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11.ヘルトside 召喚
しおりを挟む俺は目の前で凄まじいスピードで仕事を片付けていく魔王様を見て、思う。
この人はやっぱり変な人だなと。
「ああ、フィオーレに会いたい」
「またその話ですか」
魔王様はフィオーレ様を召喚してからというもの、ずっとこの調子だ。
伴侶の召喚を行ったあの日、俺は魔王様のタイプがフィオーレ様のような人だったと分かり、ただ純粋に驚いた。
俺は最初、人間が召喚されるとすら思っていなかったのだから。
♢♢♢
「ヘルト、そろそろ伴侶の召喚をしようと思うんだ。何を用意したらいいと思う?」
「魔王様のタイプの方が来られるはずなのですから、魔王様が必要だと思うものを用意したら良いのではないでしょうか」
「そうなんだよ、だからヘルトに聞いているのに」
俺は不思議だった。だって、魔王様のタイプの人がどんな人かなんて、俺に分かるわけないのだから。そんな話など、したこともなかったし。
「伴侶の侍女はアミカにお願いしたし、護衛騎士も決まった。必要になるドレスも用意したし、アクセサリーも。部屋も整えたし、あと何がいるかな?」
「あの、やけに胸元が平たいドレスですか」
「そうそう、胸は清楚であればあるほどいいからね」
俺はこの瞬間、魔王様が貧乳フェチであることを初めて知った。
「大きい方が、良いのでは?」
だから、ただ純粋な疑問としてその言葉が出たことは、許してほしい。
「え、大きい方が好きなんだ。変わってるね」
「いや……」
変わってるのは絶対に魔王様の方だと思うのは、俺だけなのだろうか。事実、俺の恋人は胸が大きい。いや、別に胸が大きいから好きになったわけでは全然ないけれど。
「魔族の女性は大体みんな胸が大きいし、エルフは寿命が長すぎて僕より長生きしてしまうでしょ。獣人には番がいるから、いるとすれば召喚する前に相手が見つかっているはずだ。だから、きっと召喚されてくるのは人間だと思うんだ。ヘルトは誰よりも人間に詳しいでしょ?だから聞きたくて」
「まあ、それは間違いなくそうですね」
人間に詳しいと言っても、俺が人間界で暮らしていたのはもう十年以上前の話だ。状況は変わっているだろうし、人間だっていろんな人がいる。自分ならこうだとは言えても、人間の女性については何もアドバイスなどできない。言えることがあるとすれば、経験者としてただ一つだけ。
「でしたら、温かい飲み物がすぐ出せるようにした方がいいかもしれません」
「紅茶とか?」
「はい。召喚の時に巻き込まれる黒い渦みたいなやつ、トラウマになるほど怖いんですよ。きっと気が動転されていると思うので、温かいものを飲めば多少は気持ちが落ち着くかと」
「そっか、ありがとうヘルト」
その後、実際に召喚されてきた女性を初めて見た時、俺はまた驚くことになる。
ボロボロのドレスに、細身の身体。魔王様が用意されていたドレスがピッタリ入りそうな、とても平らな胸。それなのに、とても所作が美しく、ひと目見て地位の高い女性だったことが分かる洗練された雰囲気。話を聞けば、処刑寸前だったという。魔王様は無意識に、彼女の命を救っていた。
それはきっと、魔王様の根底にある理不尽に不遇な目に遭っている人を救いたいという気持ちが反映された結果だろう。
魔王様は、とても優しい人だから。
「ああ、フィオーレに会いたいなあ」
本人に自覚はなさそうだが、魔王様がフィオーレ様に対して抱いている感情の重さは、単に運命の伴侶だからというレベルを超えている気がする。
さっきだって、デートはどうだったのか聞いたら、中身も素敵な人だと言い出した。
最初は可愛いとか愛らしいとしか言わなかった魔王様が、最近ではフィオーレ様の行動を褒めている。本人は恋などしていないと言うが、すでにもう恋愛感情を抱いているようにしか見えない。
先代の魔王様が亡くなられてから、たった一人で魔界を治めてきた魔王様にとって、フィオーレ様が癒しとなればいい。
「仕事を終わらせたら、すぐにでも会えますよ」
俺はいつものように淡々と魔王様の仕事の補佐をしながら、彼の幸せを願った。
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