絶対に後悔しない異世界の生き方〜後悔しないように精一杯生きぬきます!〜

あんホイップ

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第62話 生きたい

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 「ゴッ…ホッ…!ブツ…!ツゥ…」

 私は口から血を吐き出した。
 血が地面を赤く染める。
 相当なダメージを受けてしまったようだ。

 何が起こった…?
 そうか…剣で黒龍ブラックドラゴンを斬ろうとしたときに魔力の衝撃波より飛ばされた。

 壁に背中から思いっきり激突した。
 何ヶ所か骨がいっている。

 無理に体を動かそうとすると、激痛が走る。

 もう、戦えそうにない…
 つみだ…

 マーク達を無謀だと思っていたが、私も同じだった。

 この、化け物に挑むこと自体が無謀だったのだ。

 薄れゆく意識の中で昔のことが頭によぎる。



 
 私の母は私を産んだ時に亡くなった。
 原因は詳しくはわからないが、私が母を殺したようなものだ。

 幼少期は狭い家で父と2人暮らしだったが、父は母が亡くなったせいなのか、気性が荒く、暴力は日常的に振るわれた。

 私は暴力を振るわれても、痛み以外何も感じなかった。
 父は反応しない私を殴って楽しかったのだろうか。

 「お前なんか、生きている意味も価値もない」

 と、父は私を何度も殴りながら、私に浴びせた。
 父は泣いていた。

 父が私に暴力を振るっていたのが原因で、父は連行された。
 私のせいなのだろう。

 

 1人になった私を引き取ってくれる身内などいなかった。

 私は街の小さな孤児院で生活することになった。

 そこでの生活はあまりにも質素で記憶に無いが、孤児たちは皆死んだような目をしていたのは覚えている。

 皆、何かしらの事情により親と離れ孤独に探している身。夢や希望などあるはずがない。

 よく、マザーは言っていた。
 
 「命は神様から与えられた素敵な贈り物です。今日も、命を大切に、精一杯生きましょう」

 何も、響きはしない。

 のちにマザーが奴隷商売を営んでいたのは別の話だ。
 
 命など、欲しいと思ったこともない。

 私達は勝手に命を授かり、生きなければならない。
 迷惑な話だ。
 生きたいなんて、望んでいなかったのに。
 生きなさいと、神か何者かから、命を与えられる。

 別に望んでない命、いつ死んでもいい。
 どうでもいい。
 どうせ私達は、気まぐれに生まれて気まぐれで死ぬのだ。

 なのに、皆、死を恐れ、拒む。
 命を与えられるとき、何も感じなかったように、死が訪れようが、何も感じない。

 気づけば私は孤児院を出、クエスターになり、ただひたすら、魔物を狩り続けた。

 命の駆け引きをすれば、何か思えるかもしれないと、思ったからだ。

 だが、結局私は命の価値を見出すことはできなかった。

 

 ようやく、視界が晴れてきたが、目に映ったのはこちらへと黒炎を口へと溜める黒龍ブラックドラゴンだった。

 動かなければ、私は消し炭されて死ぬだろう。

 だが、私は動けない。

 ああ…終わりか…

 最後の時だというのに、死への恐怖などは感じない。最後まで結局私は、何も感じることはなかったのだ。

 黒龍《ブラックドラゴン》が、私に向け黒炎を放った。

 動かすべがない私は避けられるはずもなかった。

 私は目を瞑った。

 その時だった。

 何者かが、私を抱いて勢いよく転がった。

 大きく、転がされて目を開けると、シーフがいた。

 私を助けたのはシーフだった。
 
 「だ…大丈夫…?」

 私と同じく、倒れていたシーフは言った。
 
 よく見るとシーフの足は、真っ黒く、焼けていた。

 私を庇った際に、足は間に合わなかったのだろう。

  私のせいだ。

  こんな、なにもない私なんかを助けたせいで。

 私なんか、放っておけば良かったものなのに。

 助けられた。
 助けられてしまった。
 なぜ、助けた?
 シーフ達に対する私の態度は酷いものだったと思うのに。
 なぜ、自分の命を賭けてまで、他人である私の命を救ったのか?
 わからない。
 理解できない。

 助けられたことに、最初に感謝が、思い浮かばない私はやはり異常などだろう。
 
 また、黒龍《ブラックドラゴン》は、黒炎を口に留めた。

 今度こそ死。

 シーフが命懸けで、助けたのも無駄だった。

 黒炎が、放たれた。

 たが、黒煙は止まった。
 いや、食い止められた。

 目の前に立って、黒炎を食い止めていたのは、コマリだった。

 両手で、防御魔法をまとい、必死に黒炎を食い止めている。

 「コマリ…」

 私は思わず声を漏らした。

 コマリとは思えない、魔力量だ。
 実力を隠していたのだろうか。

 そんなことはどうでもよかった。

 また、私は庇われた。守られた。
 もう…私は死を受け入れているのに…

 「カナファさん!大丈夫ですか!」

 必死に食い止めながらコマリは叫んだ。

 「……コマリ…もう、いい……」

 「はぁ?なんですか?」

 「もう、私を救わなくていい…もう生きなくてもいい…」

 「何を言っているんですか!」

 「私はもう死んでもいいんだよ…だから、もう放っておいてほしい」

 「………何を言っているんだよ!」

 コマリの怒号が飛んだ。

 あの、オドオドしていたコマリとは別人のよつだった。

 「死んでもいい?生きたくない?さっきから何、馬鹿なことを言っているんですか?」

 「…私は…生きる理由も意味もないんだ…だから、もう…」

 「生きる理由?意味?生きるのに理由なんているんですか!?」

 「……わからない…けど…私は何も感じない…生きたいと思えないんだ…」

 「生きるのに理由なんか…いりませんよ!この世界に僕達は産まれた!産まれたから生きるんですよ!そのことに理由なんてありません!」

 「……わからないよ…なんで…生きるのを諦めた私なんかを、庇うの?救おうとするの?意味がわからない…」

 「それこそ…人が人を救う理由なんて、ないんじゃないんですか?それに…僕がカナファさんを救おうとする理由はですね……」

 黒炎が、止まった。
 コマリは防ぎきったのだ。

 「ハァ…ハァ…ツゥー」

 だが、コマリの手はもうボロボロだった。
 次はどうやっても黒炎を防げないだろう。

 「理由は?…なに?…」

 私はただ私を救おうとすふ理由が聞きたかった。

 「理由…知りたいですか?…」
 
 「うん…」

 「それは…!」


 「僕はカナファさんのとを好きなってしまつまたからですよ!」

 コマリは愛を叫んだ。

 予想外の理由だった。

 「………そんな理由で?」

 「ええ!そんな理由です…よ…」

 「バカじゃないの…」

 「バカでもなんでもいいですよ…僕はただあなを守りたかった…」

 「……守りたい…?」

 「はい…僕はカナファさん…あなたに生きていて欲しいんですよ!」

 その言葉に私は何かを感じた。

 言葉にできない何か…感情…
 こんな気持ちは初めてだ。

 胸が熱い。

 なんだ?なんなんだ?
 私はパニックなった。

 「だから…死んでもいい、生きたくないなんて…そんな悲しいこと言わないでくださいよ…」

 わか…ら…ない…

 生まれてから、人から生きて欲しいなんて、言われことがなった…

 ああ…なんなんだ…この気持ちは…

 「カナファさん…あなは、どうしたいですか?……」

 コマリは私に問う。

 どうしたい…?
 それは…


 「たい…」

 自然と頭で考えるより、先に言ってしまった。

 「聞こえません!」

 「生きたい!」

 私は叫んだ。
 初めての気持ち。
 それは、生まれて初めて、私は生きたいと思った。
 生きて欲しいと言われたからだろうか?
 それとも、ただ強がっていただけだろうか?

 ただ、今は生きたい。
 死にたくない。
 生きて帰りたい…

 生きたい…生きたい…

 黒龍は私達に黒炎を放つ。

 ああ…死にたくない。
 嫌だ。嫌だ!嫌だ!いやだ!イヤダ!

 「死にたくない…生きたい!誰か…私達を助け…」

 気づけば私は泣き叫んでいた。
 たが、気づいたところでもう何もかもが遅かった。
 終わりだ…






 「……いい答えだ……」

 その声と同時に私達に放たれた黒炎が、真っ二つに引き斬られた。

 目の前には、あの記憶にも薄い少年の姿があった。
 

 
 

 
 
 


 

 

 
 



 
 
 

 

 

 

 

 

 
 
 

 

 
 
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