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本編(ミュリエル視点)

6日目★

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結局翌朝になってもアルディオスに会う事はなく、私は彼の香りのする部屋で初めて一人で目を覚ました。
広いシーツの上、隣に指を這わせても温かみはない。昨晩は一度も戻らなかったようだ。
身を起こして、あたりを見回す。誰もいない部屋。モノトーンでまとめられているせいか、冴えざえとした印象すら受ける。こんなに広かったのか、と思うような孤独感に苛まれた。
とは言っても、お母様が亡くなってから、私はずっと孤独だった。私を顧みないお父様、暴力や暴言で支配する義妹、私の尊厳まで金に変えた義母。
それを悲しむことはあっても、恨んだことはない。信じてもらえない、偽善に聞こえてしまうかもしれないけれど、私の中にはもともと誰かを恨んだり、妬んだりする気持ちが欠如しているようだった。
そんな中、アルディオスに買われて、愛されて。
1人を気楽だと感じることはあっても、怖いと感じたのは初めてだった。
もし、もしこのままアルディオスに会えなかったら?
気持ちを伝えられずに他の誰かに売り渡されてしまったら?
そう思うだけで、背筋が凍るようにゾッとした。ほろりと、涙が溢れる。

「あいたい・・・」

失いたくない。

「さみしい・・・」

彼の温もりを知ってしまった私に、いつまで続くかわからない1人の時間はもう耐えられそうにない。

「すき・・・」

ここ数日ずっと胸にしまっていた言葉。声にしたら、胸の動悸が一層早まった。
ベッドから立ち上がると、寝室の扉を叩いた。戸を開いて驚いたようなレネにもたれかけて、懇願する。

「アル様に、会いたい・・・」

幸せに、なりたい。彼と一緒に。


△▼△


いつの間にか、気を失うように眠っていたようだった。朧げな視界に、細められた漆黒の瞳。
火照った額に冷たい布の感触がして、心地よさに意識を持っていかれそうになる。それでも、私はベッドから体を引き剥がした。ふらつく体と、額から滑り落ちた布を受け止める優しい手。整った服にしわが寄るのも気づかないうちに肩口に額を擦り付けた。

「ごめん、体調が悪かったんだね。昨晩1人にして、寂しかったよね」
「はい・・・」

後半部分にうなずいたことに、彼は気づいてくれたでしょうか。

「しばらくはここにいるから、安心して眠るといいよ。何か食べられそう? クリスに作ってもらおうか」
「いや・・・」
「ん?」
「すき、です。アル様。私があげられるのは、この身一つしかありませんけれど」

それでも、私だけを愛して幸せにしてくれますか?
私がここにきてからの彼の振る舞いを見れば、わかり切ったことなのに答えを欲しがるなんてなんて浅ましい。
でも、見上げれば瞳を見開いた彼がいる。私は返事を待った。

「それは、この間の返事と思っていいのかな」

視線を合わせたままこくり、とうなずく。途端顎を取られて唇に柔らかい感触。そのうちに下唇を僅かに食まれる。開いた口にはぬるりと熱をもった塊が入ってきて、私は驚いて目を開けた。こんなに近くで見ても、彼に欠けている所なんて一つもなくて。
口内を侵される舌に自分の舌も絡めとられ、唾液が口の端から漏れる。逃げを打つことなんて出来ない。いつの間にか後頭部を支えられていたから。
くったりとした身体をベッドに横たえられ、上にのしかかる身体は重く熱い。唇が離れて息を大きく吸う。その間にアルディオスは彼自身の胸元を飾っていたクラバットを乱暴に引きちぎり、びり、カツンと高い音を立てた。

「ごめん、優しくする。でも今すぐミュリエルが欲しい」
「私も、です」

どちらともなく唇がまた合わさり、くちゅくちゅとした音に私は溺れた。


△▼△


アルディオスが触れたところは、どこも気持ちいい。
リングを外されて直接頂を指で触れられる。最初は胸全体をしっとりと揉んで、私の息が上がって来た頃には頂の周りをくるくると。じきに硬くなった頂は優しく触れたり人差し指と親指でこねるように。

「あぁん、きゃ、ある、さま・・・」

優しく、強く緩急をつけて愛でられて私はびくびくと体を震わせた。その後でキスでも酔わされた厚みのある舌に、ねっとりと舐められる。

「ぃや、ぁん!」
「ミュリエルは、本当に感じやすくて乳首で気持ちよくなれるね。ずっとこうしたいって思ってたんだ」

ちゅうと吸い付いたり、尖らせた舌先で頂の回りをくるくる辿られた。左右とも片方は指にもう片方は舌で順番に何回も愛されて、解放された後の頂は赤く色づき唾液でてらてらと光って見えて、恥ずかしさに震えた。

「さて、こっちも味あわせてね」
「ある、さぁあああ! っぅ、ひぅ!」

無意識に擦り合わせていた膝が開かれる。彼はすぐさま足の間に顔を落とす。気持ちいいところを、舌で愛撫された時はそれだけでイってしまい、彼の整った顔を汚してしまった。それなのに、その粗相・・・彼は愛液、と言っていたけれど・・・も全て舐めとられてしまう。舌をそこに這わせたままに、私の羞恥に染まった顔を見ている視線に気付いてからはしばらく視線を逸らしたけれど、敏感なところで笑われてその刺激だけでイきそうになった。

「っ、ぁは・・・あぅ」

長い指は柔らかく、滑りをよくする香油のようなものでナカをほぐす。その液体に匂いはなくて、近いアルディオスの香りに包まれる。

「ここが、ミュリエルの気持ちいいところだよ」

私の奥底にある一ヶ所を、言葉と共に何度も撫でられて指を締め付けてしまう。でも、イく寸前で3回止められて堪えきれずに私が涙を零すと、ゆっくりと指は引き抜かれた。
処女を失うときは、さすがに身体がこわばり、彼の足の間・・・を見て絶対に無理、と再び涙が出そうになった。けれど、ゆっくりじっくり快楽に慣れた身体はアルディオスが繰り返しささやく『大丈夫だよ』と『僕も愛して』の言葉に鈍痛を感じただけだった。
それでも、内側から大きい熱の塊に圧迫される。初めて感じるそれに私は常にいっぱいいっぱいで、彼のささやかなお願いを十分に満たすことはできなかった。それなのに、アルディオスはとても嬉しそうで、幸せそうに笑ってくれた。

「う、ああ、きもち・・・」
「ん、ぼくもだ」

ようやく熱が馴染んで、彼が私の腰をつかんで動き始める。ぱちゅん、と水音が響く。
一緒に気持ちよくなれるように、と腰を動かすときには、下のリングでとめられていた性感帯も指で刺激される。そこはかなり感じやすいところだから、と言っていたような気がするがどこもかしこも気持ちがいい私は彼に縋り付いてうん、うんとうなずくのに精一杯だった。

「っ、出すよ、一緒にイこうね」
「っは、い」

やがて、ひときわ激しく揺さぶられて彼自身が身を震わせ、中で弾けてイく。じんわりとした熱が私の中に残る。
涙が出るほど嬉しい、という言葉の意味を、私はその時初めて知りました。
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