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◎二年目、九月の章

■学野博文は話したい

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「僕の名は学野博文まなびやひろふみ。八期生の九月一九日生まれだ」

 学生寮に帰ってきた東方旅団の面々とに思わぬ来客が自己紹介をした。

 ぼさぼさの髪によれよれの少し汚れた白衣。かけている眼鏡の端は少し欠けている。

 女性陣でなくとも少し引き気味になるのは仕方がないと言えた。

「僕たちに聞きたいことがあるそうですが」

 とりあえず誰もやりたがらないということで、自然と話すのは久遠の仕事となった。

 談話室で久遠と博文が机越しに話しはじめる。それを一同が遠巻きに眺めていた。

「最近、面白い話が出まわっている。強制ログインゾーン内のボスを倒して解除したプレイヤーがいるとか、大手クラン二つを相手取ってたった三人で完封したとかね」

 聞いたことがあるというか、まんま自分たちの話だなと里奈は思った。

「僕も日中は聞き込みをして。あるいは危険を承知で夜に出まわることにしたんだ。君たちに出会うために」

「どうして?」

 そこまで危険を冒してということだろう。

「単純な知識欲だよ。僕は八期生で東京ここでの滞在期間も残り一年。やれることはやれるかぎりやろうと思っている」

 その表情はたしかに真剣そのものだ。

「お願いだ。僕を東方旅団に入団させてほしい。残り一年しかない人間をいまさら入れるのは普通抵抗があることを百年も承知だ。それでも何とかならないかな」

 いまにも土下座でもしそうな勢いである。

「それを言うと東方旅団は大手とは言えませんし、クランイベントには非参加です。あまり稼ぎはよくありませんよ」

「それはたいした問題にならないよ。僕は現在、攻略最前線にいるであろう君たちと行動を共にしたいんだ」

 ――攻略最前線だって?

 その言葉に一同は互いに顔を見合わせる。

「どういうことでしょう?」

「東京迷宮がリリースされて一〇年経つのに強制ログインゾーンを解除したという情報はここ最近まで一度もなかった。他にも義務教育を利用して寮を利用するという手段もだ。この流れはこれから間違いなく加速していくだろう」

 そうなのかと里奈は内心驚いていた。そんなことになっているなど知るよしもなかったからだ。

「君たちと接触しようとするクランはこれから増えていくのは間違いないよ」

「では、学野先輩はどうして?」

 久遠の質問に博文は答える。

「僕は東京迷宮のことを解明したいんだ」
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