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二章 理想の自分のために世界を変えたとして
虚構を食ったな
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ツムグと全く同じ顔が目の前にある。しかし、その瞳は凪いでいて、穏やかな風のような雰囲気を纏っていた。
一言もUNツムグは喋らない。対話を完全に拒否しているのはーー理解し合うことなど、はなから欠片も望まないとでもいうように。
空間に浮かぶ文字。彼の世界はあまりに排他的にツムグの前にそびえている。浮かんだ文字がまた文章を紡いだ。
『ーー彼は俺の大事な友達だ。捨てられるはずがない』
ツムグはただ黙って文字に触れーー感触がある。触れられるならと、破り捨てた。どうやらこの不思議な文字は紙上に存在しているようだ。世界が書籍になかったかのように。
この目の前のUNツムグがなんなのか。ツムグはこう考える。消しきれなかった弱さである、と。
友の命を、思い出を、彼が生きてきた歩みを、気配を、存在をーーそれをたかだか己の矜持と歪んだ自意識のみで消すのが、尋常ではないのだが、それはツムグにとっては当たり前だ。
何故か知らないが、残ってしまったのだ。ーーまるで心残りだとでも言うように?悔い改めろとツムグの行いを責めて?ーー巫山戯ている。残ってしまったから、あの俺はいる。存在してはならない弱い俺がいる。殺さなければならない、何を置いても。
ーーせっかく完璧だったのに。ひどく水をさされた気分だ。
友を殺したことを責めるような軟弱な自分が、たとえ並行世界だろうが、偽物だろうが、何の間違いだろうが、許せるはずがなかった。
ただの憎しみではなかった。使命感じみた強迫観念に囚われている。ーー完遂しなければ。完遂しなければならないのだ、親友の存在を嘘にしてまで、大切なもの全てを台無しにしてまで、負わねば生きていけない我を選んだのならば。
目の前の存在を殺さねばならないとーー眼光を鋭くした男に、冷水が浴びせかけられる。それは言葉ではなく、宙に浮かんだ文字だった。
『ーーお前は俺を虚構だと思っている。だが、本当にそうか?』
UNツムグは声を出すことなく、文字で疑惑を語る。
『ーー心の弱さを切り捨てることができる自分こそが、理想に沿っている自分こそが、虚構に違いないとは思わないか?』
ツムグは当然ツムグこそが正当なる自分だと思っている。だからこそ、UNツムグは弱い自分を消しきれなかった虚構だ、と。
しかし、それはツムグから見たものにしか過ぎない。ツムグであってツムグでない目の前の男からすれば事実は全く異なる。
彼からしたら、ツムグの方が現実改変能力で生まれた虚構ーー理想の自分、弱さを取り払い、己のためだけに全てを足蹴にして突き進める、そう望んだ姿なのだから。切り離せない全てを切り離し、完成された、理想の自分。都合の良い理想を体現するために生み出した、現実改変能力による虚構。
『虚構を現実にするのがお前だ。だが、本質はそうじゃない。現実を虚構にする俺が生み出したのが、お前という都合の良い虚構だ』
「ーーは、俺が偽物だって?たいそうなジョークだ、つまらんな」
ツムグは自分が偽物かもしれないなどと考えてみたことはなかった。当然である。自意識過剰の男が、まさか自分の方が偽物とは思うまい。だから、衝撃だった。だが、たかだか少し思考を止める、その程度だった、ともいえる。
ーー確かに、客観的に見れば、己のためだけに友人を殺し、なんらそれに負い目を感じていないツムグよりも、よほどUNツムグの言い分の方が正当で。だからこそ彼の言う、ツムグこそが虚構であるという指摘は妙な説得力さえあった。ーー現実にありえない方がより虚構らしいならば、と。
だというのに当のツムグは小揺るぎもしないのだから、とんでもない自意識だった。いっそ、清々しいと言っても良い。
自分が本物だと証明する手段はないーーどころか、こと現実改変能力が関わっている以上、どちらが本物かなんてもはや意味をなさない。
ツムグもそれを理解している。
普通ならアイデンティティ崩落の危機だというのに、彼は欠片も心を動かなかった。疑惑を理解しなかったわけではない。聡い彼はそれを理解した上で、動揺する価値すらないと目を向けないだけだ。
ーーだから、なんだ、と。
自分がもしかしたら現実改変能力によって生まれた偽物の方かもしれなくて、これまでの自分の人生はただ紙上に書かれただけの物語かもしれなくて。
自分の貫いた我も、捨てた弱さも、自意識に食われた自分の歩みも、全てがただの作り物で、なんら価値がないかもしれないとしてーーだから、なんだというのだ。
そんなことで思い悩んでセンチメンタルになってやるような繊細さを、彼は持ち合わせていない。
どちらか本当か、なんて意味がない。本物から偽物を作る因果関係の上にこそ、真贋は意味をなすのであって、現実改変能力を前にそれは無意味だ。現実を書き換えて、もう一つ真実が生まれるのだから、そこにあるのは真偽ではない。
過去ごとぱっとその場に生まれ、本人にもその自覚はなく、そしてどちらも現実改変能力を持つから、現実粒子濃度でどちらかが現実であることを測りようがない。
現実を確かめようがないーーならば、どちらも本物のようなものだ。胡蝶の夢ーー世界は蝶が見た夢なのかもしれない、現実と虚構は等価だ。
少し考えればわかることだーー現実改変能力を前にしては正しさは意味をなさない。現実改変能力があるだけで、この世のどこにも、正当な真実、元の世界、守るべき現実なんて、存在しないのと同じだ。
だってそれらが正しい証拠などない。守ろうとしている現実そのものがすでに改変されたことがあるかなんて、誰にも証明できないのだから。
ーーあるいはトトノエは知覚できるかもしれないが、しかしあくまで個人の主張でしかなくーー主観を真実の証明にするわけにはいかないだろう、本来ならば。
基準となる今の正しさを担保できないのに、一体全体何を守るというのだ?現実改変能力者が存在している時点で、正しい現実がこの世に明確に1つあるわけではないーーその当たり前の残酷な事実。
「デッドラインの凡骨どもは現実を守ることに価値があると思っているが、現実を守ることに価値などない。……トトノエは理解した上で、価値があると心底信じているんだろうから、恐ろしい話だが」
例えば守るべき現実の正しさを信じて戦っているデッドラインの構成員たちには絶望だろう。トトノエを崇拝し、日夜、世界のために現実を守っているのだと己を鼓舞している者たちにはあまりに残酷だ。
このやりとりを、そして現実改変能力の本質を彼らが知ることがなかったのは幸いだったといえる。
だが、そんな崇高な理念など持ち得ない、ただ己の自意識のみを抱えた男には無意味だった。ーーツムグにとっては、己がなんであれ、相手がなんであれ、優先すべきは自分に弱さを認めない、それだけだ。
「殺し合って、勝った方が本物で良いだろう。シンプルだ」
ツムグは吐き捨てて、UNツムグの襟首を掴む。UNツムグはただ冷えた目で、硝子のように同じ顔を映してーー次の瞬間。
黒い文字が吹き出す。湧き上がった活字が柱のように高く上がり、そして降り注ぐ。ありとあらゆる罵声を浴びせるが如く、活字がツムグを押し流す。雪崩れる暴言、覆い被さる恨み言、身体に纏わりつく苦言、沈める怨言ーーあらゆる敵意と悪意をむき出しにした言葉がツムグの身体を叩きつけていく。
ツムグの身体は濁流のような黒い文字に覆われ、まるで川に呑まれたように自由も効かない。なすすべもなく一枚の木の葉のようにあまりに頼りない身体を、好き勝手もみくちゃに上下もわからないほどに押し流されて。文字の群集が、同じく文字でできた壁にツムグを叩きつけた。
脳が揺れ、火花が散り、身体が落下する。白い紙の上のように、どこまでも白い空間。眩暈がする。UNツムグは一歩も動いていない。
ツムグは唇を噛む。ーー力が違いすぎる。それがわからないほど彼は頭が悪くない、たとえ傲慢であれーーだからこそ、ひしひしと力の差異を感じる。
ーー決定的な差異を。
ツムグは現実改変能力を限定的にしか使わないようにしている。この間自意識を改変された人間を犬に変えたばかりだし、散々ツムグに簡単に殺意を持って使っているのに、それは常人には矛盾だ。
しかし、一見筋が通らなく見える彼の能力の使用には、彼なりの基準があるのだ。
彼は能力を気軽に使うが、能力がなければ勝てないような使い方をしない。彼は意識的に能力を道具らしく使っている。それは彼の高いプライドがさせるのだーー能力がなければ無能であるなんて許せない、というだけの。
EXT-Rの弾丸や体術と同列に並ぶ1つの選択肢としている。相手が現実改変能力を使ってくる場合の対抗策の一つとして、現実改変能力を使う。あるいは別段、できなくても自分がこまらないーー人を犬にしてしまう、とか。シナズをぶっ殺しておく、一つの飛び道具、とか。
倫理的におかしいのは今更置いておいて、彼の我が強くあるためだけーー完璧であるためという愚直に身勝手に一貫している論理の上にあるのだ。
その証明は簡単だ。彼は真に能力を使おうとするなら、いくらでも「なんでもあり」を書くことができるのだから。極端な話、彼が相手に勝ちたいのならば「俺が勝つ」と書き、その虚構を現実にすれば良い。
ーーしかし、ツムグにはそれが選択できない。何があっても、選択できない。
道徳や倫理の問題ではなく、ただただそんなチートがなければ勝てなかったかのようになるのがーーつまりは完璧でなくなるのが我慢ならない。ほとんどそれが格好悪いからに等しい理由で、ツムグは現実改変能力をセーブしている。
自分で自分の首を絞める。まさに言葉通りに極まっているが、彼はツムグであるーー自意識に呪われ生きる男である。現実改変能力がありながら、それがあるのに、あまり派手に大胆に力をーー反則技を使えない。
UNツムグは滝のように流れ落ちる黒い文字を背後に、静かに立っている。鈍い金の瞳には温度はなく、感情の起伏は読めない。言葉はないが、文字は浮かび上がる。流れるように浮かび上がった。
『力を使えば自分の有能を否定する?ーー力を選択できないだけだ。友を無意識に甦らせた事実。それが恐ろしいのだ。同じように力に呑まれることを繰り返すまいとしただけの臆病者だーー弱さだ』
その文字列は沸点が低いツムグの胸中を、急激に沸騰させた。弱さーー弱い、だって?彼はほとんど反射で駆け出していた。策はない。論理はない。しかし、それは何より真っ先に彼が殺さねばならない言葉だったから。
血が熱して、鼓動が響く。冷静さを欠いていると遠くに自覚しながら、その感覚を振り払うように駆ける。降り注ぐ文字を避けながら、それでも避けようなく襲う黒く群れた文字を払いのければ弾けた。
足場の文字が溶け出すようで足を取られる。
ツムグは歯を剥き出しにするように唸って吐き捨てた。
「お前、虚構を食ったな」
騙された。この男の存在を知った時、自分の偽物であるとーーつまりは劣化でしかないと見なしたのは間違いだった。
ツムグは現実改変能力で沢山の概念が消失した際に「物語」もまた消えたのだとばかり思っていたがーー違った。確かに世界から単に本が消えたのであれば、ツムグの手元にだけ残っているのはおかしい。
UNツムグが「物語」の概念そのものを力の対価にしていたのだ。対価ーーたとえばトトノエが存在をすり減らしているように、莫大な力には対価がいる。ツムグは碌に払った覚えはないがーーいつか払わされるとしてーーまあそれは今は良い。
UNツムグがこうも異様な力を持っているのは、対価として自らが閉じこもる美しき世界を売り払ったからだ。ツムグには理解できないーー物語だけが毒を持たずにすむ世界だったから。同時にツムグには理解できるーーたとえ唯一無二であっても、彼にとって優先すべきなのは己である、ということを。痛いほど理解する。
UNツムグがどれだけツムグと同じ経験を持つのかは未知数だーーしかし、あらゆる自分を慰めた全ての言葉を、あらゆる美しい心動かされる物語を、あらゆる彼が唯一素直に褒め称えられる世界を、存在ごと捨てたのだけは確かだーー己のために。
常人の同情を捻りちぎるような、常人の理解を叩き上げて砕くような、あまりに強固な我を感じる。
ーーあまりに似ている。線対称というには背中合わせにならず、180度ひっくり返せば重なる、綺麗に点対称とでもいうべき似方。それも当然だ、少なくとも真偽が意味をなさない以上、彼も間違いなくツムグには違いない。
ーーやはりUNツムグは決定的に何か異なるとはいえ、自分である。その自覚はツムグにとって苦々しく気持ち悪いものだった。
並んだ文字が嘲笑う。
『ーー現実改変能力を避けたのが敗因だとわかるだろう?』
「まだ負けた覚えはないが?」
ーーまずい。痛いところをついている。勝てる気がしないーーそれをツムグは認めることができない。断固として彼の呪いのごとき矜持が許さない。
彼は地団駄を踏み、血がでるほど身を掻きむしりたくてならないほどだった。身を焼く屈辱。涙が出そうだ。悔しさそのもので、それが溢れるのを無理に蓋をしようとして苦心している。息が荒い。目が血走っている
許してなるものか、許してなるものか、許さないーー沸々とどころか、煮立って吹き出して、そのまま火でも吹けそうなほど彼は憤っている。
憤りと裏腹に彼はなす術もない。紡がれ溢れた活字の波に吹き飛ばされ、現実改変能力でできた空間の頁を突き破った。
何もない空中が紙のように破けて吹き飛んだ先はーー大男。彼は何の驚きも見えない真顔のまま、綺麗にツムグを捕まえた。
「デリバリーを頼んだつもりはなかったんですが」
シナズはツムグの右足を高々掲げる。だらんと逆さまに捕まえられたーー受けとめられたにしては雑だったーーツムグは、そのまま何の迷いもなく、自由な方の足を振り抜く。シナズの顔面を蹴り飛ばして、そのまま床に着地した彼は荒い息で唸る。
ーー彼にとっては今現在抹殺すべきUNツムグがいる以上、へんてこな大男にかまっている暇はない。
「わあ、そっくりさんですね」
適当に転がってみせていたシナズは、棒読みでわざとらしく手を広げて驚いたジェスチャーをする。ちょうどアルが逃げたことに怒ったイノチガケがシナズを蹴っていたあたりに、突如ツムグが出現したようだった。
それこそ、はりぼてのセットをーー虚構を突き破って。
この状況でUNツムグはただ起伏のない顔でツムグを見ていて視線は外さない。イノチガケが彼の方に朱色の瞳を向けた。
「あらーー良いじゃない。随分面白い力だったのね、勿体ぶらないで見せてくれてもよかったのに」
イノチガケは喜色を浮かべて、黒い兎耳を揺らした。UNツムグの力の異常さを彼女は嗅ぎつけている。自身とは違う方向に理不尽に強大で自由なーーある意味想像力の限り全てが可能になるようなーー使い手によっては万能に近い、それだ、と。
そこへちょうど現れたのは白黒を完璧に隔てた異質な髪の美しい人。タイミングが綺麗に重なり、事態は混沌を通り越して、もはや喜劇といってよかった。
「ーー蔓延っているね」
トトノエは静かに囁いて、儚い気配のまま、迷いなくイノチガケに歩む。走ることはない。走る意味はないからだ。急ぐ必要がなかった。そもそもトトノエがこの場にいる限り、常人がする抵抗は意味をなさない。
イノチガケは鼻を鳴らして笑った。美しい曲線を見せつけるように身を反らして。
「気持ち悪いわね、自分の存在を固定したの?固定して守ったところで、世界は滅ぶなら変わらないでしょうに。過去に縋るよりずっと愚かね」
ハイヒールの踵を高くならし、彼女は煌めく金髪を払いのけた。余裕あるそぶりを崩さないが、一歩、あるいは一手動けば、彼女は最大の力で応じなければならないのをわかっている。
ゆっくり歩み寄ったトトノエは、その微かな気配が嘘のような速度で杭を打とうと手を翻す。しかし、ぴたりと動きを止めた。
「邪魔だよ」
トトノエは何もない空間に触れる。そこに現れたのは、這いつくばった少女ディーラーだ。イノチガケが顔を顰める。カタリは彼女を見上げて囁く。
「……カタリが、5、6人、死んだだけよ、ガケ姉様」
「まあ、よくやったわ」
意味が通らないような対話を終え、イノチガケは腰に手をあて、ふうとため息をついた。
「ーー仕方ないわ、帰ってあげる。ここで戦ったって、気持ちよく世界を壊させてくれないでしょうし。目的は果たしたから」
イノチガケは赤い目を細めて笑った。応答なく、対話なく、なんらの逡巡なくーー即座に飛びかかり、杭を振り抜いたトトノエが追い縋る。蝶が飛び青い嵐のように部屋をびっしりと埋め尽くす。
色のない瞳が見開かれ、光を閉じ込めた瞳に映すものを閉じ込めようとするかのようだ。その色に憎悪はないーー憎悪はなく、憤怒はなく、燃え上がる高い温度はなく、想定される感情はことごとく無い。
秒針が毎秒時を刻むように、まるでそうするのが当然の秩序を振り下ろすかのようにーー静かで柔らかな狂気を纏って。
杭が打つ相手は消えていた。イノチガケの姿はもちろん、彼女の連れていたディーラーの少女も、ツムグの許せない存在も。ーーまるで空間が頁のように捲れて消えた。
「……虚構を現実にするならまだしも、現実を虚構にする、か。僕と相性が悪そうだ。何より決定的に思想が合わない」
トトノエはゆらりと手を下ろす。杭は消える。青い蝶が優雅に飛び回っていた。
「逃げられるとはね。……アルくんは酷い有様だったけど、君たちは怪我はないかい?」
駆け寄ってきた構成員たちの方を向いて、トトノエは狂気など影もなく、柔らかく笑った。構成員たちは各々首を振るなどして否定して、しきりにトトノエを促して慌ただしく動き出す。みんな部屋を離れたために、すぐにその場は静かになったーーツムグとシナズを残して。
「どっちが本物か決闘でもしてたんですか。もう1人の自分を殺さないとって、馬鹿らしくなりません?」
沸騰しやすいツムグにしては珍しくなんのアクションもない。
「ーー聞いてます?」
シナズの声がまるで聞こえていないかのように立ち尽くしているので、覗き込んだ。わざわざ至近距離の背後から見下ろすようにしているのはーーご愛嬌である。
「……黙れ」
彼はそれさえ些事であるように吐き捨てるだけで見向きもしない。一点を睨んでーーUNツムグがいたところだーーただあらゆる暴言を砕くように歯噛みしていた。
一言もUNツムグは喋らない。対話を完全に拒否しているのはーー理解し合うことなど、はなから欠片も望まないとでもいうように。
空間に浮かぶ文字。彼の世界はあまりに排他的にツムグの前にそびえている。浮かんだ文字がまた文章を紡いだ。
『ーー彼は俺の大事な友達だ。捨てられるはずがない』
ツムグはただ黙って文字に触れーー感触がある。触れられるならと、破り捨てた。どうやらこの不思議な文字は紙上に存在しているようだ。世界が書籍になかったかのように。
この目の前のUNツムグがなんなのか。ツムグはこう考える。消しきれなかった弱さである、と。
友の命を、思い出を、彼が生きてきた歩みを、気配を、存在をーーそれをたかだか己の矜持と歪んだ自意識のみで消すのが、尋常ではないのだが、それはツムグにとっては当たり前だ。
何故か知らないが、残ってしまったのだ。ーーまるで心残りだとでも言うように?悔い改めろとツムグの行いを責めて?ーー巫山戯ている。残ってしまったから、あの俺はいる。存在してはならない弱い俺がいる。殺さなければならない、何を置いても。
ーーせっかく完璧だったのに。ひどく水をさされた気分だ。
友を殺したことを責めるような軟弱な自分が、たとえ並行世界だろうが、偽物だろうが、何の間違いだろうが、許せるはずがなかった。
ただの憎しみではなかった。使命感じみた強迫観念に囚われている。ーー完遂しなければ。完遂しなければならないのだ、親友の存在を嘘にしてまで、大切なもの全てを台無しにしてまで、負わねば生きていけない我を選んだのならば。
目の前の存在を殺さねばならないとーー眼光を鋭くした男に、冷水が浴びせかけられる。それは言葉ではなく、宙に浮かんだ文字だった。
『ーーお前は俺を虚構だと思っている。だが、本当にそうか?』
UNツムグは声を出すことなく、文字で疑惑を語る。
『ーー心の弱さを切り捨てることができる自分こそが、理想に沿っている自分こそが、虚構に違いないとは思わないか?』
ツムグは当然ツムグこそが正当なる自分だと思っている。だからこそ、UNツムグは弱い自分を消しきれなかった虚構だ、と。
しかし、それはツムグから見たものにしか過ぎない。ツムグであってツムグでない目の前の男からすれば事実は全く異なる。
彼からしたら、ツムグの方が現実改変能力で生まれた虚構ーー理想の自分、弱さを取り払い、己のためだけに全てを足蹴にして突き進める、そう望んだ姿なのだから。切り離せない全てを切り離し、完成された、理想の自分。都合の良い理想を体現するために生み出した、現実改変能力による虚構。
『虚構を現実にするのがお前だ。だが、本質はそうじゃない。現実を虚構にする俺が生み出したのが、お前という都合の良い虚構だ』
「ーーは、俺が偽物だって?たいそうなジョークだ、つまらんな」
ツムグは自分が偽物かもしれないなどと考えてみたことはなかった。当然である。自意識過剰の男が、まさか自分の方が偽物とは思うまい。だから、衝撃だった。だが、たかだか少し思考を止める、その程度だった、ともいえる。
ーー確かに、客観的に見れば、己のためだけに友人を殺し、なんらそれに負い目を感じていないツムグよりも、よほどUNツムグの言い分の方が正当で。だからこそ彼の言う、ツムグこそが虚構であるという指摘は妙な説得力さえあった。ーー現実にありえない方がより虚構らしいならば、と。
だというのに当のツムグは小揺るぎもしないのだから、とんでもない自意識だった。いっそ、清々しいと言っても良い。
自分が本物だと証明する手段はないーーどころか、こと現実改変能力が関わっている以上、どちらが本物かなんてもはや意味をなさない。
ツムグもそれを理解している。
普通ならアイデンティティ崩落の危機だというのに、彼は欠片も心を動かなかった。疑惑を理解しなかったわけではない。聡い彼はそれを理解した上で、動揺する価値すらないと目を向けないだけだ。
ーーだから、なんだ、と。
自分がもしかしたら現実改変能力によって生まれた偽物の方かもしれなくて、これまでの自分の人生はただ紙上に書かれただけの物語かもしれなくて。
自分の貫いた我も、捨てた弱さも、自意識に食われた自分の歩みも、全てがただの作り物で、なんら価値がないかもしれないとしてーーだから、なんだというのだ。
そんなことで思い悩んでセンチメンタルになってやるような繊細さを、彼は持ち合わせていない。
どちらか本当か、なんて意味がない。本物から偽物を作る因果関係の上にこそ、真贋は意味をなすのであって、現実改変能力を前にそれは無意味だ。現実を書き換えて、もう一つ真実が生まれるのだから、そこにあるのは真偽ではない。
過去ごとぱっとその場に生まれ、本人にもその自覚はなく、そしてどちらも現実改変能力を持つから、現実粒子濃度でどちらかが現実であることを測りようがない。
現実を確かめようがないーーならば、どちらも本物のようなものだ。胡蝶の夢ーー世界は蝶が見た夢なのかもしれない、現実と虚構は等価だ。
少し考えればわかることだーー現実改変能力を前にしては正しさは意味をなさない。現実改変能力があるだけで、この世のどこにも、正当な真実、元の世界、守るべき現実なんて、存在しないのと同じだ。
だってそれらが正しい証拠などない。守ろうとしている現実そのものがすでに改変されたことがあるかなんて、誰にも証明できないのだから。
ーーあるいはトトノエは知覚できるかもしれないが、しかしあくまで個人の主張でしかなくーー主観を真実の証明にするわけにはいかないだろう、本来ならば。
基準となる今の正しさを担保できないのに、一体全体何を守るというのだ?現実改変能力者が存在している時点で、正しい現実がこの世に明確に1つあるわけではないーーその当たり前の残酷な事実。
「デッドラインの凡骨どもは現実を守ることに価値があると思っているが、現実を守ることに価値などない。……トトノエは理解した上で、価値があると心底信じているんだろうから、恐ろしい話だが」
例えば守るべき現実の正しさを信じて戦っているデッドラインの構成員たちには絶望だろう。トトノエを崇拝し、日夜、世界のために現実を守っているのだと己を鼓舞している者たちにはあまりに残酷だ。
このやりとりを、そして現実改変能力の本質を彼らが知ることがなかったのは幸いだったといえる。
だが、そんな崇高な理念など持ち得ない、ただ己の自意識のみを抱えた男には無意味だった。ーーツムグにとっては、己がなんであれ、相手がなんであれ、優先すべきは自分に弱さを認めない、それだけだ。
「殺し合って、勝った方が本物で良いだろう。シンプルだ」
ツムグは吐き捨てて、UNツムグの襟首を掴む。UNツムグはただ冷えた目で、硝子のように同じ顔を映してーー次の瞬間。
黒い文字が吹き出す。湧き上がった活字が柱のように高く上がり、そして降り注ぐ。ありとあらゆる罵声を浴びせるが如く、活字がツムグを押し流す。雪崩れる暴言、覆い被さる恨み言、身体に纏わりつく苦言、沈める怨言ーーあらゆる敵意と悪意をむき出しにした言葉がツムグの身体を叩きつけていく。
ツムグの身体は濁流のような黒い文字に覆われ、まるで川に呑まれたように自由も効かない。なすすべもなく一枚の木の葉のようにあまりに頼りない身体を、好き勝手もみくちゃに上下もわからないほどに押し流されて。文字の群集が、同じく文字でできた壁にツムグを叩きつけた。
脳が揺れ、火花が散り、身体が落下する。白い紙の上のように、どこまでも白い空間。眩暈がする。UNツムグは一歩も動いていない。
ツムグは唇を噛む。ーー力が違いすぎる。それがわからないほど彼は頭が悪くない、たとえ傲慢であれーーだからこそ、ひしひしと力の差異を感じる。
ーー決定的な差異を。
ツムグは現実改変能力を限定的にしか使わないようにしている。この間自意識を改変された人間を犬に変えたばかりだし、散々ツムグに簡単に殺意を持って使っているのに、それは常人には矛盾だ。
しかし、一見筋が通らなく見える彼の能力の使用には、彼なりの基準があるのだ。
彼は能力を気軽に使うが、能力がなければ勝てないような使い方をしない。彼は意識的に能力を道具らしく使っている。それは彼の高いプライドがさせるのだーー能力がなければ無能であるなんて許せない、というだけの。
EXT-Rの弾丸や体術と同列に並ぶ1つの選択肢としている。相手が現実改変能力を使ってくる場合の対抗策の一つとして、現実改変能力を使う。あるいは別段、できなくても自分がこまらないーー人を犬にしてしまう、とか。シナズをぶっ殺しておく、一つの飛び道具、とか。
倫理的におかしいのは今更置いておいて、彼の我が強くあるためだけーー完璧であるためという愚直に身勝手に一貫している論理の上にあるのだ。
その証明は簡単だ。彼は真に能力を使おうとするなら、いくらでも「なんでもあり」を書くことができるのだから。極端な話、彼が相手に勝ちたいのならば「俺が勝つ」と書き、その虚構を現実にすれば良い。
ーーしかし、ツムグにはそれが選択できない。何があっても、選択できない。
道徳や倫理の問題ではなく、ただただそんなチートがなければ勝てなかったかのようになるのがーーつまりは完璧でなくなるのが我慢ならない。ほとんどそれが格好悪いからに等しい理由で、ツムグは現実改変能力をセーブしている。
自分で自分の首を絞める。まさに言葉通りに極まっているが、彼はツムグであるーー自意識に呪われ生きる男である。現実改変能力がありながら、それがあるのに、あまり派手に大胆に力をーー反則技を使えない。
UNツムグは滝のように流れ落ちる黒い文字を背後に、静かに立っている。鈍い金の瞳には温度はなく、感情の起伏は読めない。言葉はないが、文字は浮かび上がる。流れるように浮かび上がった。
『力を使えば自分の有能を否定する?ーー力を選択できないだけだ。友を無意識に甦らせた事実。それが恐ろしいのだ。同じように力に呑まれることを繰り返すまいとしただけの臆病者だーー弱さだ』
その文字列は沸点が低いツムグの胸中を、急激に沸騰させた。弱さーー弱い、だって?彼はほとんど反射で駆け出していた。策はない。論理はない。しかし、それは何より真っ先に彼が殺さねばならない言葉だったから。
血が熱して、鼓動が響く。冷静さを欠いていると遠くに自覚しながら、その感覚を振り払うように駆ける。降り注ぐ文字を避けながら、それでも避けようなく襲う黒く群れた文字を払いのければ弾けた。
足場の文字が溶け出すようで足を取られる。
ツムグは歯を剥き出しにするように唸って吐き捨てた。
「お前、虚構を食ったな」
騙された。この男の存在を知った時、自分の偽物であるとーーつまりは劣化でしかないと見なしたのは間違いだった。
ツムグは現実改変能力で沢山の概念が消失した際に「物語」もまた消えたのだとばかり思っていたがーー違った。確かに世界から単に本が消えたのであれば、ツムグの手元にだけ残っているのはおかしい。
UNツムグが「物語」の概念そのものを力の対価にしていたのだ。対価ーーたとえばトトノエが存在をすり減らしているように、莫大な力には対価がいる。ツムグは碌に払った覚えはないがーーいつか払わされるとしてーーまあそれは今は良い。
UNツムグがこうも異様な力を持っているのは、対価として自らが閉じこもる美しき世界を売り払ったからだ。ツムグには理解できないーー物語だけが毒を持たずにすむ世界だったから。同時にツムグには理解できるーーたとえ唯一無二であっても、彼にとって優先すべきなのは己である、ということを。痛いほど理解する。
UNツムグがどれだけツムグと同じ経験を持つのかは未知数だーーしかし、あらゆる自分を慰めた全ての言葉を、あらゆる美しい心動かされる物語を、あらゆる彼が唯一素直に褒め称えられる世界を、存在ごと捨てたのだけは確かだーー己のために。
常人の同情を捻りちぎるような、常人の理解を叩き上げて砕くような、あまりに強固な我を感じる。
ーーあまりに似ている。線対称というには背中合わせにならず、180度ひっくり返せば重なる、綺麗に点対称とでもいうべき似方。それも当然だ、少なくとも真偽が意味をなさない以上、彼も間違いなくツムグには違いない。
ーーやはりUNツムグは決定的に何か異なるとはいえ、自分である。その自覚はツムグにとって苦々しく気持ち悪いものだった。
並んだ文字が嘲笑う。
『ーー現実改変能力を避けたのが敗因だとわかるだろう?』
「まだ負けた覚えはないが?」
ーーまずい。痛いところをついている。勝てる気がしないーーそれをツムグは認めることができない。断固として彼の呪いのごとき矜持が許さない。
彼は地団駄を踏み、血がでるほど身を掻きむしりたくてならないほどだった。身を焼く屈辱。涙が出そうだ。悔しさそのもので、それが溢れるのを無理に蓋をしようとして苦心している。息が荒い。目が血走っている
許してなるものか、許してなるものか、許さないーー沸々とどころか、煮立って吹き出して、そのまま火でも吹けそうなほど彼は憤っている。
憤りと裏腹に彼はなす術もない。紡がれ溢れた活字の波に吹き飛ばされ、現実改変能力でできた空間の頁を突き破った。
何もない空中が紙のように破けて吹き飛んだ先はーー大男。彼は何の驚きも見えない真顔のまま、綺麗にツムグを捕まえた。
「デリバリーを頼んだつもりはなかったんですが」
シナズはツムグの右足を高々掲げる。だらんと逆さまに捕まえられたーー受けとめられたにしては雑だったーーツムグは、そのまま何の迷いもなく、自由な方の足を振り抜く。シナズの顔面を蹴り飛ばして、そのまま床に着地した彼は荒い息で唸る。
ーー彼にとっては今現在抹殺すべきUNツムグがいる以上、へんてこな大男にかまっている暇はない。
「わあ、そっくりさんですね」
適当に転がってみせていたシナズは、棒読みでわざとらしく手を広げて驚いたジェスチャーをする。ちょうどアルが逃げたことに怒ったイノチガケがシナズを蹴っていたあたりに、突如ツムグが出現したようだった。
それこそ、はりぼてのセットをーー虚構を突き破って。
この状況でUNツムグはただ起伏のない顔でツムグを見ていて視線は外さない。イノチガケが彼の方に朱色の瞳を向けた。
「あらーー良いじゃない。随分面白い力だったのね、勿体ぶらないで見せてくれてもよかったのに」
イノチガケは喜色を浮かべて、黒い兎耳を揺らした。UNツムグの力の異常さを彼女は嗅ぎつけている。自身とは違う方向に理不尽に強大で自由なーーある意味想像力の限り全てが可能になるようなーー使い手によっては万能に近い、それだ、と。
そこへちょうど現れたのは白黒を完璧に隔てた異質な髪の美しい人。タイミングが綺麗に重なり、事態は混沌を通り越して、もはや喜劇といってよかった。
「ーー蔓延っているね」
トトノエは静かに囁いて、儚い気配のまま、迷いなくイノチガケに歩む。走ることはない。走る意味はないからだ。急ぐ必要がなかった。そもそもトトノエがこの場にいる限り、常人がする抵抗は意味をなさない。
イノチガケは鼻を鳴らして笑った。美しい曲線を見せつけるように身を反らして。
「気持ち悪いわね、自分の存在を固定したの?固定して守ったところで、世界は滅ぶなら変わらないでしょうに。過去に縋るよりずっと愚かね」
ハイヒールの踵を高くならし、彼女は煌めく金髪を払いのけた。余裕あるそぶりを崩さないが、一歩、あるいは一手動けば、彼女は最大の力で応じなければならないのをわかっている。
ゆっくり歩み寄ったトトノエは、その微かな気配が嘘のような速度で杭を打とうと手を翻す。しかし、ぴたりと動きを止めた。
「邪魔だよ」
トトノエは何もない空間に触れる。そこに現れたのは、這いつくばった少女ディーラーだ。イノチガケが顔を顰める。カタリは彼女を見上げて囁く。
「……カタリが、5、6人、死んだだけよ、ガケ姉様」
「まあ、よくやったわ」
意味が通らないような対話を終え、イノチガケは腰に手をあて、ふうとため息をついた。
「ーー仕方ないわ、帰ってあげる。ここで戦ったって、気持ちよく世界を壊させてくれないでしょうし。目的は果たしたから」
イノチガケは赤い目を細めて笑った。応答なく、対話なく、なんらの逡巡なくーー即座に飛びかかり、杭を振り抜いたトトノエが追い縋る。蝶が飛び青い嵐のように部屋をびっしりと埋め尽くす。
色のない瞳が見開かれ、光を閉じ込めた瞳に映すものを閉じ込めようとするかのようだ。その色に憎悪はないーー憎悪はなく、憤怒はなく、燃え上がる高い温度はなく、想定される感情はことごとく無い。
秒針が毎秒時を刻むように、まるでそうするのが当然の秩序を振り下ろすかのようにーー静かで柔らかな狂気を纏って。
杭が打つ相手は消えていた。イノチガケの姿はもちろん、彼女の連れていたディーラーの少女も、ツムグの許せない存在も。ーーまるで空間が頁のように捲れて消えた。
「……虚構を現実にするならまだしも、現実を虚構にする、か。僕と相性が悪そうだ。何より決定的に思想が合わない」
トトノエはゆらりと手を下ろす。杭は消える。青い蝶が優雅に飛び回っていた。
「逃げられるとはね。……アルくんは酷い有様だったけど、君たちは怪我はないかい?」
駆け寄ってきた構成員たちの方を向いて、トトノエは狂気など影もなく、柔らかく笑った。構成員たちは各々首を振るなどして否定して、しきりにトトノエを促して慌ただしく動き出す。みんな部屋を離れたために、すぐにその場は静かになったーーツムグとシナズを残して。
「どっちが本物か決闘でもしてたんですか。もう1人の自分を殺さないとって、馬鹿らしくなりません?」
沸騰しやすいツムグにしては珍しくなんのアクションもない。
「ーー聞いてます?」
シナズの声がまるで聞こえていないかのように立ち尽くしているので、覗き込んだ。わざわざ至近距離の背後から見下ろすようにしているのはーーご愛嬌である。
「……黙れ」
彼はそれさえ些事であるように吐き捨てるだけで見向きもしない。一点を睨んでーーUNツムグがいたところだーーただあらゆる暴言を砕くように歯噛みしていた。
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