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◎二年目、七月の章

■由芽は久遠におかえりを伝えたくて

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 寮が近くなる。

 空けていたのはほんの二日程度なのにずいぶんと懐かしく感じていた。

 由芽なりに久遠という少年についてわかったことがあった。

 たしかに彼はゲーム中や東京での生活について驚くような行動をする。しかし、何を考えているのかというと、その実は普通の少年なのではないだろうかと思うのだ。

 ここ数ヶ月の間で東方旅団とうほうりょだんは規模を少しずつだが、大きくしていっている。他のクランとの交流も増えつつあった。

 それでも久遠が帰る場所はこの寮なのだ。それはどれだけの変化があっても変わらない。

 ここにまた帰ってこれるよう自分は久遠にかけるべき声があるのではないか。

 それをしなければ次に何かあったとき久遠は帰ってこないかもしれない。

「乃々子さん、明里さんと寮にいるってさ」

 圭都が報告してくる。それを聞くと由芽も気が重たい。

 どうもあのノリ的なものが由芽は苦手だ。それでもある程度は受け入れなければならないのだろう。

 やはり由芽にとってもあの寮は居場所になりつつある。

 それに新たに仲間が増えるかもしれないのだ。それも待望の後輩だ。

「宴会場にするのはやめてほしいんだけどね」

 でも、どうしようもないかもしれないと久遠はあきらめ口調だ。

 寮の玄関を由芽は早足で久遠より先に入り、くるりと旋回して久遠に顔を向ける。

 いま彼に伝えるべきはきっとこの一言なのだ。

「久遠くん、おかえり」

 久遠は立ち止まり最初はキョトンとしていたが、急に顔を伏せる。

 久遠は右手で目のあたりを拭ってから顔を上げる。

「……ただいま」

 久遠ははにかんだような笑顔でそう言った。
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