デジタル・リボルト～ディストピアからへの英雄譚～

◎二年目、十一月の章

■学園祭って何？

　中島が学校から去ったあと。久遠は学校にある図書室へ。それを追う形で里奈と世里も来ていた。

「こんなところに何の用なの？」

　里奈が首を傾げながら訊ねると、久遠が棚から何冊かの装丁された本を出してくる。

「これは卒業アルバムっていうらしいんだ」

「卒業アルバム？」

　里奈と世里は顔を見合わせる。

「学校を卒業するときにもらう学校生活の思い出を綴ったアルバム？　――みたいなものらしいよ」

　昔はそんなことをしていたんだと里奈は感心する。里奈が小学校を卒業するときにもらったのは卒業証書くらいだったからだ。

「それって何か意味があるの？」

「……僕に聞かないでくれよ」

　久遠はカバーから本を取り出して開けてみる。そこには先ほど説明された通りの内容の写真やらが貼られていた。

「あった」

　その中にあって久遠の手がピタリと止まる。

　そこには『学園祭』と校門に立てかけられた看板、あとはグラウンド中に出店が出店されていた。しかも出店をやっているのは学生たちのようだ。

「昔はこんなことしてたんだね」

　世里は物珍しそうに写真を眺めている。

「中島先輩の依頼ですけど、学園祭を開催するって方向でどうです？」

「……そもそも学園祭って何？」

　里奈は率直に疑問をぶつける。

「お祭り？」

「何で疑問形なのよ。お祭りそのものがわかんないって言ってるのよ」

「クランイベントみたいなものかしら？」

　世里が言う。

「催しごとという意味では限りなく近いかもしれないね」

「細かく話すと歴史の話になるから、その辺は講義なり博文ひろふみ先輩に聞いてもらうとして。とりあえずみんなで集まってワイワイやるものだって思ってくれたらいいよ」

「クランイベントは殺伐だから、ちょっと違うわねぇ」

　世里は苦笑いする。

「とりあえず大ざっぱにスケジュールを組んでしまおう。里奈、集まってくれそうなクランリーダーに声をかけてよ」

「いいけど、何て言うの？」

「学園祭が何なのかっていうプレゼンしたうえで参加を呼びかけるんだよ」

「ぷ、プレ……ぜん？」

　聞いたこともない単語だった。

「せっかくだ。それなりの規模感でやったほうがいいだろう」

　久遠だけが一人で盛りあがっているようにある。

「僕は博文先輩に相談してくるから」

　それじゃあと言って久遠は図書室をあとにする。

　里奈と世里は訳がわからないとばかり互いに顔を見合わせるのであった。