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第45話 翡翠の花
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「大分マシになりました。ありがとうございます」
僕はしっかりちゃんとした回復液を見極めてソルメイスに飲ませた。
「悪かったな…部下の悪戯らがすぎた」
まさか激辛の液体だとは思わなかった。しかし今考えてみるとフカシギならあり得なくもない。むしろやばいのが無い方がおかしい。
回復液を渡してくれた時のフカシギを思い出すと怪しげな薄ら笑いを隠しきれてなかった。まるでびっくり箱を渡し、驚く様を期待している子供のように。
それにしても飲まなくてよかった…
僕は辛いのは苦手だからな…
辛党には申し訳ないが、辛さに旨みは感じないと思ってしまう。なぜなら辛い=痛いだからだ。痛いのは嫌だ…
「酷いですよ…師匠。あんな辛いものを飲ませるなんて」
ソルメイスは頬を膨らませて言った。
「本当に悪かった…まさかあんな液だとは思わなかった。ただの回復液だと思ったんだ」
僕は精一杯の弁解をした。
僕が仕込んだと思われるのは癪だ。
なぜなら僕は今ソルメイスの師匠だからかね。師匠は尊敬の目で見られなくてはならない。こんな悪戯をしたと思われてしまったら師匠として顔が潰れてしまう。
「……師匠がそんなことしないぐらい…僕にだってわかりますよ」
ソルメイスは僕が仕込んでないと理解してくれたようだ。
よかった…これで、師匠の威厳は守られる。
「驚きましたけど…今はもう回復しましたから…その…ありがとうございます」
「ん…そうか、ならよかった」
僕はひとまず安心した。
「歩けるか?」
「はい…回復液のおかげで大丈夫です!」
ソルメイスは元気なった。
どうやらちゃんとした回復液もあったらしい。
全てやばい液体の可能性も疑ったが、どうやら3本中2本はしっかりとした回復液だった。
3本中1本は激辛だということになる。
ロシアンルーレットかよ。本当にタチの悪い悪戯だ。
だが、フカシギにとっては実験や、観察のつもりなんだろう…マッドサイエンティストめ…
僕は心の中で呟いた「飲まなくて良かったそしてソルメイス…どんまい」
「この先に翡翠の花があるはずです」
僕とソルメイスは洞窟の奥深くへと進んでいった。
「ようやく目的の花のところか」
「ええ…本当に師匠がいて良かったです。僕1人だったらどうなっていたのか…」
ソルメイスが顔を真っ青にして言った。
「ソルメイス1人だったら即死だったな」
僕は軽く笑いながら言った。
ソルメイス1人で翡翠の洞窟に来た場合のことを考えると…まあ、即死だろう。
「笑い事ではありません!運が無かったら…僕は……」
「まあ、どうせ逃げただろう?」
「ウ…」
図星だった。
「図星か?」
「はい…正解です…」
「時には逃げるのも大事だ」
「………勇者は逃げていてはダメなのではないでしょうか?」
「なぜだ?」
「だって勇者ですよ?皆んなを守る存在が逃げていたら……ダメですよね…」
「1番ダメなのは逃げることじゃ無い、死ぬことだ」
「アッ…」
「死んでしまったら守れるものも守れなくなるだろう?それじゃ意味がない」
「そ…そうですね…」
「逃げたくも、死にたくもなければ強くなることだ…そして何より大切なのは、大事な人を守り抜くことだ、あの時にこうすればよかったと、後悔してはならないぞ…」
そう…僕にはたくさんの後悔がある。
今さらになって、ああすればよかったとかを考えてしまう。だが、考えるだけ無駄なのだ。過去には戻れないし、結果はもう出てしまっている。だから、今の選択や、行動がとても大事なのだ。
「……そうですよね…頑張ります!」
そうソルメイスと他愛のない会話をしているうちに奥に薄く光が見えた。
「奥に…なにか光ってますね…」
ソルメイスは遠くを見るようなポーズをして言った。
「行ってみよう」
僕とソルメイスはその光の場所へ向かった。
そこには一輪の緑に神々しく光を放っている花がそっと咲いていた。
まさに翡翠…僕の世界では緑色の宝石のことだが、その花は翡翠の宝石の輝きを放っていた。
「これが翡翠の花…」
ソルメイスは声を漏らした。
「美しいな」
「はい…とっても…」
「摘むのか?」
「そういう命令ですので…でも師匠はいいのですか?」
「私か?」
「だって…この花を摘む権利は師匠があると思います。師匠がいなければ僕はこの花を拝むことすらできませんし。僕は結局ほぼ何もしていないのに…摘ませてもらうのは…」
ソルメイスは申し訳なさそうに言った。
別に花なんて、いらない。持って帰っても一瞬にして枯らす自身があるし…。
「私は特に使い道がないからな…いい。ソルメイス、貴様の好きにするがいい」
「本当ですか…ではお言葉に甘えさせて頂きます」
そう言ってソルメイスはそっと翡翠の花を摘んだ。
地面から離れてもなお緑色の光は神々しいままだった。
僕はしっかりちゃんとした回復液を見極めてソルメイスに飲ませた。
「悪かったな…部下の悪戯らがすぎた」
まさか激辛の液体だとは思わなかった。しかし今考えてみるとフカシギならあり得なくもない。むしろやばいのが無い方がおかしい。
回復液を渡してくれた時のフカシギを思い出すと怪しげな薄ら笑いを隠しきれてなかった。まるでびっくり箱を渡し、驚く様を期待している子供のように。
それにしても飲まなくてよかった…
僕は辛いのは苦手だからな…
辛党には申し訳ないが、辛さに旨みは感じないと思ってしまう。なぜなら辛い=痛いだからだ。痛いのは嫌だ…
「酷いですよ…師匠。あんな辛いものを飲ませるなんて」
ソルメイスは頬を膨らませて言った。
「本当に悪かった…まさかあんな液だとは思わなかった。ただの回復液だと思ったんだ」
僕は精一杯の弁解をした。
僕が仕込んだと思われるのは癪だ。
なぜなら僕は今ソルメイスの師匠だからかね。師匠は尊敬の目で見られなくてはならない。こんな悪戯をしたと思われてしまったら師匠として顔が潰れてしまう。
「……師匠がそんなことしないぐらい…僕にだってわかりますよ」
ソルメイスは僕が仕込んでないと理解してくれたようだ。
よかった…これで、師匠の威厳は守られる。
「驚きましたけど…今はもう回復しましたから…その…ありがとうございます」
「ん…そうか、ならよかった」
僕はひとまず安心した。
「歩けるか?」
「はい…回復液のおかげで大丈夫です!」
ソルメイスは元気なった。
どうやらちゃんとした回復液もあったらしい。
全てやばい液体の可能性も疑ったが、どうやら3本中2本はしっかりとした回復液だった。
3本中1本は激辛だということになる。
ロシアンルーレットかよ。本当にタチの悪い悪戯だ。
だが、フカシギにとっては実験や、観察のつもりなんだろう…マッドサイエンティストめ…
僕は心の中で呟いた「飲まなくて良かったそしてソルメイス…どんまい」
「この先に翡翠の花があるはずです」
僕とソルメイスは洞窟の奥深くへと進んでいった。
「ようやく目的の花のところか」
「ええ…本当に師匠がいて良かったです。僕1人だったらどうなっていたのか…」
ソルメイスが顔を真っ青にして言った。
「ソルメイス1人だったら即死だったな」
僕は軽く笑いながら言った。
ソルメイス1人で翡翠の洞窟に来た場合のことを考えると…まあ、即死だろう。
「笑い事ではありません!運が無かったら…僕は……」
「まあ、どうせ逃げただろう?」
「ウ…」
図星だった。
「図星か?」
「はい…正解です…」
「時には逃げるのも大事だ」
「………勇者は逃げていてはダメなのではないでしょうか?」
「なぜだ?」
「だって勇者ですよ?皆んなを守る存在が逃げていたら……ダメですよね…」
「1番ダメなのは逃げることじゃ無い、死ぬことだ」
「アッ…」
「死んでしまったら守れるものも守れなくなるだろう?それじゃ意味がない」
「そ…そうですね…」
「逃げたくも、死にたくもなければ強くなることだ…そして何より大切なのは、大事な人を守り抜くことだ、あの時にこうすればよかったと、後悔してはならないぞ…」
そう…僕にはたくさんの後悔がある。
今さらになって、ああすればよかったとかを考えてしまう。だが、考えるだけ無駄なのだ。過去には戻れないし、結果はもう出てしまっている。だから、今の選択や、行動がとても大事なのだ。
「……そうですよね…頑張ります!」
そうソルメイスと他愛のない会話をしているうちに奥に薄く光が見えた。
「奥に…なにか光ってますね…」
ソルメイスは遠くを見るようなポーズをして言った。
「行ってみよう」
僕とソルメイスはその光の場所へ向かった。
そこには一輪の緑に神々しく光を放っている花がそっと咲いていた。
まさに翡翠…僕の世界では緑色の宝石のことだが、その花は翡翠の宝石の輝きを放っていた。
「これが翡翠の花…」
ソルメイスは声を漏らした。
「美しいな」
「はい…とっても…」
「摘むのか?」
「そういう命令ですので…でも師匠はいいのですか?」
「私か?」
「だって…この花を摘む権利は師匠があると思います。師匠がいなければ僕はこの花を拝むことすらできませんし。僕は結局ほぼ何もしていないのに…摘ませてもらうのは…」
ソルメイスは申し訳なさそうに言った。
別に花なんて、いらない。持って帰っても一瞬にして枯らす自身があるし…。
「私は特に使い道がないからな…いい。ソルメイス、貴様の好きにするがいい」
「本当ですか…ではお言葉に甘えさせて頂きます」
そう言ってソルメイスはそっと翡翠の花を摘んだ。
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