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◎二年目、一〇月の章

■一方、晴たちは学校にいた

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 はるを含めた十二期生メンバーである蘭々らら賢司けんじ、それに伊織いおりは国会議事堂ではなく、いつもの学校にいた。

「先輩、そこの公式は間違えてます」

「へ?」

 蘭々に指摘されて晴は目を丸くする。

「前も間違えてましたよ。そこはですね――」

 晴は蘭々からの説明を受けている。晴は数学が苦手だ。いやそもそも勉強というものが苦手だった。

 実際、年下の蘭々に指導されるという始末だ。まあ、蘭々は勉学において優秀なのは間違いない。

 それは賢司と伊織を見ていてもわかる。

「お前さん、やっぱ頭いいのな」

「そういう言い方は頭がよさそうに聞こえませんよ」

「別にそんなつもりはないんだからいいんだよ」

 晴は両手を頭の後ろで組む。

 勉学ができるというの一つの個性としか数えられなくて久しい。

 晴たちに勉学のデキによって人生が大きく左右された時代があったと言えばさぞ驚くことだろう。

 しかしまあ、どうしてか蘭々は楽しそうだ。勉強がそんなに楽しいかと晴は考えてしまう。

 もちろん、蘭々は勉強が嫌いではない。しかし楽しいのはそんなこととはまったく違う理由である。この時、彼女がそれを自覚していたか定かではないが。

「せっかくだし次は体でも動かそうぜ」

 晴からすれば勉学はほどほどでいいというのがここ数カ月で学んだことだ。実際にAIからも、このくらいのペースでこれくらい修学できれば十分であるという判定がでている。

「俺は賛成っす」

 賢司が手を挙げる。彼も勉強は苦手な部類だ。

「あのぅ、晴先輩」

 そんな中で伊織は遠慮がちに訊ねてくる。

「どうしたよ?」

「僕たちは久遠先輩たちを手伝わなくてよかったんですか?」

「もともと里奈と由芽だけで行くつもりだったんだろ。それがいつの間にか十一期の奴ら全員で行くことになったんだよ」

 そういう意味だとそもそも頭数には入っていなかったということになる。

「こっちも段取りは絡んだけど、主催じゃなかったしな」

 それで全員参加するというのも変だとも言える。

「晴先輩が留守番なのは意外でした」

 蘭々が聞いてくる。「どうして?」と。

「ああいうところで俺が役に立てるかは微妙だったと思うぜ。明里さんたちがいるんだ。問題ねえよ」

「ひょっとして自分で断ったんですか?」

 蘭々は少し残念そうだった。

「まあな。いかにも堅っ苦しそうなところだったしよ」

 晴は柄ではないのだと手を振っている。

「先輩はもっと主張してもいいと思います」

 蘭々は小言のように言う。

「東方旅団で偉くなってどうするんだよ?」

 そう言われると蘭々も困ってしまう。何でだろうと。

 蘭々にも自分で理解しきれていないところがあることを改めて理解するのであった。

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