides the ripple that Thomas Cole is TAXIM …… only the article of arrest of robbery. It’s unusual that you are concerned about newspapers.」
「Just a little.」
嘘は言ってない。これから強盗事件の詳細を調べるのだから、興味がなければ新聞記事に興味も示さない。それが普通なのだから。
「Thank you for the meal.」
「Is there a school today? 」
「Yeah right. …… So what?」
「I just heard it.」
「…… I see.」
そのままクロードは自室に戻り、着替えつつ昨日の強盗について検索してみる。すると検索該当情報の見出しには、“superman appears!”と幾つもあった。検索ランキングでも急上昇しており、一部始終の映像が映し出されている。
「Wow…… it's the number one spike in the video rankings. They said that the comment is almost a fake movie.」
『Everything is true. But I think that such a reaction is good? Whether the identity is bald and it makes a fuss.』
「Like a Thomas Cole who told me his identity from himself, I should say it as "actually me".」
『Thomas Cole…… what kind of person is it?』
「He is a clever, rich, CEO, and producer of 【TAXIM】. He is the hero who fought with Herbus Vinigan in the meantime.」
『…… You seem not to think of him very well. Why do you think so?』
「Because, as a result, the guy is a murderer. It's the end of a festival that calls him "He's a hero". I can only think that I'm playful.」
徐々にクロードの表情が強ばっていき、頭の中でモヤモヤとした何かが蠢いている。今、クロードの中には怒りにも似た何かがグツグツと煮立っていた。大釜の中に容れたスープが高温で煮られるように。
しかし、そんな意見に真っ向から対面するのが他でもないマキナであった。
『But you saved a lot of people, right?』
「Even so, what is it like killing a person and being a hero?」
『I think that's different.』
「Why?」
『Even heroes who appear in history are killing people. Jeanne d'Arc, King Arthur, Lancelot, Gahain and Garahad…… That's all right. After all, it only means that the views of people ──』
「Okay, okay! stop!」
そう叫ぶとマキナの声がしなくなる。今、クロードはとてもイライラしていた。マキナの発言そのものは確かにそうであるからだ。答えられるような答え、自分の考えを貫ける答えがどうしても見つからない。そしてこのよえに吐き出さなければ 、収まりがつかない時期でもあるのだから。
「What did you do?」
「Nothing!」
こうやって、誰かに高圧的な態度を取ることでしか収まりがつかないのは不便である。もっとも、この現象は誰にでも経験するものなので仕方の無いことなのだろう。
このイライラを抑えたいが為に、彼はすぐに家を出て学校へと走って向かった。
それが続けられること実に45分間、決して遅くはない時間でヒューストンにあるビル屋上へと到着した。ヘリポートがあり既に何十人もの研究者と思わしき人物達が機材やレポート資料に付きっきりで慌ただしい様子であった。
屋上に降り立った者は首を鳴らして肩を回す。すると固く角張ったような筋肉が元に戻り人としての形を取っていく。いや、元に戻っていくというのが正しいだろう。化け物とも取れる異形の姿から人になるのだから。
「Dr. Megan, what are the measurement results?」
「No vital measurement error. We’ll give you an inhibitor.」
メーガンと呼ばれたその人物は主任と呼んだ人物を椅子に座らせつつ、研究員に指示を出して身体にチューブと液体の入ったパックを付けた点滴に使われる針を腕に差し込みマジックテープで取り付けた。その後パソコンの前に立ち操作すると、そのパックから液体が流れ出しチューブを伝って体内へと入っていく。
少し身じろぎをするのも束の間、パックの中身が全て消えチューブ内の液体も消えると、その身じろぎは治まり1つ息を吐く。針はメーガン博士によって抜き取られ、様子を確認するために各部位のチェックを行う。
すぐに終わると、主任と呼ばれた人物とメーガン博士との会話が始まった。
「Did you find MAKINA?」
「We’re searching with all my might, but I have not yet found whereabouts.」
「Tch. It's good, let's go down.」
会釈だけ済ませてその場から離れると、目を閉じて思い出していく。思えば、あの時から全てが始まったのだと憎たらしい感情で一杯であった。
「『Dim Ratstock』……! I'll reward you for the hard work you've done……!
この場にいない1人の人間を憎みながら、彼は待つ。あの忌々しい輩が持って行った、神の片割れを手に入れるまで。そして同時に、体内に居る神のもう片方が、ほんのちょっぴり抵抗した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日、7月23日。朝いつもの様にリビングへと足を運ぶと新聞を見ている父親と遭遇する。ただクロードの目には新聞の一面、ほんの1部に気になる記事を見つけた。銀行強盗、つまりクロードがあの時倒した時のものが掲載されていたのだ。
「Hi dad.」
「Hi Claude.」
挨拶だけ交わしたあと椅子に座り、軽く儀礼を済ませて朝食を食べ始める。あの記事をきちんと見た訳では無いにせよ、まさか自分が新聞に載るとは思ってもいなかった。恐らく動画サイトにもクロードを撮っている映像が流れ出ている可能性があるので、後で確認を取っておこうと考えていた。
この【MAKINA】に寄生されてからというものの、確かに体は軽いし色んなことが出来るのだろうと思っていたが実際は不便な点とてある。
まず初めに今この時でも腹が減って仕方がないのだ。平均男子の5倍もの新陳代謝は確かに異常な身体能力を生み出したが、それ相応の燃費性能にもなっている。故にエンプティ間近の状態のガソリン車に、たっぷり50リットルもの燃料を給油しなければならないという枷がある。
次に力加減が調整しにくいこと。寄生する以前のようにしていてはドアや食器類、果ては衣類が破壊されてしまう。しかしその問題は今のところ起きていない。何故だかはクロード自身は知らない、知る由もない。
最後に、少しでも力を抜こうものなら能力が発動してしまうこと。常日頃、日常生活の中ではある程度の緊張によって免れてはいるが、もし脱力する場面がある際は勝手に発動してしまうのが難点である。
これらの点から一概にMAKINAの寄生が良いものだとは限らない。ましてや日常に身を置くクロードからすれば、実際は無駄な能力なのは見て取れる。が、そのクロード当人は特に気にしておらず、寧ろ若気の至りからか必要としている。本当のことを知らぬまま。
「Dad.」
「mH?」
「Cover of the today 's newspaper, was there anything to worry about?」
「Cover? Ah…… besides the ripple that Thomas Cole is TAXIM …… only the article of arrest of robbery. It’s unusual that you are concerned about newspapers.」
「Just a little.」
嘘は言ってない。これから強盗事件の詳細を調べるのだから、興味がなければ新聞記事に興味も示さない。それが普通なのだから。
「Thank you for the meal.」
「Is there a school today? 」
「Yeah right. …… So what?」
「I just heard it.」
「…… I see.」
そのままクロードは自室に戻り、着替えつつ昨日の強盗について検索してみる。すると検索該当情報の見出しには、“superman appears!”と幾つもあった。検索ランキングでも急上昇しており、一部始終の映像が映し出されている。
「Wow…… it's the number one spike in the video rankings. They said that the comment is almost a fake movie.」
『Everything is true. But I think that such a reaction is good? Whether the identity is bald and it makes a fuss.』
「Like a Thomas Cole who told me his identity from himself, I should say it as "actually me".」
『Thomas Cole…… what kind of person is it?』
「He is a clever, rich, CEO, and producer of 【TAXIM】. He is the hero who fought with Herbus Vinigan in the meantime.」
『…… You seem not to think of him very well. Why do you think so?』
「Because, as a result, the guy is a murderer. It's the end of a festival that calls him "He's a hero". I can only think that I'm playful.」
徐々にクロードの表情が強ばっていき、頭の中でモヤモヤとした何かが蠢いている。今、クロードの中には怒りにも似た何かがグツグツと煮立っていた。大釜の中に容れたスープが高温で煮られるように。
しかし、そんな意見に真っ向から対面するのが他でもないマキナであった。
『But you saved a lot of people, right?』
「Even so, what is it like killing a person and being a hero?」
『I think that's different.』
「Why?」
『Even heroes who appear in history are killing people. Jeanne d'Arc, King Arthur, Lancelot, Gahain and Garahad…… That's all right. After all, it only means that the views of people ──』
「Okay, okay! stop!」
そう叫ぶとマキナの声がしなくなる。今、クロードはとてもイライラしていた。マキナの発言そのものは確かにそうであるからだ。答えられるような答え、自分の考えを貫ける答えがどうしても見つからない。そしてこのよえに吐き出さなければ 、収まりがつかない時期でもあるのだから。
「What did you do?」
「Nothing!」
こうやって、誰かに高圧的な態度を取ることでしか収まりがつかないのは不便である。もっとも、この現象は誰にでも経験するものなので仕方の無いことなのだろう。
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