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11「僕が僕のために、好きな人としたい」

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 その日、俺はまた御門くんの家へと行くことになった。
 理由は聞いていないけど、御門くんから来て欲しいって誘われたら、やっぱり断る気になれない。
 部屋に招き入れられた俺は、促されるがまま、ベッドに座った。
「僕が智哉に言った言葉、覚えてる? 結城くんと共に生きて行くって」
「……覚えてる」
「勝手なこと言ってごめん。でも……僕たちにはあまり仲間がいない。嫌でもそういうことになると思う。智哉は、恋人みたいな感じで受け取っているだろうけど、家族って考えてくれてもいい。結城くん、僕と一緒に、生きてくれる?」
 まるでプロポーズでもされているみたいに聞こえた。
 御門くんのことは、前々から知ってはいたけど、話したりしたのは本当につい最近。
 知らないことの方が多い。
 でも、もう俺は強制的に、仲間になってしまった。
 なってしまったのだから、逃れられない。
「……吸血生物の生き方なんてよくわかんないし、一緒に生きるしかないよ」
「あはは、そうだね」
 御門くんは嬉しそうに笑うと、俺に覆いかぶさってきた。
 そのまま、ベッドに押し倒されてしまう。
「御門く……」
「これまでは誰を好きになっても、見送り続ける人生だって思ってたんだ。それなら誰も好きにならない方がいいともね。でも、きみが来てくれた。ずっと待ち望んでたメスの感染者が結城くんでよかったって本当に思ってる。きみが許してくれるなら……しばらく自分のために過ごしたい」
「それ、どういう意味?」
「仲間を増やすとかそういうのは休憩。僕が僕のために、好きな人としたい」
 そう告げると、御門くんは俺に口づけた。
「ん……はぁ……俺が許可を出すことじゃないよね?」
「きみをこっちの世界に引きずり込んで、振り回して、今度は休みたいだなんて、すごく自分勝手でしょ。当然、僕が休んでいる間はきみも休んでいい」
「それじゃあ、仲間が増えないよ」
「うん……それはよくないんだけど……いまが幸せ過ぎて、それでもいいかなって思っちゃった」
 もう一度、唇が重なる。
 柔らかい感触を味わっていると、舌が入り込んできた。
「んぅ……ん……」
「はぁ……していい? 仲間を増やすわけじゃないけど、意味のないセックス」
 強引にやることくらい御門くんなら簡単に出来るだろう。
 どうにか快感を引き出すことだって、たぶん出来る。
 それでも、俺の答えを待ってくれていた。
 これはきっと、使命や役割に囚われていない行為で、ある意味、自分の気持ちを押し付けるものだから。
 でも……。
「意味なら、あるよ」
 俺は御門くんにそう伝えた。
「意味がないのにするなんて……逆に、意味がある……」
 御門くんが前に言っていた。
 俺を助けたのも、血を飲んだのも、仲間を増やそうとしてしたことじゃないって。
 意味のないことに意味を持たせてくれた。
 いまだってそう。
 すること自体に意味はある。
「生物にとっては無意味でも、僕たちにとってはすごく意味のある行為ってことかな」
「ん……」
「じゃあ、するよ……?」
「うん……」
 頷く俺の服を、御門くんが丁寧に脱がしていく。
「俺だけ脱ぐの……?」
「恥ずかしい? それなら僕の服は結城くんが脱がせて?」
 御門くんに促されるがまま、体を起こす。
 御門くんがするように、俺もまた御門くんのズボンに手をかけた。
 正しいのかどうかわからないけど、御門くんは俺を止めない。
 時間をかけてお互い裸になると、また御門くんが俺に覆いかぶさってきた。
 仰向けに寝転がる俺の胸元にゆっくり手が這わされる。
「ここ……智哉に見せた後、すごく触りたくてたまらなかったんだよね」
 色づく胸の突起を、御門くんの指が掠めていく。
「んっ……」
「小さいのに、主張が激しくて、すごくかわいいよ……」
「はぁ……主張なんて、してない……」
「してるよ? ほら……こんなに膨らんで、触ってくださいって言ってるみたい」
 そんな風には思っていないつもりだったけど、いざ触ってもらうと、背筋がゾクゾクして、もっとして欲しくなってしまう。
「んぅ……はぁ……御門く……」
「ああ……触られるより、舐められる方が好みかな」
 ぺろりと舌を這わされると、小さな電流が走ったみたいに、体の痺れを感じた。
「はぁっ……あ……じんじんする……」
「もっとじんじんさせてあげる」
 御門くんは、俺の膝を立てさせると、晒された奥の窄まりを指でそっと撫でる。
「ん……」
「ヒクついてる……昨日、かわいがってあげたもんね。今日もしよう」
 昨日も使った瓶の液体を垂らしながら、ゆっくり指を押し込んでいく。
「ああっ、あっ……んん! んぅ……」
「昨日より感じてるね。入れただけなのに、こんなに声出しちゃって……」
 つい出てしまった声を指摘されてしまい、俺は慌てて口を塞いだ。
「ああ……だめだよ。手どかして。聞かせてくれないと……」
「でも……ん……」
「そんなことしてたら、すぐ息苦しくなっちゃうよ。ほら……いい子だから、ね?」
 いい子にしたいわけじゃないけれど、実際少し息苦しい。
 そっと手を離した瞬間、入り込んでいた御門くんの指先が中で折れ曲がるのを感じた。
「ひぁっ! ああっ、あん……ん! 御門く……んぅ!」
「ここ……好きだよね? 指増やして、もっと押さえつけてあげる」
 御門くんはわざわざ俺に教えながら、2本目の指を入れると、すぐにまた内壁を撫であげる。
「ああっ、んっ、あぁっ、そこ……だめ……だめぇ……」
「どうして?」
「だって……あっ、あっ……すぐ、気持ちよく、なる……!」
 御門くんは笑いながら、少しだけ緩めてくれていた指先で、また強く中を押さえつけてきた。
「あっ、んぅんん! 御門くっ……あっ、くる……きちゃう……!」
「いいよ。一度イッてもやめないから。好きなときにイッて?」
 御門くんの指は、俺をイかせようと、的確に気持ちいい所を突いてきた。
 自分だけが気持ちよくなっていいのか、イったら、この後どうすればいいのか、考える余裕は御門くんに奪われていく。
「はぁっ、あっ、あっ……あん、ん……あぁあああっ!」
 ビクビク体が跳ねて、あっという間に中で達してしまう。
 俺のそこは、勝手に御門くんの指をきつく締めあげていた。
 うまく緩めらなくて、恥ずかしくてたまらない。
「はぁ……あっ……あっ……」
「かわい……きゅうって、すごいね。いっぱい締めつけて……」
 やっぱり、御門くんも当然わかってる。
 俺が、いっぱい締めつけてしまっていること。
「昨日は、きみがちゃんとメスらしくいられるように、慣らしてあげるだけだったけど、今日は、僕としようね」
「ん……」
 ゆっくりと指が引き抜かれていくと、それだけでまた、体が震えた。
「んんっ、んっ……はぁ……」
「後ろからしていい?」
 どの体勢がいいかなんてわからないし、俺は脱力状態で御門くんの問いかけに頷く。
 うつ伏せにされたかと思うと、腰を軽く持ちあげられた。
「あ……御門く……」
「きみはメスで、僕もメスなのに……こんなに欲情しちゃうなんて……おかしいな……」
 おかしいのかな。
「俺も、してるよ。御門くんに……欲情してる……」
 恥ずかしいけど本当の気持ちを伝えると、御門くんは、ついさっきまで指が入り込んでいた箇所に、なにかを押し当てた。
「ん……」
 少し熱い。
 たぶん、御門くんの――
「そもそも僕は……きみがメスになる前、おいしそうに倒れていたときからずっと、興奮し続けてるのかも」
 そう告げると、押し広げるようにして、中に入り込んできた。
「ああっ、あっ……んーっ!」
 指よりも太くて熱い。
 これまで届いていなかったところにまで、どんどん迫ってくる。
 苦しい。
 それと同時に、体がぞわぞわして、思わず身震いしてしまう。
「あっ、ああっ! あんぅ……んぅ!」
「はぁ……すごくせまい……あったかくて、たまんないよ……」
 御門くんは、熱っぽい声を漏らしながら、俺の体を抱き起こした。
「ひぁっ! ああっ!」
「メスイキしちゃうきみもかわいいけど、こっちでも、いきたいよね?」
 左手で抱いたまま、御門くんの右手が、上を向く俺の性器をちょんとつつく。
「あっ……ああっ……だめ……」
「ああ……たくさん濡れちゃってるね。トロトロになってる……」
 先端の敏感な部分が、指で優しく撫で回されていく。
 いくら優しい指使いでも、与えられる刺激は強い。
「ああっ……あうっ……御門く……そこ、そこぉ……おかしく、なる……!」
「うん、うん……いっぱい溢れてる。こんなに零して……気持ちいい?」
 耳元で囁く御門くんの声は、少し掠れてて色っぽかった。
 御門くんも、感じてくれている。
 そう思うと、俺の体もより一層、気持ちよくなっていく。
 気持ちよくてたまらなくて、俺は御門くんに抱かれたまま、腰をくねらせていた。
「ああっ……あっ、はぁ……ん! きもちい……御門く……ああっ、いいよぉ……」
「ああ、もう……初めてだよね? 初めてなのに、そんな腰振って……ん……僕も、もたないよ」
 余裕のない声で呟いた後、御門くんは俺の体を下から突きあげた。
「ひぁあっ! あっ、あっ、んんっ、んっ、動くの、だめっ、ああっ、いく、いくぅ……」
「いいよ……僕もいっちゃうから……ね? 一緒にイこう。前も後ろも……全部、一緒に……ね」
 弱いところを押しあげながら、奥の方を何度も何度も小突かれる。
 先走りの液でぬるぬるになってしまっている性器も、御門くんの手で擦られて、快感をどんどん引きずり出されていく。
「ああっ、あっ、あん……御門くん……はぁっ、いく……すき……あっ、あっ、あぁあああっ!」
 大きく跳ねあがる体を、御門くんがきつく抱きしめてくれた。
 激しい絶頂を迎える中、体内に流れ込んでくるなにかを感じ取る。
「んぅ……ん……御門、く……」
「はぁ……あ……ふふ……きみの中、出しちゃった……」
 前に御門くんの血を飲んでいる俺は、すでに感染済みだけれど、いま、改めて御門くんに染められてしまったたような、そんな感覚に陥った。
 もうきっと、戻れない。
 俺は御門くんが、ずっと好きだった。
 これからもきっと好きなままでい続ける。
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