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デート当日

 恵梨は、待ち合わせした公園のベンチに座り柚奈を待っていた。
 緊張で、手のひらは汗ばみ喉が渇く。
 恵梨はこれまで男性としかデートをしたことがなく、今回が初めての女性とのデートだったからだ。

 いろいろ考えていると、花柄のワンピースを着た柚奈が現れた。

『恵梨ちゃん、おはよ~』
彼女は笑顔でそう言った。

あー柚奈さん、私服も可愛い
 恵梨は、いつもの定員の姿とは違う彼女に惚れ直した。

 そして、彼女の自然な振る舞いに少し安心し、微笑み返した。

 二人は公園を散歩しながら、お互いの好きな食べ物や映画について話した。
 恵梨の心配はどこへやら、初めてのデートとは思えないほど、二人の間には親友以上の空気が流れていた。




 しばらく歩き、柚奈がおすすめのカフェに連れて行ってくれた。恵梨は柚奈が注文した、カフェの特製パンケーキを食べると、その美味しさに目を輝かせた。

『これ、美味しいですね!』

柚奈はそんな様子を見て満足げに笑った。





 その後、何度かデートを重ね、数回目のデートの帰り道。
 楽しかった時間もあっという間に終わり、二人は夕暮れ時の街灯が灯り始める道を歩いていた。

 夕陽に照らされる柚奈の美しい横顔を見ながら、恵梨は何かを決意したように深呼吸をした。

「柚奈さん」

 柚奈が振り返った。
 その瞬間、恵梨は彼女の手を取り、そっと包み込んだ。
 柚奈は一瞬動揺したものの、恵梨の手から伝わる温もりに安心感を覚えた。

「これからも、一緒にいてもらえますか?私、本当に柚奈さんのことが好きなんです」

 恵梨の声は緊張で震えていたが、その瞳は真剣そのものだった。
 柚奈はそんな彼女の目を見つめ返し、ゆっくりと頷いた。

『嬉しいな、こちらこそよろしくお願いします』


そうして、二人は付き合うことになった。











 付き合ってからは映画や旅行に行ったり、柚奈の家でのんびりしたりと穏やかな日々を過ごした。
 しかし、柚奈のどこか本当に心を開いていないような、無理して笑顔を見せているような様子に恵梨は不安になった。

やっぱり自分じゃだめなのかな、女性同士じゃ柚奈を満足させられない部分があるんじゃないか、



 柚奈の家へ遊びに来た日、恵梨はそのことについて聞いてみることにした。

「柚奈さん、私といて本当に楽しいですか?無理してませんか?最近、柚奈さんが無理して笑顔を作っているような気がしてて、」

『いきなりどうしたの?別に無理なんてしてないよ、私は恵梨といて十分楽しいよ』
いつものように、にこっと笑って言った。

「その笑顔が私には無理しているように見えるんです!私は女の人と付き合ったことなんてないから、やっぱり柚奈さんを満足させられてないんじゃないかって、男の人のほうがいいんじゃないかって、わかんないんです!!」

 突然の訴えに恵梨は動揺した。そんなことを彼女が思っているなんて、全く気がつかなかった。
 確かに柚奈はある時から、人前では笑顔を作って過ごすよう意識していた。
 そんなことを意識しだしたのは、高校時代のトラウマがあったからだった。


『そんなに不安にさせてると思わなかったの、ごめんね。私のこの笑顔は癖っていうか、高校の時の出来事が理由で、、
私のこと嫌いになるかもしれないけど、聞いてくれる?』

そう言い、柚奈は自分の過去について話し出した。



『高校生のときにいっつも一緒に遊んでた女の子がいたの。はじめはただの友達だったんだけど、徐々に私がその子のこと好きになっちゃって…
友達でいることに耐えられなかったから、私はその子に告白したの。
結果はなんとOK貰えちゃったんだよね~
はじめて自分から告白して、はじめて出来た彼女だから緊張しちゃった笑』


『それから普通に恋人として過ごしたの。もちろん周りにはないしょでねっ
私は案外上手くいくもんだな~って呑気なこと思ってた。
でも、実際はそうじゃなかったみたいなんだよね』

柚奈の顔に影が落ち、下を向いた。

『ある日私は忘れ物を取りにたまたま教室に戻ったの。そしたら、帰ってるはずの彼女の声が教室から聞こえた、
男の子と楽しそーに話してる声が聞こえたの。』


˹おまえ、あの柚奈?って子と付き合ってるんだろ?
いいのかよー、男とベタベタしちゃって笑˼
˹いいの、私が本気にしてると思った?笑
そんな、女と、ましてや親友と付き合うわけなくない?私の彼氏は悠真だけだよ♡˼


『ショックだった…
勇気出して告白したのに、はじめての彼女だったのに、
でもさ、親友は無くしたくないじゃん
だから私はこの会話を聞かなかったことにして、卒業まで必死に笑顔作って楽しい振りをしたの
だから、そのときの癖が今だに抜けないんだよね笑』

 過去のトラウマを話し終え、柚奈は顔を上げた。
 すると、恵梨がボロボロと涙をこぼして抱きしめてきた。

「づらがったよね゛ぇ
ごめんねえ、ぞんなごどがあっだなんてぇ」

『なんで恵梨がそんな泣いてんのよぉ笑
私も泣きたくなっちゃうじゃない!』

 二人で顔をぐちゃぐちゃにしながら泣いた。
 メイクなんて気にせずに泣いたもんだから、二人の肩にそれぞれのアイシャドウが着いてしまった。


一呼吸置き、恵梨は話し出した。
「そしたら、柚奈さんは楽しくないとか無理してるって訳じゃないってことでいいんだよね?」

『もちろん!そんなことないよ』

「よかった、でも私の前では無理やり笑顔作ろうとしたり、我慢しなくていいからね?
私、昔の彼女みたいなことしない
柚奈さんだけを愛してるから」

柚奈は恵梨の言葉にびっくりし、頬を赤らめた。

『そんな!愛してるなんて!』

「柚奈さんも言って、ね?」


『あ、愛しテル』


「緊張してる柚奈さん新鮮で可愛い♡」
「いつか柚奈さんのその癖が無くなるまで、柚奈さんからちゃんと信頼されるまで、もちろんその後も私は柚奈さんのこと離さないからね」



この出来事があり、ますます二人の愛は深まったのだった。
                                               



END
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